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「子どもにやさしいまちづくり」に向けた協働の現場の今とこれから【子どもNPOセンター福岡20年のあゆみ : 後編】

2022.10.20 

後編_子どもNPOセンター福岡

 

多様化・複雑化する子どもの課題に対応するために、各地域では団体や市民が日々挑戦を続けています。一方で、ネットワークや連携の難しさを感じているところも少なくありません。今回、協働(コレクティブインパクト)の実践に挑戦する団体を対象に、「特定非営利活動法人 子どもNPOセンター福岡」の事例から試行錯誤の歴史を学ぶためにイベントを実施し、子どもNPOセンター福岡の前代表理事の大谷順子氏に講演いただきました(詳細は前編をご参照)。

 

講演を受けて、参加団体からは「理念の軸がブレていない。短い言葉で本質を突いて呼びかけることが必要」「政策にも、具体的な成果にもなっていることも素晴らしい」「つくり出す時には熱量があっても、継続的にやっていくことが大事」など、コレクティブインパクトの実践における中心的存在の役割への重要性に関する感想が多く寄せられました。

 

今回は、イベントの後半で参加団体から、大谷氏・広石氏に対して質問が寄せられましたので、その一部を紹介します。

 

【前編はこちら】

>> 「子どもにやさしいまち」をめざすネットワークと協働【子どもNPOセンター福岡20年のあゆみ:前編】

NPO法人ETIC.(エティック)は2019年度より休眠預金等活用法に基づき、資金分配団体として「子どもの未来のための協働促進助成事業」を推進しています。全国の子どもを支援する団体が、協働による地域の生態系醸成を実践することを目的に、そのモデルとなりうる実行団体に対して資金的・非資金的な支援を実施中です。本イベントは、当事業の実行団体の協働を進めるための支援事業の一環として実施しました。

>> 助成事業について詳細はこちら

 

大谷さんプロフィールトリミング後

大谷順子さん/子どもNPOセンター福岡 前代表理事

子ども課題に取り組む市民・NPOのネットワークセンター「NPO法人 子どもNPOセンター福岡」の前代表理事。その他、「チャイルドラインもしもしキモチ」や「子どもとメディア」を設立。2013年から福岡市こども・子育て審議会委員を務める。2021年に子どもアドボカシーセンター福岡を設立し、専務理事に着任。2019年から「子どもアドボカシーシステム研究会」を開催、行政、関係機関、当事者、NPOの協働によるシステムのあり方を研究・提言。「子どもが幸せに『子ども期』を生きること」ができる社会を目指す。

広石さん

広石拓司さん/株式会社エンパブリック代表取締役

2008年株式会社エンパブリックを創業。ソーシャル・プロジェクト・プロデューサーとして、地域・企業・行政など多様な主体の協働による社会課題解決型事業の企画・立ち上げ・担い手育成・実行支援に多数携わる。著書に「共に考える講座のつくり方」」「専門家主導から住民主体へ~場づくりの実践から学ぶ『地域包括ケア×地域づくり』など他多数。 慶應義塾大学総合政策学部、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科、立教大学経営学部、青山学院大学 青山・情報システムアーキテクト育成プログラムなどの非常勤講師を歴任。

相手を尊重しながらゆるやかにつながることで多様なつながりが広がる

 

Q : 多様な人を巻き込んでいくのは大事だとわかっているものの、実際は抵抗などの難しさもある中、どのようにしていくとよいでしょうか。

 

大谷 : たとえば子どもNPOセンター福岡のような組織と違って、ネットワークづくりでは、無理するようなことはありませんでした。あくまで自発的な参加の場ですし、抵抗感がある方は初めから参加しません。無理強いは必要ないし、それより大切なのは、いかに人々のニーズを捉えて、魅力的な場をつくるかということでした。あくまで「ゆるやかなつながり」と相互の尊重が大切なことでした。

 

定例の「子どもにやさしいまちづくりひろば」も、毎回同じメンバーが揃う場というより、多様な人が思い思いに現れる場であり、初めて参加された方が長々と話をして帰られたあと、「あの人、だれ?」という場面もあったりで、そういうこともみんながゆったりと受け止め合う場でもあります。

 

広石 : ネットワークを広げて参加するメンバーとの相互理解を深めるには、抽象的なトピックについて共通理解を得るよう、じっくり議論してみるとよいかもしれません。たとえば、「子どもの権利」と聞いてイメージしていることがそれぞれ違い、それぞれの文脈で話し合うと衝突してしまうかもしれません。しかし、権利という言葉を、その時代の事象を通じて具体的に話し合えば「共通理解」になっていくでしょう。

 

政策提言の推進には日頃の市民の取り組みの役割が大きい

 

Q : 多様な想いをもった組織・団体の間で、意見をまとめて政策提言することが難しいと感じるときもあります。どのようにしたらよいでしょうか。

 

大谷 : 政策提言は、市民が自治体の施策や仕組みについて知る大きな機会です。政策は「要求の実現」ということと考えて、日ごろから自分たちの願いを、政策に結びつけて考える習慣があるとよいと思います。

 

また、自治体の審議会や条例づくりなどの動きに、積極的に参加する人をつくることや、その内容を個人のものにせず、なるべく多くの人で共有できるようにすればいいと思います。私自身は、福岡市のこども・子育て審議会委員を長く務め、福岡市子ども総合計画の策定に関わりましたし、最近では那珂川市の「子どもの権利条例」の策定に関与しました。そこで思うのは、日ごろ、子どもの課題に取り組んでいる市民の役割がいかに大きいかということです。

 

昨今の「児童福祉法」の改正や「こども基本法」の制定など、子どもの権利条約の位置づけがようやく実現した今、それより立ち後れている地方の自治体では、子どもの権利の実現を願って活動している市民の声は、反映されやすい状況が生まれていると思います。このような情勢の変化も共有して、可能なことを見つけていただければと思います。

 

広石 : 政策提言をまとめていくときには、日頃から、広く議論の場を開放しておくとよいでしょう。政策提言というと、「NPO側が自治体を説得する」ような構図をイメージがあるかもしれません。しかし、政策提言に向けた議論の場を、自治体を含むあらゆるステークホルダーに対して公開すれば、互いの考え方のすり合わせができるでしょう。

協働(コレクティブインパクト)の実践の現場にいる方々へ、最後にメッセージ

 

大谷 : 「子どもにやさしいまちづくり」とは、情緒的な運動のことではなく、制度や社会システムづくりのはなしです。これまで、現場で積み上げてきた市民・NPOの活動は、子どもにやさしいまちづくりにとって、意味のないものはひとつもありません。市民が生み出したものを大切な財産にして、互いが協力し合えば、いつかたどりつけるはずだと思っています。地域からの積み上げが、社会を変えていく大きな "ちから”になると思います。これからも歩みを止めず進んでいきましょう。

 

広石 : 子どもにやさしいまちづくりに向けた仕組みづくりには「対話」が重要です。対話は、相互理解の場であり、関係性を作る機会です。決して、何か結論を焦るのでなく、一緒に考えたり、相手の話を聞くことに努めてみましょう。

 

さらに、「わからない」をオープンにすると相手も聞く耳をもってくれます。相手の話を聞くことは、コレクティブインパクトの実践には欠かせない要素だと思いますので、是非この機会に対話を意識してみてはいかがでしょうか。

 

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>>  子どもの未来に向けたコレクティブインパクトの実践

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望月愛子

フリーライター。 アラフォーでフリーランスライター&オンラインコンサルに転身。夫のアジア駐在に同行、出産、海外育児を経験し7年のブランクを経るも、滞在中の活動経験から帰国後はスタートアップや小規模企業向けにライティングコンテンツや企画支援サポートを提供中。ライティングでは相手の本音を引き出すインタビューを得意とする。学生時代から現在に至るまでアジア地域で生活するという貴重な機会に恵まれる。将来、日本とアジアをつなぐ活動を実現するのが目標。 タマサート大学短期留学、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了。

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