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感謝の気持ちを、おくりたい。 参加者5,000人を超える金沢発の家を「おくる」プロジェクト(後編)

2015.10.27 222view 

石川県金沢市から、お世話になった建物に感謝を込めてものを大切にする心を伝える取組みがはじまっています。今回は、「おくりいえプロジェクト」を続けているやまだのりこさんに話をうかがいました。

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おくりいえに集まる人々

銭湯、洋服屋、染物屋、建具屋、化粧品店…物が引き継がれていく楽しさ

人の暮らしていた家には、物があります。その人の仕事や暮らしをかたちづくっていた物から生まれるお話です。

やまだ 来る人の好みの物も違って、着物が好きな方、レトロな食器が好きな方がいたり。でも、そのお家によって何があるかは違います。一度、洋服屋さんでやったときは、レトロな服がいっぱいあるから、すごくお洒落な方がいっぱいきました。「絶対誰も着られないな」と思っていた奇抜な服も、この人なら似合うなって方が上手に持って行くんです。「もう素晴らしい! 行き先ってあるもんだな」と思いました。だから、お家によっていらっしゃる方が全然違うんです。

富 井 僕も空き家の片付けをやることもあるので「行き先がある」という言葉がすごくわかります。今のお話のように直接その人が、というわけではないのですが、やっていて、「これは誰かがいるかな」ってその誰かが頭に浮かんできます。

おくられるものと受け取る人

おくられる物と受け取る人

やまだ そうそうそう!おくりいえをやっていても、常連さんたちがいるから、着物が出てきたら「これは〇〇ちゃん」とか。その人はその回にいなかったりするんですけど、「これは□□くん、これは△△さん」とかちゃんと行き先が区別されていて、すごいなと思います。

私はほんとに物がいらない人間なのですが、「今日はのりちゃんにもあるの。これは持ってたらいいよ!」と、建築の古めの本をおくられることもありました。「誰々さん向け」という、互いの好みが参加しているうちにわかってくる、そこに参加している人じゃないとわからない楽しさもあります。

これは町家に限らずどこの空き家でも、やったらこんなおもしろさはあると思います。

捨てられるはずであった物が誰かの手に届き、再び使われることも魅力です。行き先があるということは、その人にとっても、元の持ち主にとっても、その場に居合わせた者にとっても、有難く嬉しい瞬間になっているようです。これまでに住居としての町家、銭湯、洋服屋、染物屋、建具屋、化粧品店などで開催されたおくりいえ。物を大切にするからこそ、その物を求めて足を運ぶ人の存在も大切な要素になっています。

また、重ねることで、おくりいえをする人々は、家の掃除、物に対する興味関心を通して互いを知ることとなります。その場にいなくても、物を見ると浮かぶ誰かがいる、そんな楽しみも生まれていきます。

家と物を介して見えてくる、時代の姿、人の姿

やまだ 何に使うかわからない物もおもしろいですね。おばあちゃんと20〜30代の人が一緒に参加していたりすると、若い世代にはまるでわからないことをおばあちゃんが教えてくれたり。もう放っておいても仲良くなっていきます。 やっている最中は誰がどんな仕事をしているのかは知らなかったのですが、何度か来るうちに訊いてみたら、みんなバラバラで、これってすごくいいなと思いました。

そこに参加しているおばちゃんたちは、建具屋さんや庭師さんがどこにいるのか日常の中ではわからない。そんな人たちがおくりいえで出会って、自然と仲良くなって、どんな人か知っているからこそ建具屋さんや庭師さんに仕事を頼んでいて、そんな姿を見ると「すごいよかったな」と思います。

ある人の、ある時代の暮らし

ある人の、ある時代の暮らし

富 井 同じものを見て、あーだこーだ言っている姿が浮かびます。 確かに、このような取組みにきている建具屋さんや庭師さんが、家を大事にしない姿は想像し難いです。この仕事のつながり方もおもしろいですね。

やまだ どちらにとってもいい効果で、思っているところに出会うことができた、ということだと思います。お互いそれを目的としてきているわけではないのですが、趣味嗜好、人となりのようなところを回りまわって見ているのかなと思います。

長く手の入ることのなかった町家は、暮らしがまるごと詰まったタイムカプセルのようでもあります。若い世代にとってはわからないことばかりです。そこにその時代を知る人が入ると、その時代の暮らしをまるごと受け取ることができます。物を介して、時代を行き来することで、互いを知ることもできます。

集まる人の職種はバラバラでも、家を介して、物を介してその人を知ることができます。誰かに頼みたい仕事があるとき、浮かぶ人がいるというのは素敵なことですね。頼みたい人、安心できる人。やまださん自身も、「このような取組みをしている方だから、頼みたいと思いました」と依頼を受けることもあったそうです。 おくっているのも、おくられているのも、家や物だけではなさそうです。

お互い「ありがとう」なんです。

やまだ 持って帰る人は、「いつもすいません。こんなにたくさん持って帰って、いいんですか?」というけど、掃除している側からしたら「とにかく全部持って帰って!」と思うので、お互い「ありがとう」なんです。

家の持ち主にとっては家の中にある物はすべていらない物、という状態でおくりいえをやるので、「あれが持って帰られたんですか?」と驚かれることが多いです。

中にはアーティストの方もいて、ガラスや木枠なんかを持って帰ったりします。アートの素材として捉えると、もらえる物は無限にあるな、と思いました。

みんなでおくることで、家も物も大切にでき、自分ができなくても大切にしてくれる人がいる、そんなことに気づきます。

やまだ 「おくりいえの相談は、やります!って、自分から探していくことではないと思うので。縁があれば、一つひとつ大事におくっていきたいという想いです」

この気持ちがおくりいえなのだと感じました。一つひとつのイベントから、一人ひとりの日常に染み込み、金沢のいまになっています。

やまださんが改修に関わった町家、夜の図書館べーる。夜だけ開かれるその図書館は、仕事帰りに立ち寄る人々の心の拠り所になっているようです。色んな本が持ち寄られ、使う度に掃除をするので、使う程にきれいになっていく場所です。

夜の図書館べーる(昼の姿)

夜の図書館べーる(昼の姿)

くつろぐ場所

夜の図書館べーる くつろぐ場所

家と物と人から生まれる日々は、楽しく心地の良い日常となっています。「街に開かれた町家が、街中に点在すると素敵だと思います」と語るやまださん。素敵な日から、素敵な日々へと続きます。そのときはぜひ、おくりいえをやってみてください。感謝の気持ちを伝えることからはじまる、素敵な日々があります。

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一級建築士事務所 あとりいえ。/やまだのりこ

1998.03 金沢工業大学工学部建築学科卒業 1998.04 - 2010.05 市内設計事務所勤務 2008.04 - 金沢工業大学非常勤講師 2009.06 - おくりいえプロジェクト 2010.08 - あとりいえ。 2011.04 - 金沢美術工芸大学非常勤講師

この記事を書いたユーザー

富井 俊

富井 俊

1986年福岡生まれ。九州工業大学大学院工学府建設社会工学専攻修了。小学校の校庭や都市公園、河川空間のデザインに取組む。修了後、宮崎県西米良村の観光施設運営、景観計画策定業務に携わる。その後、山梨県の総合学科高校建築デザイン系列助教諭。現在、再び西米良村に入りフリーランスとして活動。「ケアが生まれる場所を残し、つくっていきたい。居場所をつくる。」

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