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フリーランスとしてUターン。徳島県で挑戦する冨浪さんの「仕事のつくり方」

2019.07.12 

「故郷に戻りたいけれど、戻ったところで自分のスキルを活かせる仕事があるかわからない」。そうした言葉を、都会でキャリアを積んできたけれどそろそろ地方に戻りたいと考えている人々からよく耳にします。そこで今回は、東京で身につけたスキルをそのまま活かし、フリーランスの人事代行コンサルタントとして故郷・徳島県で働いているという冨浪真樹さんにお話を伺いました!

 

20代のうちに生まれ育った徳島県に戻ると決めていたという冨浪さん。戦略的にフリーランスになったのかと思いきや、なかなか紆余曲折があった模様。その試行錯誤の道のりが、同じく自分のスキルの地方での活かし方に悩む方々のヒントになれば幸いです。

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コンセプトは「まちの人事部」。地域全体の働く人たちの好循環を目指して

現在冨浪さんが拠点とするのは、徳島県の県庁所在地である徳島市と、日本全国に29ある「SDGs未来都市」の1つに選定されている上勝町。

 

徳島市では、徳島ラーメンの老舗「支那そば三八」を運営する有限会社三八、そして徳島の食材を使ったこだわりの洋菓子屋「イルローザ」を運営する株式会社昌栄を始めとする複数の企業で人事代行コンサルティングを、上勝町では地域の新たな経済を生み出すローカルベンチャーの輩出・育成を目指す「上勝ローカルベンチャー事務局」で、人事担当をしています(2018年3月現在)。 加えて最近では、個人のプロジェクトとして対象を会社から地域全体に広げ、「まちの人事部」というコンセプトで学生の就活のお手伝いや学生と社会人をつなげていくこともしているそう。

 

そもそも「人事代行コンサルティング」とは、企業から委託を受けて人事機能を代行すること。最近こそ見聞きするようになってきた人事のフリーランサーですが、冨浪さんが動き始めた2015年ごろには非常にめずらしい働き方で、徳島県では聞いたこともなかったそうです。

フリーター期間、起業の挫折を経て決意した徳島での独立

立命館大学を卒業後、東京にある人材系ベンチャーに就職。就職先の決め手は、「20代で徳島に戻りたいから、自分にないものを持っている方と一緒に働くことができ存分に成長できる環境」だったそうです。また、社会人としての日々を送る一方で四国出身で関東在住の人々が集まるコミュニティに所属、そこで出会った仲間と共にローカルな生き方に共感値の高い若者が集まる場である「四国若者1000人会議」というイベントを社会人代表として始めるなど、徳島に関わる活動も続けていたそうです。

 

転機は、2社目への転職でした。入社した頃から目標にしていた自分の給与の3倍の粗利をコンスタントに稼ぐという目標も達成し、キャリアコンサルタント・法人営業・新規事業立ち上げと様々な経験も積むことができました。しかし、転職を経験したことのない自分が転職サポートをしていることに違和感を募らせ、自分のわがままを快く受け入れてくれた企業に恩は感じながらも、転職を決意。そうして勤め始めた2社目で、総務などの経験を経て本格的に徳島にどのように帰るかを考え始めた矢先に不眠症になってしまったと言います。原因は、元々人混みや都市部での生活が苦手で、東京で生活する3年間のうちに知らずしらず抱え込んでしまっていたストレスでした。

 

不眠症の状態で半年間勤務を続けましたが、これ以上働き続けると企業にとっても自分にとっても取り返しのつかないことになると、退職を決意。次のキャリアが決まっていない中で退職を決めることには大きなリスクと不安を感じつつも、決断をしたそうです。

 

「そこで一度は体調を戻すために実家がある徳島市に戻ることにしました。まずは半年間と区切った上で、フリーターをしながら生活を立て直してみて、このまま徳島に根付くのか、もう一度東京に戻るのかを決めようと思いました。中途半端な形で徳島に戻ってきた自分が許せず、自分で自分を責めるような日々で、その半年間はなかなかつらかったですね(苦笑)」

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どうにかして立ち直ろうともがく中、地元の先輩で大学生時代から仲良くさせてもらっていた方から一緒に会社をつくらないかと誘われたことをきっかけに、大阪で起業準備を始めることに。仲間も誘い半年間を費やしていましたが、ある日代表から起業を辞めて転職したいと切り出されて起業を断念。大阪から引き上げ、徳島に戻ることになったのだと言います。

 

「そのときまず思ったことは、それまでは人材業界にいて“隙間(離職期間)がない”キャリアを持つ人が企業に好かれて採用されやすい人で、逆に隙間があると採用されにくいという認識を持っていたけれど、自分は1年間(フリーターと起業準備期間を合わせて)隙間が空いてしまったなということでした。それでも現在やっている人事代行のような仕事で徳島の企業に貢献できるところはないかと思い、手探りながらも転職活動をしましたが、徳島では思うような仕事はありませんでした。それならもう独立するしかないだろうと、覚悟を決めたんです」

 

「徳島で自分らしく働ける仕事をつくっていく」。自分自身を「リスクヘッジを大切にする人間」だと語る冨浪さんにとって、それは覚悟を決めた上での決断でした。

「マイナビ」アクセスランキング徳島県1位を獲得した、実践型インターンシップ

独立を心に決めた冨浪さんが最初に起こした行動は、大学時代に徳島県内での活動で出会ってから関係が続いていたという有限会社三八(前出)の岡田元一社長に、「自分にできること」をまとめたパワーポイントを持って会いに行くことでした。

 

「独立すると言っても何からやれば良いのか分からず、まずは自分がこれまでやってきたことで貢献できることはないかを知りたいという気持ちで、岡田社長に会いに行きました。断られたとしても、なぜ断られたのかを知れたらラッキーぐらいの気持ちを持たないと動けないぐらい怖かったのを覚えています」

 

この決意は功を奏し、インターン募集を出したものの多忙でプログラムの設計に手を割けなくなっていたという岡田社長から、インターンプランの考案と実行を任されることになります。そうして、岡田社長と冨浪さんで考案した三八でのインターンシッププログラムは、その名も「まちを良くする未来のお店を作ろうインターンシップ(現在はまちを良くするインターンと名称を変更)」。2015年より、参加者成長特化型で地域に根ざし、まちが良くなる事業プラン作成を体験できる実践型インターンシップとしてスタートしました。

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第1回目の学生たちへのお題は「ラーメンを提供するお店」、第2回目はラーメン業態以外のお店で「まちを良くするお店」。学生たちは自己分析、現地調査を経て、徳島で活躍する経営者数名を前に5日間で作り上げたテーマに沿った店舗プランのプレゼンテーションを行います。

 

この「まちを良くする未来のお店を作ろうインターンシップ」は、2015年に就活支援サイト「マイナビ」アクセスランキングで徳島県1位、四国3位、業種別(全国)4位を獲得。さらに現在人事代行コンサルタントとして関わっている株式会社昌栄の岡田圭祐副社長との出会いも、この実践型インターンシップを通してのことでした。

ビジョンへの共感で協働が生まれ、広がる

取材中、幸運にも三八の岡田社長、昌栄の岡田副社長にお時間をいただくことができ(不思議なことに冨浪さんの恩人は「岡田」さんが多いそう!)、お二人にもお話を伺うことができました。

 

冨浪さんとの仕事のスタートを、「完全にタイミングがよかった。あとは、大学生時代からいつか何かに挑戦する人だろうなと思って見ていたので」と語ったのは三八の岡田社長。

 

一方で、実際に冨浪さんが仕掛けた仕事を知ったうえで協働をスタートした昌栄の岡田副社長は、「こんなインターンが徳島にあることは噂には聞いていたけれど驚いたし、その後何度か大学生が集まる場に呼んでいただき冨浪さんの学生に向き合う姿勢や想いを知っていく中で、お互いの実現したい方向性に近しさを感じたことが協働のきっかけになった」と語ります。

 

「もっと深く企業と関わりを持ちたいと思っている大学生はいるはずなのに、なぜ出会えないのか」。そう悩んできた岡田副社長にとって、県外にいる徳島出身の大学生、そして県内の大学生のハブになっているという冨浪さんは、経営者と学生のマッチングに働きかける貴重な存在だと語ります。

 

「徳島にはそうした人材がいないので、地域にとっても大切な存在なのではと感じています。また、弊社はこれまで多くのコンサルタントの先生方に入っていただいて世間一般的に語られることは一通り試してきましたが、それでも経営課題の解決に限界を感じていた中で、彼が考案したインターンシップ経由で内定者が出るなど、あれほど短期間で結果を出したことに本当に驚きました」

 

フリーランスという立場である冨浪さんを、当初は「勤務時間を管理できない」と不安視していた他の経営陣を「結果が出れば分かるから」と何とか説き伏せてきたという岡田副社長。蓋を開けてみれば、冨浪さんが担当したインターンから今まではリーチすることができなかった層の採用が生まれ、社長も驚きを隠せなかったそうです。

 

「協働する上で重要なのは『時間』ではなく、『ビジョンに共感し合えるのか』ということです。これからは冨浪さんのような存在を受け入れる土壌を地方の企業にも作っていかないといけません」

 

三八の岡田社長も、これからの地方の企業の採用のあり方についてこう語ります。

 

「これからは企業ごとの採用ではなく、地域全体で人を採用していきたいと思うんですよ。地方の企業にとって、非常に能力値の高い人材を一社で囲い込む資金を準備することは困難です。そうした状況の地方だからこそ、地域で人を育てその力をシェアしていかないと、と思います」

 

過去に開催された三八主催のインターンでは、「イルローザ(株式会社昌栄)の店舗を地域のコミュニティの場にしよう」という昌栄をお題にしたものもあるのだとか。それはまるで、地域の未来へのビジョンを持つ企業同士が、地域を舞台にするフリーランスを媒介につながりそのビジョンの実現が加速していくという可能性を感じさせるエピソード。

 

岡田社長は、「一緒に仕事を始めた4年前は“ペラッペラ”だったんですけど(笑)、最近はしっかりしてきたなあ」と、この4年間でインターンシッププログラムの設計に加え、現場を知るために三八の店長を1年間経験したという冨浪さんの成長ぶりを振り返ります。これまでの歩みを時に笑い合いながら語り合う3人の姿は、単純な雇用主と業務委託という契約の関係性を越えた、想いを共有している信頼関係を感じさせるものでした。

まずは飛び込んでみてほしい。想いやビジョンでつながれる環境が、徳島にはある

これからの自身の挑戦について、「その会社に入ったら幸せになれる人を採用したいし、会社も幸せになるという好循環を生み出したい」と語る冨浪さん。就職したら“楽園”だなんてことは中々なくて、でもその“楽園”を一緒に作り上げていけることに人事代行コンサルタントという仕事のおもしろさがある――そう言い切る力強さは、背水の陣で独立した4年間、逃げずに自分の想いと向き合ってきたからこそ。

 

「また、これまでに様々なビジョンを描く起業家に出会ってきました。こういう世の中にしたい!という強い想いを持っているにも関わらず、社内で協力者を作れない、また“やり方”が分からずに二の足を踏んでいる方のお手伝いを徳島でしていきたいと思っています。僕は事業主にも関わらず大きなビジョンを自分で作れません(笑)。ただ、目指すべきビジョンにどんな“やり方”で近づくのかを考え、実施していくことが得意です。そんな自分の強みを活かして、少しでも徳島に貢献できる人材になりたいと思っています。そして、そんな生活をしていれば自ずと徳島で笑いながら過ごせていけるのかなと思っています」

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そう続けながら、これから徳島に戻ってきたいと思っている人に対しても「戻ってきてみたら色々動いていくよ」といった曖昧な言葉がけではなく、具体的な道筋を提示できるような環境を整えていきたいと語ります。

 

「ただ、まだまだ実際のところ、徳島に自分のスキルを活かすかたちで戻ってきたいと思っている人には『帰ってこないと分からない』としか言えない状況ではあります。でも同じような仲間がもっと徳島に帰ってきてくれたら、どんどん加速的に物事が進んでいくと思っていて。戻ってきたいと思うならぜひ飛び込んできてくれると嬉しいし、自分のスキル不足を不安に思うこともあるかもしれませんが、まずは飛び込んでみると受け入れてくださる方は決して少なくはないのかなと感じています。僕の人事代行コンサルティングという仕事は、クライアントの皆さんが一緒に育てていただいているもので、“僕だけ”のものではありません。こんな風に仕事ができるとは、東京の頃はまったく想像していませんでした」

 

もし今、「故郷に戻りたいけれど、戻ったところで自分のスキルを活かせる仕事があるかわからない」と感じている方がいるならば、「ビジョン」をキーワードに故郷で仲間を探し始めてみるのも一つのヒントになるかもしれません。「人によっては甘い関係性だと思うかもしれないけれど、ビジョンや想いでつながることができる環境が徳島にはあるということを知ってほしい」とも語る、冨浪さん。

 

「僕は大学進学で関西に行ったからか、徳島の大学生は都市部の大学生よりも、バイトや就活以外で社会人と関わる機会が少ないという印象を持っています。また県外の大学生とも関わることが少なく、自分のことを知る機会があまりないなと思っています。そのため最近では、自己分析会やES添削、面接練習など学生の就活サポートやそれ以外でも学生の相談に乗ったりしています。また、学生と社会人がフラットな関係で出会える機会の提供をしています。これは、就活や採用の場面だけで、○○大学の △△さんや(株)□□の▲▲さんと個人名の前に所属が出てくる関係で関わるのではなく、それぞれ が個人として関わっていただく機会が今は必要なんじゃないかと思って作りました。こんなことを特定の企業に所属している人事ではやりにくいと思うんですよね。だから、僕みたいなフリーランスがやったほうがいいなと。まちの人事部というコンセプトで学生も社会人も経営者も関係なく、様々な徳島の課題を解決できるような機関になれれば良いなと思っています」

 

「まちの人事部」という現在に至るまでの彼の歩みのように、たとえ今自分の手元に何もないように感じても、共感し合える仲間の存在や模索を続ける中で「自分らしい在り方」が自然と生み出されていくのかもしれないと感じさせてくれた今回の取材でした。

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