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「聴く技術」が組織の生産性を最大化する〜認定NPO法人かものはしプロジェクトの事例から

2017.07.13 1,492view 

組織づくりやリーダーシップは、持続的な団体成長を支える基盤・原動力になります。これは当たり前に聞こえるかもしれないけれど、実際に、目の前の活動に追われて、時間もお金も限られていると、なかなか組織やリーダーシップを育てるために時間を割いたり投資したりするのは難しいですよね。それに実際何をしたらいいのかわからない。

そこで、具体的な解決法として組織へのコーチングの導入を試してきた社会起業団体の方に、「組織やリーダーシップに投資すること」の事例や効果について、インタビューしてみました。

第一弾のインタビュー相手は、特定非営利活動法人「かものはし」プロジェクト(以下、「かものはし」)の共同代表の本木さんです。聴き手は、社会起業団体の組織づくりを含む経営支援をしてきた一般社団法人WITの代表・山本未生です。

コーチングとは、人の潜在能力を解放し、最高のパフォーマンスを上げるために、コーチによるサポートを通じて、本人が自ら学び自らの中にある答えにたどり着くプロセスです。そんなコーチングの組織づくりにおける実際の事例を、お届けします。

月5,000円のコーチング手当で、生産性を上げる

山本:「かものはし」では、組織づくりのためにコーチングを団体として導入されてきたそうですね。

本木:「かものはし」の顧問にプロのコーチの方がいらっしゃるんです。その方は創業当時から駆け込み寺的に相談にのってくれていて、その後パーソナルコーチングを私が個人で受けていました。その後、コーチングは数名がやってみたら「すごくいいね!」ということになり、コーチの方のご好意で、普通はもっと高いのですが1回1時間5,000円で受けさせてもらえることになったんです。そこで、2016年からは、スタッフ10数名に1人あたり月5,000円のコーチング手当をつけています。

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山本:コーチングのどういうところが、組織づくりにとって「すごくいいね!」となったんでしょう?

本木:人間関係へアプローチするところですね。

「かものはし」には民間セクターから非営利セクターに移ってきた方も多く、異なるセクターの文化の中で、「想像と違っていた、本当はこういうことがやりたかったのに」と揺れ動いたり、衝突したりすることもあります。そのように外と上手く折り合いをつけられないときに、逆に自分の内省を深めて、それを行動につなげていく方法がありますよね。その内省と行動のサイクルを回していくのを、コーチが適切にサポートするんです。本人の中の変容をサポートしてくれるということですね。

個人の内面が変化すると、他者との関係性が変化し、気持ちよく働けるようになります。気持ちよく働けるようになると、パフォーマンスが上がる。通常のレベルの議論ではなく、互いのクセやメンタルモデルを理解しながら、(個々の議題より上の層での)メタレベルでのコミュニケーションができると、自分と相手との関係性が変わってきます。そして関係性が良くなると、生産性が上がるんです。

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傷つけあうコミュニケーションから理解しあうコミュニケーションへ

本木:これは、コーチングに限らず、普段の対話でも気づかっていることです。「かものはし」は、創業時から共同代表3名でやってきたので、話し合いのカルチャーはあったんです。だから、組織が大きくなって、マネジャー層が新しく入ってきたときにも、彼らの意見を聴こうとしました。でも、マネジャー側からは、「結局上の代表3人で決めているんでしょう。本当は自分たちの声は聴いていない」と受け取られてしまった。そこで、朝7時半に集合して、皆で延々話し合うようなことを続けていくうちに、マネジャー側が「この人たちは、自分たちの意見も聴いてくれているようだ」と受け取ってくれるようになってきた。

ただし、本当に意見を聴きあって戦わせていくと、難しい話も多いので、傷つけあうことも出てきます。そういうときに、コーチやファシリテーターといった第3者が、話し合いの場のルールを設定して、安全な場をホールドする人として入ってくれると、ただの話し合いが段々対話になっていくという経験を幾度となくしています。

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山本:傷つけ合ってしまうのは、どうしてなんでしょう?

本木:理由は2つあると思います。1つは、リーダー同士の置かれている環境や前提が違うことから生じるぶつかり合いです。「かものはし」は、「活私豊公」を創業時から大切にしていて、オーセンティックなリーダーシップを大事にしています。ただ、本来の自分自身であることと、単なるわがままの区別は非常に難しいんですね。一方で、企業でトレーニングを受けてきた方は、自分のわがままを表に出さないように抑えています。このように価値観が違うリーダーの間で、あのリーダーがふがいないとか、ぶつかりあいが起きることがあります。

2つ目は、私たち社会起業団体は、深刻な問題に取り組んでいるからこそ、活動の根源に怒りのエネルギーを抱えている方がいます。例えば僕自身の経験で言うと、怒りのエネルギーはインドでよく経験してきました。サバイバー(人身売買被害者)やインドのNGOの方と接していると、怒りによく触れました(「かものはし」の年次報告書はこちらから)。

自分や家族が売り飛ばされ性的な暴行を受ける。運よく助けられたとしても、NGOや行政職員の人数・予算不足から適切な支援を受けることができず、むしろ、みじめな環境に置かれたり、時には「あなたが悪いからそういうことになった」と言われる。そうしたときに、あるいは、そうしたことを目撃したときに、怒りがふつふつと湧いてくる。そういった怒りのエネルギーは、活動する本人と、戦っている社会の不条理との間の大切なリンクなのですが、本人の傷が癒えていない状況だと、内側の怒りをコントロールできずに、無意識に外にぶつけてしまうこともあります。本人も何に怒っているのかわからない。ただただ怒りから、自らの仲間に対してもきつくあたってしまうことがある。それをぶつけられた相手は、「自分が怒られた、否定された」と思ってしまい、すれ違いが起きてしまうのです。

怒りは社会を変えていくために必要です。その怒りによって社会が誰かを犠牲にしていることに皆が気づき、そして変えていこうというエネルギーが出てくるのです。怒り自体はニュートラル(中立的)なはずです。しかし、たいていの場合、ニュートラルには表現されないし、受け止められない。怒りは、地震のように現れると色々なものを破壊します。怒りのエネルギーに色がつき、価値観が違う人同士が、互いを刺し合うようなコミュニケーションをしてしまうと、価値観の違いだけがより強調されて、互いを受け入れ合う以前に、修復不可能な関係性となってしまいます。

自分も怒りのエネルギーをぶつけられた経験がありますが、そういうときは、「自分はダメなんじゃないか」と思ってしまいます。でも、相手の怒りがどこから来ているのかを理解できたら、ポジティブにも捉えられると思うんです。そして、その怒りによって、様々なことに気づくことができた。その怒りの背景にある想いに耳を傾け、そのエネルギーを抱擁していく。そして、社会をよりよい社会へと成長させるべく困難にもめげず動いていく。怒りが社会を成長させる源になりうる。そういう捉え方ができるようになったのは、コーチングや対話のおかげだと思います。

感情や関係性と生産性はリンクしている

山本:感情や関係性と仕事の生産性がリンクしているというのは、多くの方にとっては、一見見えにくいし、分かりにくいことだと思いますか?

本木:分かりにくいことだと思います。 関係性と生産性のリンクについて、実際にあった例を挙げます。ある部下が上司を恐れていて、上司がフィードバックしても、それを受け止められていませんでした。対話を継続的に持ち、信頼関係ができてきたら、部下はフィードバックを受け止められるようになって、すごく成長したんです。

この事例は、関係性が良くなれば生産性が上がるということを示していると思います。

(人間の)関係性と生産性を図に表してみます。関係性のレベルを向上させずに、生産性だけ上げようとしているのがいわゆるブラック企業。関係性だけ良くなると、単なる仲良しサークル。生産性と関係性が両方高いところに、「活私豊公」があって、そのためには遠回りに見えても、まず関係性を良くするのが大切。それは、自分が受け入れられないことを受け止めて、それを相手にどう伝えるのか、ということ。そういう話を繰り返していく中で、段々「かものはし」のメンバーには理解されてきたように思います。

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関係性を築く技術を習得する

山本:この関係性を築くには技術が要ると思いますが、その重要性が一般的にはあまり理解されていないように思います。

本木:飲みに行くことで関係がよくなることはある。でも、そうならないこともある。何も意識せずにただ仲良くなろうとするのではなく、関係性を良くするための「技術」を自分たちは身につけてきたと思っています。特に、社会起業家は、フランチャイズチェーンのように同じオペレーションで店舗拡大すればよいのではなく、違う考え方の人とどう協働するかが、レバレッジをかけるために求められています。だからこそ、関係性を築く技術が必要なのです

「かものはし」はステークホルダーが非常に多様で、インドだけでもNGOリーダー、財団、コンサルタント、弁護士、行政、サバイバーがいます。過去数年は、日本のスタッフとインドのNGOリーダーとの関係性をつくることに重点をおいていました。インドでの経験の意味は大きくて、インドのサバイバーや、行政関係者、セックスワーカーなどの利害関係者といかに協働して、ベターな社会をつくっていくかを考えるには、関係性を築くことに注意を払わざるを得なかったです。

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山本:必要性に気がついて関係性を良くする技術を身に着けていく中で、コーチングやシステム・コーチング®は役立ちましたか?

本木:コーチングを学んだから関係性が良くなったとも言えますし、インドの人との関係性が良くなる中でこの関係性をさらに良くしたいと思い、コーチングの学びを深めるためにコーチングのコースに参加したりしました。そこで学んだ、例えば上司と部下、組織と組織の関係性といったシステム 注1 を見るレンズ(見方、眼鏡) を現場に応用することで、また関係性がよくなる循環が起きています。

インド事業部では、関係性が上手くいっていなかったときに日本人スタッフを対象として、まず株式会社ウェイクアップのコーチに有償でシステム・コーチング®を実施してもらい、その後、資格コースで学んでいるコーチの方にプロボノで入ってもらいました。また、「かものはし」のスタッフ2名は、自らシステム・コーチング®を学んで、自前でやることもしています。

注1:ここで言う「システム」とは、「2人以上の人間によって成立する関係性すべてを想定しており、具体的には、企業や組織、チーム、上司と部下、といったビジネスにおける関係性から、家族や夫婦、親子などのより身近な関係性、さらには地域コミュニティなどのより広い関係性まで、幅広く想定しています」(詳細はこちら)。システム・コーチング®では、この関係性を扱う視点を学んでいきます。

第3者が組織に入る意味って?

山本:コーチとして第3者に組織に入ってもらうことは、難しくないですか?

本木:難しいです。インドでシステム変容をもたらす社会技術ソーシャル・プレゼンシング・シアターを取り入れたいと思っているのですが、これが難しい。

背景を説明すると、インドでは、セックスワーカーや赤線(性的サービスを提供する店が連なる一体)の方々と、大部分の人身売買反対運動家の間に、断絶があります。過去、「かものはし」の運動も一要因となり、赤線が閉鎖になったのですが、赤線・セックスワーカーの方々は「性産業は職業として認めてほしい、被害者はいない」と主張しています。一方、人身売買反対運動の中にも、「性産業従事者は全員被害者だから、性産業はすべてなくしていくべき」というグループと、「18歳未満・誘拐・詐欺に対して行動していく」というグループの間で断絶があります。

「かものはし」は、セックスワーカー側と良好な関係を持つ研究者グループと対話をし始めているのですが、相手側からは“スパイ”の可能性もあると思われてるところもあるし、我々が一緒にいるときにもし警察が赤線の取り締まりに来てしまえば、研究者グループの人は殺されると言っているぐらい、断絶があるのです。こういう分断がある中で、対話にファシリテーターを入れたいと言っても、「外部の人は入れたくない」と言われます。外部の人を入れたくないというのは、日本だけではなく、インドでも同じですね。

ただし、インドの地元のNGOで、理事がU理論やシステム思考を知り面白いからやってみようとなった団体は、ファシリテーターの導入が成功しています。内部に受け入れる素地ができるのを待ったり、できるように働きかけることが大事です。外部からいくらプッシュしてもできないですね。

「かものはし」でも、最初は僕ぐらいしか関心がなかったです。それが、徐々に面白そうだとか、インパクトがあるだとか、それぞれの人が感じはじめています。そして、むしろ中立な外部の人がファシリテーターとして入ることで安全な場ができる、普段言えないことを言える、対話がうまくできるようになるということを、皆が実感してきたんです。これは実際に経験しないと、理解するのが難しい分野かもしれません。

山本:必要なところで第3者が役立っていくにはどうしたらよいのでしょう? さらに、外部の人といっても、誰でも良いわけではなくて、コーチの方の見極めもすごく大事ですね。

本木:すぐには効果が感じづらいので、やっている意義が分かる(組織内の)人が、やり続ける必要があるのかなと感じています。実際に、「なぜこのコーチの人たちがいるのかわからない」、「何の意味があるのかわからない」と途中で言われましたから。皆忙しいこともあり、「意味のわからないことに貴重な1時間、2時間を使いたくない」とも言われました。意味が分かってくると意味が分かるんだけれど、意味が分からないと全然分からない。だから、僕や他の人が、「これは意味がある」と、ホールドし続けることが大切です。

山本:通常のビジネスの議論だと、理由づけや背景にあるものを言って然るべき、どんどん言おう、となりますが、感情は出す意味が分からない、となる方もいますね。システム・コーチング®で現実の3つのレベルの概念がありますが、この中の感情やエッセンス・夢の部分については、これを表に出すことの意義や、これが生産性に影響を及ぼすということが、あまり理解されていない感じがします。

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レバレッジをかけるために、ステークホルダーとのメンタルモデルの違いにアプローチする

本木:僕らが10数年やってきた中で、レバレッジをかけるには、エコシステムの中にいる大きなステークホルダーといかに働くかに尽きるなという感じはしています。例えば、行政と働くときに、メンタルモデルの違いがすごく出てくるということは、課題認識として必要だと考えています。

山本:ほとんどの団体は、中の組織のごちゃごちゃをどうするか、というところから始まりますが、組織の外との関係性における対話の技術の重要性は、そのとおりですね。知り合いの福島の行政の方で、社会的価値へのレバレッジをかけようとして、全然価値観の違う人と一緒にやろうとする中で、対話の技術の大切さに気づいていった方がいるんですが、とても大事なことですね。

本木:本当に問題を解決することを考え、そこから逆算して考えると、そういった関係性に対するアプローチしかないなと思うんです。多様なステークホルダーが関わる、組織の中も外も含めた生態系というシステム的視点で見ると、ソリューションや介入方法がみえてきます。 例えば、サバイバーの声は、エコシステムの中ではほとんど届いていません。彼らは、システムの中で一番ランク(位)が低くて、サービスをある意味で一方的に受ける側とされています。シェルターの人は、自分の傷を癒すためにサバイバーを支援して「あげて」いる。インドの家父長的社会の中で、ソーシャルワーカーの人たちも、サバイバーを下に位置付けて、サポートして「あげて」いる、と捉えています。

そのサポートの内容に、ソーシャルワーカー自身のメンタルモデルがすごく反映されていて、当事者中心ではないんです。「弱い存在」としてみていくことになる。そうすると、サバイバーたちの顔は、このエコシステムでどんどん見えなくなり、声を上げなくなります。声を上げないことで、この問題の本質は、本当は彼女たちにあるはずなのですが、何も見えないから、先述のように異なるグループ間で断絶が起きて、自分たちが思う「正義」を掲げて活動していく。その正義と正義がぶつかり、状況はどんどん混乱していきます。そこで、「かものはし」はサバイバーの声をどう上げていったらよいのかという話を、現地のNGOとしています。今年は政府に対する意見書がサバイバーの声が反映されることにもつながり、それによって僕らもエネルギーが湧いてきます。

多様な個人や組織の主体が関わるエコシステムにおいて、各々のインセンティブ、問題の起きる構造、問題解決を阻害するボトルネック、ポジティブ・ネガティブ両方のインパクトなどを見ていくと、何が欠けていて、どこがレバレッジポイントなのか見えてきます。その中で自分たちも、活かされていく感じだと思います。パラダイムシフト的かもしれないですけれど。

こういうマクロのエコシステムの話と、ミクロレベルでの、自分の中の囚われをどう他者とコミュニケーションするか、1対1の関係性をどうするかという問題は、相似形だと思います。こう述べているものの、自分たちでもまだまだ難しくてトライして、失敗して、トライしてという感じではあります。

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山本:そうですね。自分たちが問題解決しているはずなのに、問題解決がどんどんDivide(断絶)を生んでいて、問題解決から遠ざかっている、ということはよくありますね。社会を良くしようと思ってやっている当事者として、そういう自戒の意識を常に持ち続けないと、おかしなところにいっちゃうよ、ということですね。

本木:自らが性的虐待を受けたことがあるソーシャルワーカーから見ると、セックスワーカーは絶対的に被害者なんです。なぜなら自分を投影しているから。でも、相手には相手の生活や人生があって、それを理解するためには、自分の被害を見つめなおさないといけない。それはすごく辛いことで、そんなことできっこないと思う自分もいます。自分とは違う役割やメンタルモデルを持っている人と対話をするということは、非常に難しい。けれども、自分とは違う人たちがこの世の中にはいて、そこには多様な真実ある。それはすごく難しいことだなと思います。

山本:自分が意識的にでも無意識的にでも持っている恐れを克服しないといけなくて、対話をしたからといってすぐに楽になるわけではまったくなくて、ただつらいという状況にもなりますね。それでも、やることは必要だという、信念なり願いがないと絶対できないですよ、これは。怒りや恐れに向き合うことはつらそうだけれども、乗り越えることを自分はやるべきだなと思います。 聴くことへのホープは、持ってたけれど失ってしまった人と、特に関心がない人とがいますね。ミクロのレベルでもマクロのレベルでも、皆が、無理しすぎない範囲で、ホープを持ち続けられたらと思います。

1つのきっかけよりは、信頼を醸成する連続的なプロセスが組織を変えていく

本木:「かものはし」ではここ1~2年でかなり研修やコーチングに投資していますし、人事面談でも、コーチングのエッセンスを使っています。もともと「活私豊公」的なカルチャーなので、「なぜここにいたいのか?」など、あまり今まで問われたことのない問いを繰り返しもらい続けることで、自分の新しい内面が見えてきた、という人も増えています。

私たちは、「雨降って地固まる」という言葉を使っているんですが、内面を吐露したり、相手にきついことを言うことを「雨が降る」と表現しています。スタッフの間では、1年前までは、「雨降って固まることは無理です」、「雨は降らせたくない」と話していました。ただ、半年ほど前から、「雨降ってもいいんじゃないか」と段々皆が考えるようになってきたんです。雨が降っても、最後に地を固めるプロセスまで含めることができれば、いいんじゃないか、と。 雨を降らせることに対する勇気みたいなものが、段々皆の中にできてきた。それは、小さい幾つかの事例が皆の中に蓄積して、雨が降っても大丈夫な信頼関係がお互いにあることを認識してきたのだと思います。何か一つのトリガー(きっかけ)で変わるというよりは、信頼を少しずつ醸成する連続的なプロセスの中で変わってきた気がします。

山本:とはいえ、私は中間支援的立場から思うのですが、雨がどしゃぶりの状態の組織に行くことがあるんですね。そうすると、まだ地面が固まった経験もないところに、荒療治になりかねない。本当は、もっと手前の段階で、雨を降らせられる勇気を皆が持てるような土壌を作っておくのが大事ですよね。

本木:本当は、コーチング等の研修をスタッフに受けてもらうのが速いと思っています。コーチングには好き嫌いがあるし、それぞれの人のタイミングに合うか合わないかもあるし、けっこうお金が必要となるので難しいところではあります。今のタイミングでは合わないけれど、2年後に「あれは意味があった」となる場合もあります。

「かものはし」も、スタッフを送ろうと思っていたんですが、チェンジエージェントの方に、内部向けの研修を月1回やってもらいました。その方が、スタッフを1人ずつ研修に送るより、費用対効果が高いので。

山本:定期的に自然にやっていて、火がつく人は火がつけばいいし、そうでなくとも下地が育っていくということですね。

本木:あと僕はパーソナルコーチングも学んでいるのですが、コーチとしての実力はまだまだ不十分だと思ったときに、純粋なコーチングだけでなく、メンタリングも混ぜることが相手にとっても良いと思ってそうしています。そうすると、相手は段々理解してくれるように思います。

まずはリーダーから

山本:導入時にはリーダーへのケアも大事ですね。

本木:それはよく分かります。リーダーの人が耐えきれないことが多いだろうなと思います。リーダーの人って矢面に立ちがちだし、立たされがちですよね。コーチングや対話を入れたときに、組織からの率直な声が上がってくるわけですが、リーダーは責任感があるだけに、全部自分のせいだと思ってしまい、耐えきれなくなってしまう可能性があります。ニュートラルに受け取ることが難しいから、リーダーに対するサポートは大事ですね。

山本:リーダーが全部かぶってしまうか、あるいは、コーチがリーダーの味方だと思われて、却って組織から声が出てこない可能性もありますね。エントリーポイントとして、リーダーのサポートとして入っていくこともあるかもしれないですね。

本木:僕がコーチングや対話に興味をもったターニングポイントは、2012年にiLeapに参加したときです。「対話というものがあるんだ、これは面白い」と思いました。

スタッフとうまくいかなくなった経験があって、それがすごくつらかったんですが、「もしかして自分も同じことを他人にやっているのかな」と悶々としていたタイミングでもあったので、なるほど、と思うことが多くありました。最初にリーダーが理解する必要がある、というのは、僕のケースにも当てはまりますね。当たり前のことなのですが、「コミュニケーションで相手が傷つくんだ」ということを、自分が痛みを感じて初めて分かったんです。

山本:私が大学生のときから活動を知っている(大学のトイレにかものはしのチラシが貼ってあったのを覚えています)かものはしが、コーチングを始めとする組織づくりの手法を取り入れている具体事例を伺えて、貴重な機会でした。 普段は後回しにされがちな分野だと思いますが、だからこそ、組織のリーダーが先陣を切って、コミュニケーション技術の向上に、心・時間・金を投資することの大切さを認識することがまず大切です。そして、リーダーから何度も丁寧にメンバーに伝えていくこと、少しずつでも実践に移していくことが、この取り組みをパフォーマンス向上やインパクトの広がり・深まり・持続につなげていく鍵ですね。

ソーシャルセクターの大先輩と呼べるかものはしさんのお話から、何か読者の皆さんへの気づきにつながったら、とても嬉しいです! 次号は、アショカフェローへのインタビューです。お楽しみに!

この記事を書いたユーザー

山本 未生

山本 未生

WIT Co-Founder & Executive Director (http://worldintohoku.org/)。 東京大学教養学部に在学中、マレーシアの孤児院でのインターンを経て、戦略・ネットワーク・資金の不足が、非営利団体のミッション達成を妨げていることを実感。SVP東京のパートナーとして7年間、革新的な社会起業家を「汗と時間とお金の投資」で支援。2011年、東日本大震災を機に一般社団法人WIA(現WIT)を設立。2013年7月より同代表理事。ORSC®(システム・コーチング®)のトレーニングプログラム応用コース修了。英語日本語双方での講演多数。2005年東京大学教養学部総合社会科学科国際関係論過程卒業。2013年MITスローン・スクール・オブ・マネジメントでMBAを取得。

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