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#社会・公共

「共同生活が困り事を解決?社会課題解決型シェアハウスの可能性」by ETIC.横浜

2014.05.20 

現代社会では人間関係が希薄になり、互いに干渉しない生活を求める人々が増えている。

その一方で、他人と共に暮らすシェアハウスをあえて選択する人も若い世代を中心に増加している。シェアハウスは今、個人にどうような価値を生み出し、社会課題の解決手法となる可能性を秘めているのだろうか。 シェアハウスのイメージ

シェアハウスは今・・・

シェアハウスの物件数は近年急激に増加している。2005年89件であったが、2013年8月には全国2,744件にまで増加した。

 

その要因の一つは、一人用賃貸物件に比べ安価であったことから、気軽に住める住居として、20?30代の若い世代がシェアハウスを求めたことにある。しかし、最近その在り方が変化してきている。家賃水準は決して安くはないのにも関わらず、高稼働を実現する物件も数多くある。

 

つまり、経済的な理由ではなく、他人と共に暮らし、そこで生まれるコミュニティを重視した新たなつながりのあり方を、人々が求めている象徴ともいえる。

新たなシェアハウスの展開

入居者が新たなつながりを求めている中で、シェアハウスでのつながりにより社会課題の解決に効果を上げているケースも生まれてきている。次に挙げる3つのケースには、今後のシェアハウスの可能性における大きなヒントが隠されているだろう。

CASE1:ペアレンティングホーム?シングルマザーの住環境を整え、子育てと仕事が楽しく両立を実現する?
ペアレンティングホームWEBキャプチャ

ペアレンティングホームWEBサイトより

ペアレンティングホーム」は、企画運営するにあたり、建築、保育、シェアハウス、土地デザインの専門家4者がチームとなってプロジェクトを遂行している。

 

入居者へのインタビューから「ひとりで育てるプレッシャーや罪悪感がある中、シェアハウスに入居して、想像以上に相談し合い、支え合える仲間がいることの心強さを感じている。」という声が聞かれた。

 

提供する保育サービスによりシングルマザーに時間と心のゆとりを生むだけでなく、同居者のつながりから生活や精神面のサポートを互いに得られている。

CASE2:ぱれっとの家いこっと?障害のある人もない人も安心して暮らせる家をつくる?
障害のある人もない人も安心して暮らせる ぱれっとの家 いこっと

障害のある人もない人も安心して暮らせる ぱれっとの家 いこっと WEBサイトより

軽度の知的障害者も少しのサポートがあれば親や施設から自立した生活が十分に可能である。

 

いこっと」を住まいの選択肢の一つにしたい。そのように考えるのは、東京都恵比寿で知的障害者の就労・余暇・生活支援を約30年間続けている特定非営利活動法人ぱれっとである。前例のない新たな住まいを作るために、1年以上の会議やワークショップを行い、目的・イメージ・設計等、全プロセスにおいて意見交換をして進められた。また、完成後も第3者として運営委員会(ボランティア組織)が携わっている。

 

「今までは家と職場の往復でしかなかった知的障害者の環境が、いこっとに暮らすことで様々な経験ができ、世界観が広がった。意識の変化や自立を感じることができ大変嬉しく思っている。」とえびす・ぱれっとホーム施設長の菅原睦子さんが語ってくれた。

CASE3:チェルシーハウス?本気で大学生活を充実させたい学生が集まる学生寮?
チェルシーハウス

チェルシーハウスWEBサイトより

チェルシーハウスの運営には大学の教育改革を支援する「NPO法人NEWVERY」、学生寮の仲介・斡旋事業を長年手掛けてきた「株式会社ネストレスト」が携わっている。共同生活を通じてお互いに刺激を与え合うことを考えられた共有スペースの設計や入居者のグループ組織化、また、各分野で活躍する社会人がメンターとして学生に関わるという特徴がある。学生同士の交流だけでなく、外部者が関わる空間が大学生活に刺激を与え、学生の成長の最大化を目指している。

 

様々な要因により住まいの選択肢が妨げられている人にとって、シェアハウスは新たな選択肢となっている。3つの事例には、社会的課題解決の可能性があり、重要な点が示唆されている。

 

まず、入居者間コミュニティにより生活感、価値観、向上心を高める結果につながっていることである。そのためにはコミュニティを意図的につくる必要がある。

 

また、特定のコミュニティを対象とした場合、様々な専門家が携わることで入居者に最適な環境が提供される。その存在は、入居以前から本人や周囲の人への理解促進や安心感を生む。

 

また、そのコミュニティに、専門家や運営者等が第三者として関わることで、摩擦やトラブルを防ぐ上で重要な役割も果たしている。3つの事例より、シェアハウスは社会課題の深刻化を防ぐ予防解決の手法となる可能性があるといえる。

シェアハウス業界が抱える新たな課題

2013年9月、国土交通省は「シェアハウスを建築基準法上の「寄宿舎」の基準を適用すること」と指導要請を行った。寄宿舎の場合、間仕切り壁の耐火性確保が必要になり、さらに東京都では、都建築安全条例の規定により火災時の避難路となる窓先空地という難題がある。

 

現存する物件のうち約8割の2,000件以上が戸建て住宅を再利用したものであり、建築基準法や都条例に照らせば「不適合」となる可能性が高い。シェアハウスが新たな住まいの可能性をもつ今、安全性を確保した上での規制緩和を求める動きも出て来ている。

今後の地域社会へのインパクト

地域での人間関係が希薄となる一方で、個人が抱える課題が多様化・複雑化する中、解決する包括的な支援の手法の一つとしてシェアハウスがある。

 

特定のコミュニティを対象とした場合、住環境を改善するだけでなく、新たな多様な価値を生み出していくのは間違いないだろう。入居者の社会背景や課題を踏まえ運営されることで、住まいや暮らしを楽しくさせ、社会課題の深刻化を防ぐ予防解決の手法の一つとして、これからの私たちの社会に大きな可能性を与えてくれるだろう。

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