高校生のときから医療分野での起業を志し、戦略的にキャリアを歩んでこられたケアプロ株式会社代表取締役・川添高志(かわぞえ・たかし)さん。
日本とアメリカの医療サービスの違いや、「健康管理を自己責任で行える社会にしていきたい」という予防医療にかける想い、そして現在の事業を日本だけでなく、予防医療が必要なすべての国に展開していきたいという壮大なビジョンをうかがいました。
ケアプロ株式会社代表取締役・川添高志さん
―いつごろから起業するということを考え始めたのでしょうか?
経営自体は高校時代から考え始めたんですよ。高校のあだ名が社長だったんです(笑)。父が大企業に勤めていて尊敬していたこともあり、将来自分は良い大学に行って、大企業に入って出世するというイメージを持っていたのですが、高校1年生のときに父がリストラにあってしまって。それを目の前にして、こんなにあっけなく成功イメージがくずれるんだと思うと同時に、じゃあ自分はどうしようかなといろいろ考えたんです。そこから、「どういう社会変化が起きても、生きていける、仕事をつくっていける、ビジネスをつくっていける人間になりたい。」と思い、それを実現できる選択肢が起業だったんですよね。「会社をつくる、ビジネスをつくっていける人」だったんです。 そういった流れで高校1年のときに起業を志したのですが、どういう分野で、どういうサービスを提供したいというものはなく、普通に勉強をしていただけでした。その間に祖父の入院の経験もあって、絶対に意義があって面白いだろうなと思って高校3年生のときに医療分野での起業を志すようになりました。
―慶応大学の看護医療学部に進学されて、どのような大学生活を送られていたのでしょうか?
医療経営の道に進むということは決めていて、どういった医療の問題があるのか、その問題をどう経営的に解決するのか、この2つを深めようと、色々アクションを起こしていました。 現場でどんなことが起きているかを知るために、看護学生として、病院、障害者施設、老人ホーム、中学校の養護教員、企業の健康保険組合などいろいろな現場を年200日以上見に行きました。それと夏休みに、看護師さんの補助として慶応の付属病院でアルバイトをさせてもらって現場に行っていました。
あとは今回のご縁にもつながっていますが、ETIC.を通じて大学1年が終わった春休みに、在宅医療を展開している有限会社ナースケアでインターンをさせてもらいました。
―インターン後に参加されたアメリカの研修中に、現在のケアプロ事業のモデルと出会われたのですよね。
そうです。たまたま僕が住んでいた近くにウォルマートというスーパーマーケットがあって、そこで買い物をしていたんです。そしたら、そのスーパーの傍らでワクチンの接種をしていたんですよね。そこのメニューを見てみたら、健康診断に、糖尿病の薬を出すメニューまであって。つまり、そんなことが買い物中にできちゃうというわけなんです。
アメリカでは、保険証を持っていない人が増えていて、医療費も高い。だから買い物の途中に、そういったクリニックをよく使うみたいなんです。それを偶然知って「このモデルはすごいな、いつからこのモデルができたんだろう」と思いましたね。
そして、「何で日本にはこんな便利なものはないんだろう、悔しいな」と。日本だと検査だけでも2時間くらい待つこともある。もしくは、1週間後来てくださいと言われてしまう。
その状況に対して絶望していたのに、アメリカでまったく違う光景を見たんです。それは衝撃的で、僕の人生の中でもかなり大きなカルチャーショックでしたね。その経験から、こういった事業を日本で始めようと思ったんです。
―「生活習慣病の予防」への想いの原点は何だったのでしょうか?
大学2年の病院実習での経験ですね。フリーターの35歳の方が入院されていたのですが、その次の日にその方は足を切断させられたんです。糖尿病では足など腐っていってしまう箇所があるのですが、その方は目も見えなくなっていき、腎臓も透析になってしまいました。その後、その方は仕事もなくして生活保護を受けることになってしまって。フリーターで健康診断を受けたことがなかったということもうかがって、彼の状況にめちゃくちゃショックを受けました。
また、その状況を別の視点で捉えると、その方には医療費が年間600万円かかる計算になるんです。生活保護を受けていたので、費用はすべて税金なんですね。こんな言い方したら申し訳ないんですけど、これは社会的コストだなと、こんな状況でいいのかなとも思いました。その方は自覚症状はなく、健康診断なんて受けなくても問題ないと考えていらっしゃったのかもしれないですが、それは社会的な問題だなと。
その後、日本の健康診断の実情を調べてみて、健康診断を受けてない人は日本人の半数はいるということがわかりました。僕が見た35歳の糖尿病のような方が、今後いっぱい現れるかもしれない。これをどうにかできないのかなと思ったことがきっかけですね。生活習慣病の予防の大切さを啓蒙できれば、僕が大学2年のときに出会った、あの35歳の方のような出来事は生まれなかっただろうと。その想いを持ってアメリカの研修に参加していたので、スーパー内のクリニックに出会ったときにこれを日本でやろうと強く思ったんです。
そして現在、「革新的なヘルスケアサービスをプロデュースし、健康的な社会づくりに貢献する。」ことを経営理念に掲げ、ワンコイン(1項目500円)で生活習慣病に関わる血糖値、中性脂肪、総コレステロール、骨密度・血圧・身長・体重・BMIなどの検査を自己採血という形で簡易でできるサービスを展開しています。
―経営者として面白みを感じているのはどのようなことですか?
起業しなかったらこういった経験はできなかっただろうと思うことはたくさんありますよね。
まずは、いろんな人との出会いが楽しいですね。インターン生がくるとも思ってなかったですし、インターン生が入社すると思ってなかったです。それこそ、自分の大学の後輩が看護師として入社したりとか。
あとはお客さんとの出会い。20年以上検診を受けてない方で、ケアプロに検診にいらして、検査してみるとあまりにも数値が高かく、すぐに病院に行っていただきました。なんとか命は助かり、「ケアプロさんに命を救われました」と言ってくださる方もいます。また、31歳で派遣切りにあった方がお店に来てくれたこともありました。その方はおしっこが止まらず、インターネットで調べたところ糖尿病の疑いがあるとわかったんです。でも、保険証を持っていないから病院には行けない。だからケアプロに来たんだという方でした。もともと僕が病院で見てきた、「検診を受けないで後悔する人たち」を減らせている実感は、そういった出来事もあって徐々につかみ始めています。
最後に、僕の中では起業はビジネスというより芸術活動的な要素もあります。絵を描くときに、最終的な出来上がりは自分でもわかっていないじゃないですか。それと同じで、ケアプロの事業も最初から今のモデルが見えていたわけではない。ワンコイン(500円)で提供できると最初は思って始めたけれども、収益は成り立っていなかった。パチンコ屋さんやイベント会場に出向いて、パチンコ屋さんだったり、イベント主催者から費用をいただく。そうすれば利益が出るという事業モデルも、事業を進めながら考えましたし。
チャリティ検診もそうです。そういった事業モデルは、走りながら創っていけるんだなと感じています。自分がギブアップさえしなければ絶対大丈夫だという変な自信が出てきましたね。そういうのは面白いですよね。
ケアプロが提供するセルフ健康チェック
―長期的な視点で仕掛けていきたいことやビジョンなどはありますか?
ケアプロという名前の由来は「革新的なヘルスケアサービスをプロデュースする」というものなので、この世の中にある医療界の問題をビジネススキルと医療の専門スキルを使って解決していきたいと思っています。
例えば、メンタルヘルスのプロ、介護のプロを雇って、僕がビジネスの部分をプロデュースする。医療問題を解決するプロ集団のようになっていきたいです。
あとは、ケアプロモデルの海外展開ですね。予防医療は世界中に必要なことなので、マーケットは「世界中」だと思っています。こんなに保険制度が充実している日本でさえ、日本人の半数が検診を受けられない状況です。最近では成人の6人に1人は糖尿病ですし、アメリカ含め他国でも増加傾向なんですよ。東南アジアなど、低栄養の国でも糖尿病はありますし。炭水化物に食生活が偏っていると、糖尿病になりやすいんです。寿命が短い国では、血管がぼろぼろになって死んでいく方が多いのですが、その原因は糖尿病や高血圧なんです。新興国でも同じで、体重管理をするために街でランニングする人が増え、健康ニーズが芽生えていると聞いています。そういった国で検診をやりたいと思ってもいますね。 日本だと医療分野は法律の壁などで参入障壁が高いのですが、もしかしたら海外でやった方がいろいろな試みが早くできるのではと思っています。アメリカに研修に行ったとき、医療分野で誇れる企業は日本にないと言われたことがありましたけど、将来は海外にケアプロを展開したいですよね。
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