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総合商社から急成長NPOへ転職!NPO法人クロスフィールズ・斎藤陽介さんインタビュー

2014.07.24 

ビジネスパーソンを新興国のNPOへ派遣し、スキルを活かして現地の社会課題解決に挑むプログラム「留職」を展開するNPO法人クロスフィールズ。2011年5月の創業以来、15社、32名のビジネスパーソンを5カ国(2014年7月時点)に派遣してきました。

今回は、2014年2月から「プロジェクトマネージャー」として、留職のコーディネートや新規事業開発など幅広く活躍し、クロスフィールズを支えている斎藤陽介さん(29)にお話をうかがいました。 NPO法人クロスフィールズ・斎藤陽介さん

多忙な業務の合間にお時間をいただき、夜の喫茶店にてお話をうかがいました。

『Tarzan』に登場したNPO職員

石川:いきなり仕事と関係ない話ですが、以前に、Tarzan(ターザン by マガジンハウス社)に登場されたというお話をうかがいました。

斉藤:トライアスロンをやっていて健康だということで、取り上げていただいたみたいです。でも内容は、健康系として紹介されるかと思いきや、「健康そうだけど体が歪んでいる人」ということで、オフィスでの座り方や歩き方とかをチェックして、こういうところで歪んでいますね、だからこういう姿勢にしましょうとか、そのようなことを推奨する記事になっていますが(笑)。

石川:転職早々、異色のメディア露出ですね。では、お仕事の内容についてもうかがってもよろしいですか?

斎藤:僕は2014年の2月1日から、クロスフィールズで働いています。インドネシアの空港で由佳さん(松島由佳さん、クロスフィールズ共同創業者・副代表)が出迎えてくれて、「入団おめでとう!」と。それがクロスフィールズでの勤務のスタートでした。

石川:なかなか刺激的なスタートですね。

斎藤:僕の肩書きは、「プロジェクトマネージャー」というものです。留職を導入することが決定したクライアント企業において、留職派遣者の選抜や、派遣先団体の選定などを担っています。 プロジェクト実施中は、留職者の学びが最大化されるよう、現地にも同行してディスカッションパートナーやコーチのような役割を担い、一緒にプロジェクトを作り上げています。僕らはよくこの仕事のことを、"伴走者"と言っています。あとは、新規に立ち上げる国内版留職プログラムの主担当もしています。

石川:入団後いきなりインドネシアでスタートして、既存の留職プログラムの実行と、新規事業の担当をされていると。

斎藤:そうですね。クロスフィールズはベンチャーなので、これだけやっていればいいということはなく、様々なプロジェクトに関わることができるところが魅力ですね。

石川:なるほど。では、気になる転職の経緯についてうかがってもよろしいですか? NPO法人クロスフィールズ・斎藤陽介さん

斎藤さんが特集されたTarzanとともに。クロスフィールズのオフィスにて。

法人の形式より、その組織で何をやるかが大事

斎藤:はい、クロスフィールズに転職する前は、総合商社で6年間働いていました。ちょっと同期の中でも変わったキャリアで、入社初日の4月1日、「あなたは関係会社に出向です。パソコンを持って神保町にあるオフィスに行ってください」と言われたんです。 ほとんどの同期が本社配属になるところを、僕はたったひとりで船舶関連の関係会社に赴くことになりました。最初はびっくりしたのですが、どんどん新規のビジネスを開拓できるポジションでやらせていただき、「商社って最高に面白いじゃん」と思っていました。

石川:そんな順風満帆なキャリアから、創業間もないスタートアップNPOへ。かなり思いきった転職をされましたね。

斎藤:よく皆から「なんでNPO?」と言われるのですが、僕は企業やNPOという組織の形態にはこだわりがありません。大学生の時に4年間どっぷりアイセック*で海外のNPOやNGOに関わっていたことがあったのかもしれませんが、法人の形式より、その組織で何をやるかが大事だと思っています。 * NPO法人アイセック・ジャパン(AIESEC in Japan)は、海外インターンシップを運営する国際的な学生団体。斎藤さんは日本人の大学生を海外のNPO・NGOに送るつなぎの業務を担当していたそうです。

石川:NPOやNGOが身近な存在だったのですね。では、なぜクロスフィールズへ?

斎藤:関係会社への出向から3年強を経て本社にもどることになったのですが、そこでの経験が関係している気がします。入社当時は、若手同士で「商社でこれがやりたい」とか、「MBAとって起業したい」とか熱をもって語る機会が多かったのですが、3年経って、そろそろ異動でこの部署だとか、海外研修の時期だとか、何かそういう社内のことばかりが多く話題に上るようになっていました。それも人生の大事な話ですが、もともと持っていた夢とか情熱を共有し合う機会が減ってしまうのはちょっと寂しいなと思って。 自分自身も目の前の仕事と格闘するなかで、一日の大半を割いている働く時間をどうしたらより活き活きと過ごせるのか、と考え始めました。もう少し、人生の中で目的を持って働くとか、自分のパーソナルなミッションを達成するために働くとか、そういうことを出来る世の中になったらいいなと思っていたんです。

石川:なるほど。

斎藤:極めつけは研修で出会ったシンガポール支店の現地スタッフの一言でした。「日本の企業にいるとエネルギーが吸い取られる」と。そう言って彼女は、インドの会社に転職して行きました。その言葉は、日系企業で働く自分としてはすごくショックでした。そういったことがあって、ずっと海外に向かっていた僕の問題意識が、日本国内の「はたらく」に向かっていたんです。 留職者派遣のため、インドの派遣先候補団体を訪問する斎藤さん

留職者派遣のため、インドの派遣先候補団体を訪問する斎藤さん

創業者2人のあり方に共感して転職を決めた

石川:まさにクロスフィールズのビジョン**とシンクロしているように思います。それを、クロスフィールズなら実現できる、と思ったのはどうしてですか? ** クロスフィールズのビジョンは、「すべての人が「働くこと」を通じて、想い・情熱を実現することのできる世界」、「企業・行政・NPOがパートナーとなり、次々と社会の課題を解決している世界」。

斎藤:大地さん(代表・小沼大地さん)と由佳さん(副代表・松島由佳さん)とお話したとき、彼らの目指すものや、そこに向かう姿勢にすごく共感して、「一緒に働きたい人がここにいる」と思ったんです。

石川:どんなところに、それを感じたんですか?

斎藤:まずすごいと思ったのは、普通に考えると、とても青臭いところですね。こういう世界にしたいよねとか、そういうことを堂々と語れるということです。歳を重ねると人は普通、できることとできないことが段々わかってきて、理想があっても現実には難しいよね、と落とし所を見つけていくと思います。 でも、2人は「あったらいいよね」をまっすぐ見つめて、「やってみよう」という感じなのです。僕は本当に人の情熱に触れることが好きだから、ここでこの人たちと仕事をしたいと。

石川:小沼さんと松島さんは、そこにおいて一点の曇りもないですよね。僕は斎藤さんにも同じものを感じつつありますが。ところで、NPOへの転職は大変でしたか?同僚や家族とのコミュニケーションとか。

斎藤:転職というか、退職するときのコミュニケーションが思ったより大変でした。様々な方が真摯にアドバイスをくれたのですが、やはりNPOみたいなところにいったら、生活は大変だし結婚もできないぞ、考えなおせとの意見が多くて(笑)。他の部署を勧めて頂いたりもしたのですが、こっちは大きな不満があって辞めるわけではないので、条件の話になっても全くかみ合わない。 その時にあらためて、自分が進もうと思っている道は、世の中的には一般的なものではないんだと気づきました。でも、上の世代が猛烈に反対するくらい受け入れられていないということは、言い換えればそれだけ新しいということです。だからこそ、今そこにいくことに意味があるんじゃないかと思って、転職を決めました。それに、「陽介らしいね」と、応援してくれる同期もいましたし。

石川:転職の最大の壁は、退職することだったようですね。他には、何かありましたか?

斎藤:壁ではありませんが、転職エージェントから提案されていた日本発のグローバル企業と、外資の消費財メーカーも当初は候補に入っていました。どちらも幹部候補生的なポジションで、やりがいのある仕事だったと思います。もちろん給料も相応ですし、スキルも存分に伸ばせるし、活かせる。でもそれだけいい条件があっても選ばなかったというのは、やはり自分にとって、「働くことで、どういう想いを体現するのか・どんな価値を社会に返すのか」ということが見えにくかったのだろうと思います。 それに、実際クロスフィールズに転職してみても、キャリアが分断されたという感じはしていません。クロスフィールズのお客さんは企業ですから、ビジネスの世界との接点も多くあります。これまでビジネスの最前線で働いてきた、とてもプロフェッショナルとしての意識の高い仲間が集まっているので、日々の仕事も刺激的です。さらに少人数だからこそ、広範囲のことを一人で責任をもって進めていかなくてはならないので、かなり成長する環境でもあると思います。 インドの派遣先候補団体のメンバーと

インドの派遣先候補団体のメンバーと

仕事を通して企業、そして社会にインパクトを生み出す

石川:また俗っぽい質問に戻りますが、NPOだと生活できないぞ!という前職・総合商社の偉い人達のコメントには、反論できそうですか。

斎藤:はい、声を大にして普通に生活できますよ、と言いたいですね。当初は「生活大丈夫?おごってあげようか」とか半分冗談で言われていましたが、別に何かをお金のために制限しているということはありません。トライアスロンも結構お金のかかるスポーツではありますが、海外も含めて色んな所に遠征してレースにでています。 もちろん、収入はある程度減っているんですけど、それで変わったことといえば、「いらないものが見えてきた」ということですね。必要のないことにお金や時間を使わなくていい、という気付きがありました。

石川:それはおもしろいですね。かえって色んなことがすっきり見えてくると。ちなみに、結婚や子育てを考えるようになった男性職員が辞めていく「男性の寿退職」が目立つと言われるNPO業界ですが、そのあたりはどうでしょうか。ちょっと突っ込んだ質問ですみません。

斎藤:僕自身、その点での不安はあまりないです。他のNPOのことは分からないですが、クロスフィールズには結婚して子どもがいる男性職員もいて、そのあたりの展望が描けないということは特にありません。

石川:クロスフィールズでは、そのあたりの心配もなく仕事に打ち込める環境が整っているのですね。

斎藤:あと前職関連では、何十億という大きな数字を扱っていたところから、ゼロがいくつか減る仕事に変わってやりがいはどう?と聞かれることもあります。でも、僕はもとから数字の大小よりは、仕事で関わったお客さんをどれだけ喜ばせることができるか、ということを大事にしています。 一億もうかったけど、誰も嬉しくないよりは、多少小さくても、お客さんとめっちゃ仲良くなって、「斎藤さんと仕事できてよかった!」と思ってほしい。僕にとって仕事において大事なことは、そういうことなんですね。 それにクロスフィールズでの仕事も、大企業のトップマネジメントや人事部、さらには事業戦略を含めて深いディスカッションしていくので、大きな変革に直接つながっていく仕事です。さらには、企業に留まらず、社会にも大きなインパクトを出すことがクロスフィールズのミッションです。そういう意味で、社会的に大きな影響を与える仕事をしているという実感がありますね。 インドにて、派遣先候補団体との面談を終え、周辺地域の安全確認をしている斎藤さん

留職に際しては、派遣先地域の安全確認など周辺環境調査も実施するそうです。

これからの社会に求められる”ミッション・オリエンテッド”な働き方

石川:気持ちいいくらいさっぱりしていますね。では最後に、NPOに転職、あるいは思い切ってキャリアを変えようとしている人たちへのメッセージは何かありますか。

斎藤:そうですね、企業とNPOの両方を体験してみて思うことですが、これからの社会において、企業で働くこととNPOで働くことの垣根はどんどんなくなっていく、と感じています。実はクロスフィールズを卒業して、外資系の戦略コンサルティングファームに転職していった人もいますし、NPOが得意としているビジョン・ミッションオリエンテッドな仕事の仕方や考え方は、企業でも求められ始めています。これは、僕が企業でワークショップ運営に携わっていても、ひしひしと感じています。

石川:今後は斎藤さんのような企業とNPOの両方で働いたことのある人材のニーズは高まっていくのでしょうね。

斎藤:あとは、企業ではなくNPOだからこそ築ける、企業とのフラットな関係性がとても面白いです。企業の役員の人たちとも、すごく率直に議論することができます。「うちの会社、こんなことをやりたいと思っているんだ」、「それいいですね、ぜひやりましょう」みたいな。これもビジョンやミッションが明確だからできることだと思います。格式からはいらない。

石川:わかります、妙に格式張ったり、様式にとらわれ過ぎることがないですよね。不思議ですが。

斎藤:よりお客さんに真摯に向き合える環境なのかもしれません。大看板を背負っていくより、むしろ先方も腹を割って話してくださる。この「飛び越え感」というか、一気に距離を縮められるところ、いきなり本質的な議論に入れるところは、NPOで働く面白さかもしれないですね。

石川:あまり仮面をかぶる必要がなくなりますね。

斎藤:なめられちゃいけないからと、必要以上に偉ぶったり、強く見せたり、ということはなくなったかもしれません。極めてありのままですね。それは、お客さんと対峙するときだけでなくて、仕事と日常のオンオフの差がなくなっていくということでもあります。それもまた、僕にとっては心地よいあり方なんだと思います。

石川:ありがとうございます。クロスフィールズで働くということが、チャレンジを求めるビジネスパーソンにとって、いかにやりがいのある仕事かということがよくわかりました。企業とNPOの垣根はどんどん低くなってきていますね。貴重なお話、ありがとうございました! 

<2017年追記>

斉藤さんは2017年現在、ロンドン芸術大学の中のセントラルセントマーチンズカレッジ(デザインスクール)に留学し、イノベーションマネジメントの修士号を取得中。クロスフィールズで得た経験・学びをもとに、次なるチャレンジに挑んでいます。

求人・参考記事リンク

クロスフィールズの"プロジェクトマネージャー"について、現在活躍中の中山慎太郎さん・西川理菜さんに詳しくうかがったインタビューはこちらから。

>>企業人の挑戦に伴走し、新興国の社会課題解決にもコミットする。NPO法人クロスフィールズで働くということ

そして現在求人中の、クロスフィールズのお仕事はこちらから。

>>企業と社会課題の現場に橋をかけ、未来を切り拓く仕事です NPO法人クロスフィールズ

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この記事を書いたユーザー
石川 孔明

石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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