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#ビジネスアイデア

変革期の組織を進化させる「バーチャルNPO」とは?実践型の企業を目指すYUIDEAの挑戦

2021.04.02 

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組織が変革期を迎えた時、どんな方法で向き合っていけば、より効果的な成長を実現できるのでしょうか。たとえば組織の構造改革、業務の効率改善など企業の内側から変化を働きかけることが多いのかもしれません。

 

その中で、企業の外側にいる人の価値観や社会とのつながりを通して、働く人と経営層の意識から大きく進化させようとチャレンジしている企業があります。企業広報・CSRを中心としたコーポレートブランディング支援、生活者視点のコミュニケーション設計などを行う株式会社YUIDEA (ユイディア)です。

 

YUIDEAには、業務としてチームメンバーがNPO法人の活動に関わり、様々な社会的プロジェクトに携わっています。それはまさしく「バーチャルNPO」とも言うべきチャレンジングな取り組みです。

 

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今回、専務執行役員CDXO(最高デジタルトランスフォーメーション責任者)の菅野 晶仁(すがの・あきひと)さん、経営企画室の田立 圭一(ただち・けいいち)さんに「バーチャルNPO」を始めた経緯や社内に与えている影響についてうかがいました。

 

聞き手:鈴木 敦子(NPO法人ETIC.事務局長)

実践者としての意識を育てるチャレンジ

 

――今日はよろしくお願いします。まず菅野さんの仕事内容について教えてください。また、会社の今についてどうお考えでしょうか。

 

菅野さん(以下、敬称略):YUIDEAは2020年に、設立25年を迎えました。私がYUIDEAに参画したのは4年前で、CSRレポートやカタログといった紙媒体の制作中心だった事業をさらに成長させるためにデジタル化やグローバル展開の面を強化しました。

 

YUIDEAは社風が落ち着いていて、とてもいい会社なのですが、一方で、変化が起きにくい側面があると感じました。もしかしたら会社の立ち上げに近い感覚で、新しい事業をつくり、収益化させる経験が組織の持続的な成長には必要なのではと考えていました。たとえば、私達は日々、CSRを中心にお客様の事業をサポートさせていただいていますが、では「私達自身は実践しているのか?」と問われるとそうは言い難い現状があります。そこに課題を感じていました。

 

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菅野さん

 

――お客様に発信している立場ながらも、実践者としての実績不足を課題として抱いていたのですね。

 

菅野:そうです。お客様への質の高いサポートを継続するためには、私達自身も実践の場をつくり、関わり続ける必要があると感じていました。また、「会社は社会の公器である」という表現があるように、社会的な活動や市民的な活動から始まるNPO法人とともに活動に取り組み、NPO法人の方々の考え方やノウハウを組織に取り入れることが必要だと思いました。それによって、これまで組織として気づけなかった、当たり前だったかもしれないことを当たり前として実現していく過程から多くの経験や学びを得られると感じたのです。

そこで、2019年、NPO法人ETIC.(エティック)に参画する形で「バーチャルNPO」のように、部署を横断して集まったチームメンバーが様々なプロジェクトに参加し、実践に向けて経験を積んでいます。

 

――YUIDEAさんには、企業や次世代リーダーたちによる挑戦を応援するプラットフォーム「and Beyond カンパニー(aBC)」をはじめとするプロジェクトへの参画、またエティックの会議への参加、IT関連の業務などいろいろと活動いただいています。では、続いて、「バーチャルNPO」のメンバーでもある田立さんの仕事内容と会社に対するお考えを聞かせてください。

 

田立さん(以下、敬称略):私は今年3月で入社13年目を迎えました。入社当時、私はCSRをはじめとした企業広報領域での編集ディレクターを担当していました。その後、コーポレート部門へ異動して採用を中心に担当し現在は3年前に新設された経営企画室に所属しています。入社当時から社員はそれぞれ担当する領域別に業務を遂行するなど組織の縦割りの感覚が強かったのですが、デジタル推進を図る中で、社内が自律的に動き始めたという印象も持っています。

 

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田立さん

 

 

――デジタル化など会社が変化していく中で、「バーチャルNPO」とも言うべき取り組みが立ち上がったのですね。変化をどう起こすかについては、この10~20年、多くの企業が抱えている変革期の課題ですが、「バーチャルNPO」の構想を形にする時、菅野さんは経営層にどう働きかけたのでしょうか。

 

菅野:YUIDEAはCSRやサステナビリティの観点から事業を展開している会社です。そこで、NPO法人での活動を組織に取り入れ、考え方などを融合させることで、社員の能力や可能性がより発揮されていくのでは?と役員会で提案しました。

また、今回、エティックと活動をともにすることでチャレンジの場を広げ、さらに事業づくりや社会とのつながりの中でYUIDEAならではの価値を広げていける可能性があるとも。役員たちに「やらない理由はないですよね?」と訴えたのです。売り上げ目標をはじめ自分たちにとって無理のない範囲でチャレンジしてみようと。

 

――反対意見はなかったのですか?

 

菅野:それがなかったんです。否定する理由がないという。

 

――社風としてはありがたいですね。何かよくわからないものに対しては「NO」と反対する企業が多そうです。

 

菅野:もしかしたら、私自身の仕事のやり方が、いつもYUIDEAでは珍しがられているからかもしれません。「こんな方法があるの?」とよく驚かれます(笑)。そういった意味でも、「何か行動を制限するほうが会社にとって逆効果になる」と役員たちも考えているのかもしれません。

 

――菅野さん自身が組織に風穴を開けているのですね。よくわからないけれど、菅野さんの提案だったら何とかなるのかもしれないと思ってもらえるのは大きなポイントですね。

 

菅野:実際に「バーチャルNPO」が始まってから、いろいろな取り組みが動いているので、経営層も社員も、会社の可能性の広がりを感じてくれているのではないでしょうか。

チャレンジの風土を生かす機会をつくる

 

――エティックでは様々な面で関わっていただきながら、社員の方々がゼロからものをつくり出すプログラム「774」にも参加してくださいました。社内ではどんな反応が見られますか?

 

>> 「いいね」と「買いたい」の間にある壁を超えるには?商品をゼロから作って売るプログラム・774が組織に与えた1つの視点

 

菅野:人材育成の面で意義を感じているメンバーもいれば、自分の経験やスキルをソーシャルの分野で活かせることにやりがいを持っているメンバーもいるようです。チャレンジを通して社会課題に触れることで、関心の幅を広げる機会にもなっていると感じます。

中でも、自分たちでプロジェクトを考えてつくる「aBC」は当事者意識をもって事業や社会課題に取り組む面で、価値を生み出す意識を育てるいい機会になっているのではないでしょうか。この当事者意識はとても大切で、NPO法人の活動を自分たちの仕事として取り組むことで、本業でもお客様に寄り添った仕事がより実現されていくと思っています。

 

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「バーチャルNPO」の取り組みに参画しているメンバー

 

――田立さんは「バーチャルNPO」についてどう思いますか?最初の印象と今の思いについて教えてください。

 

田立:私も以前からお客様の事業をお手伝いする中で、「YUIDEA自体に実践の場が足りないのでは?」と課題を持っていました。だから、「バーチャルNPO」の話を聞いた時には、素直に「参加したい」と思いましたね。エティックも学生時代から知っていましたし、社会人になってからはプロボノ活動(職業上の専門スキルなどを生かしたボランティア活動)もしていました。企業ではない団体と連携し、事業をつくることは自分にすごく合っていたと思います。会社にも還元できると確信していました。

 

――田立さんも菅野さんも、そしてYUIDEAのみなさんも違和感なくNPO活動に参加してくださっているのを拝見していると、もともとチャレンジしやすい風土がありながらもその機会がなかったのかもしれないですね。

 

田立:そう思います。今回、機会をつくれたことは大きかったですね。

 

――エティックの活動にも多くの業務時間を割いて関わってくださっていますが、実際に実践することに挑戦していかがですか?

 

田立:当事者として仕事に取り組むことから多くを学んでいると思います。私自身、「aBC」に参加して、これまで組織を越境する経験がYUIDEAにはすごく欠けていたと痛感しました。いろいろな企業、多様な立場の人たちと話したり、応援しあったり、そういった場が組織にとって大きな刺激になっています。

「aBC」もそうですが、関わらせていただいているコミュニティってお互いをすごく褒め合うんです。そういった雰囲気づくりをYUIDEAでももっと仕掛けていきたいです。実際に、「aBC」や「774」に参加しているメンバーも自分たちのチームで学びを還元しているように感じます。まだ自分たちが体感しながらも社内を巻き込めていない部分もたくさんあると思うので、これから生かしていきたいと思います。

人の学びによる成長と、事業の成長が好循環するように

 

――今感じる変化を踏まえて、これからのチャレンジについて聞かせてください。また、どんな組織でありたいですか?

 

菅野:事業のパフォーマンスが効率的に上がるように組織の構造を最適化することも大事ですが、一方で社会の公器としての会社であるためには、多様な価値観の人たちが集まり、一つのことに取り組む経験が重要だと思います。それをいかに自然に構造化して自律的に動けるようにするかが、この取り組みを続けるうえでも大きなテーマになりますね。社員一人ひとりが持つ可能性を最大限に発揮しながら、事業もコミュニティもいい方向に向かうような構造をつくっていくことが経営層に求められているのだと思います。

 

田立:YUIDEAの経営企画室のミッションは、「人の学びによる成長と、事業の成長を好循環させる」です。今は、「進化を楽しもう」をキーワードに社内に変化を仕掛けています。誰もが進化を楽しめる組織でありたいですね。

 

――YUIDEAさんはもともと生活者視点を得意とした事業内容で、志が高い方々が集まっている会社だと思います。これまではなかなかその思いを発揮する機会がなく、今まさに組織として進化していこうとチャレンジしている過程にあるのだと感じました。同じように変革期を効果的に超えることに課題を持っている企業の方々に、YUIDEAさんの新しいチャレンジが届き、行動のヒントになることを願っています。菅野さん、田立さん、ありがとうございました。

 

 

 

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この記事を書いたユーザー
たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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