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アフリカ・ガボン共和国→東京→弘前にUターン。「りんごの木箱」を使ったゲストハウスを運営する石山紗希さんがまちづくりで大切にしていること

2022.11.02 

11日5日は「いいりんごの日」。今回は、青森県弘前市で「りんごの木箱」を使ったゲストハウス「ORANDOの二階」を運営する石山紗希さんにお話を伺いました!

 

石山さん

石山紗希(いしやま・さき)さん

株式会社ORANDO PLUS(オランドプラス)代表取締役/ローカルベンチャーラボ1期生

青森県弘前市を拠点に、地域コーディネーターとしてチャレンジする人たちや地域・地場産業をつなぐ事業を行う。ゲストハウス「ORANDOの二階」の運営もその一つ。弘前大学農業生命科学部卒業後、青年海外協力隊(現・JICA海外協力隊)としてアフリカのガボン共和国で2年間活動。帰国後は地元の津軽地方をもっと盛り上げたいという思いが強くなり、3年後のUターンを見据えて各地の地方創生支援に携わるNPO法人ETIC.に転職。4年前に弘前市にUターンした。自治体と連携しながらローカルベンチャー事業を行うNext Commons Lab弘前コーディネーターを経て、2022年2月に株式会社ORANDO PLUSを他2名の取締役と共に創業。

津軽地方で100年前から人と人を繋げてきた「りんご箱」が、新しいまちの循環を生み出していくゲストハウス

 

津軽地方の中心都市である弘前市。桜の名所である弘前公園からほど近い場所に、昭和53年築の建物をリノベーションした小さな複合施設「HIROSAKI ORANDO(以下、オランド)」があります。

 

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オランド建物正面。大きな弘前の山のようなロゴが目印です!

 

オランドは、津軽ことばで「わたしたち」という意味。ここを自分の場所として活用してほしいという思いからそのように名付けたのだそうです。1階では曜日によって出店者やメニューが変わるカフェ&バー、ギャラリーが営業しており、弘前のまちづくりに関わる人たちと弘前を訪れた人たちが出会う場所になっています。

 

そんなオランドの2階で、今夏(2022年8月)にスタートしたのがゲストハウス「ORANDOの二階」。温かみのある木目が一面に広がるドミトリースペースをよくよく観察してみると、なんと使用されているのは「りんごの木箱」なんです。

 

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使用済みのりんご箱で作られた2段ベッドのあるドミトリー

 

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よく見ると、壁にはりんごの木箱に刷版で残された文字が活かされていたりもします

 

これまでに移住者支援、関係人口の創出、大学生のインターン受け入れなど、地域外の人と弘前のまちをつなぐプロジェクトを行ってきたオランドが、そうした人の循環をいっそう創り出していくために始めるゲストハウスとして、津軽地方で100年以上も前から域外の人と弘前のまちを繋げてきた「りんご箱」がコンセプトに選ばれたのだそう。

 

オープン直後には、さっそく今年で300年目を迎えコロナで3年ぶりの開催となった弘前ねぷたまつりの運営に関わるためにまちを訪れた県外の人々の受け入れ先となったのだそうです。

 

打ち合わせを終えた夜に「じゃあまた、オランドで」という言葉が交わされる場所になれたことが感慨深かったと語ってくれたのは、オランドを運営する「Next Commons Lab 弘前(以下、NCL弘前)」のコーディネーターとしてオランドに関わり続け、2022年に株式会社ORANDO PLUS(オランドプラス)を創業し「ORANDOの二階」を始めた石山さんです。

 

「『ORANDOの二階』は、オランドという居場所を通じてさまざまな人が繋がっていく中の一つの機能として始めたゲストハウスです。オランドはいわゆる“箱もの”ですが、ここに集う人たちの顔がしっかり見えて繋がり合える場所なのだということは大事にしていかなきゃいけない部分だと思っていて。だからこそ別の名前をつけるより、あくまでオランドの一つの機能として『ORANDOの二階』という名前をつけました。

 

オランド自体はオープンから3年ほど。コミュニティもできつつあって、これまで関係を築いてきた人たちが泊まってくれたり、周囲に広げてくれたりもしています。そうして普通にお客さんとして泊まってくれた人たちが、運営側に入るという流れも生まれきているんです」

 

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ガボン共和国での2年間から、“箱もの”に強い抵抗感。やるならば最後まで責任を持つと決めて始めることになった「ORANDOの二階」

 

石山さんは青森で生まれ育ち、弘前大学に進学。農業生命科学部を卒業した後、青年海外協力隊(現・JICA海外協力隊)として中央アフリカの大西洋沿岸にあるガボン共和国に赴任し、2年間農業普及の活動をされたそうです。

 

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赴任先のガボン共和国での一枚

 

当時およそ47もの民族が共存していたというガボンで、それまでの“普通”とは全く違う日常を送った2年間は、自分のアイデンティティを問われ続ける時間だったと語る石山さん。

 

さらに、2年間で大きな活動はできなかったものの、小さいまちでも地域への想いや問題意識を持っている人はいて、そういう人たちと一緒に動けば小さくてもスピード感を持って何かを形にできたり、何よりも一緒に動いていて楽しかったという経験から、まずはそうした人たちと手の届く範囲で仕事がしたいと感じるようになったといいます。

 

帰国後は、故郷であり自分が一番自分らしくいられると感じる津軽地方を盛り上げていきたいと考えるようになり、3年後のUターンを前提に東京にある全国各地の地方創生に関わるNPO法人ETIC.(エティック)に就職。地域社会に根付いて働くこと、故郷に貢献することに関心のある学生や若者たちと、地域で新たに挑戦的な事業を仕掛けようとしている企業との出会いの場をつくり、中長期インターンシップなど実践的プロジェクトを設計して両者を繋いでいく「地域コーディネーター」育成の場づくりに携わったのち、弘前市で自治体と連携しながらローカルベンチャー事業を行うNCL弘前が立ち上がるタイミングで、同団体の地域コーディネーターとしてUターンを決めました。

 

そうしてスタートした念願の故郷でのまちづくりでしたが、実はそこで取り組むことになったオランドの運営に、石山さんは長い間複雑な気持ちを抱えていたといいます。

 

「ガボンでは、先進国と呼ばれる国がいわゆる“箱もの”だけを作って、それを活用するための人のコーディネートなどには関わらず、けっきょく活用されずに終わってしまう事例をたくさん目にしてきました。

 

だからこそ自分は“箱もの”には絶対に関わりたくないと思って、人と人を繋ぐコーディネーターの育成に取り組んできたり、自分自身もコーディネーターでありたいと思ってきたのに、弘前で業務上オランドの管理運営に関わらなければいけなくなってしまって。

 

こうなったら絶対に途中で投げ出さずに責任を持ってやろう!と腹を括った結果、ゲストハウスまで始めることになりました(笑)。本当に、いろいろ自分でも驚いてます」

 

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オランド1階スペースの様子。弘前ならではのシードル(りんごのお酒)文化をつくり、

広める活動をしているシードル&カフェ「ポム・マルシェ」も営業中!

 

同時に、実は弘前で始めたコーディネーターとしての仕事がゲストハウスを始めるきっかけにもなったのだと石山さんは続けます。

 

「コーディネーターとして活動していると、地域外から訪れたインターン生が気軽に長期滞在できる場所があった方がいいと感じたり、自分自身が事業に取り組み始めたらもっと経営者の考えを理解することができるんじゃないかと思うようになっていって。そんな中、オランドの2階スペースが様々な事情が重なって活用予定者がいなくなってしまって、それならばと自分自身がゲストハウスを始めることに決めました。

 

それから、オランドのこれまでの改修工事を全てお願いしてきて、いろんな相談にも乗っていただいていた地元の建築家である蟻塚(ありつか)さん、NCL弘前のプロジェクトパートナーである盛(もり)さんに相談させていただいたら、なんと『それなら一緒に会社やる?』と言ってくださって。

 

蟻塚さんは建築家として弘前のまちの数々の物件に関わってこられて、建物に限定されるのではなくもう少しまちに滲み出ていくような関わり方が必要なのではないかと感じられていたそうで、盛さんはNCLのアーティスト・イン・レジデンスのプロジェクトパートナーとしてずっと相談させていただいていたこともあり、3人で話し合いを重ねて、本当に一緒に始められることになりました。

 

ゲストハウスを始めるにあたって、クラウドファンディングにも挑戦したのですが、長い間弘前のまちづくりに携わってこられたお二人と一緒に挑戦させていただいたことで、本当にたくさんの方々に応援いただけて。

 

頼もしいお二人と一緒に会社を始められることになって、始める前も『本当にいいんですか!?』と何度も尋ねてしまいましたが(笑)、いまだに驚きつつ、本当にありがたいことだなと感じています」

3人

写真左端が蟻塚さん、右端が盛さん。オランドの屋上にて撮影

 

「足元」を見ながら、外と内を繋いでおもしろい化学変化をまちに生み出していく

 

弘前へのUターン直前、NPO法人ETIC.が運営する地域に根付いた6ヶ月間の起業家育成・事業構想支援プログラム「ローカルベンチャーラボ」に1期生として参加されていた石山さん。

 

プログラム中、高知県の地域商社「株式会社四万十ドラマ」で代表をされているメンター畦地履正さんから教わったある言葉が、今でも活動の支えになっているのだといいます。

 

「『(地域の)足元を見る』と畦地さんがよくおっしゃっていたのですが、弘前に帰ってきてからその言葉の重さを本当にふとしたときに繰り返し感じるようになりました。当たり前のはずだけど忘れがちになってしまうことで、思い出すと背筋が伸びる、今でも大事にしている言葉です。

 

普段、移住者や関係人口の誘致を中心に仕事をしていると、つい意識が外に向きがちになります。けれど私個人としては、そうして弘前に外から来てくれた人たちをまちの人たちに繋いで、これまでになかったようなおもしろい化学変化をまちに生み出していきたいと思っていて。そのときに畦地さんの言葉は、一番大切なまちへの視点を忘れないための指針になってくれています」

 

***

 

これからオランドを通じて、さらにコーディネーターとしても、弘前で人と人の出会い、その先にある化学変化をもっともっと生み出していきたいと語ってくれた石山さんは、取材者であるエティックスタッフの元同僚でもあります。

 

「自分の感情や考えていることを一番素直に、正しく伝えられるから」と、大好きな津軽弁を話し、柔らかな人柄にあったかくも驚くほどのパワフルさを備えている彼女は、弘前でも周囲の人たちをその魅力で自然と巻き込み続けているのだろうなとしみじみ感じた今回の取材でした。

 

弘前を訪ねた際には、ぜひオランドに立ち寄って、美味しいシールドにりんごの木箱のベット、そして魅力的なまちの人たちとの出会いを味わってきてくださいね!

 

 

この記事を書いたユーザー
桐田理恵

桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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