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飲んだら海がきれいになるクラフトビール!?京都与謝野町で「ASOBI」が生まれるまで

2020.10.19 

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今、20〜30代の若い世代を中心に注目されている「クラフトビール」。日本全国に400をこえる醸造所(ブルワリー)が生まれています。

 

ビールの主原料であるホップは多様な個性を持ち、スパイシーなものから柑橘系の果物のアロマに例えられるものまで様々。そうしたホップの個性と、ブルワリーのオリジナリティの掛け合わせを楽しむのがクラフトビールです。

 

世界のホップ生産の中心は欧州と北米ですが、実は日本においても北海道と東北4県を中心に栽培されてきました。とはいえ、それは世界の生産量におけるわずか0.2%。その希少な日本産ホップの新たな栽培地として注目されているのが、京都市与謝野町です。通常、東北地方などの寒い地方で栽培され、大手企業の契約栽培が一般的である国産ホップ。そのためとても入手困難な状況ですが、与謝野町は2015年にそうした大手企業の契約栽培という形以外では初めて、全国のクラフトブルワリーへホップを販売できる産地になりました。

 

そして2020年秋、その与謝野町のホップと、長年地域を悩ませてきた悪臭の原因である近海の牡蠣殻を活用するクラフトビールブランド「かけはしブルーイング」が、地元の若者が起業した株式会社ローカルフラッグより誕生しました。この事業構想は、NPO法人ETIC.(エティック)が事務局として運営するプログラム「ローカルベンチャーラボ」を通して生まれたのだそう(その経緯はこちらから)。

 

今回は、代表の濱田祐太さんにコロナ禍での挑戦についてお話を伺いました!

 

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濱田祐太/株式会社ローカルフラッグ代表

高校生のときから地元丹後の活性化を志し、大学入学後は、地方議員の事務所にてインターンシップを行う。その経験から政治ではなくビジネスで地域課題の解決に取り組みたいと考えるようになる。2019年7月、関西学院大学在学中に、(株)ローカルフラッグを立ち上げ、京都府与謝野町を中心に、若者によるチャレンジ(起業・事業承継等)を促進して地域の雇用や地域課題解決につなげるべく挑戦中。

手摘みされた与謝野産フレッシュホップ、濾過材には地域課題である牡蠣殻を活用予定。まちを変えるクラフトビール「ASOBI」が生まれるまで

 

――まず、今回のクラフトビール事業が生まれた経緯について教えてください。

 

株式会社ローカルフラッグは、京都府与謝野町のまちづくり会社として2019年7月に仲間とともに立ち上げた会社です。事業としては地域のローカルベンチャー支援や産業支援をしていて、中間支援組織的な役割を担っています。今回、自主事業としてこのクラフトビール事業を構想し始めたきっかけは、挑戦者を支援する僕ら自身も地域で産業を作る挑戦者としてありたかったことと、中間支援事業を支える資金源となるような自主事業を作りたかったからです。

 

そうした目的を持って、昨年は「ローカルベンチャーラボ」に参加しました。地域での人材育成と自主事業の双方に挑戦している株式会社エーゼロのお2人のメンターから様々な視点を学び、自分がビール好きだったことと、町で栽培が始まって間もなかったホップの今後のポテンシャルを感じたことが掛け合わさり、まちで新しい産業を育てるという意図も込めてこの事業が生まれました。

 

――コロナ禍で始まった今回の新規事業ですが、先日クラウドファンディングをスタートされて(ページはこちらから)、開始からたった数日で400%以上の達成率となりましたね。たくさんの方に注目され応援されるプロジェクトを生み出すまで、どのようなことを考えていらっしゃったのでしょうか。

 

「ブランドをどう作り込むか」をずっと考えてきました。コロナ禍でも長く続いていくブランドにするために、本質的な価値をちゃんと顧客に届けて、ファンを作っていくことが大事だと思ったんです。

 

把握できた範囲でですが、クラフトビールが流行っているから、観光客が来るから、安く多く生産して利益を出そうという方向性のクラフトビールは、このコロナ禍で残念ながら軒並み苦しい事態になっているようでした。そうした状況を目の当たりにして、持続可能で、顧客がちゃんとついてきてくれるようなブランドは一体どう作っていけばいいのか、考えざるをえなかったんです。

 

僕らのクラフトビールは、地域の産品であるホップを使用するだけでなく、長年地域を悩ませてきた近隣の海の悪臭の原因となっている牡蠣殻を濾過材として開発し活用する予定です。地域資源を使って社会課題解決する事業なので、「ソーシャルグッドでいいよね」といったコメントは散々いただいてきましたが、いざ商品を売るとなったときに、シンプルに味を気に入ってもらわないと事業としては成り行かないと思っています。ソーシャルグッド以外の軸で売れるものをどう作っていけるのかは、自分が向き合わなきゃいけない「問い」だろうなと思いますし、ここを越えられると事業が発展していく可能性があるんだろうなと感じてます。

 

――その成果がクラウドファンディングの結果に現れているのですね。これまでどのような試行錯誤をされてきたのでしょうか。

 

ブランド名や商品名、商品説明の方法についてはかなり考えさせられました。昨年参加していた、地域での事業創造を学ぶ半年間のプログラム「ローカルベンチャーラボ」でお世話になったメンターの方が力を貸してくださって、チーム全員を集めて商品名を考えるワークショップをやってもらったんです。その中で、地域資源の活用は事実としてあることで、僕らの特徴は若さやフレッシュさ、活きの良さ、ポジティブな空気感なんじゃないか、そうした気持ちを連想させる言葉の方がいいんじゃないかという視点をいただきました。そこからブレストを重ねて、第1弾の商品名「ASOBI」が生まれたんです。

 

「ASOBI」には、まず一つビールの濾過材として活用予定の牡蠣殻が収穫される海「阿蘇海」の語源である「あそびの海」にかけられています。貝原益軒という江戸時代の本草学者・儒学者がこの海を訪れてそう名付けたそうなのですが、阿蘇海は牡蠣の大量繁殖などにより当時の美しさを失ってしまっていて、このクラフトビールを飲むことで「あそびの海」に戻していく、同時に人々の賑わい・遊びも取り戻していくという想いを込めています。

 

そしてもう一つ、遊び心を持っていろんなチャレンジをしていこうとしている人たちや、例えば何か仕事やプライベートで嬉しいことがあった日に飲んでもらえる、そんなワクワク感を届けるビールでありたいと思っています。

 

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また、ラベルデザインにも、与謝野町や天橋立の風景をイメージしながら楽しんでもらえるよう、まちの風景やストーリーを盛り込みました。

 

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――とても素敵な名前です。込められた想いも素晴らしいですね。

 

実は、当初は「かけはしエール」で売り出そうとしていたんですよ(笑)。でもそれじゃ誰も買わないとメンタリング中に言われて。あと少しで商品を売り始めるぞというタイミングで名前を変えることを決めて、デザインからみんなで練り直しました。「ASOBI」という言葉が出てきたときには、「これだ!」と思いましたね。

与謝野町を、ホップのまちからビールのまちへ

 

――いま日本で日常の飲み物としてクラフトビールが定着しつつあり、たくさんのクラフトブルワリーが生まれているようですね。そのような中、これから「かけはしブルーイング」はどのような方向性で事業を成長させていきたいと考えていますか。

 

クラフトビールには、大きく分けると製造メーカーによるものと、街の特定のパン屋さんや飲食店でしか飲めないようなスタッフ数人で工場を持って製造しているものがあります。一方で僕らは、雇用を町に生み町に再投資をしていきたいということを目的にしているので、一定の規模感を狙っていかないといけません。

 

いま日本にある400以上のクラフトビールの多くは、飲食店での限定販売、つまり発泡酒の免許での商品開発となっていて、年間6千リッター売れれば問題ないものです。しかしそれでは雇用が生まれないので、僕らはビールの免許取得を目指して、最低年間6万リッターを売る工場を作りたいと考えています。

 

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また、僕らの特徴として原料に地域資源を活用している部分がありますが、今後はさらに近隣の地域で取れた桃や蜂蜜や山椒などを使っていくことを考えていて、地域資源を循環をさせて、その場所だからできる掛け合わせに挑戦していきたいと思っています。

 

今、町長から与謝野ホップが誕生するきっかけとなった日本ビアジャーナリスト協会代表の藤原ヒロユキさんまで、まちのたくさんの方々に応援していただいています。これからも多くの方のお力をお借りしながら、将来的には「うまいビールは与謝野町から生まれるよね」と言われるような事業にしていきたいと思っているんです。

 

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――これからその挑戦を続けるにあたって、欲しい支えやいま必要としているものはありますか?

 

僕らと一緒にこのクラフトビールを作っていってくれるような、商品を買ってリピートしてくれるファンと多く出会っていきたいなと思っています。僕らは、そうした方々の声を聞きながら一緒に新商品を作ったり、次の展開を一緒に作っていけたらいいなと思い描いているんです。

 

また、醸造所は2023年に作る予定で、これから資金調達をしていくのですが、それまでにビールを年間6万リッターぐらい売れるようにしないといけないので、この2年間で少なくとも10倍の成長しないとということで、マーケティングやブランドづくりについて一緒に挑戦してくれる人がいたら嬉しいですね。

 

――まずは気になったら購入ですね! 今日はありがとうございました!

 

また現在、自分のテーマを軸に地域資源を活かしたビジネスを構想する半年間のプログラム「ローカルベンチャーラボ」2022年6月スタートの第6期生を募集中です!申し込み締切は、4/24(日) 23:59まで。説明会も開催中ですので、こちらから詳細ご確認ください。

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桐田理恵

桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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