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#ローカルベンチャー

地方での起業を考える3つのモチベーションとは?ーローカルキャリアの始め方(第2回)-

2018.10.15 

 ローカルキャリアの始め方はまさに十人十色。この連載では、ローカル起業家それぞれが地方での起業に至るまでの経緯やその始め方に着目し、紐解いていきます。(連載第1回はこちら)

次回から、これまでインタビューをさせていただいたローカル起業家の中から数名をピックアップして詳しく紹介していきますが、今回はなぜ彼らが「地方での起業」に向かうのか、多くのローカル起業家に共通するモチベーションの大枠、そしてローカル起業家のモチベーションを構成する3つの型について考えたいと思います。

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なぜあの人は「地方での起業」を選んだの?

一口に地方での起業と言っても、そこに至るまでの経緯や取り組んでいる事業は千差万別。彼らはなぜチャンスもリソースも多い都市部ではなく、あえて地方での起業を選ぶのでしょうか?家賃や人件費といった固定費が抑えられる、競合が少ないといったメリットはありますが、今回はローカル起業家自身の「モチベーション」に着目してみたいと思います。

すでに地方でなんらかの事業を起こしている方々へのインタビューを重ねる中で、「なぜ地方なのか」の共通項が見えてきました。そもそもローカル起業家は地方をどうとらえているのかに注目してみると、多くのローカル起業家は、

①地方にこそポテンシャルがある

地方にこそ課題がある

もしくはその両方だと感じています。都会と比べると、地方は規模が小さかったり、ステークホルダーが少なかったりするので、課題の明確化や問題の数値化がやりやすいと語る起業家もいます。多かれ少なかれ、地方を社会実験の場としてとらえる視点をもっている方が多いようです。

そして、なぜ数多ある地方の中からその地域を選んだのかという点については、ローカルアイデンティティの有無によって明確に分かれます。ここでは「ローカルアイデンティティがある」という状態を、その地域の出身であったり、婚姻等によってその地域に縁ができたりというように、地域への帰属意識を潜在的に持ちやすい状態という意味で使いたいと思います。つまり、ローカルアイデンティティがある場合は、

③その地域だからこそなんとかしたい

という思いが根底にあるのです。

一方、ローカルアイデンティティがない場合は、たまたま事業に都合のいい物件が見つかったり、たまたま訪れたり、その地域がユニークな取組をしていることがきっかけだったりと、まさに

④その地域との縁

だと言えるでしょう。

地方への視点(①②)と、活動地域とのつながり(③④)の掛け合わせが、地方へのベクトルを生んでいるのです。

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3つのモチベーションから「地方での起業」を考える

それぞれが起業に至る経緯は実に様々ですが、これまでのインタビューから、ローカル起業家を支えるモチベーションは、大まかに以下の3つから構成されていると言えそうです。

①地域志向

これは、都市部でなく地方を拠点に生活や仕事がしたいという志向です。ローカルアイデンティティがある場合、ある特定の地域をなんとかしたい、その地域に根差した暮らしがしたいというように、特定の地域で活動することが当事者にとって重要となります。

②社会貢献志向

こちらはピンときやすいかと思いますが、「地域や社会に貢献したい」という欲求です。あることに課題を感じ、現状のシステムの変革につながる仕事、社会への影響力を感じられる仕事がしたいという思いがモチベーションとなっています。

③事業志向

これは起業志向と言い換えてもいいかもしれません。自分自身が主体となって事業を展開したい、収益を上げることで持続的な事業にしたいという志向を指します。

もちろん、どのローカル起業家も起業に至るまでには複合的なモチベーションや要因をもっていますし、3つのモチベーションの割合も人それぞれ違います。ですが、割合はともかくとしてローカル起業家となる方は多かれ少なかれこの3つの要素を兼ね備えていると言っていいでしょう。

誰もが初めから「起業家」だったわけではない

ところで、「起業家」と聞いて思い浮かべるのはどんな人物像ですか?楽天の三木谷社長や堀江貴文氏のような、バイタリティーにあふれていてアグレッシブ、普通の人にはないような発想と行動力の持ち主……というようなイメージをもっている人も少なくないかもしれません。

「起業家なんて自分とは程遠い存在……」と感じている人も多いかと思いますが、この連載に登場するのは初めから起業家だったという方ばかりではありません。

 

上記のモチベーションの3類型のうち、全てを兼ね備えている状態をA、2つ有している状態をB、1つ有している状態をC、どれもさほど強くない状態をDというカテゴリーに分け、それぞれ予想される働き方を整理したのが以下の表です。

ローカル起業家の類型構成㈰予想される働き方

Dを都市部でいわゆる「フツーの会社員」をやっている人だとすると、現在ローカル起業家として活躍している方の出発点の多くが、実はこのカテゴリーだったことが見えてきます。一足飛びにローカル起業家へと転身した方もいらっしゃいますが、まずは一定程度の収入を得ながら地域に入り、徐々に自分がその地域でやりたいことを事業化していくという入り方や、まずは都市部のNPO等で経験を積む方、都市部で事業を立ち上げる経験を積んでから地方へと活動の場を広げていく方など、2~3ステップ踏んでからローカル起業家に至っているケースも多いのです。

ローカル起業家の類型構成㈪インタビュイーの働き方

もし少しでも地方での起業に関心があれば、自分は今どのカテゴリーにいるのか、どんなステップを踏んでいけそうかといったことを考えながら連載を読んでいただくと、自分にあった「地方での起業」の道が自然と見えてくるかもしれません。

次回からは、ローカル起業家が地域に入ったきっかけや、地域の中での関係性の築き方、事業の広げ方などなど、1人1人に焦点を当てながら掘り下げていきたいと思います。アルバイトをしながら地域に入り、少しずつ町に変化を起こしていった方、大学のゼミで被災地を訪れたことをきっかけにそのまま居ついて起業した方、「5年で地元に戻る」と決めて実行した方、そもそも「ローカル」なキャリアをずっと歩んでこられた方……などなど、実に様々なタイプの「始め方」があるのです。「こんな始め方もあるんだ!」という発見がきっとあると思いますので、次回以降もお楽しみに!

 

この特集の他の記事はこちら

>> ローカルキャリアの始め方。地域で起業した経緯と始め方をクローズアップ!

 

この記事を書いたユーザー
茨木いずみ

茨木いずみ

宮崎県高千穂町出身。中高は熊本市内。一橋大学社会学部卒。在学中にパリ政治学院へ交換留学(1年間)。卒業後は株式会社ベネッセコーポレーションに入社し、DM営業に従事。 その後岩手県釜石市で復興支援員(釜援隊)として、まちづくり会社の設立や、組織マネジメント、高校生とのラジオ番組づくり、馬文化再生プロジェクト等に携わる(2013年~2015年)。2015年3月にNPO法人グローカルアカデミーを設立。事務局長を務める。2021年3月、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。

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