TOP > ワークスタイル > 「お酒が好きすぎて、仕事にせざるを得なかった」─やりたいことを仕事に。酒屋「酒うらら」店主・道前さん

#ワークスタイル

「お酒が好きすぎて、仕事にせざるを得なかった」─やりたいことを仕事に。酒屋「酒うらら」店主・道前さん

2021.04.05 

DRIVE記事写真1(PLAY!・酒うらら)

酒うらら・Facebookカバー写真 《酒うららのFacebookより抜粋》

 

自分の好きなことで、プロジェクトを立ち上げたい──

 

そんな想いをカタチにするプログラムがあります。その名は「PLAY!」

 

個人のプロジェクト推進を支援する完全オンラインプログラムで、「創業支援・人材育成の実績を持つコーチが、一人ひとりの状態や目標にそって、プロジェクト推進を伴走」します。NPO法人ETIC.(エティック)が運営。

 

本記事では、「PLAY!メンバー限定オンラインイベントの内容」を特別にご紹介。起業家や専門家の皆さんをゲストにお呼びし、インタラクティブに質問やプロジェクトの相談ができるイベント「PLAY!クエスト」の一部を抜粋しています。

 

今回のゲストは、岡山県西粟倉村で2014年に酒屋を開業した道前理緒(どうまえりお)さん。楽しく自然体に、やりたいことを仕事にしている道前さんのお話をお届けします──

 

DRIVE記事写真2(PLAY!・酒うらら)

道前理緒さん / 酒うらら店主

 

店主が大学在学中に取材に行った酒蔵で、日本酒の美味しさ、酒造りの工程のおもしろさ、蔵人の心意気に触れ、日本酒に目覚める。一度は会社員として勤めながらも、出張にかこつけて各地の酒を飲み歩き、こっそり日本酒バーでバイトし(バイト代は現物支給)、酒蔵を巡り、どんどん日本酒とそれを造る人に魅せられていく。そしてついに、「飲んでいる場合じゃない…飲ませなきゃ!」と思い立ち、2013年、岡山県西粟倉村に移住し、村を拠点に西日本各地で「出張日本酒バー」を開催し、2014年4月に村にて酒屋『酒うらら』を開業した。

 

酒うらら | 西粟倉にある日本酒中心にお酒を扱う変な酒屋

 

酒屋を選んだ理由、西粟倉を選んだ理由──

 

はじめに、道前さんの今までの歩みについて紹介します。

 

楽しく自然体に、やりたいことを仕事にしてきた「プロセス」が垣間見れる貴重なチャンスです。ぜひお楽しみください──

 

 

道前 : 地元が島根県松江市で、2013年に岡山県西粟倉村に移住するまでは、地元で会社員として働いていました。お酒の仕事を本業にしようとは当時思っていなかったのですが、お酒が好きだったので少しでも関わりたいなと思い、本業とは別に、日本酒バーでこっそりアルバイトもしていました。

 

酒蔵によく連れて行ってもらっていたのですが、そのうちに「お酒の仕事をしたい」「日本酒バーをやりたい」と思うようになりました。実は当初「酒屋」という選択肢は考えていなかったんです。当時、アルバイトでしたが私についてくださっていたお客さんもいたりして、「日本酒バーを開くと順調にいくんだろうな」ということが正直容易に想像できてしまいました。それが逆に面白くないと感じていました(笑)

 

アルバイト先の日本酒バーの店長にお世話になっていたので「恩返しがしたい」と思うようになりました。私にとって師匠のような存在です。恩返しは「師匠を超えること」だと考え、そのためには同じフィールドではなく、違うフィールド──同じ松江市ではなく、かつ、さらに条件の悪いところ──でやろうと考えました。

 

そのうち、「お酒を出すのもいいけど、売るのもいいな」を思うようになり、知り合いの酒屋さんに相談してみたら、みなさん口を揃えて「儲からないから絶対にやめた方がいい」と止められました。「こんなに止められる仕事って何なんだろう?」という興味とともに、「私はできる」という謎の自信も湧いてきました。

 

これだけみんなに止められるような仕事がちゃんとできたら、師匠への恩返しになると思い、「田舎で酒屋をしよう」と決めました。移住先は、岡山県西粟倉村がちょうど地域おこし協力隊を募集していて、その制度が使えるということで割とノリで決めました。

 

DRIVE記事写真3(PLAY!・酒うらら)

鳥取県境の岡山県西粟倉村にあるほぼ日本酒専門店(ワインもちょっとあるよ)。2014年開業。地元岡山や山陰の銘柄を中心に西日本のお酒を扱っています。飲む人の好みや合わせる料理、その日の体調などご相談の上ご提案しますので、日本酒好きの方も、普段日本酒はあまり飲まないという方も、贈り物を選びたいという方も、どうぞご安心してご来店ください。 《酒うらら店舗案内より抜粋》

 

「出張日本酒バー」を始めたきっかけ──

 

道前 : 開業準備をする中で、酒屋だけだとさすがに採算が合わないと思いました。日本酒バーでお酒を提供した方が、酒屋で普通にお酒を1本売るより利益率が高く、「酒屋の隣で日本酒バーも一緒にやろう」ということにしました。

 

しかし事業計画を立ててみたら、西粟倉で日本酒バーを成り立たせるためには毎日20人ぐらいの来店人数がないと厳しいことがわかりました。当時西粟倉の人口は約1500人で、高齢化率は約40%──これは絶対に併設は無理だろうと思いました。とりあえずまずは西粟倉に移住してみて、そこから考えようと。

 

いざ引っ越しをしようとしたら、お酒好きということもあり、自宅に30本ぐらいのお酒の在庫がありました。このまま全部運ぶのは難しく、お酒の在庫を減らそうということで、友人のお店を借りて「一日日本酒バー」を開催したら、すごく売り上げがありました。

 

この経験から、「毎日開店するお店でなくても、イベントを開催すれば人が集まってくる」ということを学びました。また田舎はお酒を飲むお店が少ないため、様々な田舎を巡りながらイベントを開催したら、意外と採算が合うのではと、「出張日本酒バー」というアイデアを思いつきました。

 

2013年の移住後、「とりあえずやってみよう」ということで1度開催してみたら、思ったより好評で手応えも感じたので、「出張日本酒バー」を事業の一つの軸としてスタート。実際に酒屋の店舗を構えたのは2014年なのですが、移住後から約9ヶ月の間に「出張日本酒バー」で様々な地域を巡っていたので、知名度がすごく上がっていました。

 

その影響もあり、酒屋を開いた後、お酒が売れていきました。「出張日本酒バー」を先にやってよかったなと思っています。

 

DRIVE記事写真4(PLAY!・酒うらら)

「出張日本酒バー」の様子 《出張日本酒バーの案内より抜粋》

 

「酒うらら」を西粟倉で開業後──

 

道前 : 西粟倉村で酒屋「酒うらら」を始めた当初は、真面目に週5日店舗を開けていました。しかし想定通り、お客さんが全然来ませんでした。

 

徐々に営業日を減らしていき、土日だけに絞ったことで、平日を他のことにあてられるようになりました。酒蔵を訪れたり、田んぼを見に行ったり、イベントを開催したり──これは効率よく動けてよかったです。

 

色々なお客さんにお酒を提供し、酒蔵もよく訪れていると、お酒の知識が自然と増えてきました。ただ、お酒のことをもっと知って欲しくて、賢い飲み手を育てたくて、「出張日本酒バー」を開催してきたのですが、全然育たないというのが課題でした。

 

そこで2年前ぐらいから、新たにお酒の講座をスタートしました。出張日本酒バーと一緒に、一般の飲み手向けのお酒の講座も開催するようになりました。するとさらにお酒の知識が深まっていき、飲食店や旅館などお酒を提供するプロ向けの日本酒の研修もできるようになりました。

 

「酒うらら」と言ったら、代名詞のように「出張日本酒バー」と言っていただくのですが、私自身、ずっと同じことをやり続けるのは飽きる性格でして、今はシンプルな出張バーはもはや開催しておらず、最近はお酒の講師の仕事が多いですね。

 

去年2020年は、新型コロナウイルスでリアルイベントが全部キャンセルになりました。そこでオンラインが得意な友人と一緒に、「酒蔵を助けたいね」ということで、「オンライン蔵見学」と「日本酒&お燗酒体験講座」を楽しめるオンラインイベントを実施しました。

 

今年2021年は何をしようかなと考えているところです──

 

DRIVE記事写真5(PLAY!・酒うらら)

「オンライン蔵見学」や「日本酒&お燗酒体験講座」を楽しめるオンラインイベントのカバー写真 《Facebookイベントページより抜粋》

 

ただ好きなぐらいなら、仕事にするとしんどくなる。私はお酒を好きになりすぎた──

 

続いて、PLAY!コーチの佐々木(NPO法人ETIC. クリエイティブシティ事業部 マネージャー)と道前さんとのトークセッションの様子を一部お届けします。

 

ここまでの3章で、道前さんの今までの歩みについてご覧いただけたかと思います。ここからはさらに深掘り。道前さんの考えや想いについても触れていただければと思います──

 

 

佐々木 : 「お酒のことを仕事にするぞ」と、どのタイミングでスイッチが切り替わりましたか?

 

道前 : 「自分の気持ちの面」と「お金の面」と2つあると思っています。

 

私の場合、お金の面で言うと、地域おこし協力隊としての活動費がもらえるということで、当面なんとかなると思えていたのは大きいですね。

 

自分の気持ちの面で言うと、周りの方々から「好きを仕事にしていて羨ましいね」とよく言っていただくのですが、正直、ただ好きなぐらいだったら、仕事にすると多分しんどくなると思います。私の場合は、お酒を好きになりすぎました。

 

元々様々な酒蔵を巡り、お話を直接聞いて、すごく心を動かされていたので、「お酒の業界でやっていくしかない」「好きすぎて、仕事にせざるを得ない」という気持ちになりました。

 

佐々木 : ファーストキャリアでいきなりお酒の業界に入るという選択肢もあったかと思うのですが、そこらへんのお話もお聞かせください。

 

道前 : 学生時代は仕事にできると思っていませんでした。実は当時は八百屋さんになりたいと思っていました。

 

学生時代に酒蔵を訪れてから「蔵、面白いな」と思うようになり、社会人になってからも、地方に出張したついでに近くの酒蔵を訪れたり、地方の色々な日本酒バーを飲み歩いたりしていました。日本酒に関わっている方々も魅力的でそれもいいなと思っていました。

 

徐々に、ためていった感じですね。

 

佐々木 : 普段、様々な起業家の方から話を聞く機会があるのですが、道前さんの「ためていった感じ」というのと同じ感覚を、違う表現方法でお話されていた起業家のことをふと思い出しました。

 

「水を温めていったら、だんだん温度が上昇してくる。ただその変化は外の人が見てもまだわからなくて。けれど沸点に達すると、沸騰して、わかるようになる」

「様々なことを試してみて、沸点に達すると、色々と考えなくてもそっちをやるんだとスイッチが入る」

「自分の温度が高まっていって、いずれ勝手に沸騰するから、沸騰したらやればいい」

 

道前 : まさにそうですね。

 

どうしようと言っているうちは、まだ始める時ではないかもしれないですね。

 

今も、やらなければいけないことは考えなくてもわかる感覚があります。「アイデアが次々に出てきてすごいね」と周りの方々に言われることがあるのですが、私は「お酒が本当に好きで、ずっとお酒のことを考え続けているから、アイデアが降りてくるのは当たり前」だと思っています。なので全然苦でもありません。

 

「3日考えて、30%ぐらい内容が固まれば、とりあえずやってみよう」

 

佐々木 : 続いての質問にも移りたいと思います。

 

「事業計画を立ててみたら厳しそうだと判明した」というエピソードが先ほどありましたが、多くの方々にとっては「難しいことがわかってくると、最初はテンションが上がっていたけど、どこかで立ち止まっちゃう」ことが往々にしてあるかと思います。

 

しかし道前さんは、厳しそうだと判明した後、まず西粟倉に移住し、「出張日本酒バー」をスタートしたり、酒屋「酒うらら」を開業したりと、自然な流れでここまで進んでこられたように見受けられます。ここらへんはどのようにお考えでしょうか?

 

道前 : シンプルに、「考えすぎるから、動けなくなる」と思っています。

 

考えれば考えるほど、「こんなことが発生したらどうしよう」とか考えてしまいがちですよね。ただそれは、まだ起こっていないことを心配しているだけで、無駄な時間とまでは言いませんが、「出来なさそうだからやめよう」という考え自体をやめた方がいいと思います。

 

誰もやっていないことだから、失敗するかどうかもわかりませんし、だからとりあえず私もやってみました。

 

たしかに、日本酒バーでアルバイトをしていた頃、「都会だからできるのかな?」と思ったこともあります。しかし、「毎日お店が開いていなくても、たまにとてもスペシャルなお酒が飲めるのであれば、田舎でも絶対に美味しいお酒を飲みたい人はいるだろうな」とも考えました。その考えに賭けてみて、もしやってみてダメだったとしても、また違うことを考えればいいだけの話です。

 

一歩踏み出せていない人は、考えすぎてしまっている気がします。「100%でやろうとして、結果3ヶ月間ずっと考え続けている」イメージです。けれど私の場合、「3日考えて、30%ぐらい内容が固まれば、とりあえずやってみよう」「やってみて、また修正して、次50%にすればいいじゃん」と思いながら、日々行動しています──

 

想いをカタチに。あなたのプロジェクトが動き出す──

 

以上、道前さんのお話はいかがでしたか?

 

 

「お酒が好きすぎる」というご自身の想いを原動力に変え、「考えすぎず、とりあえずまず実践してみる」というスタンスで行動し続ける道前さんの力強いお話は、とても印象的でした。

 

加えて、あくまで自然体でいらっしゃることも魅力的でしたよね。ともすると、挑戦しようと力んでしまい、無理をし続けてしまうことも往々にしてあるのではないでしょうか。しかし「お酒が好きすぎる」という真っ直ぐな軸をお持ちだからこそ、事業をしなやかにシフトさせながら、「自分らしく」アクションし続けていらっしゃるのではと思いました。

 

さて最後に。自分らしい挑戦スタイルでアクションし続けたい方々必見の、個人のプロジェクト推進を支援する完全オンラインプログラム「PLAY!」のご紹介をして、本記事を終わりにしたいと思います。

 

 

 

DRIVE記事写真6(PLAY!・酒うらら)

 

PLAY!では現在、コーチングの無料体験を実施中!

 

“1時間の個別コーチングを通して、あなたの想いをカタチ/コトバにしてみませんか?”

 

 

 

 

DRIVE記事写真7(PLAY!・酒うらら)

 

PLAY!とは?

 

◎概要 :

「PLAY!」は2020年の8月にサービスをスタートした、個人のプロジェクト推進を支援する完全オンラインプログラム。

 

参加者ひとりひとりにパーソナルコーチがつき、コーチングを通してアクションをサポートします。会社勤めだけじゃない、起業だけじゃない、様々な挑戦のスタイルを選び取れる今、未来に向けて新しいことをはじめたい方にぴったり。

 

最初は立派で実現可能なビジネスアイデアなどは必要ありません。

 

「実は前から頭にある『妄想』を現実にしてみたい」

「本業とは別に自分の好きなことでプロジェクトを立ち上げたい」

 

など、『アイデアを何かカタチにしたい。』という想いを持つ方が、「プロダクトができる、イベントを開催する、ECで販売する」など、その人にあったカタチを実現していくことを、約6ヶ月間で応援します。

 

◎特徴 :

  1. 創業支援・人材育成実績のあるコーチが一人ひとりをサポート。
  2. プロジェクトの推進を促すサポート教材のミッションでレベルアップ。
  3. 参加者同士で交流できるオンラインコミュニティで繋がれる。
  4. 一歩先ゆく起業家の話が聞けるオンラインイベントやピッチイベントを開催。
  5. 多くの起業家やリーダー人材育成を行ってきたETIC.のネットワークを活用できる。

 

◎主催 :

NPO法人 ETIC. クリエイティブシティ事業部

 

 

以上、最後までお読みくださりありがとうございました!

 

 

※イベント時の発言内容は、一部加筆・修正しております。

※本記事の掲載情報は、2021年03月現在のものです。

 

 


 

【PLAY!に関する過去記事】

 

自分のやりたいことを仕事にするには?2000人のリアルに向き合ってきたエティック 佐々木健介氏がすすめる行動術 《2021年02月12日公開》

 

自分がやりたいと思ったら、まずやってみる―ライター・横尾さんの「気軽な挑戦スタイル」【#PLAYな人々】 《2020年11月27日公開》

 

ギャルは私の救世主―「ギャル式ブレスト」仕掛け人・バブリーちゃん【#PLAYな人々】 《2020年11月26日公開》

 

キャリアの不安に向き合い、自由に生きるには?―起業家を長年支援してきたPLAY!コーチ陣が語る 《2020年10月21日公開》

 

この記事に付けられたタグ

ETIC.PLAY!
この記事を書いたユーザー
アバター画像

Ryota Yasuda

1989年生まれ。早稲田大学スポーツ科学部卒業。執筆・編集する、アート作品をつくる、ハンドドリップでコーヒーを淹れる、DJする、など。「多趣味多才」をモットーに生きている。2015年よりETIC.参画(〜2023年5月末まで)。DRIVEでの執筆記事一覧 : https://drive.media/search-result?sw=Ryota+Yasuda