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海洋プラスチックごみ問題への挑戦、若者支援、オーダーメイドの旅づくり……地域で挑戦中の若手起業家3人による事業とは?〜ローカルリーダーズミーティング2022レポート(2)〜

2022.12.09 

 

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2022年10月8日、北海道厚真町(あつまちょう)で「ローカルリーダーズミーティング2022〜革新的ローカルインダストリー創造への挑戦〜」が開催されました。主催はローカルベンチャー協議会(事務局NPO法人エティック)。地域資源を活用したビジネスの担い手(ローカルベンチャー)育成や企業と協働で産業創出に取り組む自治体を中心に構成され、その活動を通じて、これまで多くの起業家や新規事業が生まれています。

 

今回のイベントには、全国各地のローカルベンチャー協議会に参加している自治体や中間支援組織、地方での新規事業を考える首都圏大手企業等、約100名が集い、コレクティブ・インパクトによる新しい産業づくりに向けて活発な議論が交わされました。

 

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この記事では、イベントの最後に行われた「U-30起業家ピッチ 」の登壇者3名の活動をご紹介します。地方を挑戦の現場とするU30世代が、10年先を見据えて取り組んでいる事業とはどのようなものなのでしょうか?

気仙沼発!海洋プラスチックごみ問題を解決するSDGsビジネス

 

加藤広大

加藤広大(かとう・こうだい)さん/amu株式会社 代表取締役

1997年2月生まれ。神奈川県小田原市出身。大学時代に授業で配られたチラシがきっかけで初めて宮城県気仙沼市唐桑を訪れる。(株)サイバーエージェント退職後、気仙沼市地域おこし協力隊に赴任。2021年9月にamu株式会社を設立し気仙沼の遠洋鮪漁師に協力を仰ぎナイロンテグスをリサイクルする事業を行う。

 

加藤さんは地域おこし協力隊として宮城県気仙沼市に移住し、たった一人でamu(アム)株式会社(以下、amu)を設立しました。着目したのは気仙沼の基幹産業である漁業で大量に廃棄されてしまう、ナイロン製の漁網です。世界中で問題となっている海洋プラスチックごみは、2050年には魚の量を超えるという予測もありますが、そのうち実に44.5%が漁具で占められています。そんな海洋プラスチックごみ問題の大きな要因となっている廃漁網を回収し、生地やペレットとして再資源化するというのがamuの事業です。

 

廃漁網から生成されるε(イプシロン)カプロラクタムはナイロン6という合成繊維の原料となり、自動車の部品やアウトドア製品、電線、ケーブル、洋服等、あらゆる製品に用いられています。カプロラクタムというと聞き慣れない物質のように感じるかもしれませんが、2026年までに世界市場規模が282億米ドルに達すると見込まれている巨大マーケットなのです。

 

amuでは、漁業者から買い取った廃漁網からεカプロラクタムを生成し、化学素材メーカーに販売するというビジネスモデルを展開しています。メーカーを通じて廃漁網は新たな商品として生まれ変わり、私達消費者のもとに届くという仕組みです。

 

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現在は、大規模に上質な素材を回収でき、分別もしやすいことから、遠洋延縄マグロ漁にターゲットを絞って漁網の回収を行っています。全国約400のマグロ漁船から、年間400トンの廃漁網の回収を見込んでおり、億単位の事業へと成長中です。

 

2025年度には売上約7億円を目指すamuは、マグロ漁が盛んなインドネシアやスペインへの進出も視野に入れています。気仙沼発のグローバル企業の誕生も夢ではなさそうです。

 

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「気仙沼は年間を通してカツオ、メカジキ、マグロ、牡蠣等、様々な海産物が水揚げされる、日本有数の漁港です。そんな気仙沼の産業を支えている漁具がただ廃棄されてしまっているのは、すごくもったいない。

 

海と共に生きてきた気仙沼のストーリーを廃漁網に編み込み、物語をもった新たな素材として、価値あるものに生まれ変わらせていきたいと思っています」

廃漁網の回収依頼等、amuの事業にご関心のある方は加藤さんのFacebookページよりご連絡ください。

まちをまるごと学びのフィールドに! 若者と地域をつなげたい

 

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山下実里(やました・みのり)さん/一般社団法人umi 代表理事

1994年生まれ。奈良県出身。2017年京都産業大学を卒業し、地域おこし協力隊として島根県雲南市に移住。雲南市の大学連携事業「雲南コミュニティキャンパス」の運営に携わる。2020年4月、一般社団法人umi(旧Community Careers)を設立し、大学生と地域をつなげる事業を展開している。今年の目標は、事業の参考になるようなアイデアや視点を取り入れるために、長年閉じこもっていた雲南市からどんどん出かけていくこと。

 

「なんとなく大学に進学してしまい、卒業後地域社会に出ることに不安を感じている、大学の支援をうまく活用できず、身の回りに相談できる人や場所がない、地域に出る機会があっても、壁にぶつかり精神を病んでしまう……等々、大学生と地域社会をつなぐ上では多くの課題があります。

 

大学生に限らず若者向けの行政サービスは少なく、多くの若者が地域の中に頼る場所や居場所がないと感じているのが現状です」

 

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こう語る山下さんは、「若者に地域で輝ける可能性を届ける」というミッションの下、一般社団法人umi(ウミ、以下umi)を立ち上げ、島根県雲南市で人材育成事業に取り組んでいます。

 

例えば「まちのキャリアセンター」事業では、大学生や若者向けに個別のキャリア相談や、中長期の実践型インターンシッププログラム(1ヶ月〜1年)の企画・運営を行っています。

 

「インターンシッププログラムは、主に地域の企業や団体が取り組んでいる事業について聞き取りを行い、それを基に設計しています。地域に開かれた場として、そこで暮らす人々を再発見でき、つながっていけるような機会を提供できていたらうれしいです」

 

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雲南市では、子ども・若者・大人そして企業の連携による、地域課題解決に向けたチャレンジが進んでいます。そこで「雲南コミュニティキャンパス(略称 : U.C.C)」事業では、まち全体が学びのフィールドとなることを目指し、大学生を対象にスタートアッププログラム(1日〜数日)を提供しています。

 

大学生にとってU.C.Cへの参加は、雲南市の取り組みについて知ったり、個々の興味や関心をベースに、長期休暇等を利用して雲南市で実践したいことについて一緒に考えてもらったりと、地域に踏み出す「最初の一歩」となっているようです。

 

「若者世代と地域社会の接点作りが課題解決の第一歩だと考えています。これからどのような取組が必要か、みなさんとディスカッションしていきたいです」

umiが手がける事業の詳細は、公式サイトをご覧ください。

オーダーメイドの観光プランで、旅先をふるさとに!

 

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佐竹宏平(さたけ・こうへい)さん/株式会社Root-N 代表取締役

1994年2月生まれ。愛知県名古屋市出身。大学時代を京都で過ごす。2018年9月から3ヶ月間、石川県加賀市で住み込みインターンを経験後、2019年8月加賀市に移住。2020年9月株式会社Root-N創業。加賀をまるごとガイドしながら、中学校でのSTEAM教育などにも参画している他、地元の方と小水力発電の実装に向け奔走中。地元の方と市民大学を設立予定。加賀というまちの風土を生かした事業を立ち上げ、長期視点でのまちづくりに携わる。

 

株式会社Root-N(以下ルートン)の佐竹宏平さんは、石川県加賀市を拠点として、ふるさとを訪れるような旅ができる、ガイド付きのオーダーメイドツアー「カガリベ」を運営しています。オーダーメイドだからこそできるディープな体験がカガリベの魅力です。

 

「ルートンでは、『加賀風土記』を創ることをビジョンに掲げています。全国各地、それぞれのまちがそれぞれの気候や特産物、歴史、文化をもっている。当然、加賀には加賀の風土に根ざした歴史や文化が数多くあります。

 

そうやって過去から受け継いできたバトンを未来へとつないでいくためにも、旅をきっかけとして加賀の人と出会い、食を楽しみ、歴史や文化、自然に触れることができる機会を提供していくことが大切だと思っています。僕にとってオーダーメイドのツアーを作ることは、加賀の風土を表現する活動でもあるんです」

 

「旅先をふるさとにする」というコンセプトで運営されているカガリベは、旅人と加賀との関係案内所とも言えるサービスです。インターネット上には観光情報があふれていますが、そこにどんな人が暮らしているかといった情報は見つけにくいものです。佐竹さんはツアーの中で、インターネットからでは決してアクセスできない、依頼人と相性がよさそうな地元の人との交流の場を設けることを大切にしています。

 

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オーダーメイドツアーガイド「カガリベ」の様子

 

「僕の記憶に残っている旅には、いつも地元の人との交流がありました。ただ、地元の人との交流というのは、ガイドなしの一見さんだと味わいにくい体験です。最近ではボランティアやプロボノを通じて地域と関わることのできるマッチングサービスも増えてきましたが、まとまった時間が必要だったり、仕事を介してでないと関われないというハードルの高さもあります。

 

もちろん、旅行を通じて地域との縁をつなごうというサービスも既にあるのですが、そういったサービスの多くは体験がベースになっていますよね。それはそれでわかりやすくていいのですが、『人』ベースで見てカスタマイズしないと出会えないものもあるんじゃないかと思ったんです。

 

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社会人にとって旅行というのは大事な休みの使い方の一つですが、その限られた時間と機会の中でも地域と関われる選択肢を作りたいという想いで、カガリべを始めました。地元の方の家にお邪魔して囲炉裏を囲んで話したりするような、通常は体験できない個人に最適化された観光体験ができたら、何度でも訪れたいと思える場所になるかもしれません。

 

個々でつながりができ、加賀がみんなのふるさとになっていくこと、カガリベが必要なくなることがこの事業の最終目標でもあります。旅をきっかけに、加賀をふるさとだと思ってくれる人を増やしていきたいです」

カガリベの詳細は公式サイトをご覧ください。

 

***

 

今回のピッチは、次世代を担う若手起業家をローカルベンチャー協議会全体で応援していこうと設けられました。ピッチ登壇者の多くは協議会事務局のエティックが運営するローカルベンチャーラボのプログラムOBOGでもあります。彼らの事業が加速することで、ローカルへと向かう人やお金の流れも、より大きなものとなりそうです。

 

ローカルベンチャー協議会では、引き続き地方で挑戦する若手起業家を後押しするプログラムを実施していきますので、ご注目ください!

 

ピッチの様子は動画でもご覧いただけます。

 

参考

▷ローカルリーダーズミーティング2022開催概要

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000139.000012113.html

▷ローカルベンチャー協議会

https://initiative.localventures.jp/

▷ローカルベンチャーラボ

https://localventures.jp/localventurelab

 

関連記事はこちら

>> ローカルリーダーズミーティング2022レポート

 

この記事を書いたユーザー
茨木いずみ

茨木いずみ

宮崎県高千穂町出身。中高は熊本市内。一橋大学社会学部卒。在学中にパリ政治学院へ交換留学(1年間)。卒業後は株式会社ベネッセコーポレーションに入社し、DM営業に従事。 その後岩手県釜石市で復興支援員(釜援隊)として、まちづくり会社の設立や、組織マネジメント、高校生とのラジオ番組づくり、馬文化再生プロジェクト等に携わる(2013年~2015年)。2015年3月にNPO法人グローカルアカデミーを設立。事務局長を務める。2021年3月、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。

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