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食の社会起業家ジェイミー・オリバー、アメリカの給食を変える

2016.03.15 1,131view 

前回記事「イギリスの国民的シェフは社会起業家! ジェイミー・オリバー初心者編」に続いて、「食の社会起業家ジェイミー・オリバー、アメリカの給食を変える」を取り上げます。ドキュメンタリーがきっかけで大ブレイクし、自身のレストランで若者の就業支援を手がけたジェイミー。今回彼の「給食革命」について紹介します。

Jamie_Oliver

いまや世界的に著名なシェフとなったジェイミー・オリバー(wikipedia)

“Feed Me Better”で政策提言

ジェイミーが手掛ける社会変革の特徴は、テレビをうまく使うということ。学校給食の改革も、2005年のテレビシリーズ「Jamie's School Dinners」から始まりました。この番組でオリバーは、ロンドン・グリニッジ地区の公立学校で学校給食改善運動に取組み、“Feed Me Better” (もっといいものを食べさせて)キャンペーンを展開。生徒の親や地元の家庭からは、「お金や時間がかかる」、「そもそも子どもたちが望んでいない」など反発もあったそうですが、賛同する声も多く、27万人以上の署名を集めます。

そうして集めた声を、ジェイミーはイギリス政府に提出。結果として、当時の首相トニー・ブレア氏は、学校給食を改善するための措置をとることを約束します。その後、教育技能省(Department for Education and Skills)はChildren's Food Trustというチャリティーを創設、そこから6,000万ポンド(約108億円)を拠出して子どもたちの学校給食をサポートすることになりました。

17%の子どもが肥満状態にあるアメリカ

同じ頃、海を越えたアメリカでは健康問題、特に肥満問題が深刻化していました。米疾病対策センター(CDC) によると、成人の3分の1以上、子どもの約17%が肥満の状態にあるといいます。アメリカの肥満率は1990年代から上昇しており、2013年にはミシシッピ州とウェストバージニア州では成人のうち35%以上が肥満と診断されています。肥満は心臓疾患、脳卒中、糖尿病などの原因となり、生活習慣の改善が求められます。アメリカは毎年、肥満対策として約1,470億ドル(約17兆6,400億円)を投下していますが、改善の兆しはありません。

こうした状況を改善するため、2010年からミシェル・オバマ大統領夫人は、子どもの肥満対策キャンペーン「Let’s Move」を実施、呼びかけを行っています。そこに登場したのが、イギリスの国民的シェフ、ジェイミー・オリバーです。

ジェイミーのフード・レボリューション in USA

ジェイミーはまず、政府統計で最も肥満の多いウェストバージニア州・ハンチントンの小学校のカフェテリアを訪れます。そこでは朝食にレトルトのピザ、砂糖や添加物がたくさん入った牛乳、昼食もチキンナゲットなどのジャンクフードが提供されていました。野菜や魚などは一切出されず、栄養バランスなどまったく考えられていない食事。

でも、カフェテリアの調理員たちはそれを当然のことと感じ、「わたしたちは与えられた仕事を一生懸命やっている」と何の疑問も感じていません。むしろ、自分たちの仕事を否定されて不快感を示します。肉や野菜を購入して調理するのは、時間もお金も手間もかかる。学校側も少ない予算で子どもたちの給食を用意しなければならない。それなりに事情があるものです。

ジャンクフードを選ぶ子どもたち

そんな状況下でジェイミーは、ジャンクフード漬けの子どもたちに手間ひまかけたローストチキンをふるまいますが、子どもたちは残酷にも、イギリストップシェフの料理ではなく、普段から食べ慣れているチキンナゲットを選択してしまいます。

テレビ的には面白いですが、本人としてはかなり過酷な状況です。ジェイミーは子どもたちの目の前で、普段子どもたちが食べているチキンナゲットが何でできているか(本来捨てられる鶏の骨や皮などのミンチに小麦粉や油分をたっぷり混ぜる!)を見せたり、野菜の着ぐるみを着て走り回ったり、いくらテレビの企画とはいえ、そこまでやるか! というくらい涙ぐましい努力をみせます。

こうした地道(?)な活動の積み重ねにより、ジェイミー・オリバーの「フードレボリューション・キャンペーン」は、徐々に全米に広がっていきます。2011年は、学校給食の質の向上のために、各地の学校のカフェテリアを回りアメリカのよりよい学校給食をサポートするために63万人以上の署名を集め、大きな話題となりました。

現在ではテレビシリーズ「Food Revolution」は、毎週7.5万人が視聴する人気番組となっています。野菜の着ぐるみ姿のオリバーをみるまでもなく、社会を変えるには忍耐と時間が必要です。そして時には大胆にマスコミュニケーション活用することも、人々の意識や行動を変えていくうえでは極めて重要だといえるでしょう。

食にまつわる課題に多面的に取り組む

Save with Jamie (Money Saving Meals) (2013) では、ジェイミーが一般家庭を訪れ、家庭の冷蔵庫の中にあるもので簡単に作れる節約レシピを紹介、使い残った野菜の保存方法や、冷蔵庫の整理方法、買い物リストの作り方、この料理を作るのにどれくらいのお金がかかるのか(外食と比べてどれくらい違うのか)など、一般市民への金銭教育的な要素も含んだ番組も提供しています。

ジェイミー・オリバーというビッグアイコンは、これからもあの手この手で視聴者を楽しませながら、少しずつ社会を変えていくのでしょう。

おまけ:TED Prizeを受賞

2010年、ジェイミー・オリバー氏はTED Prizeを受賞しました。彼のTEDでのプレゼンテーションは、子どもたちに食の大切さを訴えたものでした。アメリカにおける死因の多くは、日々の生活習慣(特に食生活)の改善で予防できる病気が多く、現代人の食生活を変えることでもたらされる社会的インパクトは計り知れません。21分とTEDとしては少し長いですが、彼のパッションを感じることができる熱のあるプレゼンテーションです。

この記事を書いたユーザー

Erika Tannaka

Erika Tannaka

岐阜県出身。シンクタンク研究員を経て、現在は外資系戦略コンサルティングファームリサーチャー。プロボノとして政策提言や課題調査などNPOの支援に携わる。

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