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#経営・組織論

コロナで打撃を受けた事業と家庭。不安・孤独が感謝に変わった転換点とは?クロスフィールズ小沼さんのケース

2020.05.29 

新型コロナウイルスは、新しい生活様式への転換を迫るだけでなく、働き方や人々の意識、世界観を変えるような影響を及ぼしつつあります。見通しがつきにくい、変化も激しい環境において組織のトップである経営者はどんな思いでこの状況を見つめているのでしょうか。

 

意外と語られていない「経営者のあたまのなか」を解剖してみてみようという企画をたちあげました。第一弾はNPO法人クロスフィールズ代表理事の小沼大地さんのケースをお届けします。

小沼さん顔写真

「経営者のあたまのなか」企画に乗っかって、映画『インサイド・ヘッド』のZOOM背景をご用意してくださった小沼さん

 

小沼 大地 NPO法人クロスフィールズ / 代表理事 (2011年度 NEC社会起業塾生)

NPO法人クロスフィールズは、『枠を超えて橋をかけ 挑戦に伴走し社会の未来を切り拓く』をミッションに掲げて活動する団体です。新興国の社会課題解決の現場に企業の社員が飛び込み、現地のNPOや社会的企業とともに課題解決に取り組む「留職」のほか、国内外の社会課題の現場を「体感」する経営幹部・役職者向けのプログラム「社会課題体感フィールドスタディ」を展開しています。これまでに大手企業を中心とした50社以上と、アジア12カ国100団体以上のNPOや社会的企業との橋渡しをしてきています。

海外をフィールドとした事業が次々にストップ。 さらに保育園・学童の休止により、仕事も家庭も大きな打撃を受けた

 

――コロナショックは、どんなインパクトがありましたか。

 

僕たちは、新興国の社会課題解決の現場に企業の社員が飛び込み、現地のNPOや社会的企業とともに課題解決に取り組む「留職」事業を行っています。海外とかかわりのある事業をやっているだけに、まだ日本では新型コロナウイルスのことがそれほど問題になっていなかった時期にも、影響をもろに受けていたんですね。

 

一番最初の頃を思い出すと、感染拡大フェーズにある地域にいるプログラム参加者の皆さんに、いかに安全に帰国してもらうか、ということが最初の命題で、とにかく命を守るということしか考えていなかったです。あとになってからプログラムを中断して途中帰国した場合、売り上げどうなるんだろう、と。今後、売り上げのほぼ全てが吹っ飛んでしまうだろうけど、これをどう乗り切ろうかみたいなことが頭の中を占めていました。今もその心配は尽きなくて、PL(損益計算書)を見て今期どう着地するかを考えつつ、20人の従業員とやれることをやっていくしかないか、みたいな思考は続いているんですけどね。

 

一番つらかった時期は、先が見えな過ぎて誰も助けてくれないと感じていた頃でしたね。2月下旬〜3月のはじめ、緊急事態宣言が出る前は、まわりの経営者仲間に聞くと、意外とダメージを受けてはいなくて、どうやら海外関連の事業だけ辛いらしい、というような話でした。そのせいか精神的に孤立して相談相手になってくれる人も誰もいないという気がしていましたね。

 

もう1つインパクトが大きかったのは、家庭のことです。我が家は奥さんもベンチャーのCFOをやっていて共働きになるのですが、4月のはじめの緊急事態宣言で、子ども達を保育園と学童に通わせることができなくなってしまいました。平日、子ども達は起きている時間の8割は保育園や学校だったのですが、その生活から一変して、子どもが居るなかでの在宅勤務になりました。この頃は精神的にもしんどくて、胃薬のお世話になったりもしていました。そんな時、心配した奥さんから「久々にコーチングを受けてみれば」と勧められたんです。それで、しばらく中断していたコーチングを受けてみました。

不安や恐怖、から「感謝」へ。ソーシャルキャピタルに依って立つ生き方を選択

 

――仕事も家庭も、不安や恐怖を感じていた状態からどうやって抜け出したんですか?

 

思い返せば、そのコーチングを受けた時が転換点だったかもしれないです。最初、コーチに「不安と恐怖でいっぱいです」と吐露したところ、「何が不安で何が恐怖なんですか?」とダイレクトに聞かれたんですよね。問われて考えてみると意外とキャッシュが全くなかったワケでもなかったし、仲間達も力強く仕事してくれているし、「あれ?何が恐怖なんだっけ?」となって。考えていくうちに自分が精神を病んだりカラダを壊すのが一番怖い、と気づきました。そこからは、自分が健康だったり幸せだったりすることにフォーカスしようと思って、ランニングを始めたり、子ども達と一緒に「コロナをどうしたら倒せるか」をテーマに家族会議をして、家庭内でモットーを話し合うような時間をつくったりしました。

 

同時に、感謝の念も湧き上がってきたのを覚えています。事業の方でいうと法人にキャッシュが今あるのは、9年間、辞めていったメンバーも含めて、これまでのスタッフの努力の結晶なんですよね、そしてそれはステイクホルダーの皆さんとの信頼関係があったから積み上げてこられたものでもあります。ファイナンシャルとソーシャルなキャピタルが自分達の周りに分厚くあるということに、改めて気づいたんです。

 

あとはチームの雰囲気ですね。最近参画したスタッフも含め、チームが機動的に動いてくれて帰国のオペレーションが思いのほかスムーズに進んだんです。当初の恐怖や不安が感謝に変わっていくことで、少し中長期の事業にも目を向けることができるようになっていった気がします。

 

家庭の方の変化でいうと、今は週3回、実家の父や保育士資格のある妹に、子ども達を見てもらっています。また、自分も週2回仕事を休んで、子どもに勉強を教える時間にあてています。あとは、なんとうちの職員の奥さんが、「手伝わせてください」といって、我が家に週2回来てくれています。思えば、自分達で何とかしなくてはと焦っていたところから、人の好意とか救いの手を求めていこうということに意識が変わっていったんだと思います。本当に、感謝しかないですが。

 

幸せ度は状況が大変であるがゆえに増していて、仕事も家庭もいろいろな人に支えられているという実感が普段の3倍くらい感覚としてありますね。仕事も家庭も相互に影響し合っているし、こういう仕事をしてソーシャルキャピタルに誰よりも恵まれている自分達が、率先してそれに依って立つ生き方を実践しようとしている、そんな感覚すらあります。

コロナがあったからこそ、一気にトランスフォームし始めた事業や組織

 

――小沼さんの変化は、組織や事業にどんな影響がありましたか。

 

3月中の全体会議で「この局面をどう乗り切るか?」みたいなテーマで、割と気合を入れたプレゼンをしました。その日、ホワイトボードに3つ作戦を書いたんですよ。「1.受け止める」、「2.今できることにフォーカスする」、「3.ピンチをチャンスに」、と書いて、それぞれの内容と考えを伝えました。

 

文字

 

また、将来予測に関する3つくらいのシナリオのうちネガティブなものもすべて話して、受け止めたうえで今できることを考えようと伝えました。その時のチームの雰囲気が明るかったのが、今も印象に残っています。

 

今、普段のクロスフィールズがやっていることとは全然違うことをやっていたりはするのですが、コロナの状況に合わせてトランスフォームして今があるという感じであり、コロナがあったからこそ、言うならばもともと進もうとしていた方向にもっと進んだ、という状態ですね。

 

わかりやすい例でいうと、リモートワークでも仕事できる感覚にすごく変わったなと思いますね。もともと1年半くらい前に参画してくれた管理マネジャーが改革に取り組んでくれていて、内部でのメールを禁止にしてSlackに移行したり、会計もアナログからfreeeに変えたり改革には着手していたんです。その彼からすると一気に進んだと感じているはずです。僕も含め、こういう世界まで見られるんだという感覚で新しい自立したチームの在り方を眺めることができている気がします。あとはチームのメンバーの1人を6月からNPO法人カタリバさんに半年間ほど留職させることにしているんですが、これなんかももともとやりたかったことだったりして、「働き方」領域の改革はどんどん進んでいます。

 

事業の方でも、ずっとやりたかったけど手が出せていなかったウィッシュリストみたいなものがあったんですが、もともとの事業が止まってしまった機に乗じて一気に進めようとしています。それによって一番、僕が喜々としている、みたいな。チームメンバーを既存事業から外して新規事業にアサインできるし、失敗してもとにかく進めようぜという雰囲気にもなりました。

 

もともとはどちらかというと熟議して意思決定するような風土の組織だったものの、今は「アジャイルにいこうぜ!まずやる日を決めよう。」みたいな雰囲気で議論が進んでいます。僕はキャラ的にもともとそういうタイプだと見られていた気もしますが、一気にそういう組織へと転換していくトップギアを入れられた気がします。

人々の共感力を高め「お互い様・支え合い」の社会をどう創るか、がこれからのテーマ

 

――これから先、やっていきたいことがあれば教えてください。

 

今後10年間で果たすべき価値やビジョンって何だろう?これからの時代に活躍する人材ってどんな人だろう?この状況下で僕達だからできることって何だろう?ということを問いの出発点として、今までの文脈を書き換える中で、新しいプロジェクトが進行中です。

 

Zoom会議

連日、ZOOM会議で新しい事業の可能性が議論されています

 

具体的には、ソーシャルセクター内でこれまでつなげられていなかった人と仕事をwithコロナの状況下だからこそマッチングする、ということに取り組もうとしています。当初、僕らが想定していたよりもニーズが集まってきていて、事業化できそうな感覚があります。「ソーシャルセクター全体の人事部」になって、ソーシャルセクターをどこまで社会に開いていけるか?というテーマにチャレンジしていきたいので、もっと目線をあげたり広げたりしていきたいですね。

 

もっと中長期のスパンでいうと、腰を落ち着けてNPOセクターでシナリオプランニングができたら面白いな、と考えています。先日、「これからはInterdependence(『お互い様』)の時代」という長々とした文章をブログに書いたんですけど、これからはどれだけソーシャルキャピタルを活かして生きるか、という時代にシフトしていくのではないかと思っています。

 

今、実は至善館という一昨年に新設された大学院にも通っていて、ゴールデンウィーク中も修士論文を書いていたんです。そこで勉強しているのも哲学とかリベラルアーツとかの分野。次やりたいプロジェクトがテーマの修士論文なのでちょうど構想を練っているんですが、「社会の分断が進むなか、どうやって人々の共感の力を高められるか?」みたいなことをテーマにチャレンジをしていきたいと思っています。コロナだからこそ進んだ部分はあると思いますし、そういったことには、中長期的にも、事業として取り組んでいけたらと思っています。

 

――ありがとうございました!

 

 

そのほか、NPO法人クロスフィールズの記事はこちら

>> 新興国「留職」プログラムを生み出したクロスフィールズの現場に密着!

>> 企業人の挑戦に伴走し、新興国の社会課題解決にもコミットする。NPO法人クロスフィールズで働くということ

>> 「中学生の頃から胸に秘めていた想い」クロスフィールズ創業ストーリー(1)松島由佳さん

>> 「自分が取り組むべき課題に100%向き合っていこうと決めた」クロスフィールズ創業ストーリー(2)松島由佳さん

>> 「ビジネスとNPOの接点には、ものすごい可能性があった」クロスフィールズ創業ストーリー(3)小沼大地さん

>> 「経済成長だけで、本当に人は幸せになれるのか?」クロスフィールズ創業ストーリー(4)小沼大地さん

 

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>> 経営者のあたまのなか。先の見通せないコロナ禍で、考え、動く経営者たちにインタビュー!

 

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クロスフィールズ新型コロナ
この記事を書いたユーザー
田中 多恵

田中 多恵

1983年千葉県出身。大学卒業後、㈱リクルートマネジメントソリューションズで組織/人材開発のコンサルティング営業を経て、2009年よりETIC.横浜ブランチ立ち上げに携わる。主に大学生のキャリア支援や起業相談を担当。プライベートでは、横浜在住で1児の母。

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