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新しい「問い」を得て、さらに「自分らしい」スタートを切る。社会課題解決に取り組む起業家たちの成長

2019.05.22 

問いの重要性

「正しい答えよりも、正しい問いが必要だ」と言ったのはあのピーター・ドラッカー。「問い」の立て方は、近年様々な問題発見・解決が必要な現場で重要視されている。どんな問いを立てるかによって、導かれる「答え」は全く別のものになる。「そんなの当たり前だよ!」という声も聞こえてきそうだが、目の前のことに追われながら、ひとりで本質的な問いをつくり続け、ひとりで自分自身との対話を続けるのは難しいのも事実。特に、日々の判断が未来へつながっていく起業家にとって、どのような「問い」を前提に考えるかは非常に重要だ。

そんな起業家のために「問い」を与え続けてくれる、しかも、「社会課題」に向き合う起業家を応援する私塾がある。それが「社会起業塾」だ。

多様な角度からのメンタリング

社会起業塾は、「塾」と言っても、先生が個別についたり、理論などを学ぶ座学が多くあったりするわけではない。中心となるのは、対話を通したメンタリングだ。

メンターを務めるのは、長年、社会課題解決に本気で挑み続けている方々ばかり。NPO法人ケア・センターやわらぎ代表理事の石川治江さん、A0(エーゼロ)株式会社代表取締役社長の牧大介さんと、複雑な課題の解決に長年向き合い続けてきたメンバーが揃っている。

2018年度最終報告会でのメンターの方々

2018年度最終報告会でのメンターの方々

そんなメンターから、良質な(ときに非常に厳しい)問いを与えられるのが社会起業塾だ。メンター陣の専門領域は、福祉・医療・教育・農業・・などなど毎年ばらばらだ。複数の領域をまたいだ、横断的な課題解決手法が求められる時代、多様な視点を受け取れることはその後の塾生の事業に良い影響を及ぼしているようだ。

2018年度最終報告会でのメンターの方々

2018年度最終報告会でのメンターの方々

2018年度も、9名のOB・OG生が生まれた。今年度はどのような社会起業家が新たな一歩を踏み出したのか? 卒業したばかりのOBOG生に、社会起業塾での経験について話を聞いた。

「思い込みや前提を覆されました。」

2018年度生のひとり、塚崎康弘さんが経営する「学習支援塾ビーンズ」は、もともとは不登校の子どもを対象とした個別指導の塾だった。社会起業塾をきっかけに、通学状態に関係なく子どもたちが混じりあい、塾外の大人たちとも語り合って自身の進路を考えていくという、「コ・ラーニングスペース」と呼ばれる場所へと変化を遂げた。

学習支援塾ビーンズ塚崎さん

学習支援塾ビーンズ塚崎さん

“あなた、真面目なのよね。つまんない。”

“そもそも、塾に通う子どもたちに、常に自尊心と内発性を掻き立てさせるのってつらくない?”

“あなたの「べき」論から、子どもたちをもっと自由にしたら?”

これらは、塚崎さんが、メンター・石川治江さん、牧大介さんらに言われた「前提を揺さぶられた」言葉だ。

エーゼロ牧大介さん(左)ケア・センターやわらぎ石川治江さん(中央)ETIC.宮城治夫(左)

エーゼロ牧大介さん(左)、ケア・センターやわらぎ石川治江さん(中央)、ETIC.宮城治男(左)

塚崎さんは、「社会起業塾に採択されたときは、てっきり自分の提出した計画が認められ、これからがしがし事業計画を詰めていくのかと思っていました。そんなに甘くなかったですね(笑)。事業内容というより、自分自身の思考のくせや、内面を深掘りされていく日々でした。」とこの半年間を振り返る。

事業の方向性の変化については、「メンターのみなさんから、全力でフィードバックをいただいていたのが塾の教育方針でした。社会起業塾初期から考え続け、“より自由に” “ゆるやか”なものに方針を転換した結果、子どもたちの表情も変わり、自主性が出ています。起業塾の半年で、明らかに塾の雰囲気は変わりました。メンターのみなさんからの言葉を大切にしながら、これからの事業と授業をすすめていきます。」と語ってくれた。

「新しいものさしを手に入れる場所」

同じく2018年度生の矢澤修さんは、障がい・難病を抱える方と家族のためのオンラインコミュニティサービス「イースマイリー」を運営している。これまでIT業界での事業開発に従事していた矢澤さんにとって、社会起業家の道に進むことは大きな挑戦となる。そんな矢澤さんは「この塾がなかったら、今のアウトプットやサービス、コミュニティはできなかった」と語る。

イースマイリーの矢澤さん

イースマイリーの矢澤さん

「この半年間は、メンターやコーディネーターの方々とのコミュニケーションをすごく頻繁に取っていました。こういう考え方もあるんじゃない?こういうアプローチもあるんじゃない?と、新しいものさしをたくさんいただきました。その複数の視点に対してどう思うか? どう反応するのか? と、さらに深掘りして考え続けることで事業のコアにたどり着いた感覚があります。自分で考えているつもりでも、本当の”内省”は、一人だけでは難しいことを知りました。」

「イースマイリー」をリリースしたのは、社会起業塾の期間中である2019年1月。「まずサービスをリリースしちゃいなよ!」というメンターからの後押しがきっかけだったそう。

矢澤さんは、「同時に、”イースマイリーをつくる会“という、僕らを応援してくれる最初のサービス受益者コミュニティも発足し、受益者の声を聞きながら少しずつサービスを改善していく場もつくりました。“イースマイリー“を始めたことで、これまで見えていたのは課題の氷山の一角で、その下にある、氷山の塊を捉える重要性を感じています。」

矢澤さんは、社会起業塾で学んだ「机上の空論から具体アクション」へ移すことの大切さを胸に、サービスの認知や利用拡大に向けて活動を進めていく。

本当のインパクト”について考えられた」

社会起業塾には、様々なフェーズの起業家たちが集まる。既に企業・団体を立ち上げ、活動を推進している方の参加も多い。

日本にいる難民申請者の社会参画とエンパワーメントを目指すNPO法人WELgee代表・渡部清花さんもそのひとり。3年前に団体を立ち上げてから、難民のネガティブなイメージを変革するキャンペーンや、緊急シェルターの運営など、これまでにも多くの活動・発信を続けてきた。

そんな渡部さんが社会起業塾で得た気づきはどんなことだったのか? 渡部さんは、「今までも、“何かになりそう”なことは確かにやってきました。ただ、メンターの方に“本質的なインパクトをつくり出してないのに、なんとなくよさそうなことを続けている”という指摘をいただいてはっとしました。調査や検証の時期は過ぎていることに気がついたのです。」

NPO法人WELgeeの渡部さん

NPO法人WELgeeの渡部さん

また、団体を継続的に成り立たせていくためのビジネスモデルについても悩んでいたという渡部さん。「事業型と寄付型、どちらがいいと思いますか? とメンターの方に質問をしたら、“どっちか、っていう考え方がまず間違っている。事業型と寄付型では、集まる人が違う。集まる人が違うということは、団体にとってのお金の価値も違ってくる。”という指摘をいただいて。全然わかってなかったな、と痛感しました。」

半年間のメンターの方々との対話を通して「就労伴走事業をしぼってとことんやってみる」という中期的な主軸が見えた渡部さん。「今年からは、難民申請者の方向けに日本で自分らしく「働く」最初の一歩をつくるシェアハウスの運営に関わる予定です。」と語ってくれた。

「実は見えていなかったやりたいこと”が見えた」

里親を増やすための啓発活動を進めてきた一般社団法人RAC代表・千葉彩さんは、社会起業塾での半年間を経て、本当にやりたいことがわかったと話す。

社会起業塾への応募時は、里親を増やすための事業計画を提出した。つまり、応募時点での千葉さんのターゲットは、施設に保護された「後」の子どもたちを事業のターゲットにしていた。

RACの千葉さん

RACの千葉さん

「メンターのみなさんからは、“里親になりたい自分に酔ってるんじゃない?”  いいことやってる自分に酔ってるんじゃない?”など、直球なご意見をいただきました(笑)。そんな対話をたくさん繰り返すなかで、ほんとうは、保護される前の子供に関わりたいということに気がつきました。それからは、家にいるけれど家族を頼れない子ども・SOSを出せない子どもに対しての事業を考えました。」

RACのターゲットが、“保護された子ども”→“家にいるけれど家族を頼れないこども”に変わったことで、課題構造を再確認することにもつながったと千葉さんは話す。

「大きな問題の一つは、早期介入が必要な時期に選択肢がないことなんです。子どもたちには、いざという時に逃げられる大人が必要です。そのために、ご近所に頼れる大人を見つけられる仕組みをつくりたい。第一歩として、ご近所さんと子どもをマッチングする、こどもホームステイの取り組みを準備中です。」

セクターを超えた課題解決を

学校に通えない子どもたち、難病や障害を抱える方々を取り巻く問題、難民の社会参画、家族を頼れない子どもたち。今回紹介した2018年度の社会起業塾生が向き合う問題も、決して一筋縄では解決できないことばかりだ。

最終報告会で、渡部さんに問いを投げかけるメンター小野邦彦さん(株式会社坂ノ途中代表取締役)

最終報告会で、渡部さんに問いを投げかけるメンター小野邦彦さん(株式会社坂ノ途中代表取締役)

みなさんのお話を伺っていると、従来のシステムに依存せず、構造や仕組みそのものから作り直そうとする姿勢を感じる。そのために、民間だけではなく政府や行政も巻き込むこと、一つの領域だけでなく複数の分野横断的に活動を進めることも大切にしている。領域問わず、さまざまな難しさのある世界であることは事実だが、ここまで本気で社会課題解決に向き合い続けるプレイヤーがいること自体が、大きな希望であり前進につながっているように思った。

塾生に問いかける今井悠介さん(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事)

塾生に問いかけるメンター今井悠介さん(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事)

インパクト創出のためのさまざまなサポーター

社会起業塾では、オフィシャルパートナーであるNEC、花王、NTTドコモ、プログラムパートナーである電通が応募者の活動をバックアップする。

最終報告会の様子

花王社会起業塾生と花王社員のみなさん

NECなら、ICTを活用して解決できる社会課題。花王なら、新しい生活文化創出につなげられること。NTTドコモなら、モバイルやインターネットを活用した社会課題。それぞれの企業のリソースや強みを生かしたサポートを得られる。

2019年度社会起業塾も応募受付中!

そしてもちろん、本文中にも度々登場した名物メンター・石川治江さんをはじめとする、強力なメンターが本気でサポートする。(こちらのページでは「チーム社会起業塾」として、メンターやコーディネーターを紹介している。)

2019年度の応募は5/17(金)~6/19(水)正午まで。説明会&事業相談会も開催中であるため、ご興味のある方はぜひ公式サイトをチェックしていただきたい。

>社会起業塾公式サイト

 

 

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