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震災後の厚真町でこそ、本気のやりたい!を見つけてほしい。 厚真ローカルベンチャースクールが再起動を決定して第3期生を募集中!

2018.12.06 

自分は将来何をしたいのか?誰しもそんな問いかけをしたことがあるはずです。けれど確信の持てる答えを見つけることは簡単ではありません。まわりの状況に合わせた妥協点を見つけて、とりあえず前に進もうとしていることもあると思います。

北海道厚真町で3期目の募集が始まっている「ローカルベンチャースクール」は、本気で自分のやりたいことと向き合う機会。自分のなかで温めていた想いが、くっきりと形となって現れてくるような体験が待っています。

〔注:本記事の内容は、9月6日の北海道胆振東部地震前の取材に基づいて書かれたものです。この地震で最大震度7を計測した厚真町の被害は甚大でした。大規模な土砂崩れや家屋倒壊などで犠牲者は36名にのぼり、11月初時点で仮設住宅への入居も始まったばかりです。そんな状況で、厚真町は当初、今年度のローカルベンチャースクールを中止せざるを得ないと判断しました。しかし、先輩の移住者・起業者たちをはじめとする地域住民が力強く立ち上がろうとする姿に、「人材の好循環が始まろうとしていたこの取り組みをここで終わらせてしまってはいけない」と奮起。当初のスケジュールを変更してローカルベンチャースクールを再起動させることを決定したのです。〕

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新千歳空港から車で約30分と交通の便が良く、農業を中心に、林業、畜産、酪農、漁業など一次産業が盛んな厚真町。

自分のやりたいことと正直に向き合ってほしい

「厚真町ローカルベンチャースクール」は、厚真町役場と今年の5月に立ち上がった株式会社エーゼロ厚真が共同で進める、起業を支援することを目的としたプログラムです。

参加者の事業プランが採択されれば、実際に厚真町に移住して起業、あるいは支援を受けながら起業準備や地域での就職を検討することも可能です。

採択までのプロセスが一般企業の採用方法とは異なるため、実際に参加してみないと、その全貌をつかむのは難しいかもしれません。

けれど今回、厚真町役場産業経済課の宮久史さん、スクールプログラムに参加した村上紗希さん、エーゼロ厚真の小倉文香さんの話を聞くなかで、このプログラムの根幹に何があるのかが見えてきました。

 

「このスクールは正直に自分のやりたいことを伝える場です。」

 

取材した3人は口を揃えてそう語ってくれました。採択されるまでには、エントリーシートの記入、書類審査後に一次選考合宿、最終選考会と段階があり、約5カ月間、「自分は何をやりたいのか」という問いに参加者は向き合い続けることになるそうです。

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厚真町役場の宮さん。林業を担当しつつ、地域活性に関わる仕事も積極的に行っている。厚真町ローカルベンチャースクールの“いいだしっぺ”。

2016年に厚真町へローカルベンチャースクールを導入したのが厚真町役場の宮さんです。

以前から、地域おこし協力隊の募集方法を変えたいと思っていた宮さんは、西粟倉村で実施されていたローカルベンチャースクールを知り「これだ!」と思ったそうです。

 

「従来、地域おこし協力隊の募集をするときには、林業や農業支援といった枠組みを設けていましたが、受け入れに限界を感じることもありました。役場の考えに寄り添ってもらうのではなく、『厚真で何かやりたい』という人に、役場がどう寄り添えるかが大事なんじゃないかと思っていました。」

 

地域おこし協力隊の任期は長くて3年。もし地域で起業したいのであれば、この期間、めいっぱい自分の事業に取り組まなければ、経営を軌道に乗せることは難しいはず。これまでは協力隊の仕事と自分のやりたいこととの間に多少のズレが発生してしまい、二つのことを同時にこなさなければならない状態もあったそうです。

 

「僕らが期待しているのは、どんな仕事をしてもらうのかというだけではなく、その人がその人らしく厚真町で幸せに暮らしていってくれるということです。」

採択されたプランは多種多様

1期目の募集となった2016年に採択されたプランは3つ。伐採した木を馬で運び出す「馬搬(ばはん)」という技術で林業をするプラン。アンティークカメラやワーゲンバスなどさまざまなものを扱う貿易商としての事業を厚真町でやりたいというプラン。このほか会社に籍を起きつつ地域の業務に従事できる地域おこし企業人制度を利用し、地域の特産品を作りだすプランです。

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岩手県の遠野市で馬搬に出会い、魅力に引き込まれた西埜将世さん。現在、地域おこし協力隊として厚真町で馬搬に取り組んでいる。

2期目となった昨年は、起業を支援するローカルベンチャースクールだけでなく、起業か、就職か、そうでない道かを研究する「ローカルライフラボ」という取り組みも実施されました。ラボ生のうち3名が地域おこし協力隊として今春から活動を始めています。すぐに起業するのではなく、それぞれに研究テーマを持ちながら、厚真で何ができるのか試行錯誤中です。

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今年4月から厚真町に移住して活動を始めた村上さん。札幌でテレビ制作会社のADやフリーペーパーの企画営業などさまざまな仕事をしていた。

その一人である村上さんの研究テーマは「厚真町の魅力を内側から伝える地域ライターになる」こと。現在、観光サイトの記事などを執筆しながら、ライターとしての修行を続けています。そのかたわらで厚真町の食材を使った「ご当地カレー」の開発にも取り組む日々。この二つを探求するきっかけとなったのは、一次選考合宿での出来事でした。

当初、村上さんが考えていたテーマは「地域課題解決のための求人サイトを作る」。以前に札幌の観光パンフレットの企画営業の仕事に携わっていたときに、訪ねた先々で人手が足りない状況があることを知ったことから生まれたアイデアです。

 

「地方には面白い会社がたくさんあるのに、知られていないなんてもったいないと思っていました。」

 

一次選考合宿は経験豊富なメンターやコーディネーター、役場の職員らと事業プランを徹底的に検証する機会です。村上さんは面談のなかで、この事業プランを成立させるためには、一人ではできない膨大な作業があること、また厚真町だけでなく北海道全体を視野に入れなければならないことなど、さまざまなことに気づいたそうです。仕事の内容が具体化されるなかで「これは自分が本当にやりたいことなのか?」という疑問が頭をもたげていったといいます。

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ローカルベンチャースクールの様子。多くの起業家を輩出してきたチーフメンター・勝屋久さんによる講義。

「求人サイトは手段に囚われていた部分がありました。ローカルベンチャースクールの中でいい意味で、頭をかち割られるような体験をして、すべてを白紙に戻したんです(笑)。」

 

やらなければならないことが膨らむなかで見えなくなっていた“ある想い”に気づいた村上さん。合宿を通じて取り繕っていた殻が破れ、自分が突き動かされる核が浮かび上がってきたそうです。

 

「書くことが好き。人の笑顔が見たい。」

 

本当に好きなことを突き詰めていくなかで「地域ライターになる」という自分の将来像が見えてきた村上さん。面白いのは、最終選考のプレゼンテーションを行った際に、食べることも好きなので厚真町の食材を生かした「ご当地カレー」もつくってみたいとふと口をついて出た言葉に、予想以上の反響があったこと。書くことと同時に食べることも好きなことを再認識し、どちらの気持ちにも歯止めをかけず、その両方の可能性を模索するようになりました。

 

「合宿を経て、メンターの方に『みちがえるように変わった』と言われました。わたしのプランが採択されたのは、純粋に“好き好きオーラ”が出ていたからかもしれません。」

 

現在も、役場やエーゼロの人たちと定期的な面談を続けています。そして別々の柱であった文筆と食が、いま一本の道になっていきそうだと村上さんは笑顔を見せてくれました。

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サーフィンのメッカとしても知られる厚真町。年間約6万人のサーファーが集まるという。

まずは自分の心に問いかけてから

ローカルベンチャースクールの募集は今年が3期目です。役場と連携しながらスクールプログラムを運営するエーゼロ厚真のスタッフである小倉文香さんに、このプログラムに興味を持つ人は、どんな気持ちでエントリーをしたらよいかをたずねてみました。

 

「大切なのは想いの強さです。」

 

選考会というと、事業がすぐに軌道に乗りそうな分かりやすいプランが選ばれると思いがちですが、ローカルベンチャースクールは違います。

もしエントリーをしようとするならば、例えば自分がこれまで強く惹かれたものとはなんだったか? いちばん居心地がいいと感じる時間や場所は何か?などについて振り返り、まずは自分と向き合う機会をつくってから、エントリーシートに想いのたけをぶつけてみることが必要となります。

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エーゼロ厚真の小倉さん。ローカルベンチャースクールの運営ほか、さまざまな仕事を行う。厚真に移住してからサーフィンを始めたそうで、海に行くと必ずゴミを拾っている。

エントリーする人たちに新しい挑戦を求めるだけでなく、運営側もつねにこのプログラムのあり方を問い続けています。 厚真町という地域や参加者の実情を踏まえながら、3期目には、さまざまなタイプの採択方法を設けました。 精度の高い事業プランの人には、移住後すぐに起業できるような仕組みを、“想いの強さ”は誰よりもあるけれども、まだまだ荒削りなプランの人には、準備や研究する期間を設け、面談や研修などを通じて事業をブラッシュアップできるようにしました。

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エントリータイプの解説。

エントリーに選択肢を設けたのは、移住してから事業を立ち上げるためには、一定の助走期間が必要な人もいると考えたことから。

 

「ローカルベンチャースクールによって、役場の方々とのつながりができるし、卒業生たちに仲間意識が生まれます。たんに移住するだけでは孤立してしまうこともありますが、事業プランを応援してくれる人ができるというのもスクールの重要な役割だと思います。」

 

地域になかった新しい事業を行う場合、それを住民に理解してもらうには時間がかかります。

地域をよく知る人たちが自分を応援してくれることは、事業をスムーズに行ううえで欠かせないポイント。

移住前に、こうしたサポーターができることは、地域では特に大きな力となるはずです。

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厚真町が保育園をリノベーションしてつくったシェアサテライトオフィスの一角にエーゼロ厚真がある。キッチンやホールもあり、イベントスペースとしても活用されている。

幸せに暮らす人が増えることで未来が見える

さて、ここまで紹介してきて「厚真町ローカルベンチャースクール」に興味を持った人がいたら、最初の行動としておススメしたいのは、まずは実際に現地をたずねてみることです。

厚真町はハスカップの作付け面積が日本一。また、米や野菜などの農業を中心に、林業、畜産、酪農、漁業など一次産業が盛んな町でもあります。

今回取材した村上さんは、厚真町には美味しい食材があふれているのに知られていないなんてもったいないと、「ご当地カレー」の開発で魅力を伝えようという試みをしています。こんなふうに、自分の好きに厚真町らしさを掛け合わせることで、個性的なアイデアが生まれる可能性があるのです。

 

「厚真町には安心して自分のやりたいことを話せる空気があるんです。」(村上さん)

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地域おこし協力隊のデスクもシェアサテライトオフィスにあり、エーゼロ厚真のスタッフと日々顔を合せる。海が近く清々しい風が吹く場所。

役場の宮さんが、ローカルベンチャースクールを通じて「厚真町で幸せに暮らしていくこと」が大切だと語っていた言葉の意味が、村上さんのハツラツとした表情からも伝わってくるように思いました。

 

「自分のやりたいことを実現している幸せな人が集まることで、厚真の次の未来が見えてくるんじゃないかと思っています。多様な人が集まり、相互に関係しながら、新たな人材が惹きこまれるような地域社会を作っていく。そんな人材や事業の循環を通して『持続可能な社会』に近づいていきたい。自分の生きる場所として厚真を選んでくれたら、役場の僕らとしても覚悟を持って全力でサポートします。飾らない自分の気持ちを抱きしめて、スクールに飛び込んできてほしいですね。」(宮さん)

 

エントリーの締め切りは12月20日。年齢や居住地などはいっさい問わないという「厚真町ローカルベンチャースクール」。自分が本当にやりたいことを突き詰めたいという想いがある方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょう?

 

「厚真町が震災前の姿に戻ることはなくても、これをバネにして新しい価値を生み出すことはできる。こんな時だからこそ、むしろ未来の仲間になってくれる人たちに加わって欲しいと思います。いまの厚真を選んでくれる人の挑戦をお待ちしています」(宮さん)

 

エントリーはこちら → https://www.a-zero.co.jp/lvslll-atsuma-lvs

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この記事を書いたユーザー
來嶋 路子

來嶋 路子

編集者。アートの雑誌や書籍の編集を手掛け、『みづゑ』編集長や『美術手帖』副編集長を務める。2015年にフリーとなり「ミチクル編集工房」設立。5年前から拠点を北海道に移し、東京との二拠点暮らしを開始。岩見沢でエコビレッジをつくりたいと奮闘中。その道のりをウェブ「コロカル」にて連載中。http://michikuru.com

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