これからの社会がどうなるかを考える時に、重要な指標となるのが「人口」です。経済や科学技術に関して予測するのは難しいですが、人口に関しては非常に高い精度で予測が可能なためです。
以前、こちらの記事で国連が2015年に発表した世界人口予測についてご紹介しましたが、最新版(2019年)が出されましたので、再度、人口推移を中心に未来の社会について考えてみたいと思います。
こちらが2019年6月に国連が発表した、2100年までの世界人口の予測です。
最も起こりそうなケースを想定した「中位推計値」で、2050年に97億人、2100年には110億人という数字でした。また、この110億人をピークとして、人口増加は頭打ちになる可能性があるとのことです。
前回ご紹介した調査(2015年)では、2050年の推計は97億人で一緒でしたが、2100年時点の人口は113億人という数字でした。最新版の予測では、人口増加が少し穏やかになっています。
人口減少を経験する国が増える
私たちが暮らす日本は、2008年をピークに人口が減少に転じています。今回見ている国連のデータによると、2050年には日本の人口は1億人を下回り、2100年には7500万人にまで落ち込むと予測されていました。
ただ、こうした人口減少を経験するのは、日本だけではないようです。
上の地図で緑色の国が人口が減少する地域、ピンク色の国が人口が増加すると予測されている地域です。2019年から2050年の間に55の国と地域で人口が1%以上減少するということでした。また、そのうち26の国と地域では、10%以上の人口減少がみられる可能性もあるそうです。日本と同じように、低い出生率に悩まされる国が増えているとのこと。20%以上の大幅な人口減少が予測されているのは、ブルガリア、ラトビア、リトアニア等で、これには高い移民流出率も影響しているようです。
「課題先進国」と言われる日本は、人口が減少する中で生じる様々な困難にどう対応していくのでしょうか。今後の日本のあり方に、ますます注目が集まりそうです。
「世界人口推計2019年版:要旨」には、ここで紹介した「人口の減少を経験する国が増加」というポイントも含めて、10の興味深い調査結果が記載されています。
「人間と自然との調和」の時代へ
世界全体で見ると人口はどんどん増加していきますが、19世紀後半から20世紀にかけての「人口爆発」と言われる時代とは違い、21世紀は人口の増加に歯止めがかかり、ほぼ横ばいの時代が始まりそうです。19世紀以前にも、人口は同じように横ばいの時代が長く続いていました。
ただ、違うのは「子どもから大人になれた人の数」です。19世紀以前は、女性ひとりあたりの子どもの人数は平均6人だったのですが、そのうち大人になれるのは2人だけ。いまは、親から生まれる子どもは2人、そして2人とも大人になることができます。
この変化について、いま世界中でベストセラーになっている「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」では「自然との調和」という言葉を使って表現していました。
厳しい自然と調和しながら死んでいった18世紀以前、自然との調和が乱れ人口が爆発した20世紀、そして21世紀は自然と調和しながら生きられる時代に。
テクノロジーの発展が急速に進んだ昨今は、「人類が経験したことのない新しい時代」だとよく表現されますが、人口の面から見てもそのように感じます。世界の変化を先取りしている日本に住む一人として、不安と同時にワクワクも感じるデータでした。
関連記事:
2100年の世界人口は112億人、その8割はアフリカで増加―おさえておきたい未来人口予測
参考資料
・世界人口推計2019年版 データブックレット
https://www.unic.or.jp/files/15fad536140e6cf1a70731746957792b.pdf
・世界人口推計2019年版:要旨 10の主要な調査結果(日本語訳)
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/
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