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「境界のあり方に注目し、まちづくりに新たな可能性を見いだす」ー 経営とまちづくりの専門家・宮脇靖典さん

2024.07.09 

「越境」と聞いて、何をイメージしますか?

 

たとえば、所属する企業や組織の枠を超えて新たな学びを得る「越境学習」や、インターネット上で国内外の相手と商品の売買ができる「越境EC」など、私たちの身近なところにも越境は存在しています。

 

まちづくりや地域活性化においても、行政と民間が互いに越境しあって成功を収めた事例があります。今回「ローカルリーダーズミーティング2024(LLM)in 宮崎県日南市」に登壇される岡山理科大学教授の宮脇靖典さんが注目したのは、北海道東川町の取り組みです。

 

ここでは行政と民間がそれぞれの枠を越えたつながりで独自の関係人口づくりが積極的に行われています。LLM当日は『境界は変わる。まちづくりが変わる。』という題目でセッションが開催されますが、今回はその内容の一部を抜粋して紹介します。

 

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宮脇 靖典(みやわき やすのり)さん

1983年東京大学法学部(政治コース)卒業。以後30年余の間、株式会社電通に勤務。商品や事業の開発を含む、広い意味でのコミュニケーション企画に携わる。2019年首都大学東京社会科学研究科博士前期課程修了。事業構想大学院大学客員教授等を経て、2019年10月より、岡山理科大学経営学部教授。

「行政だから」「民間だから」の垣根(境界)が無い。人口8,000人台を維持する小さな町

多くの自治体にとって、人口減少は共通の課題ではないでしょうか。移住者を増やす取り組みや、関係人口の創出に奮闘しているところも少なくないはずです。宮脇さんが調査・取材を行い、セッションの中でも事例として登場する北海道東川町も例外ではなく、1950年をピークに人口が減少。一時は7,000人を割り込みましたが、その後、徐々に移住者が増え続け、今では8,000人台を維持し続けています。

 

移住者が増加した背景のひとつに、1985年にスタートした「写真の町」事業があります。東川町は、日本最大の自然公園・大雪山国立公園の区域の一部で、そのフォトジェニックな景色を活かしてブランド化。「写真の町」として町全体が一丸となり、移住者や関係人口を呼び込むことに成功しました。

 

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「写真甲子園」は、大会までのロケハンや撮影、大会当日と何度も町に足を運んでもらえるイベント

 

宮脇さん : 私が東川町の存在を知ったのは、NHKの番組でした。まずおどろいたのが、ここ半世紀の人口の過半数が移住者だったという点です。地域活性化を行う際に、地域外のプレイヤーが働きかけるケースも多々ありますが、東川町は地域の人々が、すでに町が持っている潜在的な魅力を打ち出しました。しかも、ここで指す地域の人々というのは、一般的に保守的と思われがちな町役場の職員。しかし保守的とは真逆で、行政の改革意識がものすごく高かったんです。

 

役場の職員は、すでに東川町に移り住んでいる移住者や企業と協力体制を図り、町が受け入れた視察や取材の対応を次々と民間に依頼。これに対して民間も、町にいながら町外のさまざまな人脈に繋がれるチャンスと捉えていて協力的な姿勢が見られます。「行政だから」「民間だから」といった垣根を取り払い、それぞれの立場の境界を越えたつながりを持っています。

 

さらに興味深いのが、住民のQOL(=Quality of life)を重視した「適疎なまちづくり」です。ただ人口が増えていけば良いというのではなく、東川町では、適度にゆとりがあり田舎の良さが感じられる「適疎」を理想に掲げて、独自のまちづくりが行われています。

 

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視察=行政の仕事という枠を取り払い、民間を積極的に巻き込んでいる。双方がメリットを感じている取り組み

「地域のイノベーションは境界くずし」よそ者による潜在的な魅力の掘り起こしで、地域が再び蘇る

宮脇さんは、地域の境界を超えた外部の関与もまちづくりや地域活性化の重要なポイントだと言います。このことに気づくきっかけとなったのが、東大阪市にある布施駅前商店街のリノベーション事業でした。

 

「SEKAI HOTEL」は、商店街全体をひとつの大きなホテルに見立てており、一般にホテルが持つフロントやレストラン、浴場の機能を商店街のあちこちに点在させる”分散型ホテル”で、にぎわいの創出や経済効果が期待できることから、近年、地域活性化の手法のひとつとして注目が集まっています。

 

宮脇さん : 布施駅前商店街にある「SEKAI HOTEL」は、地域外のプレイヤーが働きかけて、まちおこしをした事例です。これを手がけたのは空き家のリノベーション事業を手がけている大阪市内の会社ですが、東大阪市が地元ではないので、商店街の人からするといわゆるよそ者ですよね。商店街のリノベーションというのは、完全に内輪の課題。そこに地域外の会社が入ってきて、当初は衝突もあったようです。それでも最終的には、外からの視点と地域の資源が融合したことで、新たな価値が生み出されました。

 

内輪での課題解決にこだわらない(=境界をくずす)ことで、地域のイノベーションが起こったんです。熱い想いを持ったよそ者が「境界」を飛び越えて、そして地域はそれを受け入れて商店街を劇的に活性化させた。この事例についても、セッションの中で紹介したいと思っています。

 

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閉店した建物の外装はそのまま残して、内装をフロントや客室などに改装。下町情緒の中に新しさが共存している(写真:SEKAI HOTEL Fuse WEBサイトTOPページより)

まちづくりに窮屈さを感じたら、まずは境界の見直しを。

宮脇さん : もし今、まちづくりや地域活性化の過程で行きづまっている人がいたら“立場上こうあるべき”という思い込みによって、窮屈さを感じているのかもしれません。境界の制約を一度離れて物事を考えていきたいという方は、ぜひセッションを聞きに来てください。社会人でも学生でも、職種や立場は関係なく誰でもウェルカムです。

 

今回参加される皆さんとの初めての出会いも、まずは見えない境界を越えるところからはじまります。セッションが終わった頃には、私と皆さんの間にあった境界が変わっていくような、そんな出会いにしたいです。

 

 

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今回ご紹介したのは、セッション内容のほんの一部に過ぎません。

 

2024年7月13日(土)~14日(日)に開催予定の「ローカルリーダーズミーティング in 宮崎県日南市」では、「DAY1 ロカデミック・まーけっと!」のコーナーで、宮脇さんに上記のような事例をご紹介いただきながら、参加者とのディスカッションを実施します。

 

さまざまな地域のイノベーションやまちづくりを取材し研究を重ねてきた宮脇さんの見解が直接聞けるチャンスですので、ご関心のある方はぜひお申込ください。お申込はこちらから。

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稲山倫子

宮崎県出身。大学卒業後、出版社や印刷会社でタウン情報誌の制作に携わる。2016年からフリーランスの編集者として独立し、紙媒体やweb媒体で執筆。2022年からは県立高校の非常勤講師を務め、情報リテラシーや高校生が地域の課題を解決する「地域創生」のクラスを受け持つ。ここ数年は、日本文化(特に茶道)にハマっている。

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