「全国から移住者があつまる町」として注目されている地域があります。
それは、北海道の下川町。移住者を迎える環境づくりを積極的に進め、最近では、地域の人と地域に行きたい人をつなぐ移住スカウトサービス「SMOUT(スマウト)」で、2018年度 「SMOUTアワード グランプリ」を受賞しました。
「DRIVE!職場見学」第5回では、こんなふうに人と地域をむすびつけながら、新しいチャレンジを続ける下川町役場を取材。役場スタッフの方の仕事についてお話を伺いました。
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数々のピンチを乗り越えてきた下川町の新たなスタート
東京23区とほぼ変わらない面積のうち、約9割が森林にかこまれている北海道上川郡下川町。人口は約3,300人。この小さな町、下川町はこれまで、北海道で最も過疎化が進んだ時代や合併問題など数々のピンチを、循環型森林経営をはじめ下川町の資源を活かしたチャレンジで乗り越えてきました。
こうした取り組みは国からも認められ、2011年には「環境未来都市※」に選定。2018年は「SDGs(持続可能な開発目標)未来都市・SDGsモデル事業」にも選ばれ、また第1回「ジャパンSDGsアワード」で内閣総理大臣賞を受賞しました。
※:「環境未来都市」構想とは、環境や高齢化などの課題に対応し、環境・社会・経済の3つの価値を創造し続ける“誰もが暮らしたいまち”“誰もが活力あるまち”の実現に向け、先駆的プロジェクトに取り組んでいくこと。特定の地域が選定される。
>>下川町のSDGsに関してはこちらの記事もぜひお読みください。
そんな下川町の地域づくりを黒子として支えているのが下川町役場。町の中心部にあり、まわりには小学校や公民館、町立病院などが並びます。
多彩なキャリアを積んで、SDGs推進担当に
今回、お話を伺ったのは政策推進課で働く和田健太郎さん。
下川町には1歳から住み、中学生の頃に父親の転勤で旭川市へ引越し。札幌市の大学に進学後、Uターンする形で下川町役場に就職したそうです。
「最初は農務課に配属されました。下川町にはサンル牧場という町営の牧場があって、そこの担当でした。夏は牛を広大な自然の中で追ったり、牛にワクチンを打つ補助をしたりしていました。虫のアブがよく飛んでいたのですが、すごく大きくて黒と黄色のきれいなしましまなんですよ。大自然が生んだ奇跡だなんて思っていました」
農務課に3年勤めた後は、東京・永田町にある内閣府地方創生推進事務局に2年、出向します。
「国の政策に関する仕事を、全国から集まった自治体や省庁・民間企業の方々とご一緒させていただきました。国や自治体の方がどんな思いで働いているのか、民間の方がどんなふうに仕事をされているのか、いろいろと吸収させていただいてすごく勉強になりましたし、、その時の出会いは今も続いており、仕事に対する考え方を作っていただいた大切な2年間になりました」
東京から下川町に戻った後は、新しい事業を戦略的に仕掛ける役割を担います。政策推進課に配属されたのは昨年夏。現在は、主にSDGsを推進する立場で仕事を進めています。
「下川町では、住民の方々が自分で何か活動したり、事業を興したり、働くことや暮らすことを楽しめる地域づくりを進めています。その土台として、昨年、SDGsモデル都市に選ばれたのをきっかけに、2030年に向けて、『みんなで挑戦しつづけるまち』など町の7つの目標を設定しました。
特徴的なのは、今回、町民から10名、役場から10名が代表して白紙の状態から議論を交わし、全員で目標を決めたことです。専門家を交えて、下川町で増えてほしいもの、減ってほしいもの、変わらずにあってほしいものについてそれぞれ意見を出し合うなど、ありたい姿を描いていきました」
下川町で、そして北海道を飛び出して駆けまわる
それでは、SDGsモデル都市になった下川町で、SDGs事業を推進している和田さんはどんなふうに仕事をされているのでしょうか。ある1週間のスケジュールを教えていただきました。
地域内外ともに、SDGs関連事業を中心に動かれている和田さん。活動的に飛びまわっている様子がうかがえます。
たとえば、月曜日。著名人が多数所属する吉本興業株式会社とは、「ジャパンSDGsアワード」でともに受賞されたのをきっかけに(吉本興業はパートナーシップ賞を受賞)、連携協定を結んでいます。
「吉本興業さんが得意とするエンターテイメントの力をお借りして、下川町で面白いことができればと思っています」と和田さんが話すように、実際に様々な企画を展開。吉本興業の著名人たちが下川町を訪れて、イベントでネタを披露しながらSDGsについて紹介したりしているそうです。
また、金曜日の下川町ツアーは、下川町での取り組みを企業などに紹介するもの。
「環境や経済、社会を意識した取り組みは、下川町では環境未来都市に選定される前から考えられ、そして行われてきたことです。ツアーはそれを見て感じてもらうのが目的。今はネットで多くの情報が収集できる時代ですが、細かな部分はどうしても伝わりにくかったりします。現地に行って、実際に手を動かしている人の話を聞いてもらうことはとても意味のあることだと思っています」
1週間のスケジュールにはありませんが、2018年からは、地域住民が下川町でやりたいことを実践するためのプロジェクト「森の寺子屋」もスタート。半年間、月に1回の勉強会を開くもので、和田さんはそのための場をつくり、下川町としてできることを提案、実行しています。昨年は「森のようちえんをつくりたい」といった人たち17名が参加、今年は4月から第2期が始まっています。
同い年の仲間たちとまちづくりプロジェクトも結成
仕事ではSDGs事業をはじめ地域づくりに東奔西走している和田さんですが、プライベートでも、地域づくりに関わっています。
和田さんは1986年生まれなのですが、同じ年に生まれた下川町の仲間と「86(はちろく)プロジェクト」を2013年に結成。現在、年に何回かイベントに参加しており、地域の食材を使った食べ物を販売しているそうです。
下川町を盛り上げようと、まわりの人たちと一緒にアイデアを形にしていく和田さん。その熱意に筆者は惹かれるばかりでした。
仕事でも自分の活動でも、どんなことでも、自分が本気で楽しめていれば、周囲にもいい影響が広がっていく。和田さんはまさにそのスタイルを体現しているように感じました。
最終目標は、SDGsの先にある
最後に、和田さんはこう話してくれました。
「今、下川町は、『SDGsに取り組んでいる町』として注目されることが増えましたが、当面の目標は、下川町が自立した魅力ある町になることだと思っています。下川町の人たちが自分でやりたいことを実現したり、自分たちで生み出したサービスなどでお互い助け合ったり、そんな力のある町になれたら。そのためにも、下川町に住んでよかったと思ってもらえるような基盤づくりをこれからもしていきたいと思っています」
下川町への移住を考えている方にはこんなメッセージを送ってくれました。
「下川町で働く大きな魅力は、本気で地域づくりができるフィールドがあることです。自分で考えて実施した取り組みで町がより良くなっていく実感が得られやすい環境が整っています。豊かな自然とオモシロい人が待っています。ぜひ一緒に楽しみましょう!」
<下川町産業活性化支援機構求人概要>
- 募集ポジション
起業家
- 雇用形態
地域おこし協力隊(起業家募集)
- 給与
月額:200,000円*ご自身がやりたい事業のプレイヤーとして取り組んでいくことを期待しています。3年後にその事業領域で起業できるよう、町内外のサポーターが伴走していきます。
- 勤務地
北海道上川郡下川町
- 応募資格
- 特になし
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北海道下川町役場 政策推進課/和田健太郎
1986年、北海道士別市朝日町(しべつしあさひちょう)生まれ。父親の転勤で1歳にとなりまちの下川町へ引越し。それから旭川市の中学校に転校するまで、下川町で友達とのびのび遊ぶ日々を過ごす。大学卒業後に下川町役場に就職。農務課や内閣府地方創生推進事務局などを経て2018年、政策推進課に配属。SDGsに関連した事業を進めている。
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