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2020は「誰のでもなかった問題」を「私たちの問題」にする契機。為末大さんの考える、オリンピック・パラリンピックの可能性とは?

2017.09.28 

「2020を、何の契機にする?」  義足プロジェクトを通して変えたい、障害者への意識 

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を、単に「世界中から多くの人がやってきて日本が注目を浴びる機会」として捉えるのか、「社会や人の生き方が変化するきっかけ・はじまり」として捉えるのかでは大きく意味が異なります。ETIC.では「2020年」という機会をあらゆる分野・業界の多様な挑戦者が集まり、これまでの発想の次元を超えたアクションを起こす大切なきっかけであると考えています。(参考:2016年11月「Social Impact for 2020 and beyond」イベントレポート)

 

為末大さんの仕掛ける「義足プロジェクト」も、2020年を大きなメルクマールとして設定しているプロジェクト。2020年をきっかけに、義足を通して変えていきたい社会や人の生き方とはどのようなものなのでしょうか?


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為末大さん(以下、為末さん)「僕たちがXiborgでつくっている義足をはいたアスリートが世界一になることを目指して活動を続けてきましたが、その実現はもう間近に迫りつつあります。実際に2016年には義足を履いたアスリートが世界を舞台に健常者と競い合うレベルに達し、走り幅跳びでは義足アスリートが世界チャンピオンを上回る記録も生まれました。」

xiborg

為末さん「2020年を目前に控えた今、僕らがやっていきたいことは、義足を通して多くの人の障害者やスポーツに対するマインドセットを変えていくことです。

義足を使った障害者アスリートが、2020年までの様々な大会、そしてパラリンピックで大きなインパクトを残すことができれば、2020年以降はきっと障害者に対する意識がもっと変わるはずです。そうすると、それまで障害者やスポーツに興味があった人、あるいはすでに活動をしていた人たちをより巻き込みやすいフィールドが出来上がっていくはずです。僕はそれまでに、この畑をより耕していきたいんです。"この大きな変化の機会をどう生かすか?"ということが、今あらゆる分野で問われているのだと感じています。」

2020に向けたキーワード、「ONE ATHLETE, ONE ISSUE」

義足のプロジェクト”Xiborg”以外でも、2020年を見据えて仕掛けようとしていることがあるという為末さん。

 

為末さん「これから僕は、アスリート一人につき一つの社会課題にコミットする"ONE ATHLETE, ONE ISSUE"という考え方を広めたいと考えています。

アスリートにとっても社会全体を把握するためのよい機会となりますし、社会の側から見ても、一つの競技に全力でコミットしているアスリートの示す生き方は、人のマインドセットを変えられる力を持っています。実際に課題解決の実務を担うことができなくても、"メッセンジャー"として社会に伝えていくことにおいて、アスリートは適任だと思います。」

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為末さん「実はちょうど今日もアフリカ出張の帰りなのですが、最近途上国の方々に「講演会+トレーニング」をセットで提供するという取り組みをしていて、このモデルを他のアスリートにも普及できないかと考えています。

ガーナならサッカー、ボツワナならソフトボールなど、各国がこだわりを持つスポーツがあるのですが、その教育と指導のニーズに対して、引退した日本人選手を国ごとに派遣していくのです。日本は様々な競技でレベルが高くかつ、各国との関係も良好です。スポーツ教育という観点で日本ほど適した国はありません。この特色を活かした世界へのスポーツ教育での貢献には大きな可能性があると思っています。」

 

2020年を、社会課題のショーケースに!

 

2020年という機会を前にした現在の日本について、為末さんは「最高のアイスブレイクができた状態」と表現しています。世界中の人の関心を集めるこの機会だからこそ、それまでどこか「人ごと」にしていた様々な社会課題を「私たちの問題」に変えられるチャンスなのではないか?そのように2020年という機会を捉えている為末さんに、スポーツ領域に留まらない社会課題を扱った過去のオリンピックの事例についても伺いました。

 

為末さん「例えば2000年のシドニーオリンピックでは、HIV予防キャンペーンとして選手村でコンドームが配布されるキャンペーンが行われました。また、2012年のロンドンオリンピックでは、選手村の近くに『プライド・ハウス』というLGBTの選手や家族が集まって交流できる場所がつくられました。これらの運動は、歴史や社会を変える世界的なムーブメントになってきました。

同様に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックも"社会課題解決のショーケース"として捉えることで、いろいろな仕掛け方ができると思います。もちろん、グローバルで人々の関心を多く集めるアジェンダである必要がありますが、今は、様々な企業などたくさんのパートナーも募りやすいですし、イベントなども起こしやすいタイミングであると思います。」

 

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