人口減少、少子高齢化、経済成長の停滞、自然災害、地球温暖化……社会の課題は複雑で急速に変化しています。例えば、内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年には国民の約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上となります。
このような社会課題の解決に向けて何らかの取り組みをはじめる企業も増えています。しかし、1社が単独で取り組んで解決できないことも多く、どんな相手と、どのように出会い、共創(※1)できるのかは企業にとって重要なテーマだと言えます。多様なセクターの協働による「コレクティブ・インパクト」もNGOやNPOだけでなく企業の間でも語られるようになりました。
しかし、異業種で交流し知見を広げる機会が持てず、チャレンジしたいことがあっても一歩踏みだすきっかけが見いだせないという企業も多いでしょう。
今回は、そのような悩みをもつ企業、また個人が、業種や肩書の枠組みを超えて出会い、共創のきっかけとなるイベント「Beoyndカンファレンス」を紹介します。
チャレンジを応援し、新たな共創を生み出す「Beyondカンファレンス」
and Beyondカンパニー(事務局 NPO法人ETIC.[エティック])(※2)が主催する「Beyondカンファレンス」は社会課題に挑む思いのある個人と企業が集まり、学び、交流する一年に一度の共創型イベントです。5月31日(金)、6月1日に羽田イノベーションシティで開催されます。
大企業・ベンチャー企業・行政・NPO等に所属する人、また組織に属さない地域コミュニティの個々人も含め多様な人が集まり、オープンでフラットな環境のなか、それぞれの思いを実現させるためのネットワーキングを行います。
今年で3回目のこのカンファレンスは、批判や否定ではなく、個人や企業のチャレンジを全力で応援する場として設計され、それが結果的に「共創」に繋がる事例を生み出しています。
第1回は鎌倉のお寺で「越境」をテーマに開催
「第1回Beyondカンファレンス」は鎌倉の建長寺で2022年に初開催されました。 サブタイトルは「越境で変わる人・コト・組織 ~ひとりでは、たどり着けない場所へ~」。
カンファレンスを寺社で開催するという斬新なアイデアに加え、人材の成長や組織の在り方が重要な経営課題となる中、共創やイノベーションのヒントを求めて企業や自治体などから150名以上が参加しました。
江戸後期に建設された鎌倉にある建長寺は国の重要文化財にも指定されている
オープニングセッションは、山田 邦雄さん(ロート製薬株式会社 代表取締役会長)、小巻 亜矢さん(株式会社サンリオエンターテイメント 代表取締役社長)、柳澤 大輔さん(面白法人カヤック 代表取締役CEO)のクロストークで始まり、持続可能な事業と社員のウェルビーイングについて熱い議論が展開されました。
オープニングセッション
『企業・組織の“役割”をアップデートしよう!〜持続可能社会と個人のウェルビーイングの実現に向けて〜』
当日は「越境」をキーワードに各テーマで多数のトークセッションが開催され、イベント出席者は自由に会場を行き来しながら交流や学びを深めました。
「森林維持のあり方を大転換!森を守り環境を保持する森あそびラボ」のセッション
参加者からは「応援される人間、また人を巻き込める人間になろうと思えた」「仲間がこんなにいるとは思わなかった」「いろいろと取り組めそうなヒントや、新しい着想点などが得られた」など、出会いや新しい気づきを得られたという声が寄せられました。
建長寺の本堂に座禅を組むため集まる参加者たち
またお寺ならではの企画として、当日は座禅が行われるなどユニークなコンテンツも魅力的でした。
第1回Beyondカンファレンスの関連記事
>社会課題解決のための新規事業、時代の要請に応えるイノベーションには「越境」と「物語」が必要 【 Beyond Conference 2022 開催レポート】
>ルールはたった一つ、応援し合うこと 「評価」から「応援」へと変化するコミュニケーション【 Beyond Conference 2022 開催レポート】
京都の里山にある学校で誰もが舞台に上がれる第2回目のカンファレンスを開催
2023年、「第2回Beyondカンファレンス」は京都里山SDGsラボことすで開催。自然豊かな環境で1泊2日の大人の文化祭のような雰囲気でなごやかに行われました。
サブタイトルは「舞台に上がって、ええじゃないか!」。
第2回Beyondカンファレンスの集合写真。
京都市、リコーなど約20団体で構成する「京都超SDGsコンソーシアム」との共催で開催。
当日はさまざまなバックグラウンドを持つ参加者が述べ約200名参加。セクターを超えた共創による課題解決「コレクティブ・インパクト」をテーマにした基調セッションもあり、組織を超えて活発な議論が展開されました。
生物多様性セッション〜ネイチャーポジティブの担い手が育まれるエコシステムを創るアイデア交換会~
各教室ではさまざまなテーマを掲げたセッションが開催され、若手起業家、研究者、有識者、企業人、プラットフォーマーなど様々な立場における実践者が登壇。
子供たちの未来のキャリア形成やチャレンジ精神を育む~公教育と民間企業の共創を進化させるための作戦会議~
1日目の夜は参加者たちが一緒になりバーベキューを開催し、同じ釜の飯を食いながら交流を深めました。
第2回Beyondカンファレンスの関連記事
>こども宅食応援団の事例から考える「コレクティブ・インパクト」。ソーシャルイノベーションの現場で大事な3つの視点とは?
>ウェルビーイングな社会への鍵とは?地域の実例も紹介【第2回 Beyond カンファレンス 2023開催レポート】
挑戦を応援しあうことで生まれた共創事例
第1回、第2回のBeyondカンファレンスを通し、組織や立場の壁を越えて挑戦を応援しあうことでいくつもの「共創」が生まれ、応援の輪も拡がっています。
Satoyamaツーリズム協議会のメンバー。
トークセッション「森林維持のあり方を大転換!森を守り環境を保持する森あそびラボ」が契機となり、森遊びを愛する人が楽しんで山林を使う持続可能なビジネスモデル「Satoyamaツーリズム協議会」が組成されました。
>森林の維持は地域コミュニティの維持?ヤマハ発動機の白石章二さんと考える、地域の持続性を高めるために必要なイノベーション
第2回Beyondカンファレンスの最後に「九州版Beyondカンファレンスをつくる!」と宣言する溝上さん。
また、地域に本気で向き合う人たちの情熱に触れた佐賀の創業114年の調剤薬局、株式会社ミズの代表取締役社長・溝上 泰興さんは、社内と地域にウェルビーイングを生み出す「ミズアカデミープロジェクト」の活動を本格化しています。
>社内と地域にウェルビーイングを。佐賀で多角経営を展開する創業114年の調剤薬局が取り組むミズ・アカデミー構想とは?
始動し始めた「PLANET KEEPERS -地球環境再生の担い手が集うエコシステム形成プロジェクト」
「生物多様性セッション〜ネイチャーポジティブの担い手が育まれるエコシステムを創るアイデア交換会〜」のセッションを行ったメンバーは、生物多様性をテーマに活動する起業家の育成プロジェクトを立ち上げました。
>生物多様性をどう回復させるか。実践者たちとの新しい挑戦―ETIC.30周年ギャザリングレポート(1)
JAL(日本航空株式会社)の社内ベンチャーチームW-PITと株式会社雨風太陽が「都市と地方をつなぎ、新たな人流を生み出し、日本に生気を吹き込む」をミッションに第1回Beyondカンファレンスで旗揚げした「Japan Vitalization Platform」は、第2回でもネットワークを広げ、現在は能登半島地震の支援活動に取り組みながら、関係人口の桁を変えていく取り組みをさらに広げています。
>都市と地方がつながれば、日本はもっとおもしろくなる。JAL社内ベンチャーが仕掛ける関係人口創出。能登半島地震支援で意義が深まる企業の枠を超えた挑戦
そして今年のカンファレンスでも、新しい共創が生み出されようとしています。
今年のBeyondカンファレンスは「握手から はじめよう」
第3回目の今年のテーマは「握手から、はじめよう」。
世界につながる玄関口・羽田に生まれた新しい街「羽田イノベーションシティ」で例年よりも規模を拡大して開催予定です。
オープニングセッションは、早稲田大学教授の入山章栄さん、英治出版代表取締役の原田英治さんを迎え、“共創大転換!〜イノベーションを生む「ゆるめる」「おもしろがる」”をテーマに行われます。
イノベーションを起こす企業間共創など、経営における「共創」の意味を深堀りするセッションから、コレクティブに課題解決を進める戦略会議では能登復興・防災災害支援、ネイチャーポジティブ、関係人口など複数のテーマ領域にわたる分科会が設けられる予定です。
同時に子ども向けのプログラム・ワークショップや出店もあり、家族での参加が楽しめるのも今年の魅力のひとつ。
新しいチャレンジに一歩踏み出した方も、これから踏み出したい方も「応援」にあふれるこの場をぜひ体験してみませんか。
第3回Beyondカンファレンス2024は、5月31日(金)、6月1日(土)に開催予定。ただいま参加を受付中です。関心のある方はこちらからお申込ください。
注釈
※1…共創とは、企業・NPO・行政・個人など異なるバックグラウンドや視点を持ち連携しあうことで、創造的な解決策を生み出すプロセスを指します。
※2…and Beyondカンパニーが主催する全力応援ブレスト会議。組織・立場・世代を越えて誰もが自由に参加できる場として毎月開催されています。
あわせて読みたいオススメの記事
【調査報告:年代別・性別の認知度・認知経路】ソーシャルビジネス・社会起業家に関する若者認知度調査2013