「子どもに寂しさを我慢させているかもしれない。そう気づいたとき、雷に打たれたような衝撃でした」
設立以来継続している生活協同組合とのお取引を起点に、生活者視点を大事にした「食とくらし」のダイレクトマーケティングやステークホルダー視点のESG(サステナビリティ・CSR)情報開示支援を中心としたコーポレートブランディングを事業領域としてきた株式会社YUIDEA(ユイディア)。このYUIDEAで、サステナブル・ブランディング事業の責任者を務める内藤真未さんは、昨夏の転職の動機をそう語ります。
内藤真未(ないとう・まみ)さん
広告代理店クリエイティブを経て、事業会社のハイファッションEコマース事業部のディレクターと編集に長く携わる。並行して、コーポレートサイト・EC・オウンドメディア等あらゆるWebサイトの運営に従事し、広報を経て新規事業開発マネジャーを務めた。 2021年にYUIDEA入社後はサステナブル・ブランディング事業推進責任者として、オウンドメディア『サステナブル・ブランド・ジャーニー』運営の他、プログラム開発やコミュニケーション設計の提案などに取り組んでいる。
「生活の1分1秒に仕事が染み込んでいた」という前職から、今の職場へ移った内藤さん。
YUIDEAではフレックスタイム制への移行や、これからの在宅・出社勤務のあり方の検討など、ちょうどいま会社も働き方の見直しに取り組んでいるところです。
なぜ、内藤さんは自分が思い描くワークスタイルにより近づくことができたのか。「目の前のことを一生懸命やっていたら必要なスキルが積み上がっていた」と、内藤さんは振り返ります。
顔を見て子どもと話す時間は、1週間で2~3時間
内藤さんの勤めていた会社は、BtoBをメインにファッション事業を行う会社でした。BtoCでもECサイトを展開しており、そのECサイトのディレクター・編集業務を長く担っていましたが、社歴が長くなるにつれ、広報や新規事業の立ち上げにも関わるように。スタートアップ事業のマネージャーを務める傍ら、マーケティング、営業、WEBディレクション、店舗運営と、さまざまな仕事を担うようになりました。
「周囲から『これ、どうしたらいいですか』『この仕事お願いします』と次から次へと声をかけられて、自分の仕事に着手できるのは、皆が帰った後。ほぼ毎日、終電に近い時間に会社を出るという生活が続いていました」
イメージ写真(adobe photostock)
平日5日間で子どもと話す時間は、全部合わせても2~3時間という生活。「新規事業を何とか成功させたい」という責任感から、多忙さに何の疑問も抱かなかったという内藤さん。「これ、おかしいんじゃないか」と気づいたのは、コロナ禍がきっかけでした。
「コロナ禍で、自宅での勤務が認められた時期があったんです。その時、子どもたちが、私が家にいることをものすごく喜んだんですね」
お母さんが仕事で忙しいことを子どもたちは理解してくれていると思っていたと、内藤さんは言います。
「『お母さん行っちゃ嫌だー!』と駄々をこねられることがほとんどなかったんです。でも、私がただ家にいるだけで喜んでいる子どもたちを見た時、ワガママを言わなかったのは、私に対する気遣いだったことに気づいたんですよね。こんな小さな子たちに、そんなに気を遣わせてしまっていたのか、と」
このことをきっかけに、会社に在宅勤務を取り入れられないか、相談。しかし、業務の都合上難しかったそう。「会社の事情も非常によくわかったし、納得もできたんです。でも、私自身の幸せを考えたときに、少し働き方を見直したい、とお伝えして退職しました」
オープンポジションで応募。互いの可能性をよく知る機会に
「仕事を通じて社会を良くすることに携わりたい」。内藤さんは、NPO法人ETIC.(エティック)DRIVEキャリアスタッフに相談し、株式会社YUIDEAを紹介されます。応募したのはオープンポジション。
「決まった職種に応募すると、その人が、『どういう人なのか』よりは、『何ができるのか』で判断されると思うんです。でも、オープンポジションだと『この人を活かせるとしたら、どんな活かし方があるか』という視点で見てもらえる。私も『自分自身をどう役立てられるだろう』という気持ちで話せました。お互いがオープンに話せたってことは、良かったと思います」
新規事業をリードできる人を探していたYUIDEAと、内藤さんの前職での事業立ち上げ経験がマッチ。内藤さんは、サステナブル・ブランディング事業推進責任者に抜擢されました。
時間を無駄にしない習慣が、在宅勤務でも活きる
サステナブル・ブランディング事業では、企業のサステナブルな取り組みをコミュニケーション分野(情報発信、マーケティングなど)で支援しています。内藤さんは、「サステナブル・ブランド・ジャーニー」というメディアの運営、取材や記事の執筆、セミナー企画や実施、セールスやサービス開発など事業全体の多岐にわたる業務を担当。前職の新規事業立ち上げの経験が活きるのはもちろんのこと、もう1つ役に立っているスキルがあるといいます。ずばり「タイムマネジメント能力」です。
職場の会議の様子。向かって右奥が内藤さん
「在宅勤務は、自律性が非常に求められる働き方だと思います。自分で決めたことを、決めたスケジュールでやり切るのは在宅勤務の絶対条件だと思うんですよね。
前職は、労働時間マックスで働いても収まり切らない量の業務をこなしていたので、タイムマネジメントはめちゃめちゃ考えていました。時間を無駄にしない習慣が染み付いていたことが、今の在宅勤務でも生きていると思います」
全部完璧である必要はない。自分の得意を究める
コロナ禍を経て、リモートワークや在宅勤務を希望する方のキャリア相談が増えています。「将来、働く場所を選ばない仕事に就くために、何のスキルを身につければいいですか」、と。一方、内藤さんは、理想のワークスタイルから逆算してスキルを磨いたことはないのだそう。
「『これをしたいんです』とか『自分はこれが好きで、こういうことをやってきました』ということを、しっかりストーリーとして伝えられることが大事だと思います。話を聞いた採用担当者に、自分の可能性を感じてもらえるかどうか、が肝になります。好きなこと、得意なことで話が盛り上がれば、苦手なことの話はあまり聞かれません」
「『全部が完璧である必要はない』という開き直りのもとに、自分の好きなことや、やりたいことにフォーカスして、そこを磨く。そうすると、自分が楽しいんですよね。楽しいから、『どうしたらもっと上手くできるようになるか』調べる。そんなふうに自然とスキルが身について、得意なことが磨かれていく。そんな好循環ができるといいなと思います」
どんなに細くてもいいから、社会との接点を手放さない
自分の得意を磨く。とは言え、子育て世代の中には、出産や育児のために仕事を離れた人も少なくありません。内藤さんは、1977年生まれ。新卒時は就職氷河期で、思うように仕事につけずに苦労をしたと言います。
「私自身も、いわゆる“ロスジェネ世代”で就職するのが本当に大変で、厳しい経験をたくさんしました。一方で私たちの世代は、結婚したら仕事を辞めるという女性が、今よりは多くいました。専業主婦の友人から『子育ては頑張ってきたけど、本当はこういう仕事がしたかった。でも、今さら出来ない』みたいな話を聞くと、すごく切ないな、と思ったんですよね」
さまざまな事情で、仕事に没頭できない環境にいる方はどうすればいいのか。内藤さんは続けます。
「もし、今、仕事をしているのなら、規模は小さくてもいいから『仕事を続ける』ことだと思います。やむを得ず離職するときであっても、次につながることを仕込んでおく。研修でも、勉強でも何でもいいんです。PTAの仕事や、手作りの商品をインターネットで販売する、でもいい。『いつかこういう仕事をしてみたいな』ってことと、つながっておく」
いざ就職、転職活動をするとき、「やりたいことが分からない」人と、「こんな仕事がしたい」と理想が見えている人とでは、一歩踏み出すハードルが雲泥の差です。
「どんなに細くてもいいから、0.5ミリでもいいから、その希望の糸を手放さないってことは、すごく大事だと思います」
ご自身の経験から、女性の社会進出は内藤さんの関心テーマの一つだとか。YUIDEAのサステナブル・ブランディング事業を通じ、企業を巻き込みながら、多様な人が働きやすい社会がつくられていくかもしれません。内藤さんの挑戦はまだまだ続きます。
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今回の採用を担当した、採用担当者の田立さんの記事はこちら
>> 応募者の可能性を共に探す、オープンポジションの採用とは?【採用活動のポイント:株式会社YUIDEA】
内藤さんが取り組むサステナブル・ブランディング事業の記事はこちら
>> サステナブル・ブランディングの事業化で組織はどう変わる?―YUIDEAが事業から始めるイノベーション
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