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0歳ママに無料で提供 自信と笑顔を取り戻す産後ケア―特定非営利活動法人 マドレボニータ

2020.12.22 

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※こちらは、「みてね基金」掲載記事からの転載です。NPO法人ETIC.は、みてね基金に運営協力をしています。

 

エクササイズと対話を中心にした独自のメソッドで、産後のセルフケアを提供している「マドレボニータ」。1998年の発足から20年以上に渡って、女性の産後の社会復帰に寄り添い、調査研究にも力を入れている団体です。今回、「みてね基金」の第一期助成対象に採択されました。

 

「みてね基金」では、子どもや家族の幸せのために活動している団体を支援しています。2020年4月より募集をした第一期では、新型コロナウイルスの影響で困っている子どもや家庭を支援する52団体を選定。国外で行った活動を合わせると、67団体を支援してきました。母となった女性たちに、身体も心も整えるセルフケアを提供する実行力、また産後ケアの効果を実証し、産後ケアが当たり前になる社会を実現するという想いへの共感から、「マドレボニータ」の採択が決まりました。

 

代表の吉岡マコさん、産前・産後のセルフケアのオンライン化を担ったスタッフの方々にインタビューをしました。

産後の心身の悩みに寄り添い、家族を支える

 

産後うつや乳児虐待、育児ストレスによる夫婦関係の悪化など、“産後”を起点とするさまざまな問題に悩む女性は少なくありません。

 

特に産後半年以内の時期には、外出もままならず、母親が家の中で孤立化しがち。妊娠・出産による身体的なダメージを回復させたり、家族以外の誰かと話したりする時間がほとんど取れない日々に、社会復帰への自信を失ってしまいそう…。

 

そんな産後の悩みに寄り添い、健やかな心身を整えるためのサポートを続けてきた団体。それが「マドレボニータ」です。

 

東京大学で身体論や運動生理学を学んだ吉岡マコさんが、自身の産後の経験から、オリジナルメソッドを開発して教室を開いたのが1998年のこと。2008年に法人化してからは、インストラクター養成や研究事業も強化し、日本の「産後ケア」の先駆的な団体として知られています。団体名の「マドレボニータ」は、スペイン語で「美しい母」を表す言葉です。

 

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“自分を主語にして語り合う時間”を取り戻す

 

「マドレボニータ」の産後ケアの特徴は、「体のケア」からアプローチして心もほぐし、「対話」を通じて社会とつながる自信を取り戻すサポートを行なっていること。

 

バランスボールを中心としたエクササイズで体を整えた後は、参加者同士で「自分を主語にして話す時間」を分かち合うプログラムにこだわりがあります。

 

「産後は、赤ちゃんのことで手一杯で、周囲からも『○○ちゃんのママ』としか呼ばれなかったりしますよね。自分を主語にして話す時間をつくることで、一人の女性としての自分を取り戻して、大切にできるきっかけになれたら。その延長に、女性が本来持っている力を発揮できる社会があるはずです。」

 

その効果を実感した“卒業生”たちが、厳格な養成プロセスを経てインストラクターとなり、日本各地で産後ケアを広げてきました。

 

ところが、2020年春、新型コロナウイルスという危機によって、「マドレボニータ」は大きな転換を迫られます。

 

「対面の教室レッスンに人を集めることができない」という緊急事態は、団体の根幹を揺るがすものでした。けれど、出産は待ってはくれません。「いつも以上に外出が制限される生活の中で、産後の女性たちは孤立化し、精神的にも追い詰められている。すぐにでも産後ケアを届けたい」――そんな声が、団体内から自然と挙がったのだそう。

 

「レッスンのオンライン化については、10年ほど前からアイディアは浮上していたのですが、なかなか踏み切る決断には至っていませんでした。今回のコロナショックを機に、本格的な導入をしようと、有志のインストラクターが一丸となって挑みました。」

 

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オンラインレッスンはキャンセル待ちが出るほどの人気に

 

オンラインレッスンの開発は、東京を拠点に活動しているインストラクターの一人、貫名友理さんがリーダーとなって、4〜6月の3カ月ほどかけて丁寧に進められました。

 

在宅で参加する条件での安全性を考慮して、バランスボールは使用しないエクササイズへと変更。対面の教室で行っていた、絵を描いたりメモをしたりするような手を動かすワークを行わずに、オンライン会議システムの機能を使って対話を促すプログラムの工夫を重ねたそうです。

 

その頃、吉岡さんはオンラインレッスンを多くの女性に届けるための資金集めに奔走。いくつもの団体や行政に掛け合う中で、「みてね基金」の採択事業に選ばれました。

 

「私たちの活動の本質を理解しようと、選考の段階でも丁寧にヒアリングをしてくださったのがうれしかったです。春の時点では医療事業者向けの支援が社会的にも注目されていて、個人向けの産後ケアは不要不急と受け取られ、風向きは厳しくはありました。実は、みてね基金の採択も二度目のチャレンジで実現したんです。諦めずに粘って申請してよかったです。」

 

75分×全4回、1カ月を1クールとするオンラインレッスンは、8名の少人数制でアットホームな雰囲気。みてね基金のサポートによって、8,000円の受講料が無料(0歳児を抱える女性が対象)になるとあって、キャンセル待ちになるほどの人気に。11月末時点で約420名もの女性が受講しました。

 

画面越しに「はじめまして」からスタートする時には緊張した面持ちの受講者の皆さんも、ストレッチをしながら自己紹介をするうちに、だんだんとリラックスし、全4回のレッスンを終える頃にはすっかり打ち解けているそう。中には、受講後もLINEグループでつながって交流を楽しむグループもあるのだとか。

 

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地方や海外からも 一緒につながれる輪が広がった

 

受講後のアンケートでは、98%の受講者が「参加してよかった」と回答。体の快適さを感じた人は77%、精神状態の向上を実感した人は86%と満足度は高く、「(レッスンのうちで)最も印象に残った時間」として、44.6%の人が「対話」と答えるなど、「マドレボニータ」ならではの産後ケアの価値は着実に届いているようです。

 

「友達や親にも会えず、引きこもり状態で子育てをしていたけれど、自宅から参加できるオンラインレッスンで久しぶりにリフレッシュできた」「自分自身に向き合って、自分を主語にして話す機会を持つことの大切さを実感した」「育休明けに向けての社会復帰のトレーニングになった」という声が続々と集まっています。

 

また、「場所を問わず誰でも参加できる」というオンラインならではのメリットは、団体の新たな可能性を拡げています。教室がないエリアや海外に暮らす人のほか、産後の体調が回復せず自宅を出るのが難しい人にも、「マドレボニータ」のレッスンを届けられるようになったことは、価値ある“進化の一歩”となりました。

 

「助成によって受講料を無料化でき、本当に困っている人に産後ケアを体験してもらえる機会が生まれました。」

 

と、吉岡さんも笑顔を見せます。

 

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産後ケアの効果を実証し、社会へ発信したい

 

受講者には無料参加の条件として、調査協力を依頼していることも大きなポイント。レッスンの受講前、受講直後、1カ月後、3カ月後と計4回に渡って心身の変化を聞くアンケートに回答してもらい、日本体育大学との共同研究で分析が進められています。すでに中途集計の段階でも、「セルフケアの習慣が定着しつつある」といったポジティブな傾向が見えてきており、最終報告がまとまり次第、記者会見で発表する計画も。十分なサンプル数で産後ケアの効果を実証し、社会に向けて発信することができれば、「産後ケアが当たり前になる社会」に近づきます。

 

「コロナ禍における子育てに関する調査研究はが様々な切り口で実施されていますが、その調査結果を見ると、想像以上に現状は過酷ですよね。そんな中、私たちはさらに踏み込んでどうしたらその困難を乗り越えられるかというソリューションを示し、その効果を検証していきたいと思い、共同研究に取り組むことにしました。産後ケアは特別な一部の人のためではなく、すべての家族にとって必要なケアであるという認識が広がれば、もっと社会は明るくなると信じています。」

 

最後に、子育て真っ最中の女性たちへのエールと共に、吉岡さんはこんな提案を投げかけました。

 

「皆さんが『みてね』で共有する写真は、きっとお子さんの可愛い笑顔に溢れていることでしょう。でも、子育ての主役はお子さんだけではありませんよね。そう、子育てをしている大人たちだって、大事な主役なのです。もし『マドレボニータ』のレッスンに参加してくださった『みてね』ユーザーの方がいたら、元気になったご自身の笑顔の写真をぜひアプリでシェアしてほしいと思います。子育てを前向きに楽しめる日常を、これからも一緒につくっていけるとうれしいです。」

 

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取材して感じたこと

 

インタビューは吉岡さんのほか、レッスンのオンライン化を進めたインストラクターの方々も一緒に。皆さんの表情は一様に明るく、「産後ケアの価値を、一人でも多くの女性に届けたい」という思いの強さが伝わってきました。「今回のチャレンジを通じて、リーダーシップを発揮するメンバーが増え、組織としてもタフになりました」という吉岡さんの言葉も印象的でした。

 


 

団体名

特定非営利活動法人マドレボニータ

申請事業名

産前・産後のセルフケア(オンライン講座)の実施とその効果測定

申請事業概要

妊産婦にセルフケア講座を提供し効果を測定。不安の軽減、産後うつ、虐待やDVなどの早期発見にも繋げる

 


 

「すべての子どもやその家族が幸せに暮らせる世界の実現」に向けた取り組みを対象にした「みてね基金」では第二期の助成先公募を開始しました。

 

中長期的なインパクトが期待できる取り組みに最大1億円の支援をおこなう「イノベーション助成」のほか、子どもや家族に寄り添いながら地道に活動を続けている団体の成長資金を提供する「ステップアップ助成」があります。詳細はリンク先の募集ページをご覧ください。

2020年度 「みてね基金」第二期 「イノベーション助成」募集ページはこちら!

2020年度 「みてね基金」第二期 「ステップアップ助成」募集ページはこちら!

 

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宮本恵理子

1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、出版社にて雑誌編集を経て、2009年末にフリーランスとして独立。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』など。