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「今最も必要とされるボランティア活動とは?」震災後約4ヵ月の現状から―能登半島地震復興支援 第4回活動報告・意見交換会レポート【後編】

2024.05.17 

 

能登半島地震から約4ヵ月。報道などで現状が伝えられるものの、現地の様子が見えづらい状況が続いています。「実際はどうなっているのか」「一番の課題は何なのか」。そんな声も多く聞こえる中、全国の中間支援組織のネットワーク「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)」(事務局 : NPO法人ETIC.[エティック])が、4月、4回目となる能登地方での活動報告・意見交換会をオンライン開催しました。

 

今回も現地の支援活動を続ける団体が中心となり、それぞれが抱く課題と活動が共有されました。積極的に言葉が交わされた内容から一部をご紹介します。

 

※記事の内容は2024年4月18日時点のものです。

<登壇者>

森山奈美さん 株式会社御祓川 代表取締役社長 / 能登復興ネットワーク 事務局 / 七尾未来基金設立準備会 事務局

山本 亮さん 能登復興ネットワーク 幹事 / のと復耕ラボ 代表 / 里山まるごとホテル 代表取締役

伊藤紗恵さん 合同会社CとH 代表取締役社長

<ファシリテーター>

山内 幸治、瀬沼 希望 (NPO法人ETIC.)

 

前編はこちら

住民と二次避難者、ボランティアスタッフが交流できる環境を

 

山内:(前編に続き)NRN能登復興ネットワーク幹事と、のと復耕ラボ代表の山本さんから、3月中旬から1ヵ月間の変化、また現在の活動内容についてご報告をお願いします。

 

山本さん:のと復耕ラボでは、3月下旬以降、エティックからの右腕派遣として、4人のプロボノメンバーが輪島に入り、活動してくれています。彼らは、僕一人だけが頭の中で描いていた構想などをみんなが認識できるように言語化し、仕組み化してくれ、現在、ボランティアスタッフを安定的に受け入れられるような体制づくりを進めています。

 

右腕人材たちと業務を遂行する山本さん(中央右)たち

 

現時点では、復旧ではなく、復興につながる活動として、持続可能な里山の暮らし、村づくりをどう展開すればいいのかをみんなで考えています。たくさん意見を出してくれ、この1ヵ月だけでもいろいろなアイデアが集まりました。

 

三井拠点には、薪ボイラーの入浴設備(左)と薪ストーブ(右)の設置を整えた。

地域の人、地域外に避難した人、ボランティアスタッフなどが気軽に交流できるように

 

アイデアが形になったことの一つが、薪ボイラーを使って湯を沸かすお風呂の設置(上の写真左)です。ボランティアスタッフや被災者の方が入れるお風呂で、5月に完成予定です。

 

薪ボイラーのお風呂を設置した理由は、輪島市の三井地区あたりは林業で生計を立てている地域のため、林業を復活させることが地域の生業づくりにつながるのではないかと考えたからです。

 

また、薪ストーブが置けるテントサウナも設置しました。三井拠点のある場所は、もともと地域内外の方が交流できる場だったため、今回、薪ストーブを置くことで、誰でもふらっと立ち寄れる場所にできたらと思っています。薪ボイラーの入浴施設と薪ストーブのテントは、いずれも一般社団法人アウトドアサウナ協会から提供を受け、珠洲市と輪島市の各ボランティア拠点にも届けました。こんなふうに暮らしを楽しみながら、少しずつ地域の持久力を上げて、家屋の再建にも活かせるような動きを広げていけたらと思っています。

築100年以上の古民家を支えてきた古材を救うプロジェクトも

 

山本さん:5月からは古材レスキュープロジェクトが本格的に始動する予定です。能登では、解体される建物の中に築100年、200年といった歴史ある古材がたくさんあり、僕自身、能登の大きな魅力だと感じています。

 

古材レスキューではボランティアたちが倒壊した古民家などから能登の歴史を感じさせる梁や柱などを取り出している

 

現状では、建物の梁や柱、建具などの大半が、リサイクルという形で解体され、燃やされる可能性が高い状態です。能登の歴史が詰まった貴重な建材などがなくなることは能登にとって大きな損失だと思っています。今後、古材をどう復興に活かしていくのか、来月から少しずつ試行錯誤していくことが決まっています。

 

こんな風に、のと復耕ラボでは、がれき撤去、子どもの見守りなどのボランティア活動を続けつつ、未来をつくっていく活動を継続できたらと思っています。そういった時にも、みんながいてくれるおかげで現状整理ができたり、復興に向けた活動の仕組み作りが進んだりしています。ボランティア活動に参画してくれる人が増えてくれることで、能登のより良い復興につながると思っています。僕たちの拠点以外でも、仲間が各地で拠点を作ってくれていますので、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

輪島塗や輪島瓦を守る活動も

 

森山さん:山本さんへ、ボランティア先の現場で、輪島塗の漆器などはどう対応されていますか?

 

山本さん:僕たちのボランティア活動では、専門的な対応が難しいことなどでやむを得ず廃棄されることが多いです。

 

森山さん:最近設立された、一般社団法人能登地震地域復興サポートが輪島塗や能登瓦を引き取る活動を始めました。能登瓦に関しては、使用期間10年以内など条件はありますが、これからより輪島塗や能登瓦への対応が必要になる場面が増えてくると思います。

 

山本さん:なかでも輪島塗は、能登地方のご家庭にとっては、結婚式やお葬式など、家族の記憶や記録としてこれまで大切にされてきたものなので、処分しなければならない場面が続くと胸が痛みます。何とかして守りたいので、そういった活動をしてくれるととてもありがたいです。

拠点が全壊。しかし、能登発の新規事業をつくるために議論と連携を重ねる

 

山内:金沢市で実施している活動について、合同会社CとH 伊藤さんからお話ください。

 

伊藤さん:珠洲市飯田町で、奥能登と首都圏をつなぐ交流拠点として24時間年中無休のコワーキングスペース「OKNO to Bridge(奥能登ブリッジ)」を運営していました。しかし、震災でオフィスが全壊したため、3月から金沢に拠点を移し、現在は珠洲市と行き来しながら活動をしています。また、4月2日と3日に開催された能登半島訪問ツアーでは珠洲市側の世話役を担当しました。

 

震災前の「OKNO to Bridge(奥能登ブリッジ)」

 

我々が運営していた「OKNO to Bridge」では、私が長く東京を中心に仕事をしていたことで、いろいろな方との関係人口系プロジェクトなどを推進していました。また、私自身のテーマでもある「女性のキャリア」に関する事業として、地域の女性を対象に、オンラインを活用しながら働く選択肢を増やすプロジェクトを行っていました。

 

現在は、震災前からのミッションをそのままに、「地域発の新ビジネスを創造するエコシステムの構築」を目指して復興に関する活動をしています。

 

例えば、地域内外から能登に関わる人たちにとっての入口のような場所として、震災後に奥能登から避難せざるを得なかった人たちがいろいろな人とつながれる場所として、土台づくりを進めています。

 

今後も奥能登での拠点づくりや新規事業づくりを継続していくために、NRN能登復興ネットワークが開催する復興に向けた連続勉強会をみんなで視聴しながら議論をし、また金沢経由で奥能登に支援活動に入られる方も交えて情報交換をしています。能登への想いを持った方々と一緒に過ごす時間から新しい取り組みも生まれ、現在は週1回のペースで珠洲市に行き、現地の人との連携を状況に合わせながら進めています。

 

現在の構想としては、奥能登の復興に向けて、若い世代が持続可能な生活をつくるための拠点づくり、またオンラインを活用した働き方、関係人口などをキーワードにした活動や事業の推進を考えています。特にフォーカスしたいのは、女性や若者が能登で具体的なキャリアを描けるように、オンラインを活用した働き方やものづくりの仕事の開拓などで、能登の地域性を柔軟に活かした新規事業の創出を実現したいと思っています。

能登の経済発展と雇用創出を目指したオンラインワーカーの人材育成を

 

伊藤さん:現在、新規事業として考えているのは2つで、1つめは、都市部の副業ボランティアによる被災地事業者支援です。具体的には、事業者の業務を切り出した業務支援のほか、事務業務のデジタル化、経営戦略、マーケティングなどを副業ボランティアといった形でコーディネートしていくことで、動き始めたところです。

 

もう1つは、震災前から取り組んでいたことですが、オンラインワーカーの人材育成です。私は、どこに住んでいてもしっかりと働ける環境づくりがとても大事だと思っています。そういった環境づくりを被災者の方や二次避難者の方に向けて取り組めたらと思っています。

 

ただ、二次避難者の方は状況がすごく流動的で、金沢に避難している方々がすぐに定職を持って金沢で生活基盤を築く、といった考えに切り替えられる方は多くありません。その中で、オンラインを活用しながら働き方の選択肢を増やせば、納得のできる生活の基盤づくりが可能になると思っています。現在、準備を進めていますが、最終的には、被災地の事業者から切り出した業務を、オンラインワーカーたちが担う状態をつくり、被災地の経済発展と雇用創出が同時に実現することを目指しています。

 

ただ、大きな課題もあります。それは、我々の拠点である事務所が全壊したことで現地での活動が本格的に始められないことです。また、珠洲市では大半の住宅が倒壊しているため、住民の方がまだ安心して住める状態だとはいえない現状があります。

 

活動メンバーも不足し、また資金面でも模索している段階ですが、まずは拠点づくりで力になってくれる企業などを募集しています。

離れて暮らす家族が安心して生活できるために何が必要か

 

山内:現在、奥能登に住んでいる被災者の方、二次避難のために金沢で生活をされている方、奥能登の事業者、それぞれの現状について、伊藤さんが感じることがあれば教えてください。

 

伊藤さん:私が見える範囲ですが、二次避難されている方については、奥能登で仕事をされている家庭の父親が能登に残り、母親と子どもが金沢に二次避難されている場合が多いように感じます。二次避難先は、ホテル、みなし仮設として賃貸など様々ですが、週末になると父親が金沢の家族に会いに来るという生活をされている方がすごく多い印象です。

 

能登では家屋が倒壊している方がとても多いので、今後、みなさんが安心できる暮らしを続けるためにどうすればいいのかを真剣に考えていくべき時期かもしれないとも思っています。 能登の事業者については、二極化が進んでいるように感じています。

1つは、復興に向けた事業が軌道にのったり、クラウドファンディングを使って多くの人に応援されたりといった事業者です。彼らは、挑戦した分、新たな業務で多忙になっているものの人手不足でなかなか思うように進められないという状況が多いようです。もっと攻めたいけれど、従業員が避難してスタッフがいないなど、攻め切れないという状態です。

 

もう1つは、震災後から休業状態にある事業者です。私が事業の連携を進めているのは、前者の、より攻めていきたいという事業者で、現在は、新しい挑戦を進めたいけれど人材不足が課題となっているいくつかの企業と具体的に話を進めています。復興につながる事業推進をすすめ、なんとか能登全体を少しずつでも元気にしていけたらと思っています。

最も必要とされる人材は

 

山内:参加者からの質問に入ります。「どんなボランティア活動が必要とされているのかを知りたい」という質問がいくつか届いていますが、地域外からのボランティアスタッフを受け入れる体制について、また現地の方たちの本当に助けになるボランティア活動について、森山さん、いかがですか?例えば、能登は車社会ですが、ボランティア活動を希望される方には自動車の運転が難しいという方も少なくありません。

 

森山さん:車の運転が難しいというボランティアスタッフはこれまでたくさん受け入れてきました。一方で、日程の調整や支援先とボランティアスタッフをつなぐコーディネーター人材が最も不足しています。コーディネーターを含めたボランティアスタッフに関してはNRN能登復興ネットワークのWEBサイトなどでも随時募集しています。関心があり、可能な方はどうぞ力を貸してください。

 

山内:続いて「行政が主導するボランティアと民間発のボランティアについて、今後の役割分担などを分かる範囲で教えてください」といった質問です。森山さん、いかがですか?

 

森山さん:今後、行政、民間ともにボランティア活動は必要で、行政主導のボランティアでは制約などの関係でどうしても活動が難しい領域があります。地域全域に対応する行政と、町の人の細やかな困りごとに対応しやすい民間とが連携して進めることが今後より必要になってくると思います。

社会福祉協議会と情報共有をしながら町の人の困りごとに対応

 

山内:山本さんが活動する輪島市の三井地区では、社会福祉協議会と連携しながらボランティア活動の仕組みを作られているそうですね。

 

山本さん:人員的な課題などで行政では難しい領域について、僕たちは民間のボランティアとして一緒に活動させてもらっています。具体的には、地域の方々から実際に困っていることを聞いて活動し、困りごとや活動内容を社会福祉協議会に共有しています。

 

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山本さんが代表を務める「のと復耕ラボ」のボランティアBASE三井拠点で活動するボランティアスタッフたち

 

また、僕たちから社会福祉協議会に対して依頼しているのは、支援先が、一般ボランティアが活動できる領域なのか、または技術的なスキルを持ったボランティアが必要な領域なのか、そういった整理をしてもらうことです。必要な支援が整理されたうえで、僕たちがやるべき活動を社会福祉協議会側と相談しながら対応しています。

 

僕たちが拠点を置く三井地区では、一般ボランティアが輪島市街地での活動を中心的に担っていますが、日々状況が変化しています。そのため、状況に合わせて対応しながら、入手した情報は常に社会福祉協議会に報告することを心掛けています。

 


 

現在、能登の復興に携わる仲間を各団体・企業で募集中です。ご関心ある方、力を貸してください。

>>DRIVEキャリア 特集「復興を支え、能登の未来をつくる仕事

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エティックでは今後、中長期にわたる支援を続けていくための寄付を受け付けています。

>>SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付

>>Yahoo!JAPANネット募金 令和6年1月能登半島地震地域コーディネーター支援募金(エティック)

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「能登半島地震・報告会&意見交換会」は、次のスケジュールにて開催しています。 ご関心ある方はぜひご参加ください。

・第1回目:1月23日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第2回目:2月20日(火)14:00~15:30(※終了しました)

・第3回目:3月12日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第4回目:4月18日(木)11:00~12:30(※終了しました)

・第5回目:5月31日(金)14:30~18:00 / 6月1日(土)12:00~13:00

 

※第5回目は、「and Beyondカンファレンス2024」(羽田イノベーションシティ)プログラムの一環としてセッションを開催いたします。

※参加にはBeyondカンファレンスへの申込が必要です。

5月31日(金)は有料セッション、6月1日(土)は無料セッションでの開催です。

(【1日券】一般(5/31金 )¥10,000【1日券】一般(6/1土)【1日券】学生(5/31金) ¥1,500、

【2日券】一般(5/31金~6/1土 )¥13,000【2日券】学生(5/31金~6/1土 )¥2,000)

詳細・お申込みはこちらから

 

能登復興ネットワークではSNSでも情報を公開しています。

最新情報はこちらからチェックしてください。

・facebook https://www.facebook.com/noto.iyasaka

・instagram https://www.instagram.com/noto.iyasaka/

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こちらもあわせてお読みください。

>>「避難所の立ち上げ、物資支援、炊き出し」能登が、能登らしく復興するために―能登半島地震復興支援 第1回活動報告・意見交換会レポート【前編】

 

>>住民の生活再建に向けて、ボランティア活動の推進体制を」―能登半島地震復興支援 第2回活動報告・意見交換会レポート【前編】

 

>>「ボランティア宿泊拠点と受け入れ環境づくりに力を貸してほしい」震災から時間の経過と共に見えてきた課題―能登半島地震復興支援 第3回活動報告・意見交換会レポート【前編】

 

>>【能登半島地震・報告会&意見交換会】いま必要な支援とリソースについて、一緒に考えませんか?

 

>>それぞれの個性や地域資源を活かした復興へ。能登半島で生まれている未来へ向けた動き

 

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たかなし まき

愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科を卒業後、企業勤務を経て上京。業界紙記者、海外ガイドブック編集、美容誌編集を経てフリーランスへ。子育て、働く女性をテーマに企画・取材・執筆する中、2011年、東日本大震災後に参画した「東京里帰りプロジェクト」広報チームをきっかけにNPO法人ETIC.の仕事に携わるように。現在はDRIVEキャリア事務局、DRIVE編集部を通して、社会をよりよくするために活動する方々をかげながら応援しつつフリーライターとしても活動中。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。