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人口3,700人の北海道・清里町から「やりたいことを諦めない」まちづくり始動。「仕掛け人ラボ」1期生の本当のミッションとは?

2024.05.01 

 

北海道の世界遺産・知床半島にある人口約3,700人の清里町。日本百名山の一つ「斜里岳(しゃりだけ)」、日本の代表的な湖「摩周湖」など風光明媚な自然景観に恵まれた町です。

 

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観光客が多く訪れる摩周湖

 

「水の生まれる里」と呼ばれるほどの美しい滝や川、オホーツク海までまっすぐ伸びる14kmの「ストレートロード」、田園風景にコロコロ転がる「小麦ロール」など、訪れる人を魅了する景色がたくさん。全国農村景観百選にも選ばれた清里町で、この春、一つのチャレンジが始まりました。「仕掛け人ラボ」です。

 

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「仕掛け人市ラボ」専任地域コーディネーターの岩崎風花(いわさき ふうか)さん(中央)と

清里町役場・参与の本松昭仁(もとまつ あきひと)さん(左)、清里町役場の吉田悠平(よしだ ゆうへい)さん(右)

 

「やりたいことに挑戦する人」を「仕掛け人」と呼び、「仕掛け人であふれる町」を目指したこの仕組みや思いについて、専任コーディネーターを担うNPO法人ETIC.(以下、エティック)地域コーディネーターの岩崎風花(いわさき ふうか)さんにお話を伺いました。

「清里町を、もっと面白く」

 

「仕掛け人ラボ」の大きな目的は、3年間、「仕掛け人」たちが、清里町を舞台に自分の担うプロジェクトでミッションを達成しながら、自分自身のやりたいことに挑戦すること。現時点では、地域おこし協力隊として着任した方が対象になっています。

 

この仕掛けが生まれたきっかけは、昨年春、新しい町長の就任でした。「清里町に新しい風を吹き込みたい」という町長のまちづくりへの思いから、「チャレンジの機会を作り、地域に眠る資源を課題解決に活かしたい」と立ち上がったことから始まります。

 

清里町をもっと面白い町にする。

 

「仕掛け人ラボ」には、そういったもう一つのミッションがあります。今年度から清里町の目標に掲げられた「100のチャレンジタウン清里」をもとに、地域おこし協力隊や町内でインターンをする大学生、高校生など若者を中心に町の100のプロジェクト作りを実現し、清里町ならではの変化を起こしていくことを目標にスタートを切りました。

 

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山の景色、川や湖、あらゆる自然が美しい清里町から新しいチャレンジが始まった

 

「仕掛け人ラボ」が思い描くのは、1期の任期が終了した3年後、外部からいろいろな人が移り住んだり、ワーケーションをしたり、学生が長期休暇中に訪れたり、「清里町を面白がる」人があふれる清里町の光景です。

協力隊が「やりたいこと」に専念できる体制づくり

 

1期となる今回、清里町の豊かな自然を活かした4つのプロジェクトとポジションを揃えました。

地域の挑戦を応援するスペシャリスト!「清里チャレンジコーディネーター」を募集!

スキル経験必要なし!ゼロから始める登山・自然ガイドを募集します!

清里町公認「裏」ガイドブック製作&新規観光コンテンツの開発リーダー募集!

町の運動・スポーツ指導を担う「頼れるトレーナー」募集!

 

「仕掛け人ラボ」という名前には、「何かをやりたいすべての人が仕掛け人。みんなで手探りしながら進みたい方向性を見つけて、よりよい方向へ進む場にしたい」という思いが込められています。

 

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清里町の誰もがよりよい方向へ進みたい方法で向かえるように

 

「進みたい方向へ」進むために最もこだわったのは、メンバーが安心してやりがいを持ちながら、挑戦に集中できる環境・仕組み作りでした。例えば、メンバーが担うのは「プロジェクトや自分の挑戦したいことを形にするための業務」。そういった認識を前提に、業務に専念できる環境づくりを形にしていきました。

 

「今後、役場とは別の拠点『協力隊ラボスペース』を作る予定です。協力隊の方にはここで自分の挑戦を思う存分進めていただきます」と岩崎さん。

 

さらにプロジェクト推進をサポートする講座も準備中。1年目は事業の構想期、2年目は実行期、3年目は実現期を想定し、活動テーマに合わせた地域内外の事業者・プレイヤーとの交流から事業計画書の作成・実行まで、「仕掛け人」たちの思いを形にしていきます。

 

なまらスゴイ!仕掛け人ラボの特徴_チラシから2

「仕掛け人ラボ」の特徴 ※「仕掛け人ラボ」のチラシから編集部が作成

 

専任の地域コーディネーターが挑戦を後押し

 

地域おこし協力隊の場合、行政職員がコーディネート業務を担当することが多い中、清里町では、専任の地域コーディネーターである岩崎さんが“地域おこし協力隊と住民をつなぐお世話役”として活動します。

 

岩崎さんはエティックで地域コーディネーターとして、地域と都市部を繋ぐ役割を担ってきました。 

 

「私は、高校2年生で進路に悩んだ際、自分を育ててくれた地域の人たちの顔が思い浮かびました。『どうせ働くなら、大切な人たちが住むこの町のために仕事がしたい。そのために、清里町にとって必要な人間になる』と決意しました。私の実家は農家で、子どもの頃から農家の人たちに育ててもらったと思っています。大切な人たちのために仕事がしたかったんです。

 

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農業が盛んな清里町では子どもたちにとって、緑豊かな田畑は身近な存在

 

3年前、エティックに入社したのもコーディネーターとしての技を盗むためでした(笑)。エティックでは、『地域に根差したコーディネーター団体を300社つくる』という目標を掲げていて、私は『いつか清里町で地域コーディネーター団体の会社を立ち上げたい!』と宣言し、採用されたんです。

 

私はこれまで紆余曲折しながら清里町にUターンし、この春、ようやく『仕掛け人ラボ』の立ち上げを通して、夢だった清里町での仕事を始めることができました。今後は、地域コーディネーター団体の会社を立ち上げて、コーディネート事業を展開する予定です」

「やりたいことを諦めたままにさせたくない」

 

岩崎さんはこう話します。

 

「町民の中には『こんなことができたらいいのに』と考えてはいても諦めている、そんな想いがたくさん眠っています。自分1人の限られた力では諦めていたことも、うまく時間とスキルをもった人とつながれば進んでいく事業は多いのです。

 

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一人ひとりの「こうなったらいいな」という思いがつながりあい、挑戦と応援が循環する町をつくりたい

 

地域おこし協力隊はもちろん、地元の高校生、都市部の大学生、社会人など、地域外の意欲ある若者を清里につなげることで、地域に新しい風を入れつつ、『やりたいことを諦めない町』をつくっていきたいです」

「やりたいことは叶う」実体験から確信が生まれた

 

「私はエティックと出会って、コーディネーターとして仕事をする中で、『やりたいことは、こうすればできる』と、実感できる経験を重ねました。

 

特に、私が所属したローカルイノベーション事業部では、『都市部には地域の課題解決や住民との関わりに興味関心を持っている人がこんなにいるんだ』と驚くことがたくさんあって。みなさん、プロジェクトへの参画も積極的で、ハイスキルな大企業の社員が熱心に働く姿も何度も見てきて、『人と人をつなぎながら、誰かのやりたいことを実現する』地域コーディネーターの仕事に大きな可能性を感じたんです」

 

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岩崎さんは子どもを育てながら仕事をするワーキングマザーでもある

 

「やりたいことはできる」。岩崎さんの言葉は確信に満ちています。

 

「自分のやりたいことは、自分一人でやろうとしなくても、まわりの助けを借りることで実現できると思っています。大切なのは、やりたい気持ちを誰かに伝えること。

 

まずは私や『仕掛け人ラボ』スタッフに話してみてほしい。『仕掛け人ラボ』は、プロジェクトと自分の挑戦したいことを業務として両立できることが大きな特徴ですから。私たちが、協力隊の方と地域の人とつなげることを中心に、地域に見守られながら挑戦を楽しめる体制をつくっていきます」

3年間、プロジェクトに取り組むことが大きな価値

 

「失敗はどう捉えますか?」

 

こんな質問を投げかけると、岩崎さんは「私たちにとっての失敗は……」と語り始めます。

 

「協力隊の方はプロジェクトの仕事や挑戦したいことをやりたくて清里町に来ているのに、実際は違う業務を担うことになるなど、『期待外れだった』と思わせてしまうことが、私たち運営側にとっての一番の失敗だと思っています。そうならないようにサポート体制を作っているし、力を注ぎたいです。

 

また、できれば任期終了後には清里町に定住してくれることが理想ですが、まず3年間のプロジェクトに取り組むこと自体が大きな価値だと思っています。

 

その先は、定住以外でも、副業として清里町の仕事に関わる、清里町が好きになって時々訪れてくれるなど、関係人口になってくれることも『仕掛け人ラボ』の成果だと捉えています。協力隊の方が清里町で挨拶を交わせる人が少しずつ増えたり、友達ができたり、大切な町だと思ってもらえるような関係性づくりを支えていきたいです」

地域住民との交流やコミュニケーションが好きな人に来てほしい

 

「『仕掛け人ラボ』と相性が良さそう」だと思える人について、岩崎さんは「地域の人との関係性をつくることを大切にしたい、根本にそういった思いがある人」だと話します。

 

「『仕掛け人ラボ』は、地域住民とのつながりを深めるミッションや、専任コーディネーターのサポート、35歳以下の住民が集まる地域づくりグループとの協同など、地域に深く関わるための仕掛けを散りばめています。

 

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冬には広大な雪世界も見せる清里町。冬にはスキーを楽しむ人が多い

 

逆に言うと、田舎でなるべく人と関わらず自由に暮らしたい人には、『仕掛け人ラボ』は向いていないかもしれません。

 

『地域住民と関わりつつ、自分のやりたいことに挑戦したい』と思っている人に挑戦していただけると、自分と町の可能性をより意欲的に広げる機会になると思っています」

 

最後に、清里町で展開される「仕掛け人ラボ」への挑戦を考えている人へはこう一言。

 

「『仕掛け人ラボ』の仕組みに魅力を感じてくれた方は、まずは今回募集している4つのプロジェクトから興味があるものを見つけてみてください。

 

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のんびりと散歩をする時間も清里町で暮らす醍醐味だ

 

たとえ、今回、興味関心のあるプロジェクトがなくても、声を寄せてもらえれば、一人ひとりに寄り添ったプロジェクトを立ち上げることも可能です。たとえば、狩猟免許を活かしてジビエ系の企画を形にしたい、趣味のカメラを仕事にしたい、清里町がもっと好きになる子育て支援を充実させたいなど。今後もどんどんプロジェクトを実現させていきます。清里町や自身の挑戦をもっと面白くしていきたい方は、これからの『仕掛け人ラボ』に注目してください」

 


 

「こんなことをやってみたい」

「自分のスキルを活かして地域で暮らしてみたい」

 

こうした思いや興味関心から、もしかしたら清里町で新しい自分のキャリアや人生が切り拓けるかもしれません。自分の「やりたい」に清里町で挑戦できる「仕掛け人ラボ」に参画したい方はこちらをご覧ください。

「仕掛け人ラボ」4つのプロジェクト詳細と求人情報はこちら!

 

岩崎さんが夫婦で清里町での移住ライフを紹介した動画も公開中です。

https://www.youtube.com/channel/UCFcp8ivZyUYwA2siazN9BIg

 

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たかなし まき

愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科を卒業後、企業勤務を経て上京。業界紙記者、海外ガイドブック編集、美容誌編集を経てフリーランスへ。子育て、働く女性をテーマに企画・取材・執筆する中、2011年、東日本大震災後に参画した「東京里帰りプロジェクト」広報チームをきっかけにNPO法人ETIC.の仕事に携わるように。現在はDRIVEキャリア事務局、DRIVE編集部を通して、社会をよりよくするために活動する方々をかげながら応援しつつフリーライターとしても活動中。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。