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「NPOの”寄付を集める力”を支援」あいちコミュニティ財団事務局長・長谷川友紀さんインタビュー(1)

2014.04.19 

2013年に発足した愛知県初の市民コミュニティ財団、公益財団法人あいちコミュニティ財団。市民からの寄付を集めて、地域のNPOに助成する同財団は、これまでにのべ1,400人から2,000万円以上の寄付を集め、14事業へ助成してきました(2014年4月時点)。

寄付市場が未成熟と言われる日本で、どのようにファンドレイジング(寄付集め)を進めているのか。そして、なぜこれまで行政等が担ってきたNPOへの助成を、新たな市民立の財団が担う必要があるのか。また、東海地域には2005年から活動するコミュニティ・ユース・バンクmomo(代表理事・木村真樹さんインタビュー)がNPOへの融資を担っている中で、なぜ加えて財団が必要なのか。

地域の大企業から、あいちコミュニティ財団へ転職した、事務局長・長谷川友紀さんにお話をうかがいました。 事務局長/長谷川友紀さん

写真:あいちコミュニティ財団事務局長・長谷川友紀さん

地域を支える取り組みを支える、あいちコミュニティ財団の助成

石川::さっそくですが、あいちコミュニティ財団がどんなことをしているのか、教えていただけますか。

 

長谷川:あいちコミュニティ財団は、愛知県内の地域課題を「見える化」し、その解決に取り組むNPOを支援するために設立されました。日々の仕事としては、地域の課題を市民に伝え、寄付を集めて、NPOへ資金を助成しています。

 

石川:NPOへの融資は、NPOバンクであるコミュニティ・ユース・バンクmomoが提供していると思います。あいちコミュニティ財団で、融資ではなく助成*を行っているのは、なぜでしょうか?

*:簡単に言うと、融資=返さないといけないお金、助成=返さなくてもいいお金、という違いがあります。

 

長谷川:私もmomoの理事を務めているのですが、そこで相談を受ける際に、融資では対応しきれない案件が増えつつありました。取り組む課題が明確で、解決策も有効であることが証明されつつあるけれども、事業収入がなかなか得られないというケースです。例えば、山間部の田舎体験事業とか、就労支援事業とか、農業などであれば、サービスやモノを販売することによる事業収入を見込むことができます。でも、どうしても寄付に頼らざるをえない事業も少なくありません。

 

石川:例えば困窮者支援のように、当事者からサービスの対価をいただくことが難しい事業は数多いですよね。

 

長谷川:そういった事業は、融資ではどうしても支援しづらいのです。もうひとつは、社会実験的な事業です。素晴らしい取り組みなのだけれど、うまくいくかどうかは試してみないとわからないというケースです。そういった場合には、融資よりも、事業開発的な助成金のほうが適していると思います。

 

石川:なるほど、全く新しい取り組みの場合には、ベンチャー企業であれば投資を集めることができるけど、NPOでは資金調達が難しい。それで助成というメニューが必要になったのですね。社会実験は助成金で実施し、うまく機能することが証明できたら、事業展開のための融資を活用するというのはわかりやすいです。

地域の課題を「見える化」し、解決に取り組むNPOを支援

石川:具体的には、どんな助成をされているのですか?

 

長谷川:色々な取り組みがありますが、ユニークなものとして、名フィル(名古屋フィルハーモニー交響楽団)と連携したものがあります。小学生の子どもたちが名フィルとコンサートを実施するのですが、そこで得た収益を、NPOに寄付するという仕組みです。NPOへの寄付金額も、子どもたちが投票で決めます。

 

石川:小学生が、ファンドレイジング(寄付集め)をしつつ、寄付金額も決めているんですか。ファンドレイザーの英才教育ですね。 ファンドレイジング教室の様子

写真:助成対象事業者によるプレゼンテーションの様子

長谷川:そうですね。小学生は日本ファンドレイジング協会が実施している「寄付の教室」というプログラムに参加して、寄付について学んでからNPOへの寄付金額を決めるんです。音楽教育と寄付教育の両方を意図しているのが、このプログラムです。

 

石川:ただお金を集めて、金額を決めているだけではないんですね。そういう小学生が増えたら、地域の未来によい影響がありそうですね。他には、どんな取り組みがありますか?

 

長谷川:他の例では、事業指定プログラム「ミエルカ」という取り組みもあります。これは、参加するNPOが、財団と一緒になって寄付を集めるというプログラムです。NPOが取り組む地域や社会の課題と解決策を寄付カタログを作成するなどして、紹介しています。例えば、愛知県には外国人就労者が数多く居住していて、そこでは「ダブルリミテッド」という問題があります。

 

石川:初めてききました。「ダブルリミテッド」とは、どういう問題なのでしょう。

 

長谷川:日本で学ぶ外国人就労者の子どもたちが、日本語の学習につまずいてしまうことで、母国語・日本語の両方が未熟なままになってしまうという問題です。この問題に対して、にわとりの会という団体は、漢字学習カードを開発して、専門的なトレーニングを提供しています。こういった課題と解決策を伝えていくことで、共感した方から寄付という形で支援をいただくというのが、事業指定プログラム「ミエルカ」です。 日本語教室の様子

写真:音の出る漢字カードで学習する子どもたち(あいちコミュニティ財団より)

石川:取り組みだけでなく、問題の中身が「見える」ようになっているのですね。寄付者は、具体的な変化を買うように寄付することができる。何に使われるのかよくわからない寄付と比べると、「こうなってほしい」という未来に対する投資といったような、積極的なイメージがします。

目的は資金助成することではなく、資金調達の力をつけてもらうこと

石川:NPOへの助成自体は行政等も実施していると思うのですが、「地域の課題を市民に伝える」という点が興味深いですね。なぜ、そういった機能を持つことにしたのでしょうか。

 

長谷川:それは、財団の目的がNPOへ助成することではなく、NPOが資金調達する力をつけるお手伝いをする、というところにあるからです。寄付に限りませんが、資金調達を進める際には、自分達がどんな課題に取り組んでいて、その活動がどんな成果につながるかを伝えて、支援者を獲得していく必要があります。

 

石川:「こんな活動をしています」だけではなく、課題と解決策を提供する必要があるということですね。

 

長谷川:NPOが資金調達を強化するためには、この「共感してもらう力」が必要です。でも、それは限られた経営資源で運営しているNPO単体では難しかったりします。そこで、その部分と合わせて、資金調達力を含めた、組織基盤強化をサポートしようというのが、あいちコミュニティ財団の助成プログラムです。

 

石川::財団の代表理事の木村真樹さんにインタビューした際、「助成金が、成長を助けるお金になっていない」というお話をされていましたが、あいちコミュニティ財団の場合は、助成金をテコに、組織基盤強化を目指すことで、その部分をクリアしているのですね。

(続き)「白書」で地域の課題を伝える

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あいちコミュニティ財団事務局長/長谷川友紀

1987年愛知県刈谷市生まれ。学生時代に国際協力を学び、ボランティア活動に興味を持つ。短大卒業後、地元の自動車部品メーカーに就職し、 社内の社会貢献活動に社員ボランティアとして参加。地域や社会の課題解決に夢中になって取り組む人の姿に共感し、2010年春よりmomoでボランティアスタッフ(momoレンジャー)として活動を開始、11年からは理事を務める。ボランティアではなく、仕事で関わっていきたい気持ちが強くなり、12年8月に会社を退職。momoの事務局スタッフを経て、13年4月より公益財団法人あいちコミュニティ財団の事務局スタッフとして勤務。

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石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。