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【後編】「企業の未来をリードする起業家型人材は、震災復興の現場からうまれる」 損保ジャパン・日本興亜損保「東日本大震災復興支援 社員派遣プログラム 最終報告会」レポート
2014.01.30
「東日本大震災復興支援 社員派遣プログラム」の最終報告会レポート前編に続き、後半では受入企業のリーダー・半谷栄寿さんと、CSRや環境・社会コミュニケーションの専門家・IIHOE川北秀人さんのお話を紹介します。
■ 前編:CSRリーダー酒井さんによるプログラム創設の背景と、社員派遣メンバーによる南相馬での体験談
<写真:福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会 代表理事:半谷栄寿さん>
プロフィール 1953年 福島県南相馬市生まれ 1978年 東京電力入社 1991年 環境NPOオフィス町内会を設立し以降代表を務め、森林の健全化にも取り組む 2005年 東京電力事業開発部長 2008年 同社執行役員 2010年 同社執行役員を退任 2011年9月 福島復興ソーラー株式会社代表取締役 2012年4月 一般社団法人福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会の代表理事 2013年3月 南相馬ソーラー・アグリパーク完成。市内3,300名の小中学生の内800名が既に体験
南相馬ソーラー・アグリパーク 代表理事・半谷栄寿さんのコメント:前職の東京電力に勤務していた際、新規事業を担当していました。その経験から言えるのは、新規事業の立ち上げにおいては、メンバーと時間と空間をともにしなければならない、ということです。そう思っていた私が、現場で働くスタッフ3人とは時間も空間も共有できていませんでした。そのことを、社員派遣プログラムで来てくださった9名の皆さんに気づかせていただきました。
今は自信をもって、「チームで仕事をしている」と言えます。 南相馬の私たちには、マニュアルも慣例も慣行もなく、何のためにこの事業をやっているのかを日々徹底的に考えています。福島の復興と、そのための人材育成という目的に沿って、それを実現する手段をゼロから自分達で創りだし、そして行動していく。 私たちの事業に関わってくださったことで、皆さんの日々のお仕事の参考になることがあるとすれば、それは損保ジャパンや日本興亜損保という企業の創業期の意志や目的を、どうやって日々の仕事に反映させていくかということだと思います。
今使っているマニュアルは正しいのか。慣例・慣行は本当にこれで良いのか。本当にお客様のためになるのか。それを問いかけることを忘れないでください。
社員派遣の意義は、価値創出のダイナミズムを体験できること
また、10年以上、損保ジャパンとNKSJグループのCSRレポートに第三者意見を寄せているIIHOEの川北秀人さんからは、報告会の最後に以下のようなコメントをいただきました。
<写真:社員派遣の意義について語るIIHOE川北秀人さん>
プロフィール 1964年大阪生まれ。87年に京都大学卒業後、(株)リクルートに入社。 国際採用・広報・営業支援などを担当し、91年に退職。国会議員の政策担当秘書などを務め、94年にIIHOE設立。 NPOや社会責任・貢献志向の企業のマネジメント、NPOと行政との協働の基盤づくり、CSRや環境・社会コミュニケーションの推進を支援している。2001年以来、環境社会報告書・CSRレポートへの第三者意見執筆は計25社97回、市民との対話のファシリテートは計27社86 回を担当。世界初の環境・社会報告書の読者調査である「環境・社会報告書リサー チ」(環境goo主催)でも、2001年の調査開始以来、企画・設計・分析を手がけている。
IIHOE川北秀人さん:企業にとっての本プログラムの意味として、復興に貢献できるということに加えて、人材育成という側面があると思います。では、なぜ混沌とした新規事業の現場に人材を送り込むことが重要なのでしょうか。そういった現場でしか学べないこととは何でしょうか。
派遣先だけでなく、損保ジャパン・日本興亜損保も成長していく必要があります。その成長とは、これまでの延長線上にあるものというよりは、海外の新規市場に打って出たり、国内に新たに生まれているニーズに新しいサービスで対応したりというような、これまでとは非連続的な事業を作り出すことによって達成されます。
新興市場でお仕事をされている方には自明でしょうが、新興市場の現場は混沌としています。そこには 、こうすればよいというマニュアルも、先行事例も、場合によってはデータも何もありません。滅茶苦茶な状況の中で、それでも価値を作っていく必要があるわけです。 海外に比べるとわかりにくいですが、国内でも同様の状況があります。新興市場と言って思い浮かべるタイやインドネシアも、数十年後には高齢化が始まります。
現在、高齢化に関しては世界の最先端を独走している日本の地方コミュニティは、考えようによっては年課題のフロンティアでもあるわけです。そこもまた、既存のルールや方法論が通用しない現場なのです。 一方で、日本の20代後半から30代のビジネスパーソンに最も欠けているものは何かというと、成長市場のダイナミズムを体感するということです。もちろん、それは個々の社員のせいではありません。市場環境が横ばいであり続けたために、既存の仕組みの中で生産性を向上させたり、シェアを拡大したり、といったことが仕事の中心であり続けたわけです。
つまり、現在の社員の多くは、何も準備されていない現場で働くという体験をしたことがないのです。 だからこそ、今回の社員派遣プログラムのような機会を意図的に活用して、国内の混沌とした価値創出の現場に送り込む必要があるのです。通常業務と比べ、お膳立てされていない、ルールもない、そもそも何の価値を創出するのかも考えぬかなければならない、そして課題はどんどんやってくるという修羅場の中から、企業の未来をリードする起業家的な人材が生まれてくるのだと思います。そういった人材は、ある種の辺境、自分がマジョリティとはいえないような苦しい環境から育ってくるものです。
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撮影・編集/田村真菜
1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、芸能活動や野宿での日本一周を通して、社会をサバイブする術を子ども時代に習得。大学在学時は、ポータルサイトのニュース編集者を務める傍ら、日本ジャーナリスト教育センターの立ち上げに従事。311後にNPO法人ETIC.に参画し、震災復興事業の情報発信や事務局などを担当。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。
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