メーカーにて生産管理等の業務に従事した後、2013年5月からNPO法人かものはしプロジェクトのアソシエイト(社会人インターン)として参加する横山優里さん。週4、5日、法人向けファンドレイジングを担っています。
今回は、横山さんと、スーパーバイザーである山元圭太さんに、かものはしのアソシエイトの仕事について伺いました。
ボランティアでもプロボノでもない、「アソシエイト」という参加のカタチ
石川:早速ですが、「アソシエイト」という仕組みについて、教えていただけますか?
横山:かものはしのアソシエイトは、3ヵ月以上の期間で、平日のうち週15時間以上の参加を求められます。私の場合は、週4,5日、朝10時から夜6時までの間で柔軟に参加しています。交通費など諸経費は支払われますが、給与はありません。多くのアソシエイトは、アルバイトや転職活動と併行して活動に参加しています。
仕事内容は、アソシエイトごとに異なりますが、私の場合はかものはしの法人向けファンドレイジングがメインです。
石川:働きながら一部の時間をNPOに使うプロボノとは異なるのですね。プロフェッショナル・ボランティアといった感じでしょうか。なかなかハードな条件だと思いますが、これまでにどれくらいの方が参加されたのですか?
過去に5名の社会人アソシエイトが卒業し、NPO/NGOへ転職
山元:過去に5名がアソシエイトとして、かものはしの活動に参加しました。現在は、カンボジアに1名、これから入職する人が1名、そして横山がいるので、現役が3名ということになりますね。
石川:おそらく、参加したアソシエイトにとっては、かものはしでの経験が良い修行になっているのだと思いますが、活動後の彼・彼女らのキャリアはどうなっていますか?
山元:青年海外協力隊で9月からアフリカに派遣される元アソシエイトが2名います。他に1名は、大手国際NGOのファンドレイジング担当としてはたらいています。もう1名は、同じく大手国際NGOへ海外事業担当として転職しましたね。また、震災をきっかけに東北で新しくNPOを立ち上げた元アソシエイトもいます。
石川:国際協力系のNGOに、しっかり人材を輩出していますね。みなさん、かものはしに参画する前から、その進路は決まっていたのですか?
山元:もともと次のキャリアが決まっていたのは、ひとりだけです。彼は青年海外協力隊での派遣が決定したけれど、派遣まで半年間の期間があったので、その間アソシエイトとして活躍していただきました。その他の人たちは、はっきり次のキャリアが決まっていたわけではありません。どちらかといえば、自分のキャリアに迷っていた感じです。
かものはしの事業で色々体験する中で、途上国開発やファンドレイジング、マネジメントの面白みに気づき、新しい強みを得て、次のステップに進んでいきます。そうそう、準認定ファンドレイザーの資格を取得したメンバーが3名もいるんです。もちろん受験の強制は全くしていません。
石川:それはすごいですね。それは認定ファンドレイザーの山元さんと仕事を進めることで得られる大きなメリットだと思います。かものはしでのアソシエイト業務から皆さん何かをつかんで、次のキャリアに進んでおられるように思います。それでは、横山さんの日頃のお仕事について伺ってもいいですか?
代表や日本事業統括のもとで、法人開拓や新規事業の企画立案に取り組む
横山:私はかものはしの法人向けファンドレイジングチームに所属して、村田代表と山元さんとチームを組んでいます。かものはしは、100社以上の法人サポーターに支えていただいています。私の具体的な仕事内容は、法人会員様に継続支援のお願いをするということと、新規の法人様の開拓を進めていくということの2点です。ですから、既存会員様のところへ訪問して、活動報告をしたり、新規の提案をしたり、またそのための提案書をつくったり、というのが日々の仕事になります。
石川:かものはしの事業継続に大きな影響を与える、責任の大きい仕事ですね。100社分、それをやっているんですか。
横山:年間で100社ですので、1週間に2,3社、多い時はそれ以上を訪問しています。この法人開拓に、ほとんどの時間を当てています。残りの時間で、カンボジアの新規事業の提案書を主担当として作成しています。
石川:どちらも、責任の大きい仕事ですね。かものはしの未来に大きな影響を与える仕事だということ、そして村田さんや山元さんといった、かものはしの経営陣と直接仕事ができるということは大きな魅力だと思います。国際協力系の仕事には、昔から興味があったのですか?
今いる組織を前提としない自分のあり方について、ブータンで考える
横山:大学生の頃から関心はあって、ベトナムで教育支援をするボランティアサークルには所属していました。休みのたびに、東南アジアに行っていましたね。それで就職活動の時期になって、国際協力に関する仕事を探してみましたが、しっくりくるものがみつかりませんでした。なので、途上国に進出しているメーカーを選びました。そこで現地営業などができたら、まわりまわって途上国の人たちの生活に貢献できるんじゃないかと思って。
石川:たとえ仕事そのものが自分の興味がある分野ではなくても、サービスやプロダクトが、自分にとって意味のある成果につながるものを選んだということでしょうか。その仕事をすることに、自信が持てるような。
横山:そうですね。入社後は営業ではなく、女性総合職初めての、工場の生産管理担当として日本で働くことになりましたが。1,2年目は新しい仕事、新しい世界なので楽しくやっていましたが、3年目に大きめの仕事が落ち着いた時に、ちょっと目標を見失ったように感じました。この会社の中で、どんな目標設定をしていけばいいのか、そもそも会社内でそれを設定しなきゃいけないのだろうか、と。
石川:悩ましい問題ですね。それで、どうしたんですか?
横山:夏休みにブータンに行きました。
石川:ブータン!象徴的なチョイスですね。
横山:そこで、悶々と自分の今後について考えたんです。今の会社を前提とせず、どんな仕事をしているのが自分にとって楽しいのか。その時、まわりにはどんな人たちがいるんだろうか、と。それで、帰国後すぐに転職活動をはじめました。
転職サイトではみつからない天職と、岡本太郎のお告げ
石川:具体的には、どんなことから始めました?
横山:まずは、転職サイトへの登録から。でも、そういうところから紹介されるのは結局不動産やよくわからないベンチャーばかりで、自分の要望とは、かけはなれたものばかりでした。
石川:スペックでしか判断されないから、ちょっとさみしくなりますね。キャラや志向性がなかなか評価されないですから。結果、どんどん自信がなくなっていくという。
横山:そう、経験が必要なんですね。自分は国際開発を学んだ過去もないし、途上国で働いていたわけでもない。だから、専門性を身につけるために海外の大学院進学についても検討したんです。でも、数年留学して帰ってきたら、あっという間に30代になって、と思ったらなんか遠い道のりに思えてきてしまって。そんな時に岡本太郎の本を読んでいて、すこーんと抜けたような気がしたんです。
石川:そこには、何が書かれていたのですか?
横山:「何かの選択で迷っている時は、迷っている方の選択をせよ」という内容でした。「人間は生きるだけが目的であるなら安定した道をとればいいけど、生き抜くためには、安定していない道をとらないとだめだ」みたいな。そんなこともあって、退職することだけ先に決めたんです。
石川:それはまた冒険的な選択ですね。
横山:そこから必死で「NPO 転職 社会人」とか色々検索しまくって、私と同じような人の体験談や、次のステップを調べたんです。その時、これは人づてだったと思いますが、かものはしの活動説明会があるということを知り、行ってみたんです。
そして話をきいてみると、自分とあまり変わらない年の人たちが、すごく戦略的にアグレッシブに事業を展開していた。すごいな、という印象を持ってその日は帰りました。そしたら、1週間後くらいに「社会人アソシエイトを募集しています」というメールが流れてきて、そこからはとんとん拍子でしたね。
生産管理の現場で習得したスキルで、かものはしの活動に貢献
石川:ブータン、岡本太郎、かものはしと、3度のお告げに導かれて今に至るわけですね。少し話は変わりますが、前職の経験で今に役立っているというものはありますか?
横山:直接的でわかりやすいスキルではありませんが、色んな人たちとのコミュニケーション・スキルだったり、プランを実行に移す、という強みはあるかもしれません。工場の生産管理という仕事は、多くの部署の人たちの意見をまとめて調整して、プランを実行してもらうことの連続でしたから。どう気持よく動いてもらおうかといつも考えていました。
山元:僕や村田の観点でいうと、ちゃんと業務フローを改善して、仕組みに落としてくれる点がとても助かっています。どちらかといえば、どんどん前に突っ込んでいってしまう僕らが散らかしたものを、データベースに落としたり、フロー化して、再現性の高いものにしてくれます。法人開拓の営業フローだって、今までは個人技だったものが、彼女によってマニュアル化されましたし。それを自分からやってくれますから。
横山:そういう強みは、最初からわかっていたわけではありません。前職では業務上できて当たり前だったので。かものはしという全く新しい環境で、仕事をしながら再発見していったという感じですね。
自分の仕事は自分でつくる、社内起業家的はたらき方
石川:それを聞くと、僕らもアソシエイトを導入したくなってきます。ですが、しっかりとしたマネジメントやトレーニングのシステムが土台となって、アソシエイトという仕組みが成り立つのだろうと思います。ところで、横山さんは次のステップとして何か考えておられることはありますか?
横山:そうですね、今取り組んでいるカンボジアの新規事業の案件がうまくいけば、その事業担当としてかものはしで働く予定です。または、現在も転職活動も行なっているのですが、現場経験をつくるために数年間現地駐在する、ファンドレイジングを仕事にする、など様々な選択肢を視野に入れています。
いずれにせよ、かものはしでのアソシエイト経験があるからこそ、自信を持って次のキャリアを模索することができています。もしかものはしで働くことになったら、かものはしはカンボジアの最貧困層の女性たち130名を雇用し、い草を使った生活雑貨を作るコミュニティ・ファクトリーという工房を経営しているのですが、そこではたらくことになります。
石川:とても起業家的な働き方ですね。そして、教育ボランティアや生産管理など、横山さんがこれまで経験してきたことがつながっていくようですね。また、結果を聞くのを楽しみにしています!
認定NPO法人かものはしプロジェクトでは、ともに課題解決に挑む仲間(スタッフ)を募集しています。詳しくはこちらから。
NPO法人かものはしプロジェクト/横山優里
1987年生まれ、神奈川県横浜市出身。早稲田大学教育学部卒。卒業後、素材メーカーに就職し、工場の生産管理として3年間勤務。その後、2013年5月にかものはしプロジェクトのアソシエイトとして参画。法人向けファンドレイジングチームに所属し、法人様向けのファンドレイジング活動を担当。2013年8月、日本ファンドレイジング協会准認定ファンドレイザー取得。
NPO法人かものはしプロジェクト日本事業統括ディレクター/山元圭太
NPO法人かものはしプロジェクト日本事業統括ディレクター / NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)理事 / NPOマネジメントラボ代表 /日本ファンドレイジング協会認定ファンドレイザー。 1982年滋賀県生まれ、同志社大学商学部卒。卒業後経営コンサルティングファームで主に組織人事分野のコンサルタントとして、5年間勤務の後、2009年4月にかものはしプロジェクトに参画。日本部門の事業全般(ファンドレイジング・広報・経営管理)の統括を担当。「社会起業塾イニシアティブ(NEC社会起業塾) コーディネーター」「内閣府復興支援型地域社会雇用創造事業 みちのく起業 コーディネーター」として、日本各地のソーシャルベンチャーやNPOの支援も行なっている。専門分野は、ファンドレイジング、ボランティアマネジメント、組織基盤強化など。NPOマネジメント・ファンドレイジング・キャリアをテーマにした、Blog「ヤマゲンメモ」(http://yamagenmemo.blogspot.jp/)を執筆している。
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