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#経営・組織論

NPOの「経営管理」に向いている人とは?LFA辻氏×ETIC.鈴木が本音で語る役割と条件

2022.04.06 

 

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ビジョン実現に向けて、まわりを巻き込みながら走るリーダーたちがいます。そのすぐそばには、彼らが厚い信頼を寄せるバックオフィスの存在があります。「経営管理」は、事業を安心して広げられるよう、安定した経営基盤をつくるポジションです。

 

社会を変える組織の仕組みづくりにも通じる「経営管理」について、特定非営利活動法人Learning for All (以下、LFA)経営管理部ディレクターの辻 珠美氏とNPO法人ETIC. (以下、エティック)Co-Funder /シニアコーディネーターの鈴木敦子が実情に迫るイベントがありました。

 

社会課題解決において、そもそも株式会社とソーシャルセクターでは何が違うのか?NPOでの「経営管理」の仕事とは?「経営管理」に向いている人とは?

 

辻氏と鈴木が自身の仕事についても本音で語ったトークを一部ご紹介します。社会課題の解決を目的とした組織での「経営管理」の仕事に関心がある方はぜひ参考にしてください。

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ファシリテーター:DRIVEキャリア 腰塚志乃

辻氏

辻 珠美(特定非営利活動法人Learning for All 経営管理部ディレクター)

東京大学法学部卒業。在学時、教育行政への関心からLearning for All の学習支援事業に参画し、 非常勤職員として現場管理責任者を務める。 大学卒業後、組織人事コンサルティング企業を経て、LFA へ復帰。経営管理系業務の責任者として組織の基盤づくりに取り組む。

 

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鈴木敦子(NPO法人ETIC. Co-Funder /シニアコーディネーター)

早稲田大学第2文学部卒業。ETIC.は創業期よりともに立上げ、事務局長兼ディレクターとして経営基盤づくりを担う。一方で年間約2000名の起業家や学生の起業相談、キャリア相談を受け、約100社のベンチャー企業と学生のインターンシップのコーディネートなどの実績をもつ。現在は、マネジメントサイクル全般、主に組織作りなどを担当。

創業時から20年以上、事務局長として組織基盤づくりを担当(鈴木)

 

――エティックの鈴木とLFAの辻さんは、管理系業務といわれている仕事をすべて主管している立場にあります。まずは自己紹介からお願いします。

 

鈴木:1993年に、大学の友人3人で学生団体としてエティックを立ち上げました。当時からスタートアップのような感覚で活動をしていたのですが、役割分担を決めたときに、一人が代表で、一人が事業統括をするという話になったんですね。二人から、「鈴木は事務局長やっちゃいなよ」と言われて「いいよ」と(笑)。何も経験がないところから始まって20年以上、事務局長の立場で管理系業務を担当してきました。

 

2021年にエティックは組織の体制変更をして、事務局長という役割はなくなったのですが、今でも組織づくりに関わっています。

 

――参加者の方から質問です。エティックの経営管理メンバーは何人ですか?ちなみに、エティックは正社員が約50名、委託メンバーなども合わせると100人弱の組織になります。

 

鈴木:総務や法令順守などに専属的に関わるメンバーは3人くらいです。人事や組織づくりなどは外部メンバーとチームを組んで進めています。

将来の経営管理部の事業部長ポジションとして企業から転職(辻)

 

――辻さんの自己紹介をお願いします。

 

辻さん(以下、敬称略):LFAでバックオフィスの責任者をしています。LFAとは大学生のときに出会いました。

 

LFAは、「子どもの貧困」をテーマに生活保護受給世帯や生活困窮世帯の子どもたちを中心に、学習支援や居場所提供などを行っています。私自身は、学生時代に学習支援プログラムにボランティアで参加していました。

 

LFAは2010年から学習支援を行っていたのですが、2014年、私が大学卒業のタイミングで法人格を取得し、本格的に事業展開することになりました。ただ、私自身は新卒で団体の立ち上げに関わる勇気がなくて、組織人事系のコンサルティング会社に就職しました。

 

4年くらい働いた2018年頃、LFAがゴールドマン・サックスから大口の寄付を受けることになり、組織が大きく成長する時期を迎えました。そのときに代表の李炯植(りひょんしぎ)から、「戻ってこないか」と声をかけてもらい、「経営管理」の事業部長を目指すポジションとして入職しました。それから3年が経ちました。

 

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上左から時計回りに、ファシリテーターの腰塚、エティックの鈴木、LFAの辻氏(中央)

 

経理財務、人事、法務からパソコン購入・配布まで幅広く担当(辻)

 

――二人とも、もともと「経営管理」の未経験者としてのスタートだったことが大きな共通点として挙げられると思います。では、それぞれ担っている業務範囲を教えてください。

 

鈴木:事務局長時代は、法人立ち上げの登記に関わる業務を伝票作りから担当し、助成金申請に必要な申請書、決算報告書、事業報告書作成などもしました。また、エティックの事業が法律違反にならないかの条件確認や労働管理も大切な仕事でした。法律の変更にあわせた業務として、たとえば社会保険料の利率が変わると社内規定も変更することが必要なので、それらに関する業務を担当していました。

 

年間の業務マネジメントも担当業務でした。たとえば、決算月から逆算して総会や理事会の開催時期を決めるなど。予算も期日までに作ることが必要、というふうに幅広く担当していました。

 

――採用もしていましたね。

 

鈴木:そうです。採用、また人材育成としてキャリア面談の仕組みづくり、給料の確定などいろいろな業務がありました。

 

――辻さんはいかがですか?

 

辻:経理財務、人事、法務、総務、庶務関連が業務範囲になっています。たとえば経理財務は、月次の出金や入金の確認から決算まで。助成金については事業報告書が必要な場合が多いのでその統括をしています。

 

また、数字関連の財務計画、人事まわりでは採用、人材育成、人事制度の策定、労務管理、給与の確定、法務、総務、庶務など。社内規定を整備して勉強会を開いたり、規約書の策定管理をしたり、備品管理としてパソコンや携帯電話の購入から配布など幅広く担当しています。

 

――辻さんは、入職当時、どんなふうに業務を引き継いだのですか?

 

辻:実は、今よりも環境が整っていなかったなかでジョインしたので、業務も分散していて、大事なところを引き継ぎで押さえてもらいつつ、まわりの方に聞きながら業務を進めていきました。

 

――大きな成長期だった組織の「経営管理」の仕組みを作っていったようなイメージですね。事業が伸びていくなかで増えていく業務をどんどん改修していった。

 

辻:はい、そうです。

全体をみながら必要な仕事を自分でつくる(鈴木)

 

――NPOでは、二人のように、経験がないままに、またチームに経験者もいないなか、目の前で起こる仕事を担当することはとても多いと思います。では、「経営管理」の仕事をどんなふうに習得してきたのでしょうか。「これができれば大丈夫」というメッセージを、次に続く方にお願いします。

 

鈴木:特に小さな組織の場合、たとえば「経営管理」の仕事に何人も専任スタッフを置けるNPOは少ないと思います。基本的には、全体をみながら本質的なことを考えて判断し、自分の仕事をつくり出すことが必要だと思っています。自分たちには今何が必要で、何をやらなければならないか。事務局長時代は、毎日、考えながら駆け抜けているような感覚でした。

 

法律が変わるときには、変わること、やるべきことをすべて洗い出して、条件を調べます。その際には、専門家の話を聞くことは必ずしていました。複数人に聞くのがポイントです。たとえば3人の方が対応している方法を聞き、参考にしながら、最終的には自分たちが形にしていきます。私は普段よく言うのですが、ロジカルシンキングができる人なら、「経営管理」の仕事はやりがいを持ってできると思っています。

 

辻:入職してから改めて思っているのですが、LFAはありがたいことにプロボノ(※)も含めて、力を貸したいと申し出てくれる専門性の高い方がたくさん関わってくださっています。そういった方たちに対して、何を実現したいか、またどこまで事業を攻めていけるか、ギリギリのラインを攻めていきたいけれどできるかどうかなど意思表示や、団体としての思いと実現するための方法など、具体的な議論のテーマを決めていくのがとても大事だと思っています。社内や事業の状況、また代表との認識のすりあわせをしたうえで、まわりの方々にたくさん助けを求めることで前に進めることが多いと実感しています。

 

プロボノ(※):各分野の専門家が知識やスキルを社会貢献の事業などに無償で提供すること。

事業をどこまで攻められるか、判断してブレーキを躊躇なく踏む(辻)

 

――これからNPOへの転職を考えている人、「経営管理」の仕事に関心がある人に向けて、どんな人が向いているかお二人の考えを教えてください。

 

鈴木:「経営管理」の仕事は、文字の通り、管理が要となるのでロジカルシンキングができると強みが活かせるのではないでしょうか。

 

また、責任の範囲を大きく引き受けられるかどうかも大切です。腹をくくっていざというときに自分が責任を取るつもりで仕事ができるかどうか、管理部でステップアップしていける人はその要素を持っていると思います。

 

ただ、管理部は攻めと守りでいうと、守り側の人間です。ぐいぐい攻めていきたい事業部によく水を差すようなことを言ってがっかりされたりもしたのですが(笑)、自分たちのミッションとビジョン実現のためにどんな形が本当に適切なのか、リスクも考慮しながら判断できる人が向いていると思います。団体が存在していることに対して責任を持てるか、経営者とともに常に団体としてのあり方を考えていけるかどうか。

 

辻:入職のタイミングで、ビジョンに心底共感している人は実は珍しいかなと思っています。大事なのは、好奇心と、知らないことに対してリスペクトを持てるかどうか。これらを持ちあわせた人は、NPOと相性がいいかもしれません。

 

特にLFAは「子どもの貧困」をテーマにしているので、自分が知らない世界や苦しさを抱えている方々を対象とすることがとても多いです。そのなかで、「助けてあげたい」という思いよりは、なぜそういった状況が生まれてしまうのかといった背景に関心を持って、もっと知りたいと思えるかどうか。困難な状況に置かれた方たちにリスペクトを持てるかどうかが姿勢としてとても大事なのかなと思っています。

 

社会の課題に関心を持って、起きてしまっている状況に対して問題意識が深まれば深まるほど、解決するために団体としてどれだけ攻められるか、逆にこのまま攻めれば組織基盤的に危ういなどアンテナを張りながら判断し、ブレーキを躊躇なく踏めるかどうか、そういったことに当てはまる人は「経営管理」に向いているかもしれません。

 

「ミッション推進のために頑張っている人たちを支えたい」「メンバーがハッピーに働けるように基盤を整えたい」という思いを持てる方も、「経営管理」にとても向いていると思います。

 

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>> 特定非営利活動法人LearningforAllの団体資料はこちら

https://learningforall.or.jp/download/

>> NPO法人ETIC.のアニュアルレポートはこちら

https://www.etic.or.jp/data/pdf/etic-annual2021.pdf

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