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「”白書”で地域の課題を伝える」あいちコミュニティ財団事務局長・長谷川 友紀さんインタビュー(2)

2014.04.21 

「NPOの"寄付を集める力"を支援する」に続き、あいちコミュニティ財団事務局長・長谷川友紀さんへのインタビューをお送りします。今回は、寄付を集める難しさと、工夫について伺いました。

(1)NPOの”寄付を集める力”を支援する お金の地産地消白書2011@愛知県版

写真:お金の地産地消白書2011@愛知県版

地域の課題を調査し「白書」にまとめ、市民に伝えていく

石川:2013年4月の発足以来、約1年が経ちましたが、全体としての寄付の集まりはいかがですか?

 

長谷川:丁寧に寄付集めをしてきた結果、1,400以上の寄付があり、総額としては2,000万円を超えました。(2014年4月時点)

 

石川:いったい、どうやってそれほどの寄付を集めたのでしょうか。

 

長谷川:あいちコミュニティ財団の寄付集めの特徴は、やっぱり「地域の課題をつたえて共感してもらう」ということだと思います。今、地域にはこんな課題があって、それに対してこんな取り組みがあります。それを支援することで、よりよい地域になっていくんです、ということをしっかり伝えるということです。

 

石川:これまで、どんなことを寄付者に伝えてきたのですか?

 

長谷川:愛知県というと、ものづくりが盛んで人口も増えていて、この先も大丈夫というイメージがあります。でも、今後ずっとそのままではないし、足元には色々な課題があります。だから、少しずつ担い手になってみませんか、というメッセージです。それを、将来の人口動態といった大きなものから、引きこもりの推計や外国人児童生徒数まで、様々な調査結果をもとにお伝えしています。 見える化WEB

愛知県内の社会課題を伝える、あいち「見える化」ウェブ

愛知県を中心とした19か所で説明会を開き、賛同者を集める

石川:本来はNPOが自ら実施する領域なのでしょうが、課題を深堀りして伝える役割をシンクタンク的にサポートしているのですね。では、そういった中身を、どのように伝えていったのですか?

 

長谷川:財団を設立する際には、地元愛知を中心とした全国行脚を行いました。現在、財団の役員・評議員として参加してくれている、設立準備会のみなさんにホスト役として人を集めたり会場をセッティングしたりしていただいて、財団の食事会・説明会を開きました。私や代表の木村が出向き、みんなで食事や軽食をはさみながら、あいちコミュニティ財団が何をしようとしているのか、どんな課題を解決しようとしているのかを伝えた上で、会場に集まっている人たちと一緒に何ができるかを話し合う場にしたのです。 長谷川友紀さん

財団設立記念パーティーで話す長谷川さん

石川:なるほど、仲間を巻き込む場として活用したのですね。

 

長谷川:毎回20名前後の方々に参加していただきました。それを各地で4ヶ月弱の間に合計19回実施しました。そうしてたくさんの人と顔を合わせて話す中で、「協力するよ」と言ってくれる人が現れて、少しずつ寄付が増えていきました。

 

石川: とにかく丁寧に、一人ひとりと向き合っているんですね。

単にお金を集めるのではなく、参加者になってもらうことが大切

長谷川:そうですね。冬には、クリスマスカードを送ったりもしました。これはやっていて面白かったし、たくさんの反応をいただいた取り組みでした。 あいちコミュニティ財団のクリスマスカード

写真:あいちコミュニティ財団のクリスマスカード

石川:きれいなカードですね。でも、なんでパンフレットを送った時には反応がなかったのに、クリスマスカードではそんなに反応があったのでしょう?

 

長谷川:年賀状だと埋もれてしまうからクリスマスカードにしようとか、ひと目で目を引く赤い封筒にしようとか、細かい工夫もしましたけれど、やっぱり直接ひとりひとりに私達からのメッセージを書いて協力をお願いしたということだと思います。

 

石川:どんな属性の人が寄付しやすいから、どれくらいダイレクトメールを送ろうとか、そういったマーケティング的な話ではなくて、ひとりひとりに丁寧にメッセージを届けることが大事だと。

 

長谷川:そうですね。あいちコミュニティ財団が存在する意味の一つには、社会課題の当事者や、周辺の人達がちょっとずつ、できる範囲で担い手になっていく、というものがあります。だから、単に大きな額の寄付が集まればいいとか、そういうことではないと思っています。ちゃんと社会課題や取り組みについて知っていただき、担い手として参加してもらうということが大切だと思いますね。

続き:(3)自分がやりたいことに素直に

(1)NPOの”寄付を集める力”を支援する

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あいちコミュニティ財団事務局長/長谷川友紀

1987年愛知県刈谷市生まれ。学生時代に国際協力を学び、ボランティア活動に興味を持つ。短大卒業後、地元の自動車部品メーカーに就職し、 社内の社会貢献活動に社員ボランティアとして参加。地域や社会の課題解決に夢中になって取り組む人の姿に共感し、2010年春よりmomoでボランティアスタッフ(momoレンジャー)として活動を開始、11年からは理事を務める。ボランティアではなく、仕事で関わっていきたい気持ちが強くなり、12年8月に会社を退職。momoの事務局スタッフを経て、13年4月より公益財団法人あいちコミュニティ財団の事務局スタッフとして勤務。

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石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。