今、霞が関からも社会起業家への注目が集まっています。 国家公務員の人事管理を担う人事院では、官僚への初年度研修の一環として、ソーシャルビジネスの最先端で活躍する企業・団体を訪問し、意見交換を行うプログラムを、実施しています。ETIC.では昨年度よりこのプログラムを企画・コーディネートしており、今年も延べ116名の新人官僚が参加しました。
今回は、自閉症児への早期療育サービスを行う特定非営利活動法人ADDS(Advanced Developmental Disorders Support)への訪問の様子を、レポートします!
日本には、推定36万人の自閉症患者がいる
自閉症とは、先天的な脳の機能障害で、言葉の使い方や感情表現、認知機能などをうまく身につけられない状態のこと。日本自閉症協会によれば、日本には推定36万人から120万人の患者がいるとされています。
ADDSは、早期集中療育を通して、日本中の自閉症児が可能性を最大限に広げられ、豊かな人生を歩める社会を実現すべく活動しています。
「自閉症という言葉を聞いたことのある人は、どれくらいいますか?」共同代表の竹内弓乃さんが新人官僚のみなさんに問いかけると、ADDSの教室の床に座る参加者のほとんどの手があがりました。
「すごいですね。私が大学生のときは、自閉症なんて聞いたことがなかった。たまたま見つけた子どもの家庭教師のアルバイトで、初日にある親御さんから”うちの子は自閉症という障害があり、早期に特別なケアが必要だ”と教えられたんです。それからその親御さんに、アメリカで提供されている最先端の自閉症の療育法についてとか、いろいろなことを教えてもらいました。それがすべてのはじまりです。」
療養環境がないために、可能性を失う自閉症の子供たち
そのアルバイトで、竹内さんは親御さんからこんなお手紙をもらったそうです。
私がアメリカで体験して学んだことを、子どもが幼稚園に入るような年齢まで知らない親御さんが数多くいます。そのために、多くのお子さんの可能性が失われていることが一番つらかったです
「手紙を読んで、きちんとした療育環境がないだけで可能性を失う子供たちがいるなんておかしい、と思いました。近年の研究によると、自閉症は早期集中療育により、約50%の子どもが知的に定型発達域に到達するといわれています。誰もやる人がいないなら私達がやる。
そう意気込んではじめたものの、保育や特別教育の専門分野を取り扱うにはさまざまなハードルがありました。専門的な治療ができるように、創業メンバー数名は大学院で研究しました、それを独自に工夫し、ゼロから学生セラピストを養成する方針をとるなど、事業の開発に膨大な時間と労力をかけました。」と創業当時の苦労や、一人ひとりにとって最適な支援を追求し続けてきた道のりを語ってくださいました。
利益(プロフィット)ではなく、成果(インパクト)の最大化を目指す
お話の後には「サービスを広げていくことと並行して、業界全体の質維持・向上を図るためにすべきこと」について、参加者の皆さんとディスカッションをしました。
「質の向上を求めるには価格の上昇は必然だが、ADDSはなぜ低価格にこだわるのか?」という参加者からの質問。これに対し竹内さんは、「それはADDSの変革期に大いに議論しました。問題意識が高く、高所得者を対象にしたビジネスを展開する方が、苦労が少ないことは確かです。しかし、私達の目標は望む全ての家庭に自閉症早期療育の情報とサービスを提供することなんです。だから、私達が先陣をきって安価で高質なサービスを提供し、それを世の中のスタンダードにしたいと思っています。」と答え、利益の最大化ではなく、社会的インパクトの最大化を目指す姿勢を強調されていました。
「社会起業家が仕事へ向き合う姿勢を、官僚の仕事でも活かしたい」
その後も活発に議論がなされ、参加者から「社会起業家としての仕事への向き合い方を自分たちの仕事でも活かしたい!」「視野が広がった。」「NPOも行政も問題意識は同じだと感じた。お互いの役割を認識し、最適に協力していきたい」などの声が寄せられました。
「自閉症の早期療育を、必要とする全ての人に届けたい」という信念をもとに、様々なセクターと連携しながら問題解決に取り組む竹内さんの取り組みに、未来の行政を担う若者達は、とても刺激を受けている様子でした!
また、人事院のスタッフの方もとてもインパクトを感じてくださったようで、「非常にダイレクトに、自分の働き方や、行政の役割を議論することができた、その喜びが研修員の顔にあふれていたように思います。」とのコメントを頂きました。
行政や民間企業、そしてNPOがよりお互いを知って学び合い、協力・役割分担しながらよりよい社会をつくっていくことが、これからいっそう大事になると思います。
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