はじめに、この度の九州南部の豪雨により被災された皆様へ、心よりお見舞い申し上げます。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災地の皆様が一日も早く日常を取り戻せるよう、心より願っております。
7月3日に発生した九州南部の豪雨。熊本県をはじめ多く地域で甚大な被害が出ています。その状況を受けて、同月5日に設立された「BRIDGE KUMAMOTO®基金」。
〈BRIDGE KUMAMOTO基金〉熊本南部豪雨への緊急災害支援募金
一般財団法人くまもと未来創造基金と一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO®が共同で立ち上げ、現在までに1700人以上の方から約883万円の寄付が集まっています。(2020年07月08日10:00現在)
今回、緊急インタビューと題し、一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO 理事の田中美咲さん(以下、敬称略)を取材しました。BRIDGE KUMAMOTOは、熊本地震の被災地の屋根を覆っていたブルーシートを回収・洗浄して「ブルーシードバッグ®」を作成し、販売した売り上げの一部を寄付する取り組みでも注目されています。基金立ち上げの背景や今後の役割、コロナ禍での自然災害にどのように向き合うと良いのかなど、お話いただきました。
フットワーク軽く動き、できる限り早く、支援金を届ける。
――本日はよろしくお願いいたします。まずはじめに、基金設立の背景をお聞かせください。
田中:一般社団法人BRIDGE KUMAMOTOは、2016年の熊本地震をきっかけに設立された団体です。熊本地震の時、発災直後に一番必要だったものが、現場で即時的に使うものを買うお金でした。その経験も踏まえ、今回寄付金を集める基金を立ち上げることになりました。
私たちの団体は、地元にいるからこそ、現場の信頼できる人たちを知っているので、「顔が見える存在に、できる限り早く、お金を送ること」を徹底する民間発の基金として、フットワーク軽く動くことを大切にしています。
――基金の今後の役割をどのようにお考えでしょうか?
田中:いただいている支援金は、「今この瞬間に必要なところに、できる限り早く送り、現場の活動を充実させること」「被災された方々の速やかなる復旧・復興に充てること」に使う予定です。
また基金は、お金を集めて送るだけの仕組みではなく、プラットフォームのようなものだと思っています。この基金に関わる50名以上のクリエイターの方々(*)や周りで協力したいと言ってくださる方々を繋ぐ役割も担っています。
行政の支援だけでなく、民間が基金を立ち上げることでも急を要する被災地の課題を解決できるという良い事例を生み出すことができれば、次の災害にも役立つと考えています。一種の轍(わだち)をつくりたいと思っています。
(*)一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO 代表の佐藤かつあきさんが「クリエイティブの力でもっとできることがあるのでは?」と、ボランティアでクリエイター募集したところ、全国各地から50名以上が瞬く間に集まったとのことです。
「BRIDGE KUMAMOTO®基金」
7月3日に発生した熊本南部豪雨により甚大な被害が発生した状況を受けて一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO®と一般財団法人くまもと未来創造基金が共同で設立した 、復旧支援活動を行う団体への支援金を目的とした基金です。
通常の寄付は、現地で活動する団体に届くまでに時間がかかりますが、われわれは、できるかぎり早く、復旧支援活動を行っている顔の見える団体に寄付し、使いみちの公開も行います。また、当基金への事務手数料などの諸経費は一切発生しません。当サイトにかかる決済手数料の5%のみ発生します。
◆活動団体への振込スケジュール
7月4日〜24日受付分:7月27日活動団体へ振込(予定)
7月25日〜8月24日受付分:8月28日活動団体へ振込(予定)
◆支援金の助成先
・熊本県内の被災地域にて復旧支援活動を行う団体への支援金(活動経費)
・被災された方や現地活動を後方から支援する活動団体への寄付
・神社など特別に支援が必要な住民の拠り所への寄付
そのほか、状況に応じて柔軟に活用できる寄付を行います。
※助成先の選定において、選定委員・選定理由の公開を行います。
※助成団体には、支援金の使途や活動報告の公開を求めます。
《プレスリリースより抜粋》
答えのない課題に、ともに向き合う。
――今回の自然災害をどのように捉えたら良いのでしょうか?
田中:日本は災害大国で、災害時の様々なデータが記録されノウハウもあります。しかし今回一番難しいのがコロナ禍であるということです。特に熊本は熊本地震から4年しか経過しておらず、今回の九州南部の豪雨において、3重に重なった課題を解決しなければいけない状況です。
コロナ禍によって、今までのノウハウが通用せず、支援方法をゼロから試行錯誤しなければいけません。人を助けようと抱えると密着してしまいますし、ソーシャルディスタンスを保ちながらの避難所運営は今までの考え方では困難です。ボランティアで現地を訪れ、無症状のまま新型コロナウイルスを感染させてしまうかもしれないリスクも考えられ、医療体制をひっ迫させてしまう恐れもあります。
――コロナ禍での自然災害で、なにか支援やアクションを起こしたいと思っている人はどうすると良いのでしょうか?
田中:たとえば、現地に支援に行きたくなる方もいらっしゃるかと思いますが、今の災害フェーズですと、プロ以外は現地に行かない方が良いです。コロナの影響で金銭的支援が難しい状況の方がいらっしゃることは重々承知していますが、なにか支援をしたいと考える皆さんが今できる一番簡単なアクションは寄付だと思います。
この災害は長期化することがわかっており、私たちは支援を長い目で見ています。「発災直後、災害1週間、災害1ヶ月後、災害1年後」のように災害にはフェーズがあります。今まさに私たちが集めているのは「災害中の資金」です。現場に使う資材や、避難所を立ち上げる際の費用などに充てられ、このタイミングでの寄付はとても大切です。
答えのないこの課題に、今まさに私たちは全員の知識と想いと力を合わせて協力していく必要があると思います。「誰かの力になりたい」「みんなが幸せになってほしい」「生きていてほしい」という想いは皆さん同じだと思いますので、ぜひ絶やさないでほしいです。
自然災害を風化させないために、できること。
――最後に。今回の自然災害を風化させないために、なにが大切だとお考えでしょうか?
田中:できる限り、今現地がどうなっているのかに興味を持ってほしいです。また興味の持ち方については多様で良いと思っています。ご自身の興味関心に合わせて、現地に想いを馳せていただくことが大切です。
具体的には、もし旅行好きな方でしたら、「いつになったら再び訪問することができるだろうか?」と。もし鉄道好きな方でしたら、「豪雨で流出した鉄橋をどうやったら再建できるだろうか?」といったようなイメージです。自分のできることや無理せずに続けられることで被災地に対して意識を向けていただくことが、風化させないことに繋がると思います。
発災から3ヶ月ぐらいのわかりやすい災害フェーズでは、人も訪れ、お金も入り、メディアも取材に来ます。それ以降は残念ながら減っていきます。風化という意味では、それ以降が勝負になります。ぜひ長い目で被災地のことを知っていただけると嬉しいです。
――お忙しい中ありがとうございました。引き続き、心から応援しております!
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【参考資料】
※本記事の掲載情報は、取材を実施した2020年07月07日現在のものです。
一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO 理事/田中美咲さん
1988年生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、サイバーエージェントに入社。東日本大震災をきっかけとして情報による復興支援を行う公益社団法人に転職。2013年8月に「防災があたりまえの世の中にする」ことをビジョンに「防災ガール」を設立。2015年3月に同団体を一般社団法人化。東京防災女性版の検討委員、滋賀県2030年ビジョン策定のための産業振興推進委員。2017年2月より様々な課題を感動や共感を通して伝える株式会社morning after cutting my hair創業、代表取締役兼任。
2018年フランスSparknewsが選ぶ「世界の女性社会起業家22名」に日本人唯一選出。同年国際的PRアワードにて環境部門最優秀賞受賞。人間力大賞経済産業大臣奨励賞受賞。