#ローカルベンチャー
NFTで世界中から関係人口を募る、泊まれる民間図書館を立ち上げる……若手起業家2人が語る地域の未来像とは?〜ローカルリーダーズミーティング2022レポート(4)〜
2023.01.05
2022年10月8日、北海道厚真町(あつまちょう)で「ローカルリーダーズミーティング2022〜革新的ローカルインダストリー創造への挑戦〜」が開催されました。主催はローカルベンチャー協議会(事務局NPO法人エティック)。地域資源を活用したビジネスの担い手(ローカルベンチャー)育成や企業と協働で産業創出に取り組む自治体を中心に構成され、その活動を通じて、これまで多くの起業家や新規事業が生まれています。
今回のイベントには、全国各地のローカルベンチャー協議会に参加している自治体や中間支援組織、地方での新規事業を考える首都圏大手企業等、約100名が集い、コレクティブ・インパクトによる新しい産業づくりに向けて活発な議論が交わされました。
この記事では、前回に続き「若手起業家ピッチ」の登壇者2名の活動をご紹介します。地方を挑戦の現場とするU30世代が、10年先を見据えて取り組んでいる事業とはどのようなものなのでしょうか?
NFTで世界中から「地元民」を募る!旅するジモトプロジェクト
土屋望生(つちや・のぞみ)さん/株式会社日添 取締役
1993年熊本県球磨郡五木村生まれ。2015年、修業先としてNPO法人ETIC.(以下エティック)に就職。地域活性事業の事務局、インターンシップ等のコーディネートを経験。2018年に五木村にUターン、株式会社日添を起業。地域商社事業、人材マッチング事業、カフェの経営等に従事。
「村には『推し』がいっぱいいるので」と、故郷である熊本県五木村(いつきむら)へのUターンの理由を語る土屋さん。本メディアを運営するエティックのOGでもあり、株式会社日添で地域商社事業やカフェの経営に取り組んでいます。Uターンしてから4年間で多くの関係人口を作ることができたものの、土屋さんのようなコーディネーターを介さなければ五木村のお手伝いをするのは難しいという現状に課題を感じているようです。そこで今回のピッチでは、そんな課題を解決するための「#旅するジモト」という新しいプロジェクトについて語っていただきました。
「#旅するジモト」とは、ブロックチェーン技術を活用して、簡単にコピーできるデジタルデータに唯一無二の資産的価値を与える「NFT(Non-Fungible Token : 非代替性トークン)」を使った、場所の垣根を越えたプロジェクトです。日本全国に、誰かにとっての“帰りたくなる地元”を作ることを目指しています。
関わり方は大きく3つ。
1つ目は、地域の課題をテーマに知恵とアイデア、技術を出し合ってプロジェクトを進めていく「#旅するジモト会議(仮)」というDAO(Decentralized Autonomous Organization。分散型自律組織)に参加するというものです。「#旅するジモト会議(仮)」は、特定のリーダーがいなくても事業やプロジェクトを推進することができ、NFTは一緒に考え、行動する「仲間の証」として機能します。
2つ目は、「#旅するジモト会議(仮)」で決まったプロジェクトに対して、「#旅するジモト民(仮)」として関わることです。プロジェクトごとにNFTが発行され、「関わりの証」として、プロジェクトに参加していることが証明されます。発行されたNFTの数が、地域との関わりや信頼関係の深さを表すものにもなるのです。
3つ目は、プロジェクトから生まれた商品を購入することです。地域産品や地域の特産物の福袋等を購入することで、誰でも参加できます。
「NFTと言うと難しく感じるかもしれませんが、この技術を活用することで、コーディネーターがいなくても、誰もが地域に関わるプロジェクトを自分で組成して、実行できるようになることを目指しています。
五木村は1,000人しかいない村なので、いいことも面倒くさいことも本当にたくさんあります。それでも大きな声で自慢したいのが地元なんです。残したい、守りたい、買ってほしい、知ってほしい、人を増やしたい……地域には解決したいことが山ほどあります。
発信しようと思えばいつでもできる今の時代だからこそ、それぞれの地域がもっている宝の数々と、抱える課題をシェアできる仲間を、世界中から募ることができるのではないかと思い、生まれたのがこの『#旅するジモト』プロジェクトです。世界のどこかで応援してくれる人たちと、力を合わせて地域の魅力に磨きをかけていきたいと思っています」
これを機会に、NFTに挑戦してみてはいかがでしょうか?
宿泊事業との合わせ技で、まちの文化施設の復活を!「うみの図書館」プロジェクト
黒川慎一朗(くろかわ・しんいちろう)さん/
株式会社ゲンナイ 代表取締役、一般社団法人さぬき市津田地区まちづくり 協議会理事
1998年生まれ。香川県さぬき市出身。大阪大学工学部卒。大学4年次に地元に戻り起業、一棟貸しの宿を設立。2021年から長期滞在受入開始。現在は長期滞在施設と図書館を組み合わせた「うみの図書館」に改修中。地域の事業者と海岸周辺の空き漁業倉庫群の活用にも取り組む。
香川県さぬき市出身の黒川慎一朗さんは、大学4年次にUターンして「株式会社ゲンナイ」を創業しました。大阪大学工学部で都市計画を学び、建築とまちづくりに関心をもつようになった黒川さん。地方創生をテーマとした学生団体を立ち上げたり、地元企業と大学生との地域貢献イベントを開催したり、大学時代から精力的に活動してきました。視察した全国各地のまちづくり先進地域は10カ所以上に上ります。
「そんな中でピンときたのが、ゲストハウスの運営です。2020年4月からコロナ禍で大学がオンライン授業となったため、その機会を活かして実家近くの祖父母の家の離れをリフォームし、7月に『まち宿AETE(アエテ)』をオープンしました。1日1組限定の一棟貸しのゲストハウスです。
移住定住となるとハードルが高いですが、長期滞在という形でAETEを拠点にゆったりと地域の魅力を楽しめる、まちの案内所のような宿泊施設を目指しています」
また黒川さんは、一般社団法人さぬき市津田地区まちづくり協議会の理事でもあります。
「この協議会は、地元の中小企業の社長さん5人がお金を出し合って作ったまちづくり会社なんです。大学で都市計画を学んでいたので、自分でさぬき市津田町の都市計画を作成して、それをこのまちづくり法人で実現させようとしています。
津田町は、住まいに必要な機能が近くにそろっているコンパクトシティ構想から取り残されているエリアだと言えます。病院、学校、銀行の支店等々、多くの機能をさぬき市の中心部に吸い上げられ、社会インフラがなくなりつつある6,000人ほどの町です。
そんな津田町で現在取り組んでいるのが、『うみの図書館プロジェクト』です。津田地区にはもう何十年も図書館がありません。まちが衰退するときに最初になくなるのは文化施設だと言われています。一方で、豊かな町を目指すときに必要不可欠なのも文化施設だと思うんです。そんな文化施設の代表格である図書館を民間主導で作りたいと思っています」
うみの図書館は、津田町の古民家を改修して作られた、図書館と宿泊施設が一体となった複合施設です。うみの図書館に置かれている本は2種類だけ。1つは、海辺が舞台の小説、海洋生物の図鑑等々、海にまつわる本です。もう1つは、別の地域から流れ着いてきた本を「漂流文庫」として収集しています。
「うみの図書館では、ボトルキープのような関係人口をつくっていきたいと思っています。まず人に来てもらうのではなく、本を現地に送ることから関係性が紡がれていくような世界があったらおもしろいなと思うんです。宿泊施設が併設されているので、宿泊事業でマネタイズしながら、公共性の高い施設を持続可能な形で運営していくことをめざしています」
うみの図書館、ぜひ訪れてみたいですね!オープンが楽しみです。
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今回のピッチは、次世代を担う若手起業家をローカルベンチャー協議会全体で応援していこうと設けられました。ピッチ登壇者の多くは協議会事務局のエティックが運営するローカルベンチャーラボのプログラムOBOGでもあります。彼らの事業が加速することで、ローカルへと向かう人やお金の流れも、より大きなものとなりそうです。
ローカルベンチャー協議会では、引き続き地方で挑戦する若手起業家を後押しするプログラムを実施していきますので、ご注目ください!
ピッチの様子は動画でもご覧いただけます。
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参考
▷ローカルリーダーズミーティング2022開催概要
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000139.000012113.html
▷ローカルベンチャー協議会
https://initiative.localventures.jp/
▷ローカルベンチャーラボ
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