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大企業からNPO、そして創業支援の仕事へ。葛藤を受けとめて「思いと現実を両立させるキャリア」に近づけるまで【転職者インタビュー】

2024.02.20 

「転職をする」と決めたはずなのに、迷うことはないでしょうか。自分の思いをどこまで大切に選択すればいいのか……。しかも、まったく経験のない世界へと大きくキャリアチェンジする時は、先の見えない不安と向き合う人も多いのではないでしょうか。

 

大学卒業後、ファッションや音楽、アートなど新しいカルチャーを発信する大企業で17年間活躍していた村上 弥耶子(むらかみ みやこ)さんは、社会課題解決の仕事への転職を決めてから、自分の思いと現実の狭間で悩み、暗中模索する状態を経験したそうです。今年2月からは、まちの創業支援事業を展開する企業で働いています。

 

村上さんがこれまでどんなことを思いながら、自分が納得できる転職へとたどり着いたのか、お話を伺いました。

 

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村上 弥耶子(むらかみ みやこ)さん

大学卒業後、株式会社パルコ入社。パルコで働いた17年間は、営業・販促・プロジェクトマネージャーとして活躍。入社後初めて提案したアイデアがその後も続くプロジェクトのフォーマットになったり(宇都宮パルコと大手老舗書店とのコラボで著名人の手形タイルを書店内に展示)、各部門との連携で新しいコンセプトのキャンペーン「ギフト(LOVE&GIFT)」を手掛けたりするなど、大きな仕事をゼロから生み出した。

 

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大企業からNPOへ転職を決めた理由

 

――株式会社パルコで働いた17年間は、宣伝部などで数々の実績を作りながら活躍の場を広げました。その後、NPOへ転職されましたが、何かきっかけがあったのでしょうか。

 

はい。子育てを通じて価値観が大きく変わりました。例えば、学力だけが子どもを評価するものさしではありませんし、将来の進路に決められたレールがあるわけでもありません子どもによって多様な選択肢や価値観があります。そんな中で、「新しい選択肢をつくりたい」「広い選択肢から自分の新しい可能性を見つけられる社会をつくることに力を注ぎたい」と思うようになりました。

 

私自身、自分ではわからなかった才能に、まわりの人からほめられることで気づけた経験があります。小学4年生の時、こわいと思っていたある先生から「君は人前で話す才能がある」と言ってもらえて、その後は学級委員長や生徒会長など人前に出ることが増えたり、パルコに入社してすぐ、自分のアイデアが大きなプロジェクトになったことで上司から認められたり。こんなふうに、今度は私が、「社会にいまはまだない、新しい可能性や選択肢を広げることができたら」と思いました。

「子どもの課題解決の仕事がしたい」。では、「本当に働きたいところ」とは?

 

――転職エージェントを利用されるまでの経緯を教えてください。

 

最初に「子どもをテーマに社会課題解決の仕事をしたい」と思ったものの、就職先の探し方がわからないでいました。自分の生活圏ではまず情報がないだろうし、株式会社だとそれまでのキャリアの延長になるような気がして、振り切ってNPOに絞り、その中から行けそうなところに行くしかないのかなと思っていました。

 

そこで、「NPO 就職」などキーワード検索をして、いくつか転職エージェントから情報収集するようになったんです。面談も受けるようになりました。

 

――転職エージェントの面談ではどんな話をされましたか?

 

対話型で評判のいいエージェントを選んでいましたが、大半が自分のビジネススキルや能力の話が中心でした。とてもよく対応してもらったのですが、転職活動では心の奥底にある想いも大切にしたかったのでその点で難しさを感じていました。

 

そのなかで、最初、「時間をかけてでも、本当に行きたいところを探した方がいい」と言われたのが、DRIVEキャリア面談(現 DRIVEキャリアコーチング)でした。「今向き合っておかないと、定年を迎える年齢まで引きずる恐れがある」と、コーディネーターの方は話していました。

 

私は面談で話をするうちに、自分から「本当に働きたいと思える会社に入社できるまで、アルバイトで生活をしてもいいと思っている」と、覚悟も生まれるようになっていました。

自分の想いを大切に、営業力を活かしてNPOに転職

 

――1回目の面談後は、どんなふうに就職へと進んだのですか?

 

コーディネーターの方から、「理念とマネタイズを両立させるために汗をかいている団体が多いNPOでは、村上さんのように、企業での営業経験などビジネススキルを持った人がとても必要とされている」といった話を聞いて、「自分の営業力が活かせるかもしれない」と思いました。

 

そこで、自分の子どもたちへの想いと近いNPOに、これまでの営業力が活かせるポジションで応募し、転職に至りました。

 

――ご自身の想いを大切に、強みを活かした転職をされたのですね。その後、NPOを退職されてから2回目のDRIVEキャリア面談を受けられました。

 

はい。NPOを退職することになった理由は、自分の想いが強い分、仕事として継続するのが難しいと思ったからでした。それはなぜなのか、コーディネーターの方との面談で気づいたのですが、自分の大切にしたい原体験から描く理想と、NPOの理念やビジョン・ミッションが完全に合致していないと、どうしても自分のこととして捉えすぎて、仕事を通じて傷ついてしまう恐れがあることがわかったのです。

 

コーディネーターの方はこう話していました。

 

「ご自身の原体験から生まれた想いは大切だけれど、仕事として見た時には、想いの部分をいまより1段くらい下げてみたほうがいいと思います。そのうえで抽象度を上げたところと合う会社があれば、働き続けられるかもしれません。まずは、自分でそう受けとめて会社や仕事を見ていかなければ、また同じ葛藤が生まれて辛くなる可能性があります」

でも、違和感は間違いではない

 

2回目の面談では、同時に、「進みたくない」「嫌だな」といった違和感は、悪いことでも間違いでもないと気づけました

 

NPOを退職したことは辛い経験でした。でも、ふりかえった時、NPOに転職できたこと自体はとてもよかったと思うこともできました。なぜなら子どもをテーマに話し合える人たちと出会えて、自分のやりたいことにも気づけたからです。就職活動と並行して、「子ども」つながりのコミュニティに入ったり、自分が発信したいことを活動として始めたりすることができました。

 

Beyondミーティング登壇

村上さんは、2023年2月、社会・地域課題解決や新しい価値創造に挑む人を応援するブレスト「Beyondミーティング」に登壇した

 

――転職を通じて自身の本音と向き合い、さらに自分のやりたいことをベースに活動範囲を広げられたのですね。

 

結局、40代で短期転職が続いたのですが、3回目のDRIVEキャリア面談では、短期転職からどんなデメリットが生まれるか、厳しい話もしてくれました。キャリアチェンジのマイナス点やリスクをなかったことにして進んだとしても、本質的な転職活動はできないと思っていたのでありがたかったです。

 

――リアルな状況を把握しつつ、村上さんの思いとキャリアがうまく両立できる働き方や生き方を探っていくという感覚でしょうか。

 

そうです。また、転職が決まらないとどうしても不安になって、「自分に価値や能力がないからだろうか」と焦ってしまいます。そうすると、「早く就職しなきゃ」と、自分がなぜ転職したいと思ったのか、理由や思いを見失ってしまうことが多いように思います。

 

そんな私にコーディネーターの方はこう話してくれました。

 

「現実は確かに厳しいけれど、自分を低く見積もる必要はないし、これまでしっかり積み上げてきたものが伝われば大丈夫です。それに、伝わる会社に就職したいですよね」

 

この一言で自分はどんな生き方を望んでいるのかをじっくり考えられたと思います。

「ビジネスの世界で自分のスキルを活かす」仕事に可能性を感じて

 

――「働くこと」は、もちろん生活していくためでもありますが、どう生きていきたいか、どんな自分でどんな人生をつくっていきたいか、というすごく広い意味を持っているように感じます。

 

そういうことも意識できるようになった時、パルコの仕事がすごく楽しかったことを改めて思い出したんです。そうすると、自分にとって苦ではない、アイデアを形にしたり、人とのコミュニケーションを広げたりするスキルを活かしながら、ビジネスの世界で働くことが自分に合っているのかもしれないと思うようになりました。スキルを通して自分の良い部分を存分に活かしていくことで、「自分がこうなるといいな」と思う社会に近づく、そう実感できる時に幸せを感じられるかもしれないと。

 

こんなふうに気づきを重ねるなかで、株式会社タウンキッチンの仕事を知りました。

 

タウンキッチンは、地域のなかで、私のように「何かやりたい」という人が一歩を踏み出せるように、シェア施設やコミュニティをつくり、マネタイズを考えながら利用者の方たちを応援している会社です。仕事を通じて、私が目指したい社会の実現にも貢献できそうだと思いました。

 

一方で、採用担当者の方は、「パルコ時代のスキルをそのまま活かすのではなく、柔軟に、新しい可能性を耕すことに活かしたい」という私の姿勢を見てくださったのかと思います。

対話を通じて、いろいろな人の可能性を一緒に広げたい

 

――対話や行動を重ねることで、自分が進みたい仕事や生き方が少しずつ現実化していったのですね。

 

はい。今後は、タウンキッチンで事業開発を通じてまちの人の創業を応援しながら、もう一つ、理想の社会づくりを目指した自分の活動をしていきたいと思っています。子どもを軸に、対話の場をつくる活動です。

 

タウンキッチンは、こんなふうに私が選択したキャリアや思い、それに私のこれまでの葛藤を含めて、「すべてが村上さん」だと受けとめて採用してくれたように思います。世の中にこうした相手がいてくれることに気づけたのは、転職すると決めてからの経験があったからだと思っています。

 

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友人が主催したイベントにも登壇した時の様子。村上さんは左端の上から2番目。

2023年11月には「Beyondミーティング」にも再登壇した

 

――これからのキャリアや人生で大切にしたいことはありますか?

 

社会に対して「こうかもしれない」と、いまはまだない可能性を考えていける社会、「変わっていけるかもしれない」と柔軟に捉えられる社会になるような役割を担っていきたいです。

 

対話を通して、人の思いやありたい姿を受けとめ、新しい可能性を一緒に広げていける存在でありたいです。

 


 

【担当コーディネーターから一言】

DRIVEキャリアに相談にきてくださる方は、未来に対して「こんな社会になったらいいな」という願いをお持ちの方ばかりです。

村上さんの場合は、その「願い」に関してプライベートでも活動をしつつ、仕事としては通底する価値観やビジョンはもちろんしっかり共感できるところで、スキルも活かせる場に出会うことができました。

 

すべての想いを仕事だけで実現する必要もないし、一方で、「生活のため」と割り切り、我慢して働く必要もないと思います。村上さんのように、それぞれが自分にとって、一番気持ちよく、充実して過ごせるバランスを見つけられることを願っています。(腰塚)

 


 

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NPOやスタートアップなどソーシャルセクター転職をされた方の経験はこちらからも。ぜひお読みください。

>> 「転職者インタビュー

 

 

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たかなし まき

愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科を卒業後、企業勤務を経て上京。業界紙記者、海外ガイドブック編集、美容誌編集を経てフリーランスへ。子育て、働く女性をテーマに企画・取材・執筆する中、2011年、東日本大震災後に参画した「東京里帰りプロジェクト」広報チームをきっかけにNPO法人ETIC.の仕事に携わるように。現在はDRIVEキャリア事務局、DRIVE編集部を通して、社会をよりよくするために活動する方々をかげながら応援しつつフリーライターとしても活動中。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。