2020年が始まって4ヶ月。オリンピックイヤーだとお祭りモードでスタートした2020年の年明けに、一体誰が今の世界を想像できたでしょうか?
お店の棚からはマスクばかりかトイレットペーパーやティッシュペーパーまでが消え、2月27日には全国の公立の小中学校と高校で休校措置がとられることになりました。3月末現在、都内の感染者数は増加の一途をたどっています。これからどうなっていくのかと、未来への不安に心が硬くなってしまっている人もいるのではないでしょうか?
しかし、このピンチの状況の中で「自分たちにできること」を果敢に進める起業家たちがいます。
NPO法人ETIC.では、2002年から社会起業塾イニシアティブという取り組みを行ってきました。社会を変える可能性を持ったスタートアップ期の社会起業家に学びの機会を提供するものです。社会起業塾の卒業生たちは、いち早く様々な対策を講じ、暗闇の中で希望の光を指し示してくれているように見えます。
それは、混沌とした現状の中でも、彼らが提供するサービスのその先には、新しい未来の姿が垣間見える気がするから。そして、私にも何かできることがあるのではないかと、困難に向き合う勇気をくれるからです。
どんなピンチでも社会課題解決に向き合う起業家たちに、改めてアントレプレナーシップ(起業家精神)とは何か、を教えてもらった気がしています。そんな社会起業塾卒業生の取り組み5つを、ここでご紹介させていただきます。
インターネットが可能性を広げる。オフラインのノウハウをオンラインへ
認定特定非営利活動法人カタリバ(以下、カタリバ)は、「意欲と創造性をすべての10代へ」というミッションを掲げ、中高生の居場所事業、探究学習の機会提供、被災地や地方の教育支援活動などを行っています。
カタリバでは、学校閉鎖となり自宅ですごす子どもたちのストレスケアと、学習サポートなどを目的とし、「カタリバオンライン」の提供を始めました。(プレスリリースはこちら)
例え外に出られなくとも、むしろオンライン上にその機能があれば、自分の可能性を広げる多様な人との出会いや機会を多くの子どもたちが手にすることができる。これまでカタリバがオフライン上で提供してきた様々なノウハウを、オンラインサービス化したものです。
サービスが開始されたのは、3/2。一斉休校措置が発表された2/27からわずか4日後でした。カタリバでのオンラインサービスの提供は初めてであったことを考えると驚異的な早さです。WEBサイトは初日から2日間で15000PVあったそう。
しかし、無料で視聴できるオンライン教材がどんなにたくさんあっても、「ネットに接続できない子ども」へは届かないという状況があります。そこで、カタリバオンラインでは、経済的理由で情報機器やWi-Fiなどネット利用環境がないものの「カタリバオンラインを利用したい」という子どもたちに対してパソコン・タブレット等を無料レンタルするプログラムも始めました。(参照)
代表の今村久美さんは、カタリバのホームページに掲載されているブログで、「幸か不幸か、社会全体がしくみや制度を根本的に見直す機会にもなっているようにも見える。」とつづっています。カタリバオンラインは、大人がネット上で会議ができるのと同様に、子どももオンラインで集い、学べることを教えてくれています。
親子の課題を政策提言へ。休校措置発表から2週間のスピード対応。
認定特定非営利活動法人フローレンス(以下、フローレンス)は、業界最長15年、業界最多80000件の病児保育実績を持つ訪問型病児保育事業を運営しています。政府の小中高校の一斉休校の大方針が出された2月27日の翌日、一時的に病児以外の預かりも開始することを発表しました。(プレスリリースはこちら)。
その後、3月6日には、「実際に保護者や子どもたちが何に困り、具体的にどんな支援を必要としているのか、そのニーズは定量データとしては明らかになっていない」と、一斉休校に関する緊急全国アンケートを実施。1万人の回答をとりまとめ、3月13日には、萩生田文部科学大臣にアンケート結果に基づく要望を提出しています。そこには、校庭開放などの、子どもたちが体を動かすことができる居場所を提供や、学習サポートの提供、休校解除のスケジュール明示などが挙げられていました。
休校措置発表から、わずか15日。アンケート調査にかかる費用は村上財団から寄付を受け、文部科学大臣へは公明党の女性議員を通じて繋がれたことが、プレスリリースに記載されています。フローレンスが社会のリソースの媒介者となり、いち早く現場の声を政治に届けていることが分かります。驚愕のスピード感は、今この瞬間にも私たちにできることがあることに気づかせてくれます。
休校期間中に、興味関心を深める!オンライン探究学習プログラムやプログラミング学習教材の無償提供
株式会社a.school(以下、a.school)は、探究学習塾の運営をメインに、新しい学びをプロデュースしつづける会社です。a.schoolでは、休校期間中に、子どもたちが新しい学びのかたちを発見したり、好きなことをとことん突き詰めたりできるよう、学びの可能性が広がるようなオンライン学習支援を行っています。(参照)
また、中学生・高校生向け IT・プログラミング教育サービスを提供している株式会社ライフイズテックは、ディズニー・プログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」を3月4日から3月末まで無償提供。(※現在はさらに期間が延長され、5月12日(火)まで無償提供されています。詳しくはこちら)また、4月20日から5月7日まで、ディズニー・プログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」を使った少人数制オンラインレッスンを有償で提供しています。(詳しくはこちら。4/19で申込終了)
折しも、2020年は学習指導要領が改訂される年。プログラミング学習が小学校で必修化されたり、子どもたちが自身の興味関心から主体的に学んでいけるよう探究学習に重点が置かれたりと、教育が大きく変わろうとしています。この突然生まれた年度末の空白の1か月間は、このような企業のプログラム無償提供により、新しい教育へ舵を切る助走期間となるかもしれません。
使命感と覚悟が、社会課題を世に伝えるきっかけに。
特定非営利活動法人 Chance For All(以下、CFA)は、「生まれ育った家庭や環境でその後の人生が左右されない社会の実現」を目指し、足立区と墨田区に8つの学童保育を運営している団体です。真にこどもたちの未来のためになる放課後のありかたを模索し、無駄を省いて低価格で質の高い保育を実現しています。
この度の一斉休校で、最も対応に追われたのは学童保育所だったのではないでしょうか。公立の小中高は一斉休校の要請が出されましたが、学童保育は原則開所。(参照)預かり時間が長くなることから、政府は、学童保育に運営費を補助する支援策を示していましたが、CFAのような民間学童は対象から外されています。
そのような中、CFAが自腹覚悟で延長保育を受け入れていることが、yahooニュースに掲載されました。保護者には最低限の負担だけお願いし、差額はCFAが肩代わり。その額、月100万円の赤字だそうです。
民間学童は、「公設では仕事の時間が合わない」「公設学童ではどうしてもこどもがなじめなかった」などそれぞれの理由を抱える家庭を受け入れ、公設学童ではカバーしきれない市場のニーズに応えてきました。「地域の子どもの受け皿となり、毎日の生活を支えているところがあることを知ってもらいたい」とCFA代表理事、中山さんは記事の中で述べています。
現在、全国18団体の民間学童保育所が集まって、民間学童保育所やそこに通う保護者も支援の対象にしてほしいと署名運動を行っています。発信人は、中山さん。3月31日現在、1600人弱の方の署名が集まっています。http://chng.it/Sz2RFj9PRv
NPOは、社会課題を解決することと同時に、課題を社会に知らしめる役割も担っています。CFAの「公の責任の一端を担う私立の学童保育である」というゆるぎない覚悟は、学童保育の大切さと、不十分なケアを世に伝えるきっかけとなったのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
ニュースを見ていると不安なこと、心配なことは枚挙に暇がありませんが、自分たちにできることで立ち上がっている人々の姿勢に勇気をもらいます。読んだ皆さまの心に、少しでも希望の光が灯り、明日への一歩の後押しになることを願っています。
社会起業塾の特集記事一覧はこちら
あわせて読みたいオススメの記事
#ビジネスアイデア
#ビジネスアイデア
#ビジネスアイデア
キャリアの不安に向き合い、自由に生きるには?―起業家を長年支援してきたPLAY!コーチ陣が語る
#ビジネスアイデア
#ビジネスアイデア