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マンガ家を目指して美大に進学→メガベンチャー→起業。イラスト・マンガが手軽に学べるサービス「パルミー」が生まれるまで

2022.07.25 

7月31日はクールジャパンの日。NHK BS1で放送中のテレビ番組「クールジャパン」放送開始日の2005年7月31日にちなんで制定されたそうです。

 

クールジャパンといえば、海外で評価されている日本文化ですが、中でも日本のアニメやマンガはやはり人気がありますね。昨年のアニメ産業の市場規模の調査で、海外市場が国内市場を上回ったことも話題になりました。

 

今回は、そんなマンガやイラストの描き方をオンラインで手軽に学べるサービス「パルミー」を手がける伊藤貴広(いとう・たかひろ)さんにお話を伺いました。

 

iOS の画像 (7)

パルミーWEBサイトより

 

イラスト・マンガの定額制オンラインスクール「パルミー」

 

「パルミー」は、月額定額制でイラストやマンガの描き方が学べるオンラインスクールです。入門編から上級編まで200本以上の講座がいつでも見放題のサブスクリプション型サービスで、イラストレーターやマンガ家をめざしている方、副業で仕事にしたい方などを中心に、2014年のサービス開始から今まで2万人以上の方に利用されています。

 

一言で「描き方」と言っても、人物なら「立体感のある頭の描き方」「顔の描き方ー女性編・男性編ー」「髪の毛の塗り方」「洋服のシワの描き方」「キャラポーズ基本編」、背景なら「都市背景の描き方」「室内背景の描き方」「3D機能を使った背景作画講座」など細かくポイントを絞って学ぶことができます。さらに、「イラスト業界のお仕事講座」「イラストレーターのための確定申告」など、絵を仕事にするための情報もあります。

 

半年プランに入会すると、2ヶ月に1回無料でプロの添削指導も受けられます。「子供の頃から絵を描くのが好きで、絵の道に進むのは断念したけど、今は就職して自分のために使えるお金と時間ができたので、改めて学びたい」というような30代前後の方を中心に、ユーザーも増え続けているそうです。2022年5月には、台湾でのサービスも開始しました。

 

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台湾でのサービス提供WEBサイト

 

田舎で絵を学ぶのは不便だと感じていた高校生時代

 

「パルミー」を立ち上げたのは、株式会社パルミー代表取締役の伊藤貴広(いとう・たかひろ)さんです。伊藤さんは、小さい頃から漫画家を目指し、自分のマンガを出版社に持ち込みたい一心で、親の反対を押し切り福岡から上京して美大に進学します。しかし、当初抱いていた漫画家への夢は徐々に遠ざかっていきました。

 

「田舎で絵を学ぶのは不便だな、本屋にはイラストの技術書が揃ってないし、出版社は東京にあるし、と思って上京しました。最初は出版社にマンガを直接持ち込んで交渉もしましたが、美大の同級生の熱量に追いつけなくなって、絵を描くのをやめてしまいました」

 

上京して1年。絵を描かなくなった自分にがっかりしていた頃、伊藤さんに転機が訪れます。

 

「会社は作れる。ビジネスは面白い」

 

伊藤さんが、たまたま顔を出したインターカレッジサークルには、起業する元気な同世代がいました。ビジネスの面白さを知った伊藤さんは、残り3年の大学生活をビジネス活動中心に過ごしました。

背伸びして入ったDeNAを3年半で辞めて起業

 

新卒でDeNAに入社した伊藤さんは、「仕事はすごく面白かったけど、背伸びして入った分、大変でした」と振り返ります。

 

「同期の50人は学歴も高く、ついていくのがやっとで、最初は苦しくてトイレで泣くこともありました。それも1年ほどで慣れて楽しくなり、頑張るほど評価して応えてくれる会社でした」

 

しかし、伊藤さんは入社して3年半後、「起業するので退職します」と、会社員生活を手放しました。当時流行していたゲームのアバターをつくるのは楽しい仕事でしたが、足りないものがありました。

 

「より世の中の課題を解決できるエンタメの仕事をつくれないか?」

 

伊藤さんは、「楽しさを追求するエンタメ」の世界では得難く感じられた「役に立っている実感」を自分なりに模索しはじめました。

 

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パルミーWEBサイトより

 

ペルソナは、あの頃の自分。どこにいても好きなことが学べるサービス

 

起業のプランは、「自分が高校生の時に、あったら嬉しかったなと思えるサービス」でした。

 

どこにいても、インターネットで学べる動画コンテンツビジネスを考え、起業準備をしている時に、TOKYO STARTUP GATEWAY(以下、TSG)を知りました。2014年、第1回のコンテストで伊藤さんはファイナリストに選ばれます。

 

当時のエントリーシートの最初の400字に、伊藤さんはこのように書いていました。

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日本のアニメイラストのハイレベルな作画技術を学びたい海外の人に向けて、インターネットを通じて作画レッスンを提供します。これまで日本のアニメイラストを学びたくても学べなかった人、YouTube などにアップされた質の低い作画動画で学ぶしかなかった人びとに高品質な動画レッスンを届け、「描ける感動・喜び」を提供します。

 

動画レッスンは熟練したイラストレーターと念入りに打ち合わせた上で作画風景を撮影し、自社で映像編集を行うことで品質を担保します。レッスンの提供方法はスマートフォン用アプリを開発し、まずはアップル社が提供するアプリマーケット(AppStore)にて主に中国、韓国、台湾などのアジア圏と北米、ヨーロッパに配信します。私はこの事業を通じて「筆を執る」人を増やし、世界をもっとビビッドにしたいと考えています。

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パルミーWEBサイトより

 

当初のプランと比べて、アプリではなくPCをメインにし、まずは国内マーケットでコンテンツを提供してきました。そして今年5月に台湾でサービスを開始。創業から9年、当時のビジネスプランを着々と実現させています。

 

学生(25歳未満)の月謝を半額にしているのも、高校生の頃の自分のような若者に、学びやすい環境を提供したい思いからでした。

一番素晴らしいのは、起業の同級生ができる体験

 

TSG2014のファイナリストになって以降、伊藤さんは毎年メンターとしてTSGに関わっています。ちょうど今、審査を終えて1stステージに進む参加者へのメッセージとして、伊藤さんからこんな言葉をいただきました。

 

「TSGはビジネスプランコンテストですが、合格だけを目的にしないでください。一番素晴らしいのは、起業の同級生ができる体験です。同期はだいたい同じフェーズで同じ困りごとを抱えます。その時に、利害関係なく、弱音を吐いて相談できる関係は貴重です。

 

私も、1期のメンバー3人とは2ヶ月に1回近況報告をしています。オフィスが移転したと聞いたら遊びに行き、お互いの社員の顔と名前も覚えていて、『元気ですか?』と声をかけます。周りをライバル視しないで、できるだけ対話して、役に立てることや、サポートしたい人を見つけてください。ここで出会う人の中に、この先何年も相談できる人が見つかる可能性があります」

 

起業の同級生とともに、世界へアニメ・イラストの技術を届けたい伊藤さんの「パルミー」の今後の展開が楽しみですね。

 

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伊藤 貴広(いとう・たかひろ)さん

株式会社パルミー 代表取締役/TOKYO STARTUP GATEWAY2014ファイナリスト/TOKYO STARTUP GATEWAY2015-2022メンター

幼い頃から絵を描くことが好きで漫画家を志す。2011年、武蔵野美術大学を卒業後、DeNAに入社。SNS「mobage」でアバターサービスのチームリーダー、新規アプリのプロデューサー等を経験。漫画家を目指していた時に感じた、絵の学びづらさを解決したいと思い、2014年に株式会社パルミーを創業。イラストやマンガの描き方が学べる「パルミー」を運営。2022年5月より最短3ヶ月でデザイナーをめざす講座「リモモ」を運営。

パルミー:https://www.palmie.jp/

リモモ:https://rimomo.jp/

TOKYO STARTUP GATEWAY事務局編集後記

 

毎年、TSGのサイトがオープンする時期に伊藤さんが近況の報告を送ってくださるのですが、今年はTSG参加当時に400字の事業アイデアで書かれていた「アジア展開」を実現されていました。改めて今回インタビューでお話をお伺いするのを楽しみにしていましたが、着実に事業を進められるその姿に事務局もとても刺激を受けました。どんどんパルミーが世界に羽ばたいて、絵を学びたい人にたくさん届きますように!

 

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【この特集の他の記事はこちら】

>> 特集「やりたいように、やってみた~世界を変える起業家たちの挑戦~」

 

●東京都主催・400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」

WEBサイト https://tokyo-startup.jp/

 

●プレスリリース : 東京都主催・400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」募集終了!今期の応募総数は1114件。9年間の累計応募数は1万件を超える!

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000012113.html

 

 

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この記事を書いたユーザー
木村 静

木村 静

NPO法人ETIC.広報/コーディネーター 北海道出身。札幌市内のまちづくりNPOのスタッフとして、コミュニティFM放送局パーソナリティ、ミニコミ紙の取材・執筆等を経験。2008年に上京しフリーランスに。アナウンス・司会、ライター、カメラマン、映像制作、講師、リサーチ、イベントのディレクション業などを事業領域として活動。 2015年〜NPO法人ETIC.に参画。東日本大震災復興支援事業(右腕プログラム)、地方創生推進事業(ローカルベンチャー協議会)の事務局(広報、人材コーディネート等)を経て、現在は広報業務を担当。 趣味は、映画鑑賞、美術鑑賞、ガーデニング、読書。

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