認定NPO法人ETIC.(以下、エティック)は、7月9日(木)厚生労働省会見室にて、記者会見を開催。『コロナ禍において、107名の社会起業家・リーダーが現場から捉える今とこれから「危機と対峙し、未来を切り開いていくための協働や共創へ」アンケート調査報告会』と題し、アンケート調査結果発表と社会起業家7名からの報告がありました。
社会をつくる人材の育成・輩出を行なうエティックが、社会課題・地域課題に取り組むリーダーがコロナ禍においてどのような状況にあり、また今後の課題をどのように見据えて何をしようとしているのか、緊急事態宣言解除後から10日間ほどをかけてアンケート調査を実施。
8割以上の団体において、新型コロナにより経営にマイナスの影響を受けているという回答があった一方で、既存事業の見直しや新サービス開発などにチャレンジしている団体も8割を超え、未来を見据えて新しく挑戦しようとする姿も見えてきたようです。
■調査・分析レポート
https://www.etic.or.jp/news/2020/07/17/846.html
本記事では、会見で発表されたアンケート調査結果と、社会起業家・リーダー7名の報告の様子を、登壇順にお届けいたします。
※本記事の掲載情報は、取材を実施した2020年07月09日現在のものです。
※本記事の使用画像は、一部を除き、当日の投影資料を抜粋したものです。
記者会見当日の会場の様子①
記者会見当日の会場の様子②
【開催概要】
■日時:2020年7月9日(木)13:00~14:00
■会場:厚生労働省会見室(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
■内容:
①ETICについて・アンケート調査・分析結果の発表
(アンケートから見える社会起業家・リーダーの現状)
登壇者
・NPO法人エティック 理事 事業統括ディレクター 山内幸治
②社会起業家、リーダーより現状と今後について
登壇者(登壇順) ※一部オンラインでの登壇
【1】認定NPO法人3keys 代表理事 森山誉恵氏
【2】認定NPO法人夢職人 理事長 岩切準氏
【3】株式会社日添 取締役 土屋望生氏
【4】一般社団法人復興応援団 代表理事 佐野哲史氏
【5】ケアプロ株式会社 代表取締役社長 川添高志氏
【6】NPO法人日本ブラインドサッカー協会 専務理事 兼 事務局長 松崎英吾氏
【7】合同会社巻組 代表 渡邊享子氏
③質疑応答
■備考:
新型コロナウイルス拡大に伴う現状に鑑み、オンラインによる配信も実施。
(※本記事ライターはオンライン配信にて取材)
※プレスリリース参照
アンケート分析から捉える、社会起業家・リーダーの「今」と「これから」(NPO法人エティック 理事 事業統括ディレクター 山内幸治)
山内:84%の団体が、コロナ禍は事業にマイナスの影響を与えていると回答。コロナ禍の初期においては、サービスを止めてはならない領域(例:医療・福祉、子ども教育など)において、いかにオンラインを駆使して持続していくかが重要になっています。
現在や今後に向けては、83%の団体が、商品・サービスの開発など社会を進化させるアクションに取り組むと回答し、62%の団体が、オンラインに関連して事業展開をしていきたいという回答があったことが特徴的でした。顧客に与える影響については、マイナスの影響が約50%で、プラスの影響が約25%でした。
事業分野によっても傾向が異なります。たとえば医療・介護・福祉の領域では、介護保険など様々な制度に基づいてサービスを実施しているため、利用者の利用が止まると収入もなくなってしまいます。社会的なセーフティネットの観点からも、いかにして事業を継続していくかが一番の課題です。また制度を使わずに困難を抱える人の支援を行なう団体においては、寄付活動や協賛が大きな財源になっており、そのためにも新しいプロジェクトを進めたり、求められる役割も大きくなっています。
【1】コロナ禍で逃げ場のない子どもたち。今後に備えて居場所づくりを(認定NPO法人3keys 代表理事 森山誉恵氏)
森山氏:当法人は認定NPO法人として、主に虐待(自覚のない虐待も含め)や、家庭内ですら安心や権利が保証されない子どもたちの支援を行っている団体です。
緊急事態宣言後、子どもたちからの相談で特に目立ったのが、虐待による生きづらさや、家にいなきゃいけないことに対して苦しい思いをしているという声でした。子どもたち自身は虐待に対して自覚がなく、虐待自体が最初の相談としてあがることは平時は少ないです。しかしコロナ禍では、今まで以上に虐待が初回の相談内容として浮き彫りになることが多かったです。
その中で私たちは、子どもの逃げ場(公園、公民館、図書館など)が軒並み閉鎖した影響もあり、事務所を臨時開放し、子どもたちの居場所を確保したり、虐待相談に対応できるオンライン相談会を実施したりしました。
子どもたちの支援業界は元々予算も少なく、寄付やボランティアで年間2〜300万規模で運営している団体が多い中、緊急事態に耐えられる体力がないことを感じました。私たちは、今までは子どもたちの拠点は運営してきませんでしたが、新しい事業として今までより大きい事業規模で、第二波・第三波に備えて、子どもたちが相談できる場所や居場所づくりの準備を進めております。
今回あらためて、子どもの支援分野が非常に貧弱であることを痛感いたしました。コロナ禍での子どもたちの相談内容は、新しい虐待が増えたというより、平時から虐待があったけれども今まで以上に逃げ場がなくて追い詰められているというものが多かったです。啓発をしっかりと行ない、平時の支援にも繋げていきたいです。
【2】子どもにとって「遊び・体験」は、不要不急ではない(認定NPO法人夢職人 理事長 岩切準氏)
岩切氏:私たちは、主に2004年から首都圏の小中学生を対象とした体験活動に取り組んできたNPOです。これまで延べ約1万人の子どもたちを対象に事業を行なってまいりました。
現在、子どもの「遊び・体験」が不要不急の扱いを受けている状況です。また学校では、行事の延期や中止、土曜授業の回数の増加、夏休みの短縮などの影響で、子どもたちの「楽しみ」がかなり失われております。その中で子どもたちは心身疲労し、親も同様に疲れ切っております。
教育は教科学習だけではないということを強く訴えていきたいです。子どもたちのメンタルヘルスの観点からもオンライン化が困難な「体験・遊び」による機会は不可欠。特に未就学児や学童期の子どもたちに対してその支援が必要です。
我々が、感染対策も踏まえた上で子どもたち向けの事業をしようとしても、公園や公共施設から「お貸しできません」と言われてしまうことが多くなってきております。自治体や行政にもぜひご協力をお願いしていきたいと考えております。
【3】九州南部豪雨の被災地のために、「#旅するおうち時間」の新企画を準備中(株式会社日添 取締役 土屋望生氏)
土屋氏:九州の内陸部で一番人口の少ない1,000人の村で、人材マッチング事業やカフェ経営など、まちづくりの事業をしております。新型コロナウイルス感染症の影響で、緊急事態宣言発令後、観光業の面で大打撃を受け、経営するカフェの売上がほぼゼロになり、村内の他の事業者も売り上げが激減しました。
そこで、「#旅するおうち時間」という企画を実施いたしました。ゴールデンウィーク期間中、5月1日〜6日の6日間、6つの地域から日替わりで、おうち時間を楽しむための食材やアイテムなどが届くという内容です。結果として400セット完売、売上額が1200万円でした。売上は各地域や各事業者さまへお送りし、少しはお役に立てたかなと思っています。
また先日の九州南部豪雨により、弊社のある熊本県五木村も被災しました。特に影響の大きかった人吉市に私も現在いるのですが、五木村や人吉市の事業者と一緒に、「#旅するおうち時間 災害支援コース」発足の準備を進めております。被災された事業者のものをお送りして、おうち時間を楽しんでいただきつつ、被災地に想いを寄せていただけるような仕組みをつくりたいと思っています。
【4】「自主防災」を企業・学校・個人向けに発信(一般社団法人復興応援団 代表理事 佐野哲史氏)
佐野氏:私は、2007年の中越沖地震、2011年の東日本大震災、2019年の台風19号の災害の現場に身を置き、緊急支援から復興・町おこし支援まで行なっております。本日は今年4月に立ち上げた「自分でやる防災研究・普及所」という新規事業についてお話させていただきます。
その名前に示されている通り、「自主防災」を広めていきます。被災された方々200名への取材で、災害時には「自分の頭で考えて、自分で行動する」ことが大事であることがわかりました。その本質をケーススタディとともに発信することで普及させていくのが我々のミッションです。
発信先は、企業向け、学校向け、個人向けの3つです。具体的には、主に住宅関係の会社に対して企業研修を実施しております。また学校の避難訓練を改善していこうと、今年9月と11月に愛知県の高校と提携し、新しいコンセプトの避難訓練を行ないます。個人向けには、今年8月からケーススタディについてメールマガジンを配信予定で、読者向けにウェビナーも提供していくつもりです。
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【5】交通弱者2000万人が、安心安全に外出できるような仕組みづくり(ケアプロ株式会社 代表取締役社長 川添高志氏)
川添氏:コロナ危機だからこその外出支援、交通医療プラットフォーム「ドコケア」という新規事業についてお話させていただきます。
医療介護従事者へのアンケート調査結果によると、新型コロナの影響による利用者の状態悪化やそのリスクとして特に気になるものとして、「外出や交流機会の減少」があげられます。そこで考えたのが、交通弱者2000万人が安心安全に外出できるような仕組みでした。
難病や医療的ケア児の方々に対して、看護学生や医療ケアの当事者の方、看護師の方々が、1時間1500円〜4000円ぐらいで介助しにいく、というUber(ウーバー)のようなマッチングの取り組みを進めております。
依頼するのは家族だけで支えるには限界があるので助けてほしいという方々。利用するのは、認知症や要介護の方、難病や障がい者の方々です。そして助けるのは、医療介護の人材も不足しておりますので、パートタイムや育休中の方々などが隙間時間にサポートしてくださっています。
【6】事業のオンライン化と同時に、視覚障がい者向けコールセンターも開設(NPO法人日本ブラインドサッカー協会 専務理事 兼 事務局長 松崎英吾氏)
松崎氏:「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」をビジョンに、ダイバーシティ&インクルージョンの概念を掲げて活動しております。新型コロナウイルスの影響で、競技も事業面も基本的に3月以降は全面的に停止しておりました。経営的には短期的将来見通しも厳しい状況です。
コロナ禍では、重要な裨益者(ひえきしゃ)に対して、どのような課題解決ができるのかということを中心に取り組んでまいりました。競技面では「オンライントレーニング」や「視覚障がい児と保護者向けのオンラインセミナー」、事業面では「研修のオンライン化」や「安全性が向上した体験プログラムの開発」などを行ないました。また今までに培ったネットワークを活かし、視覚障がい者の方向けの「72時間以内での解決を目標にしたソリューション型のコールセンター」も開設いたしました。
今後に向けては、スポーツ団体ですので競技活動を再開し、事業面では体験学習プログラムのオンライン版と併存して実施しながら、新型コロナウイルスの影響で発生している視覚障がい者のお困りごとへのサービスは継続、拡張してまいります。
【7】ニューノーマルなライフスタイルへの変化に向け、空き家活用の方策を模索中(合同会社巻組 代表 渡邊享子氏)
渡邊氏:弊社は宮城県石巻市で活動しております。東日本大震災の復興が進み住宅供給が進んだ裏で、市内に約13,000戸の空き家があります。そして資産価値が低く、無料でもいいから手放したい大家さんが多くいらっしゃいます。それらを借り上げ・買い上げ、リノベーションして、住宅マイノリティ(一般の不動産屋で借りづらいアーティストや外国人など)に貸し出す事業を行なってまいりました。
このコロナ禍において注目しているのが、「クリエイティブ志向が高く、生活困窮度も高い方々」です。その方々に向けて「Creative Hub」という仕組みを考えております。現在持っているシェアハウスやゲストハウスの稼働していない空き部屋に一定期間無償で受け入れ、家賃支払いの代わりに作品制作に取り組んでいただくというものです。
今後、ニューノーマルに向けてライフスタイルが変わっていくと思いますので、それに対応できる空き家活用の方策を模索しているところです。
この危機と対峙し、未来を拓いていくために。
以上、会見で発表されたアンケート調査結果と、登壇した社会課題・地域課題に取り組むリーダー7名のプレゼンテーションの様子を、登壇順にお届けいたしました。
■調査・分析レポートはこちらから
エティックでは今後も、この危機と対峙し、未来を拓いていくために、起業家・リーダーをはじめとするクロスセクターでの対話・創発の場をつくり、アクションが生まれていくことを促進してまいります。また、資金・人的リソースの獲得を通して、既に始まっているアクションを応援するとともに、今後もより多くのパートナーの皆さまとの協働に取り組んでまいります。お問い合わせはWEBフォームよりお願いいたします。
またエティックのオウンドメディアである当メディア「DRIVE」でも引き続き、意志を持って切り拓こうとする起業家・リーダーたちの取り組みを発信してまいります。ぜひご覧ください。
最後に。今回ご登壇された社会起業家・リーダーの方々への取材をご希望される方は、以下【掲載団体一覧】にお問い合わせ先を記載しておりますのでご確認ください。
【掲載団体一覧(登場順)】
【1】認定NPO法人3keys
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【2】認定NPO法人夢職人
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【3】株式会社日添
お問い合わせフォームはサイト内にあります
【4】一般社団法人復興応援団
【5】ケアプロ株式会社
お問い合わせフォームはこちら
お問い合わせ先は「media[at]b-soccer.jp」です
※[at]を@に変えてお送りください。
【7】合同会社巻組
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※本記事の掲載情報は、取材を実施した2020年07月09日現在のものです。
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