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“インパクト”を仕事にする。日本初の社会的インパクト専門コンサルティング会社、ケイスリーの挑戦!

2017.08.09 

設立から1年あまりの新しいコンサルティングファームであるケイスリー株式会社が特化しているのは、「社会的インパクト評価」や「社会的インパクト投資」の分野。言葉だけを聞くとなんだか難しそうな印象も受けますが、これまで分けて考えられがちだったビジネス領域と社会課題解決領域、あるいは行政と民間などの領域をつなげて考えることで、活動の価値を高め、増幅していくことができる考え方なのです。

 

これまで、企業は自社の提供するサービスや商品を提供し経済的利益を追求する、一方NPOなど非営利団体は寄付や助成金による社会課題解決など、ビジネスになりにくい領域の事業展開をする、という役割分担が一般的でした。もちろん企業にも社会課題解決に寄与するCSRの活動は従来からありますが、本流の事業とは少し離れた形で行われることが多いのも現状。

 

 

しかし最近では、自社の利益だけではなく社会課題の解決も同時に目指す企業、あるいは、社会課題の解決に向けた取り組みにビジネスの視点や手法を取り入れる非営利団体が増えています。そして投資家など資金を提供する側、あるいは税金を有効に活用しなければならない行政の立場からも「資金投入に対してより効果の高い持続的な活動に資金を活用していきたい!」という意図が生まれるのは当然の流れでしょう。

 

では、そんな新しい意識を持った資金提供側と需要側のより良い出会いはどのようにしたら実現できるのでしょうか?その一つの答えが、ケイスリー株式会社が取り組む社会的インパクト評価や社会的インパクト投資と呼ばれる方法です。「この考え方が浸透すれば、社会を変えるスピードをより速めることができる」。そう考え、社会的インパクト評価や社会的インパクト投資に特化したコンサルタント会社、ケイスリー株式会社を立ち上げたのが幸地正樹さんです。そんな幸地さんに、その仕事の魅力や内容について、お話を伺いました。

 

目指すべき社会の変化とは何か? 具体的な目標に向けて「みんなで」取り組むための考え方

 

---そもそも、社会的インパクト評価・社会的インパクト投資とはどのようなものでしょうか?

 

幸地正樹さん(以下敬称略):「社会的インパクト評価とは、"事業や活動の結果生じた社会的・環境的な変化等を定量的・定性的に把握して事業や活動に価値判断を加えること"と一般的には定義されています。つまり、これまでの経済的な利益のみを評価基準とし、それに基づいて投資家が投資する従来の形ではなく、"社会をどれだけ変えたか"、"環境にどれだけインパクトあることができたか"という視点を加えて評価を行うところに特徴があります。

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さらに最近では、事業や活動での社会的インパクト自体をいかに最大化していくか、そのための経営や事業改善につなげていく概念として「インパクトサイクル」が重要という流れになっています。 共通して言えることは、ある事業や活動の価値及び成果を、目に見える形で関係者や社会に対して共有していくために、具体的な目標を設定し、改めて自分たちの事業内容に向き合うことが必要になるということです。そしてその目標達成のために、組織内の仕組み、お金の流れや組織成長のための時間軸への意識など、多様な視点と出会うことになります。」

 

まず大切なことは、組織自体のこと、自分たちのことを見つめ直すことにあると幸地さんは言います。何をゴールとして事業を展開していくのか、ゴールにたどり着いたことを測る指標は何に設定するのか。関係者の間にたち、それらについて考えることこそが組織自体の学びや改善に繋がることが多いそうです。

 

幸地:「例えば、「就職セミナー」などのイベントの効果を評価する指標として、ただ単に参加人数を測るだけでは、何が本質的なのかわからなくなるんです。実際にセミナー後の参加者の就職に対する意欲向上、ノウハウ習得に繋がったのか、就職はできたのか、就職は持続しているか、など「就職セミナー」で目指したいゴールが達成されたかを測る視点が実はたくさんある。

 

社会的インパクト評価とは、単に評価結果だけを重要視するのではなく、目指したいゴールにたどり着くプロセス自体を考えること、事業に関わる関係者が課題を自分ごととして捉えていく事が大切です。共通のゴール意識を持ちながらインパクトを最大化していくのです。」

 

どれだけお金が増えたかではなく、ある事業や活動がもたらしている「社会へのインパクト」を可視化し判断を加えることが社会的インパクト評価であり、その評価に基づいた投資や、行政予算を効果的に使うためにある考え方が、社会的インパクト投資やソーシャル・インパクト・ボンド(Social Impact Bond 以下、「SIB」)。これらを積極的に取り入れることで、より成果の見込める事業活動が持続的に発展するための支援が広がるのではないか?自分たちのお金をより有効に活用できるのではないか?・・その可能性を感じている行政、非営利団体、企業から、ケイスリーへの問い合わせや相談が非常に増えているそうです。

 

行政・民間・資金提供者・・「すべてがパートナー」!

 

普段の業務では、データの収集・分析などの仕事ももちろん大切ですが、中央省庁や地方自治体、民間事業者、資金提供者、ときに地域住民まで、マルチセクターの間に立ち、全てのプレイヤーにとって向かうべき指針となる合意形成をしていくことが非常に大切な仕事になります。それはファシリテーターでもあり、コーディネーターでもある。「コンサルタント」と一言で言っても、新しい手段を以て世の中を変えていくために一人何役も担わなければならない場面も多くあります。

 

---最近行ったプロジェクトの具体的な内容を伺えますか?

 

幸地:「例えば、経済産業省のSIB導入モデル事業を通して、八王子市での大腸がん検診受診率向上の事業がスタートしています。現在、八王子市の大腸がん検診の受診率は、国の目標である40パーセントに対しておよそ27パーセントです。そこで、八王子市が大腸がん検診受診率向上に実績のある事業者に3年間事業を委託し、委託された事業者は、成果連動型で事業に取組みます。この間、事業に賛同した資金提供者から資金を調達して事業を進め、最終的に八王子市が資金提供者に対して報酬を支払うという仕組みです。

 

実際に事業を進めていく上で、自治体と事業者などの関係者で綿密な打ち合わせを行います。大腸がんは、飲酒や喫煙の習慣のある方など様々なリスク要因がありますが、今回はAIを活用して住民個人のそれまでのがん検診と特定健診の受診状況及びレセプトデータ等をまとめて分析し、個人のリスク要因に応じたオーダーメイドの受診勧奨ハガキを送付します。住民の皆さんが改めて自分のリスク要因を認識するきっかけとなり、検診に足を運ぶ動機が上がることを狙いとしています。」

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SIBの手法では、行政サービスをNPOなど民間の事業者に委託し、一定の成果を達成した場合に行政から報酬が支払われます。行政にとってはリスクを抑えながらより高い成果が見込める、つまりより効果的な税金の使い方をしながら新しい事業に取り組むことができるというメリットがあります。

 

「新しいことを切り開く」の面白さ! 好奇心を持ってマルチセクターに向き合う働き方

 

---日々たくさんの層の方と密なやり取りが必要になって来るお仕事ですが、どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?

 

幸地:「案件によっては様々な要因によってうまく進まない部分もあります。そのような状況を面白がれる、好奇心を持って未知の部分に立ち向かえる、そういう人がこの仕事に向いているのかなと思います。自分がそういうタイプなんですが(笑)。 必ずしも、現時点で社会的インパクト評価ということに詳しかったりする必要はありません。様々な手段を用いた社会課題の解決に興味があり、試行錯誤しながら解決に向けて努力できる人がこの仕事に向いているのかな、と思います。」

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---幸地さん自身は、SIBや社会的インパクト評価とどのようにして出会ったのでしょうか?

 

幸地:「もともとはリクルートグループに勤めていました。毎日たくさんの企業の社長さんや役員の方々に会ってとても楽しく刺激的な仕事だったのですが、採用という手段だけではなくもっとトータルで会社の課題に向き合い、幅広いソリューションを提案していくことはできないかと考えて、次にコンサルティング会社のパブリックサービス部門に入りました。今度は、税金の使い方をより効果的、効率的に変えていく仕事だったんですね。様々な課題に直面しながら、新しいブレイクスルーを考え続けている中、2013年頃にSIBを扱ったTEDの映像を観たんです。これを観て、「行政も変わるきっかけになるし、お金を出す人も事業者も社会全体の仕組みが変わるツールになり得る!」ととても衝撃を受けました。」

 

幸地:「ただ、調べても日本だとほとんどまだ誰もやっていなくて。そこから社内で勉強会をしたりプロボノとして日本財団に関わったり、個人的に色々と活動を始めました。企業に在籍しながら色々な調査や案件形成に携わっていく中で、その面白さを知り、やはり本業にして取り組みたい想いからケイスリーを立ち上げました。2016年3月のことです。」

 

社会の新しいエコシステムをつくる仕事

 

---お金を有効に使う必要がより高まっている行政や、そうしたお金を使ってより大きなインパクトを出していこうとしているソーシャルセクターでも、この分野は注目されていますし、今、日本でも最先端の現場と言っていいと思いますが、この仕事の面白さをあえて一言で表すとどのようなものになりますか?

 

幸地:「社会の課題に対して提案できるソリューションが、働き方次第で無限大にひらかれているところですかね。SIBや社会的インパクト評価はほとんど未開拓の分野なので、先進事例を自分で創ることができる。最新のテクノロジー、データサイエンス、ファイナンス等の手法を活用し、どんどん新しいことにもチャレンジでき、日本から世界に新しい課題解決手法が広がっていく可能性もある。そこにとても面白さを感じています。」

 

---これから力を入れていきたいことはどのようなことでしょうか?

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幸地:「5年後に、SIBや社会的インパクト評価を世の中にとって当たり前のものにしていくという目標をもっています。そのための普及啓発の取り組みも強化していきたいですね。あらゆる分野での活用可能性があると考えていますし、それぞれの分野においてこの考え方を取り入れた新しいエコシステムをつくっていけると思っています。」

 

最後に、「働きたい」という意欲を持って来た方に必ず聞いているという質問を話してくださいました。

 

幸地:「”何をしているときに時間を忘れて夢中になりますか?” という質問をさせていただいています。なんでもいいのですが、熱中しているものを持っているかどうかはとても大事だと思います。既存メンバーの3人も、大学の研究員やNPOを兼務していたり、プロボノや副業も盛んにやっています。自由な働き方ができる職場なので、自分で夢中になれるポイントを見つけて一緒に働いていければと思います。」

 

下記求人情報ページにも記載があるように、働き方はとても自由。打ち合わせ以外の出勤は個人の裁量に任されています。仕事自体が新しい分野・手段であるだけではなく、新しい働き方としても注目の今回の求人。社会課題の世界において新しいスタンダードをつくっていきたい、新しい働き方を模索していきたい、現時点でもいろいろと活動をしているけれど興味がある・・など、様々な関心のチャンネルが想像されます。ご興味を持たれた方はぜひ一度ご連絡を!

 

ケイスリー株式会社の求人情報

 

経済的利益を超えて、社会へのインパクトを意図した新しい資金の流れを創る仲間を募集!

ブロックチェーン等を活用して世の中の社会課題を解決する若手エンジニアを募集

 

「インパクト投資」に関する記事

>>  インパクト投資って何?―世の中を良くするための投資技術 

>> 非営利事業における「事業の成果」とは何なのか? どう測定されるのか―内閣府の「社会的インパクト評価に関する調査研究」報告書より

>> 話題の「ソーシャルインパクトボンド」、各国の取り組み状況とみえてきた課題 ―ブルッキングス研究所レポートから(1)

代表取締役/幸地正樹

大学卒業後、リクルートグループを経て、2007年にPwCコンサルティング合同会社へ入社。主として中央省庁や地方自治体など官公庁に対する最適化戦略策定支援、調達の企画・事業者評価支援、プロジェクト管理支援等の業務に従事。2014年よりソーシャルインパクトボンドの導入推進に携わり、その後、公益財団法人日本財団が取組むソーシャルインパクトボンド推進事業に参画し、中央省庁や地方自治体の導入可能性調査や案件組成支援の他、WEBサイト運営やセミナー講師など啓蒙活動も行う。2016年にソーシャルインパクトボンドを含む社会的インパクト投資及び社会的インパクト評価に特化したコンサルティングサービスを提供するケイスリー株式会社を設立。 ソーシャルインパクトボンドジャパン運営責任者、社会的インパクト評価イニシアチブ共同事務局、日本評価学会認定評価士、社会的インパクトセンターエグゼクティブフェロー。 沖縄県那覇市出身。

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