日本が抱える最大の課題といってもよい「少子化」。その少子化を解消するために、保育施設やサービスの拡充のみならず、男性の育児休暇取得率の向上や、子育てをしながらそれぞれ求める働き方が無理なくできる環境が求められています。
世界各国の「女性の労働参画状況」
2000年以降の女性の労働力率 (15歳以上人口)注1 をみると、日本の女性労働力率は、主要先進国の中で圧倒的に低く、2000年以降、基本的に40%台で推移しています。一方ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどの北欧諸国は、60%台の高い労働力率で推移していることが分かります。
労働力率とは、わかりやすくいえば「どれだけ労働市場に参画しているか」を示す割合です。各国に遅れをとっている日本ですが、その陰には、就業を希望している女性が303万人もいる(労働力調査2014年)といわれています。では、眠っている女性の労働力を社会に活かすにはどうすればよいのでしょうか。
[注1]労働力率とは、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)を15歳以上人口で割ったもの。
かつては保守的だったノルウェー
女性の労働力率(15歳以上人口)の過去の推移をみると、1992年時点ではノルウェーと日本の労働力率にほとんど差はありません。
ノルウェーはもともと保守的な国で、国民のほとんどはキリスト教プロテスタント、ゲルマン系のノルウェー人が国民の82.0%(2011年時点)を占めています。そして1890年頃の社会制度は、現在の日本と同様に専業主婦を想定して設計されていました。
しかし1955年頃から社会制度が整備されるようになり、1960年代から男女平等をうったえた女性解放運動とあいまって1978 年には「ジェンダー平等法」を制定、1970年代後半には初の女性党首が誕生しました。そして女性の労働力率が向上し始めた1993年、ノルウェーが導入したのが「パパ・クオータ制度」でした。
パパ・クオータ制度とは?
「パパ・クオータ制度」(父親割当制度)とは、10週間の父親の育児休暇制度です。父親が育児休暇を取得している間も母親が仕事に戻る必要がないため、両親が同時に育児休業を取得することができます。
また両親の給付として、出産前の給与の80%の手当で最長54週間、もしくは、出産前の給与の100%手当で44週間のいずれかを選択できるようになっています。
パパ・クオータ制度の導入により、以前は4%程度だった育児休暇取得率が、2003年には9割の父親が育児休暇を取得するまで増加しました。1988年、ノルウェーの95%の男性が「家事は女性の仕事である」と回答したほど、保守的な価値観であったのにもかかわらず、2007年、同様の質問に対して「家事は女性の仕事である」と回答をした男性は48% 注2 となるなど、パパ・クオータ制度は男性の意識にも大きな変化をもたらしたのです。
また2000年時点では、ノルウェーの上場企業における女性取締役の比率はわずか6.4%でしたが、2008年には45%近くにまで急増しています。会社法に定められたクオータ制の導入が、ノルウェーを変える大きな原動力になったことは言うまでもありません。そしてパパ・クオータ制度は、スウェーデン(1995年導入)や、ドイツ(2007年導入)にも広がっていきました。
[注2]資料「ノルウェーにおける男女平等政策」の「4.育児環境」より、2007年、同様の回答をした男性は約半数の48%となるなど、男性の意識にも大きな変化が生じている。
日本社会への示唆
日本において女性活躍を進めながら、少子化を食い止め、出生率を増やしていくには、「男性の働き方や価値観の変化」が鍵になるのではないでしょうか。
女性の意識は既に変化しています。最近の調査では「夫が働き、妻が専業主婦の世帯」よりも「共働き世帯」が多く、意識の面でも「子どもができても仕事を続ける方がよい」と考える女性の方が多いことが明らかになっています。
近年、共働き世帯の増加にともない、専業主婦優遇といわれていた配偶者控除が少しずつ見直されています。まったなしの対応を迫られるこれらの課題に、日本がどれほどの緊急性をもって対応していくのか注目が集まります。
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