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写真映えする景色は運用されていない「資産」。スマホでは撮れない最高の一枚を提供するフォトビーズ!・鈴木啓太さん

2022.08.19 

8月22日はハイチーズの日。数字の語呂合わせが由来だそうです。

 

最近はスマートフォンで写真を撮ることが増えましたが、短時間で良い写真を撮るのはなかなか難しいものですね。特に気に入った風景をバックに写真を撮る時は、性能の良いカメラを持って来ればよかったと後悔することもあるのではないでしょうか。

 

今回は、絶景をバックにセルフィーでは撮れない画角や光にこだわったきれいな記念写真を、スマートフォン操作で簡単にリモート撮影できるサービス「フォトビーズ!」を手がける株式会社クイックピジョン代表取締役の鈴木啓太さんにお話を伺いました。

 

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鈴木啓太(すずき・けいた)さん

株式会社クイックピジョン代表取締役/TOKYO STARTUP GATEWAY2016セミファイナリスト

 

高校の時代の夢は宮大工 or 漁師。高校卒業後に大学へ行く意志はなかったが、母の勧めで興味あるデザイン専攻の大学を受験。大学2年時、デザイン実習の講義で恩師となるデザイナーの教授に出会い、デザインにのめり込む。様々なコンテストなどに応募を始め、3年時に「第1回東京ビジネスデザインアワード 最優秀賞、第5回テクノルネサンスジャパン 未来の夢・アイデアコンテスト 優秀賞」を受賞。研究室配属後は、産学協同で災害時や救急時の情報連携システムを研究開発。 大学院卒業後、研究内容の事業化のため、2016年8月5日にクイックピジョン株式会社を設立。しかし、数ヶ月後に事業撤退を決断する。TSGの他、NPO法人ETIC.主催のSUSANOOやMAKERS UNIVERSITY等のプログラムを通して、本当に自分が実現させたいことを掘り下げ、カメラをシェアして生まれるカメラ版ポケモンGO「フォトビーズ!」の開発に至る。

 

●フォトビーズ! : https://quicpigeon.com/photobe-s/

●株式会社クイックピジョン : https://quicpigeon.com

 

フォトビーズ!について

 

フォトビーズ!は、IoTを活用したフォトスポットサービス。スマートフォンからあらかじめ設置されている近くのカメラにアクセスして撮影し、撮影した写真データをすぐにダウンロードすることができます。

 

現在は、北海道から大阪まで6か所にフォトスペースが設置されています。2018年4月にサービスが開始され、2022年8月時点での利用数がのべ7万組を突破しました。

 

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恵比寿ガーデンプレイス38階のフォトスポット

 

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上野・アメ横センタービルのフォトスポット

 

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札幌・白い恋人パークのフォトスポット

 

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大阪・Willows Hotel 大阪新今宮屋上のフォトスポット

 

カメラはそれぞれのフォトスポットの立地条件に合わせて綿密な調整をして設置されるため、時間や天候に関係なく映画のワンシーンや雑誌の表紙のような写真・動画が撮れるのが特徴です。大阪のホテルでは、通天閣をバックに空が地表に映り込むウユニ塩湖のような写真が撮れます。

 

景色を資産として運用し、不動産の価値を上げる

 

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フォトビーズ!WEBサイト 法人向けページ

 

フォトビーズ!のフォトスポットオーナー向けのページには「VIEWを資産価値に変えて運用をはじめよう」というコピーが書かれています。このサービスを手掛ける株式会社クイックピジョン代表取締役の鈴木啓太さんはこう話します。

 

「これまで、不動産は駅近だと価値が上がりますが、景色がきれいなだけでは価値は上がりませんでした。良い写真が撮れるから人はいっぱい来るけど、お金にならない。でも、それは魅力的なVIEW資産が眠っているということだと思うんです。」

 

フォトビーズ!は、景色を未活用資産と捉え、フォトスポットという形にして、訪れる人には素敵な思い出写真を提供し、カメラを設置するオーナー企業には景色という資産をフォトスポットとして運用することで不動産の価値向上を提案するサービスです。

 

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フォトビーズ!WEBサイトTOP

 

別事業で起業したが実証実験寸前で路線変更

 

鈴木さんが起業したのは2016年5月。

 

大学院卒業直後に、当時は全く別のビジネスをするため、大学院の研究室の後輩と、起業支援プログラムの同期と3人で会社を立ち上げました。大学院ではデザイン工学研究科に所属し、救急医療の現場に導入するシステム開発をしていました。

 

そのシステムを社会実装するための第一歩としての実証実験が決まり、法人格を取得しましたが、その後一転して、実証実験を辞退します。

 

鈴木さんは当時を振り返り、「たしかにガックリとした部分はありましたが、どこかでこれ本当にやるのか?と思っていた部分もあった」と語ります。

 

「公共サービスのシステムを変えるためには、かなり多くのステイクホルダーとじっくり話し合って進める必要があります。もしそこを乗り越えたとしても、このシステムで本当に業界全体にインパクトが出るのか。ずっと世界を変えるつもりで開発していたけど、よくよく考えるとちょっと便利になるくらいで、大きなインパクトにならないのではないか。世界は変わらないのではないか。そしてそれはまだ起業したばかりで信用のない一ベンチャー企業が入り込める領域なのか……そんな疑問が湧いてきたんです」

 

当時、鈴木さんが参加していた起業支援プログラムでの問いをきっかけに、方向転換を決めました。

 

儲かるビジネスより、やりたいことを選ぶ

 

その後の鈴木さんは、いくつかのビジネスプランを考えますが、最終的にフォトビーズ!の構想を進めることに決めます。

 

「フォトビーズ!のアイデアは、もともと大学2年の頃に思いついていて、1枚の企画書を書いていました。GoProの流行から着想を得たのですが、その原型はもっと前、中学の修学旅行の時に奈良の大仏を見て、大仏目線だとどんな写真が撮れるんだろうと考えたことです。当時から写真を撮ることが好きでした」

 

鈴木さんには、もっと儲かりそうなビジネスアイデアもありましたが、2016年当時は2020年東京五輪まであと4年。東京五輪をとても楽しみにしていた鈴木さんは、東京で迎える4年後の自分を思い描き、ワクワクしないビジネスは選ばないことにしました。

 

これから増える海外からの旅行客を満足させたいという思いもフォトビーズ!につながっていきます。

 

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TOKYO STARTUP GATEWAY2016最終発表会での鈴木さん

 

実は当時、鈴木さんは3つの起業支援プログラムに参加していました。

 

2016年11月、3つのプログラムの最終発表会がそれぞれあり、鈴木さんは全ての発表でフォトビーズ!の構想を話します。3つのプログラムのうち、「TOKYO STARTUP GATEWAY2016(以下、TSG)」ではセミファイナリストに選ばれ表彰を受けます。

 

その一方で、一緒に起業した創業メンバーの2人は、鈴木さんの元を離れていきました。

 

構想から現場へ。渋谷スクランブル交差点から始まるフォトビーズ!。

 

1人になっての再スタートは、順風満帆とはいきませんでした。

 

最終発表会から1カ月間ほど何もできない日々が続きます。年が明けて2017年1月、起業支援プログラムの同期と一緒に先輩に会いに行く旅の過程で「やっぱりやろう」と決意を固めました。

 

東京に戻った鈴木さんは、渋谷のスクランブル交差点でプラカードを掲げ、外国人観光客にリモート撮影をしないかと呼びかけ始めました。フォトビーズ!のサービス開発に向けた構想が現場で動き出した瞬間でした。

 

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渋谷スクランブル交差点でのサービス開発時の様子

 

そして、TSGの最終発表会に参加した企業から鈴木さんに相談が寄せられます。

 

渋谷スクランブル交差点が見下ろせるビルの屋上をリプレイスしたいから相談に乗ってほしい

 

これがフォトビーズ!第1号のフォトスポット開設につながります。

 

2018年4月、株式会社SHIBUYA109エンタテイメントから、渋谷「109メンズ館」が「MAGNET by SHIBUYA109」へリニューアルオープンする第1弾キャンペーンの一つとして、「屋上の絶景フォトスポット」として発表されました。

 

フォトビーズ!の誕生です。

 

鈴木さんにとって、企業の相談を受けてからサービス開始までの1年間は、IoTシステムや、カメラの画角や光など、リサーチと開発のために要する時間でしたが、同時に不動産開発を手掛ける企業との協業から、フォトスポット開設による不動産価値の向上という不動産業界の視点を得ることにも繋がりました。

 

サービス開始と同時に「VIEW資産」という新しい概念も誕生したのです。

 

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渋谷109フォトスポット「CROSSING PHOTO」

 

現在、フォトスポットは国内6カ所に設置されていますが、「視察からサービス開始までの一連の仕事は、実験を繰り返して一つの作品を作り上げるようなものだ」と鈴木さんは話します。

 

フォトスポット開設を準備している岩手の酒蔵では、大きな酒樽をかき混ぜる酒造り体験の写真をベストな画角で撮影し、印刷データを酒瓶のラベルにしてオリジナル日本酒をつくれるサービスを提供予定です。

 

しかし、鈴木さんの提案は、それだけでなく、酒造り体験ができないオフシーズンの春や夏に、酒蔵でどんな面白い写真が撮れるかを考え、複数の酒樽にライトを入れることで幻想的な風景を演出しました。

 

フォトビーズ!のサービス開発は、IoT技術だけでなく、空間デザインの仕事でもあります。鈴木さんが一番ワクワクするのは、「設置するその場その場で、オーナーの気持ちを聞き、工夫を凝らして撮った写真をオーナーさんに見せる時」だそうです。

 

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システム開発中の岩手県二戸市・南部美人の酒蔵にて

 

写真による瞬間的なイメージで行動をデザインする

 

フォトビーズ!の今後の展開は、フォトスポットめぐりをしてもらえるように、写真という一眼で伝わるわかりやすいメディアを使って、「行ってみたい」を誘発する試みを続けていくことだそうです。

 

今までは都市の中に絶景スポットをつくっていましたが、今後は自然の中の絶景にも挑戦したい。また、車やバイクが走っている写真が撮れるようなシステムも開発中だそうです。絶景の中を自分の愛車が走っている写真は車やバイク愛好家の中で評判になりそうですね。

 

TOKYO STARTUP GATEWAY事務局編集後記

 

フォトビーズ!のフォトスポットは、ひとつひとつ作品を作るような感覚とおっしゃっていたのが印象的でした。魅せ方も含めて企画する鈴木さんはまさにクリエイターそのもの。観光需要も戻りつつあるので、思い出に残る写真を日本や世界中でフォトビーズ!を使って撮って欲しいです。

 

「それビジ ― それ、ビジネスにしよう。」(2017年)で作成された事業紹介動画

 


 

 

【この特集の他の記事はこちら】

 

●特集「やりたいように、やってみた~世界を変える起業家たちの挑戦~」

https://drive.media/special/33745

 

 


 

 

●東京都主催・400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」

https://tokyo-startup.jp/

 

●プレスリリース : 東京都主催・400文字から世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」募集終了!今期の応募総数は1114件。9年間の累計応募数は1万件を超える!

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000012113.html

 

この記事を書いたユーザー
木村 静

木村 静

NPO法人ETIC.広報/コーディネーター 北海道出身。札幌市内のまちづくりNPOのスタッフとして、コミュニティFM放送局パーソナリティ、ミニコミ紙の取材・執筆等を経験。2008年に上京しフリーランスに。アナウンス・司会、ライター、カメラマン、映像制作、講師、リサーチ、イベントのディレクション業などを事業領域として活動。 2015年〜NPO法人ETIC.に参画。東日本大震災復興支援事業(右腕プログラム)、地方創生推進事業(ローカルベンチャー協議会)の事務局(広報、人材コーディネート等)を経て、現在は広報業務を担当。 趣味は、映画鑑賞、美術鑑賞、ガーデニング、読書。

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