ソーシャルセクターの活動を発展させていくために、事業部の活動はもちろん重要ですが、それを支える”事務局”機能は同じように大切です。人や金、契約などの管理、組織の組成やケア、そして様々な”雑用”という名のだれかがやらなくてはならない作業など、事務局がなければいくら立派なビジョン、事業計画、ビジネスモデル、ネットワークがあっても課題解決は進みません。
近年参照されることがが増えてきた、”コレクティブ・インパクトを推進するために必要な5つの要素”の中でも、”Backbone Support Organizations ”として、その重要性が示されているように、単なる”裏方”ではすまされないのが事務局です。
こうした事務局の大きな役割については、以前よりは比較的認識されてきてはいるものの、まだまだ十分とはいえません。特に小さい組織や成長期の団体では、事務局機能に十分なリソースを割くことができないまま、課題の解決や組織の成長の機会を逸していることも。
ではその長である”事務局長”は、どんな役割なのでしょうか?
スタッフ総数が100名程度の2つの団体、NPO法人育て上げネットとNPO法人ETIC.の2人の事務局長が、会場からの質問に答えるかたちでその役割、視点、そして未来について語った対談をお送りします。
「事務局長」の仕事について知りたい方はこちらの記事もぜひ!
>> 「事務局長」ってどんな仕事?NPOの事務局長の役割や求められるスキルがわかる記事まとめ
ETIC.鈴木敦子(以下鈴木):今回の集まりを主催させていただいた、NPO法人ETIC.の事務局長をしています、鈴木と申します。私たちはソーシャルビジネスの事業化支援、起業支援をしている団体ですけれども、事業を成していく為の想いは強くある、あるいは人を巻き込んでいく力があったとしても、そのうえで必ず、資金調達をする必要があります。お金のことを考えるということはとても重要だと思っていまして、私たちETIC.は、西武信用金庫さんとソーシャルビジネス向けの融資、CHANGEというものを一緒に開発させていただき、かれこれもう3年近く融資の実行をしていただいています。
今日は、ソーシャルビジネスを担っているような方たちに、融資だけではなく、財務をどういうふうに強くしていくか、資金調達をしっかり戦略的に考えて、どういうふうに生かしていくのかということを、もっと皆さんに知っていただきたい、それを広めていきたいという思いがありました。そんな理由で今日の集まりを開催させていただいています。
こちらにいらっしゃるメインゲストの石山さんも、事務局長同士で初めての対談でして、普段こうやって前に出て話すことはほとんどないので、慣れてないことたくさんあると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
さて、石山さんとは2000年ぐらいに実はお会いしていて、その時も代表の工藤さんの懐刀という形ですでに活躍していらっしゃいました。まずは石山さんのほうから簡単に、育て上げネットさんのお話と、石山さんがなぜこの事業をやっているか、お伝えいただけたらなというふうに思っています。よろしくお願いします。
「若者と社会をつなぐ」ために社会のほうも変えていく
石山 義典さん(以下敬称略):石山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。育て上げネットというNPOをやっています。すべての若者が社会的所属を獲得し、「働く」と「働き続ける」社会、これを目指して、事業を進めています。平たく言うとニートであったりひきこもりであったり、そういった方々の社会参加と就労を支援しているのがうちの団体です。もともと私が学習塾を経営していた時期があって、そこで不登校の支援を始めて、その流れでここにたどり着いたという経緯です。
ポイントとしては、「若者と社会をつなぐ」ということ。言葉で言うと、若者を社会につなぐみたいに取られちゃうんですが、実はそうではなくて、今ある社会そのままの状態に若者をつなぐだけではなくて、社会のほうも変えていかなければいけない、というところを提言しております。
活動内容なんですが、最初は、働けていない状態の若者の就労支援ということからスタートしました。ただ、それだけでは解決できないこといっぱいあったので、いろいろな事業が派生していきました。いわゆるニートになる前の相談や、ニートにならない為には何が必要なのか、予防的な学習と教育という事業をやるようになりました。
そしてもうひとつは保護者向けの支援です。今働けていない状態の方が、支援機関に自分でつながっていければ、いろんな意味で解決できることが大きいのですが、なかなかつながれない。我々のほうからすると、どこに困っている人がいるのか見つけられない。
とすると、一番情報を持っているのは保護者だということになります。もともと就労支援を始めた時に最初に相談に来られたのはお母さんなんです。お母さんは、単に息子が働いていないから、娘が働いていないから困っているだけではなくて、そういう子どもがいることによって、家庭の中がなんとなく居心地が悪い状態になっています。ご夫婦の間が、あるいはほかの兄弟とうまくいかなくなっている、そういったような相談を受けてできたのが、母親を支援する「結の会」です。
母親を支援することによって、母親が元気になってもらい、家庭に居心地がいい場所を作る。居心地がいいからそこから出ても大丈夫なんだということも、本人たちにも感じてもらいながら、支援機関につながれるように、お母さんと一緒に考えていくっていうようなことを始めました。
このように予防の部分と、当事者への対応の部分、それから保護者の支援、この3つが大きな柱になっています。
そして、我々は生態系の創出と言っているんですけども、今あるものをどうにかするだけではなくて、ここがこう変わったら世の中がうまく回る、若者たちが活動できるんじゃないか。そういう意図をこめて2015年と、2013年に『若者無業白書』というもの出したんです。若者の実態調査を出したんですが、それが生態系の創出になると考えています。
いろんな方に今の若者の状況、現状を知ってもらう。最近は減ってきましたけども、まだまだ働けない若者っていうのは、気合がない、根性がない、やる気がない、あるいはその家庭の教育や環境に問題がある、と言われがちなんですけども、でもそうではないんだということも、発信していかなきゃいけない。
【ジョブトレ、母親の会の活動】
次は活動の本編ですが、まず「ジョブトレ」というのがあります。これは委託事業ではなくて、私どもが法人で一番最初に始めた就労支援の形です。いわゆる就職支援の企業と違うのは、本人に企業を紹介するということはしないところです。企業を探すのは本人であり、応募するのも本人になります。でも探す為の手伝いをしたり、あるいは就職活動の為の手伝いをしたり、もうちょっと手前であれば、就職活動ができるようになる支援をするというのが、基本的な活動です。
そして「母親の会」。これは保護者の会でもなく父親の会でもない。うちの団体の支援者は、おばちゃんを中心にした女性ばっかりですし、来る人もお母さんだけ。我々がこの活動を始めた当時も、お父さんの就労支援の参加は非常に少なくて、お母さんばかりでした。だからまず「母親の会」にしようと。そして年に2回ぐらい「親父の会」というのも開きます。あとは高校生、大学生向けにやっているキャリア教育です。
【経営】
経営としては、少しずつ経常利益も増えてはきているんですが、職員が今非常勤合わせて120人くらいいるんですけども、まだまだ中小企業並みの給料までいっていません。NPOで働くということが、普通の就職先のひとつとして認知されるくらいまで持って行くということを考えています。優秀な人は企業に勤め、ちょっと変わった人がNPOに来るというだけでは、これからいろんな社会のひずみが出てきたりする時に対応しきれなくなるでしょう。普通の給料がもらえるような組織体にはしていきたいなっというふうには思っています。
組織について:驚異の120人のスタッフ/4人の管理部
鈴木:ありがとうございます。たいへん幅広い、かつ深いところからの支援をされていることがわかります。
これから会場からの質問に答えていくことにいたします。
今日は資金調達のお話ということですが、お金の話は人材とも密接に関わりがあると思いますので、まず人材のお話から始めていきましょう。いただいた質問は、
「どういう専門性の人を採用をしているのか」
「人を集める工夫や留意点はあるか。またどういうふうにマネージメントしているのか」
まずは採用のことから伺います。スタッフ数は120名ということなんですけど、NPOとしてはすごく多いほうですよね。
石山:全員常勤ではなく、常勤は60人弱ぐらいですね。
鈴木:どういう仕事、職種の方々が多いんですか。
石山:一番多いのは、支援者という現場の職員ですけども、支援者の中でも一番多いのは、キャリア系の職員。キャリアコンサルタントという資格を持ってる人が一番多いですね。あとは社会福祉の資格を持っている職員もいます。
鈴木:支援者がほとんどなんですね。あとは事務方、事務局の人ですか?
石山:はい。管理部と呼んでいるのが本部になりますけども、そこに常勤者が4名。
鈴木:これは驚異的に少ないです。120人スタッフがいて4人しか管理部がいない。ありえない数字です(笑)。どうやって回してるんでしょうか?(笑)
石山:そうですよね。たしかにその管理部からも不満は出てますね(笑)。管理はお金を生まないので、そこに余剰の人員をつぎ込むっていうのは非常に難しい。でもそこに負担がかかってもしょうがない、という問題は常にあります。
鈴木:わかります。ETIC.も20年近く活動してきて、ついこの前まで2.5人ぐらいしか管理部がいなかったんです。やっぱりお金の間接部門だからということで、すごく遠慮してやっていたんですが、それをある時からやっぱり変えないと、ということで増やすことにしましたね。
石山:そうなんですよね。4人になったのはうちも2016年4月からです。
鈴木:驚異的です。マネージメント人材についてはどうですか?
石山:マネージメント人材としては、常勤の理事が今4人。で、その下にいくつかの事業を統括する立場の部長職という人が5人。常勤理事の方で、2人は上司も兼務してるので7人。細かいものも含めると30ぐらいの事業があるんですけども、この人員でそれらを見ています。それぞれの事業ごとに責任者がいまして、課長だったり、事業所を持っていれば所長だったりしますが、全部で16人ぐらいいます。
鈴木:平均年齢はおいくつぐらいですか?
石山:たぶん今は40歳前後なんじゃないかな。実は40歳ぐらいの年齢の人はあんまりいなくて、企業を退職されてうちに来てくれるような60代と、逆にすごく若い20代の職員がいて、平均すると40歳ぐらいかなと。
この年齢の多様性が大事だと思っています。支援する側が同世代ということで気持ちがわかったりということも確かにあるかもしれない。一方で経験があるからアドバイスができるということもある。それぞれの持っているスキルや経験、ノウハウを生かしてやっていただくことで、ひとりの若者の支援ができているんだと思います。
うちは1対1で担当するというやり方はあまりしないんです。ひとりの若者に対して何人も支援者がいる。そうすることでいろいろな人の意見が聞ける。あとは人間ですから、相性ってあるじゃないですか。どうしても合う人、合わない人というのがいる。それを、「世の中にはいろんな人がいるんだから慣れろ」、と若者に言ったってそれはやっぱり難しいですよね。最初は馬が合う職員と上手くやっていくというのも必要です。そういった意味では、多様な職員がいるということは恵まれてるなと思います。
採用について:
鈴木:採用についてお聞きしていきます。毎月何人くらい面接するんですか?
石山:月によって変わるんですが、一番多いのは2月、3月、4月にかけての時期ですね。受託事業が全体の6割ぐらいがあるので、この時期に受託が決まった段階で募集という形になります。
鈴木:採用に困ったことはありますか?
石山:ものすごくあります。
受託事業系のものだと、3月に受託が決まって、それからしか募集できないものがあります。ふつう4月から働く場合、だいたい3月にはもう決まっていますよね。だからなかなかその時期に募集をしても集まらないということがあります。従業員が30~40人の時には、いろんなツテで紹介してもらっていたんですが、今の規模になるとさすがにそれができなくなってきている。数を揃えるためだと、ハローワークが一番いいです。ただハローワークで一番困るのは、年齢も性別も指定できないこと。数は揃うけど質はなかなか…というのがあります。あとはキャリアコンサルタントのような資格を出している団体や協会、学会みたいなところに募集をすることがあります。それからやっぱりヒットするのは、DRIVEですかね(笑)。
鈴木:ありがとうございます(笑)。ETIC.がやっております。
石山:宣伝しておきました(笑)。それはネタとして。DRIVEを見る方は、NPOの仕事に興味がないと基本的には見にこないのでいいですね。あと最近は学生さんのインターンで来てもらってる人もいます。
鈴木:打つ手はかなり打っているという状況ですね。
石山:そうなんですよね。でもまだまだうまくいってないところも多いです。いい支援者の方というのは世の中に大勢いるので、比較的来てくれるんです。ただ中間管理をしてくれる人材がなかなか集まらない。これはちょっと困っていますね…。
鈴木:なるほど。現場向けの人材は比較的いる。でも中間管理、マネージメント候補人材がちょっといない。ジミーズという、NPOの事務局長の飲み会という渋い集まりがあるんですが(笑)、その中でもいつも話題になるテーマですね。
石山:そうなんです。
支援員として入ってきてくれた方に、この人だったらマネージメントもできるんじゃないかなと思って、次の年に管理職を打診して、1年間やってもらったことがあったんです。そうしたら翌年度、「やっぱり私、一般職員にしてください」と言われました。当然お給料はマネージメント層のほうが高くて、月5万ぐらいは違うと思うんですね。でも、辞めちゃうんですよ、管理職。
売上構成について:
鈴木:ありがとうございます。では次の質問にうつります。
「売り上げの構成についてお聞きしたい。いろいろ財源があると思うんですけれども、これまで活動をされてきた中で、この時期にはやっぱりこういうお金が必要だったとか、今後どこを増やしていきたいとか」
事業の収入の変遷や、事業がどんなふうに大きくなっていったか、事業計画はどんなふうに考えて作っているのか。そのあたりをお伺いできればと思います。
石山:はい。まず売上の構成についてですが、初年度から3年くらいまではいわゆる寄付はほとんどなかったです。
鈴木:当時はそういう時代でもなかったですよね。
石山:そうですよね。うちの事業でジョブトレというのは有料なんですが、最初の頃、15年くらい前には、「なんでNPOなのに金を取るんだ」と言われることがかなりありました。「やる気のない、働く気のない若者の為に金を使って…」というふうにとってもネガティブに語られていた時代がありましたので、「寄付してください」というのもなかなか通らない状況はありました。最近やっと言われなくなりましたけどね。
鈴木:寄付の担当、いわゆるファンドレイザーの担当はつけてらっしゃるんですか?
石山:つけていません。それを事業戦略の中で、どうやって予算化してつけようかっていうのがこれからの課題ですね。
鈴木:「売上構成で今後どの部分を伸ばしていきたいか」というご質問。
石山:ひとつは、寄付を伸ばしていきたいです。我々の活動を知っていただかないと寄付はいただけないと思いますので、そういった意味では、発信ももっと必要。若者の実態を知っていただくっていうことも必要なんじゃないかなと思っています。
鈴木:創業期の収入については、個人からのジョブトレの課金というのが多かったということですか?
石山:そうですね。当時は月4万円をいただいて支援していましたが、最初はジョブトレの収入くらいしかありませんでした。当時職員が4人いたので、どうするんだということで、立川市からの委託費が少しと、もうひとつが借り入れをしました。2004年のことです。
鈴木:創業期の借り入れですね。
石山:はい。申し込みをして、事業計画を作って、書き直して。予算も作っては書き直して。何度かやりとりをして、結局1か月半ぐらいかかりましたかね。ただうちがやろうとしてることを、まあじゃあいいか、貸してやるかっていうことになったっていうのは、あれが一番大きかった気がします。あれがないと、たとえ500万円借りたとしても、ボランティアで何かをやるっていう発想になっちゃったかもしれないなっていう気はします。
事業計画、管理部の重要性について
鈴木:来年はこの事業を入れるか入れないかとか、どこを攻めようとか、そういった事業計画についてはどうやって決めているんですか?
石山:最初のうちは、「こういう話が来たけどどうする?」とみんなで話をしながらその場でなんとなく決まっていましたね。今はそうはいかないので、第2、第4月曜日に、部長会というのがあって、そこで各事業の大まかな報告と進捗などを共有します。それから時期的には9月から10月ぐらいにかけて、来年度事業についてどうするかという話をします。
やっていて管理しにくい事業であったり、うちがそれをやる必要があるのか、というような議論の中から、やる、やめるを決めています。最終的には部長会で出たものを、部長会のあとの理事会で決定します。
鈴木:なるほど。事業計画にあたっての判断基準というのはありますか?
石山:基本的な判断基準は、ひとつはうちがやる事業かどうか。例えば、2~3年前に貧困向けの事業の公募が出たんですが、対象年齢が無制限だったので一つも受けませんでした。
うちは40歳以上の人の支援っていうのは原則しない。そういう基準はある。
いわゆる15歳から40歳までの中で、うちじゃなきゃできない、うちがやるべきものを、できるだけ選択しています。あとはここ3~4年くらいからですが、決算作業がものすごい面倒なものはやらない。それから、まったく利益がなくて、持ち出しでしかならないような事業は原則受けないようにしています。ただ、絶対これはうちでなきゃダメだろうっていうものもあるんですよ、それでも。そのあたりは、プライドとバランスを考えながらという感じですね。
鈴木:だって管理部4人ですもんね(笑)。信じられないなあ。
石山:そうなの、そこがポイント。頑張ってるんです(笑)。
鈴木:優秀な管理部がね。
会場にいらっしゃっているソーシャルビジネスに関わる方も、ご自身の事業でいろいろな収入のポートフォリオを組んでいると思うんですが、行政というのがひとつ、必ずステークホルダーに入ってくる。市場で顕在化されていて対価がついているニーズではないところで価値を提供する時に、行政の社会的なお金をお預かりすることで事業をやっていくことが多いですよね。
その時すごく大事なのは、アカウンタビリティというか。社会的なお金を預かった時にちゃんと清算ができるかどうか、きちんと第三者に対して説明ができるかどうか、というのが重要になってくるんですね。
私たちのところに霞が関を監視する組織である会計検査院が来たことがありますが、5年くらい前にやったある事業について聞かれるんです。「この委託された方の成果物を2年分出してください」とか。社会的なお金をお預かりするということは、誰からいつ問われてもきちんと清算ができる状況を作ることが必要なんですね。そういう意味でどこかのタイミングで、管理部の評価というのはすごく大事になってくる。
石山:絶対に必要でしょうね。
鈴木:それができないと行政の仕事を受けられない。行政の仕事というのは、利益が乗せにくいですけど、それを投資とか原資にして、自分たちの事業の発展や実績につなげていきながら、新たな事業を作っていくというような段取りになってくると思います。そこでバックオフィスっていうのは、重要になってくるわけですね。
事務局長の役割について:財務を見る。万単位で?!
鈴木:続いて、事務局長についてのマニアックな質問ですが、
「事務局長の役割の変遷と、事務局長が必ず握っておかなきゃいけないことは?」
「お2人に伺いたいんですが、事務局長などで、NPOはやっぱり、思い入れが強くて、この社会をよくしたいということで、事業部の方は難しいと思うんですが、事務局としては、ちょっとそこで衝突とか、まんまっていうようなことがあると思うんですが、それはどういうふうに支えていくというか、やっていったかっていうことを教えていただきたいです。」
という質問です。
石山:絶対はずしちゃいけない仕事は何か。財務を見ることですね。それができなくなるほどほかの仕事が忙しくなったら、事務局長はアウトだと思います。
うちは支援者が多い団体なので、いろんなことをやりたいんです。あれもやりたい、これもやりたい。でも全部にOK、OK、とやってくと、気がついたら決算日の時に、「赤字になってますけど」、みたいな話になっちゃうかもしれない。
委託事業をやっていると、先に払ってくれないものがあって、そうすると当然、銀行に借りなきゃいけない。だいたい年間で、億近い金額の借り入れになるんですね。でも決算で赤字になると金利が上がっちゃうんですよね。
鈴木:貸してくれなくなるし。
石山:そう、貸してくれなくなる。銀行とのお話を常にしていかなきゃいけないし、そういった意味では、財務はきっちり見ていかないとだめで。でも、けちけちしているだけだとやるべきこともできなくなくなっちゃう。そこをきっちり押さえられるかどうかっていうのは大きいと思います。
うちは、基本的に財務的なものは理事長から私に任せられているので、例えば、借り入れをしなきゃいけないということになると、もちろん理事会は通しますけども、ほぼNOてなったことはないです。やっぱりある程度、理事長と事務局長が二人三脚でやらないきゃいけない。そして理事長が財務を見始めちゃうと、やれることは制限されてしまう。
鈴木:お金を切らすことはありえないっていうところは、確かにそうですね。資金繰りもそうですし、稼いでいるというのもそう。それをずっとやり続けないといけない。確かに、それは見ていますね。
石山:投資できるお金が今いくらくらいあるのかを把握できないと、次の手を打てないですからね。万単位くらいで。
鈴木:え! 万単位?! すごいですね。わたしはもっとだいたいです(笑)。でも正確な数字が上がってくる状態をどう作るかっていうのは、すごい大事ですね。
石山:そうですね。あとは何かの時にお金を借りられる素地を作っておくっていうことでしょうね。3千万円から5千万円の事業費だったら、毎月足りなくなるのって、せいぜい数百万円くらいなんですよ。頑張れば、友人知人から借りられる額なんですね。でも一千万円単位で足りなくなると、さすがにマズイので(笑)、マズくなる前に銀行に借りておく必要がある。
鈴木:決算の状況によって審査期間の長さとかも変わってきますしね。新規の引き合いだとこれくらい長いとか、そのあたりを逆算しながら判断していくわけですよね。
石山:銀行の人とも仲良く、職員とも仲良く。大事ですよね。
鈴木:大事。
石山:結局、事務局長さんてみんなどこも大変なんじゃないですかね。私は優秀な管理部のおかげで、とっても楽してますけどね。
鈴木:管理チームが優秀であるっていうのは。すごく大事ですね。
石山:ほんとに大事なので、そういう優秀な人をNPOのほうにどうやって引っ張ってくるのかというのも、大事ですね。
鈴木:今日はありがとうございました。
(この対談は、西武信用金庫がソーシャルセクター向けに提供している融資プログラム”CHANGE”の公開イベントとして開催されました)
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