ローカルベンチャー協議会(事務局NPO法人ETIC.〈エティック〉)が主催した「ローカルリーダーズミーティング2024」は、今年で第3回目を迎えました。今回の舞台は、宮崎県日南市(にちなんし)にある油津(あぶらつ)商店街。
「つながるって、前進だ!」を合言葉に掲げ、地域のプレイヤーや行政職員、起業家など全国から約140名が集結し、ローカルと結びつきの深いテーマを専門とする研究者との活発なコミュニケーションが行われました。商店街周辺の店舗やスナック、企業の会議室を会場に、研究者と参加者がざっくばらんに語り合ったセッションの様子をお届けします。
この記事では、熊本県阿蘇郡小国町(おぐにまち)で地域住民が組成した合同会社「わいた会」とともに地熱発電の運営を行い、地熱の二次利用や売電収益を活用した地域づくりを行っている「ふるさと熱電株式会社」の代表、赤石和幸さんによるセッションを要約・編集してレポートします。
地熱は、地下にある熱ではなく「地元の熱」と捉えて活動する赤石さん。資源開発において、地域住民との“共創”を大前提とする考え方や、地熱が持つポテンシャル、今後の展望について共有していただきました。
赤石 和幸(あかいし かずゆき)さん
ふるさと熱電株式会社 代表取締役
1976年生まれ。東京大学大学院修了。日本総研・創発戦略センターで環境分野でのプロジェクトファイナンス、PFI・PPP事業を経験し、中国での天津エコシティーの立ち上げに携わる。その後、中央電力株式会社(現REZIL)・取締役を経て、わいた発電所を立ち上げ、2015年から同社代表取締役。
資源開発の要は、地域との共創
私は大学卒業後、コンサルティング会社に勤めていました。当時は、さまざまな事業計画を立てては、人や地域にああしろこうしろと言ってきました。しかし、そのほとんどが実現することはなく、まさに、“絵に描いた餅”をつくるのが大得意でした。何かを成し遂げるには、私自身が動かないといけないと痛感し、原点に戻ることになります。
そこから縁あって、ふるさと熱電という会社を東京で立ち上げました。立ち上げ当初から地域に寄り添い、地域資源を活用することを掲げていたので、熊本県の小国町で発電事業をやると決まったときに、本社を小国町に移しました。
私は熊本県出身ではなく、今は北海道札幌市の一部になっている、芦別(あしべつ)という炭鉱の村の生まれです。「なんで熊本で発電事業をやってるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、“地元にある資源を使えば、地域が元気になる”という根本的な部分が、厚別と共通しているからです。
「芦別は昔、ストリップ劇場があって映画館もあって、それは楽しかった」。これは、先日101歳で亡くなった祖母の口癖です。本当にそんな時代があったのかと疑問に思うほど、今の芦別は栄えていた頃の面影はありません。過疎地で何もないし、人もいないという状態です。
ですがみなさんご存知の通り、炭鉱は地域を豊かにしました。産業自体は衰退しましたが、地域資源をお金に換え、地域にうるおいをもたらしていたことは確かです。
我々がふるさと熱電という社名に込めた思いは「ふるさとの熱を電気に、地元の資源をカネに、そして地域を元気にさせる」というものです。従来の地熱開発は、企業が土地を買い占めるため、企業主導の開発が一般的であったと考えています。
私たちがやっているのは、地域が地熱開発を自分ごととして捉えて、専門的な部分、例えば外部からの資金調達や建設技術などの面を私たちがサポートする“共創”という形です。
本来、地熱は「地下の熱」という意味ですが、私たちは「地元の熱」「地域の熱」と考えています。地域が地域のために使う熱であり、地元が地元を活性化するための財源、その手段となるものだからです。
地熱が持つポテンシャルに、多くの世界的企業が注目
そもそもの話になりますが、地熱は地上から500〜1000mぐらいのところを掘って、200度や300度に温まった地下水から蒸気を取り出し、タービンを回して発電するというシンプルな仕組みになっています。
再生可能エネルギーでよく耳にする太陽光発電は、太陽が照っているときにしか発電しません。風力も同じで、風が吹いているときだけ。一方で地熱は24時間365日、電気をつくることができます。地熱にどの程度のポテンシャルがあるかというと、日本にある原発がだいたい3300万kWと言われているのですが、地熱は原発と同等か、それを越すぐらいのポテンシャルがあります。
そして今、世界的な企業がお金を出して地熱の熱源をこぞって取りに来ている、との話も耳にします。なぜかというと、近年身近になったAIは使うたびに電気が必要で、Google検索で使っている電気消費量を1とすると、ChatGPTを使うと100ぐらい電気を使うんです。なので、皆さんがAIを使えば使うほど、企業は電気が足りなくなってしまいます。彼らは、太陽光や風力といった気まぐれな電源ではなく、24時間365日発電し続けてくれるものが必要なんです。あとは、クリーンエネルギーを使いたいという世界観も関係しています。
資源開発を後押しするキーワードは「地域への寄り添い」
「再生エネルギーをやりたい!電源づくりをやりたい!」と言っている企業を見ていて私が思うことは、地域への寄り添いができていないということです。私は、地熱に限らず電源づくりは「地域への寄り添い」がキーワードになると思っています。
地域×エネルギーはまだまだ可能性があって、地域に寄り添い、真に入り込むことができればもっと広がっていくと感じています。既得権益を持っている方々とのやり取りは、簡単にはいかない複雑な側面があるのも事実ですが、とことん付き合って、その人たちが自分たち主導で、地域の資源を使い、地域が豊かになるように舵をきれば、格段に広がりをみせるのではないでしょうか。
現在私たちは、2026年の稼働を目標に2号基を建設中です。そこで得られるお金は、観光や交通の脆弱性、教育などの問題解決に投入したいと思っています。「わいたモデル」によって、「子や孫が帰って来るまちづくり」をわいた地区、さらには小国町で行うことが目標です。
わいた第1発電所開発時の地域が再生するまでの物語が、下記URLからご覧いただけます。記事と合わせて、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=YcvYCXv2sag
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