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発酵と醸造・180万円で住宅・学びの場と子育て… 遠野ではじまった、地域の未来をつくる新しい社会実験のメンバー募集!

2016.06.13 

2016年5月30日。新しい社会実験の創設メンバーを募る募集説明会が都内で開催されました。「拡大・成長」で突き進んできたこれまでの資本主義社会の延長ではなく、「人間の創造力こそ本当の資本である」という考え方にたち、ポスト資本主義の可能性を実践・実験する社会実験プロジェクトです。 20160613_DRIVE_NCL1

“Next Commons Lab(ネクストコモンズラボ)”とは “Next Commons Lab”は、さまざまな領域で活動するメンバーが集まり、
プロジェクトを通じて地域社会と交わりながら、
ポスト資本主義社会を具現化する議論と実行の場です。
今を生きる私たちが、理想とする未来を思い描き、
自ら考え、手足を動かし、社会そのものを変えていく。
自由な精神と、良質なカオスの中で未来づくりがはじまります。(Next Commons Labウェブサイトより)

今回は5月30日に行われた募集説明会の内容を基に、Next Commons Labの取り組みについてご紹介します。6月17日(金)には名古屋にて説明会を開催予定です。ご関心ある方はウェブサイトをご覧ください。

『本当の資本とは、貨幣ではなく人間の創造力である』

Next Commons Labのコンセプトは、『本当の資本とは、貨幣ではなく人間の創造力である』というもの。「ポスト資本主義」を「今を生きる人たち」の手で具現化する取り組み、と説明されていますが、なぜ、今この取り組みをスタートしたのでしょうか。

主催者である林篤志氏がお話しされた内容をご紹介します。 _32A9135

会場でお話しされる林氏。会場には100名弱の参加者が集まった。

林氏) Next Commons Labの事務局をしている林です。 Next Commons Labの取り組みについて最初に申し上げておくと、これは地域活性やまちづくりためのプロジェクトではありません。資本主義社会の次の社会の姿である、ポスト資本主義社会を作る人・文化・仕組みを育むプラットフォームです。 2011年の震災後に、僕は東京から高知県の土佐山という人口1000人足らずの山村に移住をしました。そこで自然資本を基軸に、自然の資源を生かしたなりわいを創ることで実践的な学びを得る場、NPO法人土佐山アカデミーという団体を立ち上げ、これまでに約6500人の方にお越しいただき、約30組の方が移住しています。 僕自身もそうでしたが、田舎には「都市には無いつながり」や「自然」、「古き良き村社会」があるのではと思って多くの若者が移住してきています。ただ、実際に住んでみてわかったことは、多くの若者が夢見る理想郷は田舎にはない、ということでした。田舎に存在するのは、少し煩わしい村社会のなごり。想像していたような未来に向かって進んでいくようなものはありませんでした。 戦後の高度経済成長期に、近代化に伴って都市に人が流れ、資本主義が始まる。そんな中で、昔とは違う社会の形が生まれ、昔の仕組みではカバーできない課題が発生しはじめました。人口減少、核家族化、グローバル化。熾烈な競争によって成長してきた社会には、育児と仕事の両立などかつては無かった新しい課題が生まれています。 こうした問題は、古き良き昔の日本、例えば田舎に行けば解決するのでしょうか。そんなことはありません。日本には、新たに発生する課題を解決する機能がほとんど存在しないのです。 だからこそ、僕たちがこの取り組みで目指すものは、昔の村社会を取り戻すことでも、今の近代化社会の延長線上で進むことでもなく、その中間に位置する新しい社会の在り方を模索し、見出すことです。 そしてクリエイター、起業家、行政、企業の方と一緒に事業を作ることを通じて次の社会の形を考えることに挑戦したい。そう思ってこの仕組みを立ち上げました。

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Next Commons Labのコンセプト

具体的に今回は10のテーマを掲げています。
  1. Brewing(Beer Experience:ホップ栽培とクラフトビールで
地域を変える)
  2. Fermentation(発酵の達人 × ロート製薬:発酵を科学する)
  3. Technology (Local Tech Lab.:データビジュアライゼーション)
  4. Life(自然資本と農村社会:自然から経済をつくる、里山の暮しと社会を変えていく)
  5. Community(限界集落の存続と新規ビジネス:未来の村落のモデルケースをつくっていく)
  6. Housing(超低コスト住宅開発:180万円でつくる超低コスト住宅の研究開発プラットフォームの構築)
  7. Design(地域をデザインで変えていく:地域で起こる全てのモノ・コトにデザインを!)
  8. Education(学びの場とコミュニティ:地域内外の多様な人が行き交う、学びと憩いの場づくり)
  9. Food(フードハブ・プロジェクト:カフェをつくろう)
  10. Family(産前・産後ケアプロジェクト:安心な出産と子育てコミュニティ)
これらのテーマを実践していく地域として手を挙げていただいたのが岩手県遠野市です。この地域において、まずは実験的にスタートし、いずれは遠野市の外にも広げていきたいと思っています。 この仕組みが生み出す地域活性やまちづくりは、あくまでも副産物です。課題は多くの地域にとって共通課題であり、それを解決する一つの汎用的なツールとして今回の取り組みを活用していきたいと考えています。 僕たちの子供が大人になるタイミングで、未来に当たり前に採用されている社会の機能を創り上げていく。それをともに実践する創設メンバーを今回募集しています。

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Familyの領域においてパートナーとして伴走する渡辺敦子氏。遠野に移住した後に出産し、地域での出産の課題等を実感した。

仕組みを支える様々な仕掛け。ベーシック・インカムとパートナーシップ制度

本取り組みには特筆すべき2つの仕掛けが施されています。そのうち、プログラムリリース当初から大変な注目を集めたのが「ベーシック・インカム」制度。 ベーシック・インカムとは、basic(基本的)income(収入)、つまり最低所得保障制度の一種です。性別・年齢等に関わらず全ての国民に対して、生きるために必要な最低限の金額を一律で支給する制度のことを指します。

最近では、このベーシック・インカム導入に対してスイスが国民投票を行ったことが話題となりました。 結果としてスイスでは「否決」されましたが、ベーシック・インカムの効果として期待されている「福祉・社会保障」面と「生産性の向上」面の効果において、本取り組みでは後者の効果測定を行うことが可能となりそうです。

また、パートナーシップ制度にも専門家・職人・技術者等、その道のプロフェッショナルが揃い、サポートしながら進めるとのことです。

林氏) 10のテーマにエントリーいただき、創設メンバーとなった方には3年間で事業化まで目指していただきます。テーマによって専門性を身に着ける必要があるものは、初年度はインターンシップという形で専門家に弟子入りしていただき、その後、起業という流れです。 事業化までのステップはテーマによって異なりますが、共通するのは月額14万円のベーシック・インカムを支給するという点。これにより、最初の3年間はこのベーシック・インカムを基に生活することが保障されます。また、あくまでベーシック・インカムですので事業を立ち上げ、それ以上の収入を得ることも可能です。 そして一人で起業するのではなく、その分野の専門家がプロジェクトパートナーとなり、立ち上げに伴走していくパートナーシップ制度も設けています。 例えば、Fermentation(発酵プロジェクト)。このプロジェクトには日本でも有数の発酵の達人と、発酵を研究・技術の面からサポートするロート製薬がパートナーとなっています。 こうした方々と一緒に進めていくことで、これまでになかった実験的挑戦を行うことができるというのが特徴の一つです。

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Communityの領域のパートナーである遠野まごころネット顧問 多田一彦氏。 外から一方的に変えていくのではなく、地元との連携が組まれている。

“ポスト資本主義”を実験する-社会実験の先にある世界

林氏) この取り組みで出来上がったもの、仕組み、ノウハウは自分たちで占有するのではなく、オープンソースで公開していこうと思っています。私欲のために取り組むのではなく、社会のためにいいものを創り、広げていく。こうした精神で参画いただきたいと考えています。 また、既存の社会を否定し、変えてやるんだという意気込みは持っていません。革命を起こすのではなく、今の社会はこのままあってもよいと思っています。ただし、「欲しいものは、僕たちの手で作れる時代に」。具体的に実験的に、実践的に進め、その先にあるより良い社会・世界を目指していきます。

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説明会後にプロジェクトごとに分科会が実施された。パートナーから詳細を聞く参加者たち。

 

地域活性ではなく、次の日本の形を”実験”する

本取り組みにおいて最も注目すべき点は、「地域活性・まちづくりのプロジェクトではない」という点です。 これまで多くの地域は、「現在のまちの形を維持する」ために移住者を受け入れ、創業を支援してきました。しかし、日本全体の人口が減少している中で「他市町村からの人の奪い合い」にはいずれ限界が生まれます。

三大都市圏への人口の一極集中も今は大きな社会問題となっていますが、出生率の低さから考えると三大都市圏ですら「自地域の人口を確保するのがやっと」という状態が来るかもしれません。

「地域活性」という枠組みではなく「日本全体」の問題として、新たな社会の形を考える時期にきています。本取り組みはその先陣を切ってスタートしたものであり、この取り組みで実験・実践されたものが遠野から他地域に広がり、それが将来の日本のスタンダードになるかもしれません。

「新たな社会の形を模索し、自分の手で創り上げていく」。そんな取り組みに参画したい方は、ぜひ「創設メンバー」として挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

詳細はこちらから。 Next Commons Lab

この記事を書いたユーザー
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川口 枝里子

1988年生まれ。北海道生まれ北海道育ち。大学まで北海道で過ごす。NPO法人ETIC.に新卒で入社し、地域活性・人材育成のプログラム運営など「ヒト・お金・スキル・想い」が東京から地域に送り込まれる事業に従事。「この土地が好きだから」という理由で地域に関わる人を増やすべく活動中。

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