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ピンチの中で生まれた2つの事業がグッドデザイン賞を受賞。エフライフ小笠原さんがコロナ禍で実感した「幸せの基準」とは?

2021.02.15 

コロナ禍での暮らしの変化のなか、これから自分は何を大切に生きていきたいのか、考え向き合った人も少なくないのではないでしょうか。

 

今回お話を伺ったのは、東日本大震災を機に3つのf(エフ)――family(家族)、friend(友達)、future(未来)を大切にしたいと考え、「株式会社エフライフ(以下、エフライフ)」を創業された小笠原 隼人さんです。

 

「自分にとって、この社会にとって、本当に大切なものって何なのだろう」と向き合った結果、地域の人が共に食卓を囲むコミュニティキッチン、多拠点居住者向けシェアハウス・ゲストハウス、ローカルスナックの経営を続けてきたエフライフ。新型コロナウイルス感染拡大では、大きな試練に直面しました。しかしながら、ピンチの中で生まれた2つのプロジェクトは、2020年度グッドデザイン賞を受賞。

 

小笠原さんはいったいこの危機の中で何を考えどう動き、ピンチをチャンスに変えていったのでしょうか。

 

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小笠原 隼人(おがさわら・はやと)

埼玉県所沢市生まれ。一橋大学商学部卒業。在学中、(株)RCFやNPO法人ETIC.などでインターン経験を積む。23歳の時、母の死をきっかけに、自分の中の本当に大切なものを大切にして生きていくことの重要性に気付く。新卒で当時葬儀サポート事業を運営していたアクトインディ株式会社に勤め、そこで人の命の脆さやはかなさを目の当たりにし、自分になにができるのかと問う日々。震災後、福島県を初めて訪れ、いくつもの出会いや縁に導かれ移住を決意。震災を乗り越えようと奮闘する福島の人々、そこへ集まった個性豊かな仲間たちとの出会いを通して、福島の”人”の魅力に惚れこんでいく。大切なものを大切にして生きていくライフスタイルを福島から拡げていくことを目指し、2017年 (株)エフライフを設立。クリエイティブな企画を考えること、人の内面的な理解や成長に関わることが得意分野。家族や仲間と楽しく食事を囲むことが好き。

コロナ禍で、ZOOMやインスタグラムを活用して福島のおいしいものを届ける

 

――グッドデザイン賞おめでとうございます!受賞された事業の内容を教えていただけますか?

 

まず一つ目は、日本酒に詳しい人もそうでない人も、新しいお酒とおつまみとの美味しさに出逢えるプロジェクト「fukunomo」 です。

 

福島は、全国新酒鑑評会で7年連続金賞受賞数日本一を記録しているんですよ。そんな福島の日本酒と、その日本酒に合うおつまみを福島の酒蔵と一緒に選んで、特別冊子と一緒に全国にお送りしています。

 

コロナ以降は、福島の酒蔵と日本全国をつなぐオンライン蔵見学や、蔵元とつながれるオンライン酒の会なども開催を始めました。現在まで41の酒蔵とコラボ企画を行っています。

 

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fukunomoセットの一例

 

もう一つは、福島県唯一の百貨店「うすい百貨店」にオープンした、「あなたを家でひとりにさせないカレー屋さん」がコンセプトの地産地消カレーショップ「with curry」です。

 

オープンから毎日19時にインスタグラムでカレースタッフのライブ配信を行い、お客さまに「一緒にカレーを食べる」体験をお届けしてきましたが、つい先日からコンセプトを進化させ、毎日カレー配信ではなく毎日エフライフの各種サービスアカウントで日替わりでメンバーが一緒にお酒を呑んだり、トークをしたり、いろいろなコンテンツを配信して、カレー以外の方法も含めて「あなたを家でひとりにしない」を実現しています。

 

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インスタグラムでのライブ配信の様子

 

緊急事態宣言で、新卒社員の仕事がゼロに。ピンチをチャンスに変えて生まれた新規事業

 

――それぞれコロナ禍がきっかけで生まれた事業だと伺いましたが、どのような発想から生まれたのでしょうか。

 

コロナ以前は順調に売上を伸ばしていたローカルスナック「Local Snack SHOKU SHOKU FUKUSHIMA」を事業の柱にしていたのですが、4月の緊急事態宣言で休業を余儀なくされて、いわば強制的に考え方を切り替えなくてはならなかったんです。

 

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コロナ以前のローカルスナック「Local Snack SHOKU SHOKU FUKUSHIMA」

 

「fukunomo」で始めたオンライン酒の会は、実はコロナ以前からずっとやりたかった企画でしたが、これまではZOOM飲み会の認知度が低く開催を踏み切れずにいました。ZOOMの認知度が上がった今こそとスタートしましたが、酒蔵さんの生の声をお届けできるようになって、始めてよかったなと感じています。

 

また、エフライフには4月入社の新卒スタッフが1人いて、彼女の仕事がない状態になってしまい、2人でどうしようかと話し合う中で、偶然うすい百貨店のテナントが空くという話をいただきました。

 

現在「with curry」の店長をつとめている彼女は、スリランカ、インドでの留学経験があり、スパイスカレーが大好物でした。同時に、コロナ禍での一人暮らしの中で、食事を準備する大変さや不自由さ、寂しさを感じていたようで。そこから「あなたを家でひとりにさせないカレー屋さん」というコンセプトが生まれました。

 

また、エフライフでは2018年より「復興庁クラウドファンディング支援事業」の地域コーディネーターとして、福島・宮城・岩手の事業者さんらの相談、各種サポートを承ってきました(「Local Crowdfunding Lab」はこちら)。そこでのノウハウを活かすかたちで店のオープンのためにクラウドファンディングに挑戦し、彼女もとても頑張ってくれて、無事に目標金額を達成できたんです。

 

Local Crowdfunding Lab相談風景

これまでのLocal Crowdfunding Labの相談風景

 

8月にはイートインスペースを備えた店舗をオープンすることができて、今まで時間がなくて挑戦できなかった通販もこの機会に挑戦しようと、オリジナルトマトチキンカレーのスパイスキット、チャイキットの通販を始めることができました。これから、スパイスキットのラインナップを拡充するなど、店舗だけでなく通販のメニューも強化していく予定です。

 

――新卒で新規事業の立ち上げをいきなりご経験されたのですね。

 

彼女は半年ほどエフライフでのインターン経験があって、その期間に寝食を共にしていろんな経験を重ねてきました。そこから生まれた互いへの信頼感がベースにあったからできたことで、それなしでは無理だったと思います。

 

本人はゆっくり仕事に慣れていくつもりでいましたし、僕自身ももっと伸び伸び働いてもらう予定で今回の就職の話は決まっていて、それがいきなりクラウドファンディング、新規店舗の店長、半数以上が自分より年上のアルバイト10名をまとめなくてはいけない状態になってしまいましたから。

 

彼女には毎日負荷がかかっていて、正直これまで、「このままだと続けられないのでは」と感じる危機も何度もありました。ただそんな環境で、ものすごく成長してくれています。

事業の成長や黒字化を求めながらも、一番の焦点は働く一人ひとりの人生の幸せにある

 

――新型コロナウイルス感染拡大が深刻さを増すなか、何を思われ経営されていますか?

 

終わりが見えないなか、夢を語ることが得意な分、良くも悪くも楽観的に考えてしまう自分がいます。一方で、銀行の残高は減っていくし、弱気になってしまう自分もいて。

 

これまで社員は全員フルタイムで働いてもらって、給料もコロナ以前と変わらず全額支払ってきているんですが、このままの状態が続くと苦しくなってくるだろうなという危機感があります。来期は行政の支援も減ることを前提に、厳しくシミュレーションしていかないといけないなと思っています。

 

また、災害に遭うと自分の中の優先順位や価値観が明らかになりますよね。やっぱり自分にとっては、「家族や仲間と一緒に、楽しくごはんを食べられること」が幸せの基準になっていることは揺るぎがないと思いました。仕事がなくなって本当に苦しくなっても、それができていたら大丈夫だと。

 

事業の成長や黒字化は求めていきますが、それよりも働く一人ひとりが幸せになることの方が大事だと思っていて、エフライフという会社の船が乗っている人や関わるお客さんとってプラスになるようなことをできる限り一生懸命やろうと思っていますが、自分を含めたそれぞれの人生の幸せに焦点を当てていきたいですね。

 

――ありがとうございました!

 

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>> 経営者のあたまのなか。先の見通せないコロナ禍で、考え、動く経営者たちにインタビュー!

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この記事を書いたユーザー
桐田理恵

桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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