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地域で挑戦したい人のための学びと実践の場、ローカルベンチャーラボのすすめ

2018.03.29 

岡山県西粟倉村が代表自治体として全国の有志自治体に呼びかけ、2018年現在で10の自治体(北海道下川町、北海道厚真町、岩手県釡石市、宮城県気仙沼市、宮城県石巻市、徳島県上勝町、宮崎県日南市の8自治体が参画。2017年度からは、新たに石川県七尾市、島根県雲南市)が参画し立ち上がったローカルベンチャー協議会。地域資源を活用した新しいビジネスの創出を、中央からの助成金や補助金のみに頼るのではなく、全国の地域・自治体が面的に連携し、ノウハウの共有や地域への投資の生態系を構築することを目的に活動しています。

 

その協議会の中で、地域を変えるビジネスの担い手やプロデューサの創出という人材育成の役割を担っているのがローカルベンチャーラボ(LVラボ)です。LVラボでは、ローカルビジネスとして期待が集まる8つのテーマに分かれ、各テーマラボではローカルでの経験豊富なファシリテーターが伴走し、ラボ生の地域での挑戦をきめ細かくサポートします。ラボ生は、各テーマ領域で活躍する先輩起業家をメンターとしてビジネスプランをともにブラッシュアップしながら、地域で挑戦する準備をすすめています。

 

6が月の期間を通して、ラボでは実際にどんなことが行われているのか? ラボ生として参加した戸塚絵梨子さん、丸山寛子さん、稲津知幾さん(以下敬称略)にお話を伺いました。

(左)稲津知幾さん(中)丸山寛子さん(右)戸塚絵梨子さん

ローカルベンチャーラボ生の(左)稲津知幾さん(中)丸山寛子さん(右)戸塚絵梨子さん

なぜラボに参加したのか?

 

ーーーまず自己紹介と、なぜローカルベンチャーラボ(LVラボ)に参加したか、そしてどんなことに取り組んだかを教えてください。

 

丸山:飲食関連の仕事をしてきて、独立して3年になります。東京でシェアハウス+キッチンをやっています。食べ物のことをやってきて、生産者のことがどんどん気になってきたんです。365日自然とともに過ごしている生産者の人たち。でも顔が見えなくて、都会ではそれを消費する、という関係が悲しいことだなと感じて、ローカルに関心が向いてきたという感じです。ETIC.さんのTokyo Startup Gatewayにも参加させていただいて、セミファイナルまでいったんですが、個人でやる限界を感じてました。そんなときにたまたまLVラボのことをFacebookで見て、参加することにしました。

 

最終的に、「食の編集者になり美味しい革命を!」というプランになりました。これは、栄養やカロリーを摂るという「食」の健康提案だけでなく、その人の人生が色とりどり豊かになるようなその土地土地の食材の想いを形にして、キッチンから「美味しい団らん」を提供する、というものです。

 

稲津:東京で不動産関連の仕事をしています。実家の小田原に住んでいまして、社会人としては大学卒業後に市役所に勤め、それから東京に出てきて3年になります。小田原でなにかやりたい、という気持ちは少しありつつモヤモヤとしていて。LVラボの案内を偶然読んで、もしかしたらモヤモヤがクリアになるんじゃないかと思って、参加しました。

 

ーーーモヤモヤというのは?

 

稲津:市役所を辞めて東京に出てきたのは、地方にはやっぱりおもしろい仕事が無いなという状況だったからなんですが、でもそうなんだろうか、という想いがありました。LVラボの案内に、「地方にも魅力的な仕事はある」と書かれていた。しかも「不動産活用・エリアブランディング」というテーマもあったので、これは、と参加しました。

 

取り組んだのは、川崎のある地域のエリアブランディングのプロジェクトです。メンターの入川さんのプランをチームで一緒にケーススタディ的に取り組むというかたちでの参画でした。高齢化が進む都市部内過疎地域の隣りに世界有数の医療開発エリアが誘致されたという場所で、この対照的なエリアの共存と地域内経済循環を、地域の人というリソースを活用しながら実現するというプランでした。

 

LVラボのフィールドワークの様子

LVラボのフィールドワークの様子

戸塚:パソナ東北創生の戸塚です。パソナの社内ベンチャーとして3年前に釜石に会社を作りました。釜石のローカルベンチャー推進の事務局をパソナとしてやっていまして、事務局をやるうえで「地域で仕事をつくる」というのはどういうことかを知りたい、一緒に経験したいということで参加しました。また、パソナという会社ですので、自分含めメンバー全員が人材サービスという無形商材の経験しかないため、地域でモノや仕事をつくる地域商社というものを学びたいということもありましたので、”地域商社”のテーマラボに入りました。

 

最終的には、「“燻し” のまち釜石 の 地域商社」というプランになりました。これは、地域の幻の名産である燻し柿『甲子柿』というのがありまして、これを起点にしつつ、歴史的には釜石は鉄を掘削し日本で一番初めに洋式高炉を作った場所ですので、その鉱山と、あとは豊富な農産・海産物を”燻し”と組み合わせて展開していこう、とそういうプランです。

 

当初は地域の生産者さんと一緒に柿の生産と販売をやっていたので、柿を使った六次産業化ができないか、プランを考えていたのですが、もっと自分たちが主体として、プレイヤーとしてやらなければ、やりたいなと変わっていった。そしてあるタイミングでメンターの畦地さんが拾い上げてくれたテーマが”燻し”でした。燻して渋みを抜くというやりかたがその地域にあって、「これはイケるで!」って(笑)。言われた時は、「そうですね〜」という感じで実はあまり心に残ってなかったんですが(笑)。

 

ーーーさすがの目利きですね(笑)。最初は柿中心で、葉っぱをお茶にするとか、そういった六次化のアイディアでプランをたててらっしゃいましたが、どんどん変わっていきましたね。

 

戸塚:はい。自分としては大きかった変化は、最終的に「稼ぐ」を示すことが、遠慮したり恥ずかしいことじゃなくなったのが大きいです。この栗を1000円で売るとしたら、デザインをどうするか、どこで売るのがいいのか。そこで利益を最大化し、出口をデザインするということをまっすぐ。

メンター、ファシリテーター、そしてメンバーとの関わりと学び

 

ーーーそういうプロセスの中で、メンターやファシリテーターとの関わりはどういったものでしたか?

 

戸塚:自分たちが主体になって取り組む、という方向に変わる前の時期でモヤモヤしていたとき、ファシリテーターの方からいただいたメッセージがとても心に響いて。細かいところはあんまり覚えてないんですが(笑)、「3年前から地域に入って事業をつくって、いろいろと切り開いていくぶん苦労も多いですよね、でもやることに意味があるかもしれないですね、でもちがう方向性もあるかもしれませんね、どっちでもいいよね。可能性があるよね」みたいな、いまこう喋っててもすごく普通のことなんですけど(笑)。

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ーーー(一同笑)。どう響いたのかいまいちわからないですが(笑)、とにかくファシリテーターの言葉が響いたと。

 

戸塚:そうですね(笑)。がんばれがんばれ!というのでもなく、愛がある言い方をされたというか。畦地さんに「イケる!」と言われたことに取り組まないのももったいないなとか、周りのメンバーにもいいね!と言われたりして、いろんなことを思って、このタイミングで頑張っておかないと、と思いましたね。

 

稲津:わたしはメンターだった入川さんの”街を見る視点”がとても勉強になりました。その地域にあるものではなく、そこに居る人を見るというもので、持っているもの、着ているものを見る。そこから何が必要なのかを考える。その場所の生活にあっていないものをつくってもダメ。地域のために必要なものが何なのか。自分の街もそういう視点で見ることができるなと。

 

あと教わったのは、お金じゃないよ、利益を得ることが不動産活用なんじゃないよ、ということでした。キレイなビルがいいのではなくて、古くても活用できる、価値になるビルもある。不動産の仕事をやってきて、新しいキラキラの物件が賃料も高いしいい物件だ、というのが当たり前の価値観としてあったんですが、そうじゃない。ボロボロでもうまく活用すれば地域にとって価値が産まれてくる。そういうところは新しい視点をいただきましたね。

LVラボのフィールドワークの様子

LVラボのフィールドワークの様子

丸山:住んでいる人の視線に合わせる、というのはわたしも学びましたね。あとは、「あなたはほんとうに何がしたいのか?」ということをとことん詰められる場でした。「”地域のために”なんて言う人は来ないほうがいい」と言われたり(笑)。しかしそれは、「あなたは何がしたいの?」ということを問うてくれているんですね。

 

自分は結局、「動くこと」、旅行をしたり食材を巡って動き回ることが好きなんだ、そういうことがしたいんだ、ということがはっきりしました。やりたいことをベースに、地域との関わり方を見つけることができました。こんなに自分を問うことってあんまりないですし、たぶん東京だけではここまで自分をさらけ出して考えられないとおもいます。

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ーーー仲間の存在というのはどうでしたか?

 

丸山:ラボでいっしょになったメンバーとは、”これからも何かいっしょにやっていきたいね”ということで、今も一緒に視察に行ったり、お互い応援しあったりしています。あとご夫婦で参加の方もいらっしゃって、仲間と参加するっていうのもいいなーと思いました。

 

ーーーメンバーの一人のプロジェクトでクラウドファンディグやったときにも、ラボのメンバーが応援してくれたりとか、あったようですね。

 

丸山:そうですね。得意分野がそれぞれ違って、情報交換しあったり、年齢も若い人からベテランまでいたのもよかったです。

 

稲津:不動産のラボメンバーとも関係性ができたところもあるんですが、他のチームの人たち、地域で既にやっている人たち、いままで関わったことの無かった人たちと繋がれたのもよかったです。

LVラボに関心のある人へのメッセージ

 

ーーー参加を検討している人、2期生に向けたメッセージをお願いします

 

稲津:LVラボは、ラボだということ、授業や講座ではなくラボだというところ。僕の場合は今回は自分の小田原という地域ではなかったのですが、自分で考えて取り組むことができる場だということ。人のやっていることを見て学ぶ授業だと受け身になってしまうけれど、ラボなので、自分のプランについて、メンターの力も借りれるし、実験もできる、そういう機会だと思います。

 

丸山:偉そうなことはぜんぜん言えないんですが、マイ・プランとして自分で仮説をもって、そこで自分自身のことや本質をとことん問うてくれる環境がある。それを活用できる、ものすごい意義があると思います。東京で生まれて育っているので、正直田舎に憧れている部分もあったんです。そういう自分や東京での環境をまた俯瞰的に見ることができました。

 

戸塚:そうですね。20代の人も40代の人も居て、仲間もできる。そこで個人として、恥ずかしげもなくなんでも言い合える関係というのはほんとうに貴重な、珍しい場でした。そこに組織の人間としてではなく、個人として参加できるところもよかったですね。会社ではやるべき方向性などをまず考えてしまって出せていなかったようない想いをたくさん出すことができて、自分自身もあ、こんな想いがあったんだ、と気づかされたりしました。

 

あとは、ラボにはメンターとファシリテーターと事務局(ETIC.のコーディネーター)、という人たちがサポートしてくれる仕組みになっているんですが、その伴走体制が絶妙でした。メンターは、要所要所でグイっと来る。本気なのかどうか? 迷いはないか? そこさえあればとことん付き合ってくれる。喩えはヘンですがお父さんみたいな。ファシリテーターは、すべてを受け止めてくれるほがらかさ(笑)。何を考えたらいいのか、いっしょに問いを共有してくれるお母さんみたいな存在。そして事務局(ETIC.コーディネーター)は、本当にあたたかい(笑)。部活でいつも応援してくれる親友みたいな感じですかね(笑)。

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ーーー二期生の方たちと皆さんとの交流も楽しみです。今日はありがとうございました。

 

現在、自分のテーマを軸に地域資源を活かしたビジネスを構想する半年間のプログラム「ローカルベンチャーラボ」2022年6月スタートの第6期生を募集中です!申し込み締切は、4/24(日) 23:59まで。説明会も開催中ですので、こちらから詳細ご確認ください。

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