DRIVEでは、NPO・ソーシャルビジネスで働きたいと思っている若者の意識や実態に迫る調査を行いました。
前回の記事では、NPO・ソーシャルビジネスで働いてみたい層の性年代や職業などデモグラフィック属性の特徴を追いました。本記事では、これまでの経験の違いにより、NPO・ソーシャルビジネスへの興味に違いがみられるのかを紹介していきます。
NPO・ソーシャルビジネスへの就業意欲(n=1,024)
まず、前回のおさらいです。「働いてみたい」「やや働いてみたい」「既に働いている」をあわせると、17.0%の若者がNPO・ソーシャルビジネスでの就業に意欲を持っています。特に、性年代別では20代前半の男性や30代の女性、そのほか未婚者や文系大学出身者で意向が高く、彼らはfacebookやtwitterをはじめとしたメディアへの接触率が高いこともわかりました。 今回はさらに、「これまでの経験により、就労意欲に違いがみられるか」を見ていきます。
※なお、前記事同様、各層の違いをより明確に見ていくため、”働きたい層”は「すでに働いている」「働きたい」と回答した人、”働きたくない層”を「あまり働きたくない」「働きたくない」と回答した人と定義して結果を見ていきます。
学校の授業がNPO・ソーシャルビジネスへの興味を喚起
まずは、どのような経験が、NPOやソーシャルビジネスへの興味を喚起するのかを見ていきます。 このグラフは、“働きたい層”と“働きたくない層”ごとに、これまでにどんな経験を持っているかを聞いた結果です。“働きたい層”のスコアが高い順に並べています。
これまでに該当する経験(n=1,024)
「町内会・お祭り・ゴミ拾い等の地域活動経験」は全体で見ても高く、“働きたくない層”においても約2割が経験しています。
特筆すべきは、 “働きたい”層“で、「学校の授業や研究でNPO・ソーシャルビジネスや社会問題を取り扱った」が約2割にのぼっている点です。 筆者は日ごろ、ボランティア活動経験者やNPOに関わる人にインタビューをする機会が多くあります。その中で、NPOやボランティアに関心を持ったきっかけを聞くと、「学校の授業でボランティアについて聞いて、やってみたいと思った」と答える高校生、「テレビで途上国の貧困問題を見たこと」と答える大学生、また、中には「駒崎弘樹さんのツイートを見て」と答える社会人など、やはり学校の授業や研究、メディアを通して関心を持ったと答える人たちによく出会います。
また、筆者の勤める団体でも、高校に出向いて授業としてNPOやボランティアについて考える場を作ることがありますが、その取り組みの背景には、「若いうちにNPOやボランティアについて触れるきっかけを少しでも作り、将来社会に出たときに、地域や社会を支える大人になるを生み出す」という、キャリア教育的な観点があります。
教育現場において、NPOやボランティアについて取り上げられる機会が増えていくことが、長い目で見てNPOやソーシャルビジネスへの興味関心や理解を促すことにつながるのではないでしょうか。 一方、「自分や周囲の人が、NPOやソーシャルビジネスのサービスを受けた」経験は未だ低い水準です。NPO法人に限っても、今や認証団体数は5万を超え、その数は全国のコンビニエンスストアの総数を超えるといわれています。これだけ数が多ければ、それらが提供するサービスを受ける機会も身近にありそうですが、まだまだそうとも言えないのが現状です。
しかし、介護や学童保育、教育など、一昔前までは行政が提供していたサービスの多くを、今はNPOやソーシャルビジネスが担う時代です。これから、社会サービスの提供主体として認知が向上すれば、サービスの提供側として働いてみたい、という人たちが増えていくのかもしれません。
また、「社会貢献活動・非営利活動についてのイベント・講座に参加した経験がある」も、"働きたい層"では高い傾向にあります。多くのNPOが、取り組む社会問題に興味を持つ人たちと直接接触する機会を作るかを模索している中で、イベントや講座の開催が有効であることを示唆しています。 加えて言えば、支援者を増やすことや社会問題への理解を深める上で有効であることに加えて、新規スタッフの獲得という面でも、イベントや講座の開催は効果的なのかもしれません。
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