全国の中間支援組織のネットワーク「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)」(事務局 : NPO法人ETIC.[エティック])では、能登半島地震から約3ヵ月以上経った4月、4回目となる活動報告・意見交換会をオンライン開催しました。
震災直後から現地団体と外部ネットワークが継続してきた支援活動について、今回も共有されました。笑顔も見られる会となった内容の一部をお届けします。
※記事の内容は2024年4月18日時点のものです。
<登壇者>
森山奈美さん 株式会社御祓川 代表取締役社長 / 能登復興ネットワーク 事務局 / 七尾未来基金設立準備会 事務局
山本 亮さん 能登復興ネットワーク 幹事 / のと復耕ラボ 代表 / 里山まるごとホテル 代表取締役
<ファシリテーター>
山内 幸治、瀬沼 希望 (NPO法人ETIC.)
情報共有会議や連続勉強会を通して、復興への活動につなげる
山内:能登半島地方での災害は、これまでの災害のなかでも、交通手段や受け入れ人材の不足などで「ボランティアスタッフが現地に入りにくく、初動にも時間を要する」といった声が目立っていました。現在はどうなっているのか、まずは、NRN能登復興ネットワーク事務局の森山さんから能登の現況とNRNの活動についてご報告ください。
森山さん:NRNでは、1月の設立当初、避難所のアセスメントや炊き出しの調整WEBサイトの作成などを行っていました。その後の変化としては、活動を続ける中で、まずNRN会員団体が少しずつ増え、現在、40団体の方々が支援活動に様々な方法で参加してくださっています。
その中で、NRNが震災後から継続的に行ってきたのは、能登全域及び七尾市での情報共有会議です。
情報共有会議の様子
能登全域では、毎週木曜日の午後8時から午後9時まで(オンライン開催)、七尾市では、2週間に一度、七尾市災害ボランティアセンターとともに行っています(現地とオンラインのハイブリッド開催)。この情報共有会議では、地域でコーディネーター的な役割をされている方と支援者側の方々がつながりながら、情報を共有し、挙がった課題を解決していくための活動につなげています。
あわせて、創造的復興に向けた連続勉強会をこれまで11回行ってきました。石川県では、3月末に今後の復興計画の骨子「石川県創造的復興プラン(仮称)骨子案」が発表されています。6月に県としての復興計画が取りまとめられる予定ですが、その前に、市や町の復興計画を形にしていくことを目指しています。
その一環として、私たち県民とともに市や町の行政職員が知見を学ぶ場を考えています。5月には、岩手県釜石市でオープンシティ釜石を牽引してきた石井重成さんを講師に、勉強会を開催予定です。また、これまでの連続勉強会は、NRNのWEBサイトから記録動画を閲覧可能です。ご関心ある方はご覧ください。
https://nrn-iyasaka.net/archives/1126
4月「能登半島訪問ツアー」を開催。現地ボランティアに入った参加者も
森山さん:NRNの活動でも、この1ヵ月間のニュースだと思ったことを4つお伝えします。まず1つめ、NRNの「広報担当」が決まりました。この方はプロボノとして参画し、日々の活動についてWEBサイトやSNSで随時発信してくれています。どうぞご確認ください。
- NRN能登復興ネットワーク公式WEBサイト: https://nrn-iyasaka.net/
- facebook: https://www.facebook.com/noto.iyasaka
- Instagram: https://www.instagram.com/noto.iyasaka/
2つめのニュースは、4月2日、3日に能登半島訪問ツアーを開催したことです。能登半島は、東北と比べてもとても少ない人数で現地の支援活動を牽引しているのが現状です。実際、判断に迷うこともたくさんあります。その中で、エティックなどまわりの助けを得て、訪問ツアーを行うことができました。
能登半島訪問ツアーの様子
当日は19名もの方が能登に足を運んでくれ、訪問ツアーへの参加をきっかけに、現地でのボランティア活動に1ヵ月ほど参画してくださった方々もいます。今後も能登半島訪問ツアーは継続していきたいと思っています。
3つめのニュースとしては、5月の連休に向けてボランティアの受け入れ体制強化を進めていることです(2024年4月18日時点)。現在、七尾市災害ボランティアセンター以外でも、各地の民間団体などがボランティアの受け入れをしていますが、今後ますますボランティアの受け入れ体制が重要になると考えています。各地域でボランティア募集を行っている団体と連携しながら、ゆくゆくは大きな窓口となる民間ボランティアセンターを作ることを構想中です。
ボランティアの受け入れがなかなか進まない理由の一つとして、コーディネート業務を担う人材が不足している課題が挙げられます。七尾市社会福祉協議会が運営する七尾市災害ボランティアセンターでは、とても多くの方がボランティア登録をしてくれているのです。
しかし、「どこへ何の支援に向かうか」など具体的なコーディネート業務によって、1日あたりの受け入れ人数が限られてしまうことから、地域外の人が「ボランティアに行きたいけれど行けない」という状態が生じています。
「どこでどんな支援が必要とされているか」をしっかりと整理し、ボランティアをコーディネートする機能を強化することで、より多くのボランティア活動が能登で広がっていけばと思っています。そのために支援先のコーディネートを担ってくださるボランティアも募集中です。
「能登留学」の卒業生たちが「能登のために」動いた
森山さん:私はNRNの事務局を務める一方で、七尾市のまちづくり事業を展開する株式会社御祓川(みそぎがわ)の代表も務めています。
もともと川沿いのまちづくり会社でしたが、17年前に起こった能登半島地震をきっかけに、能登全域を対象としたまちづくりの中間支援的な事業へと変化を遂げています。以来、「まち育て・みせ育て・ひと育て」を掲げ、地域外から能登に関わりたいという人たちと能登のまちづくり事業をつなげてきました。
また、事業者の販売支援として行っているWEBサイト「能登スタイル」では、震災後からたくさんの物販を展開しています。現在だけでも物産展への出店が10件以上、同時進行で動いており、各事業者で人手不足が起きています。
正直、時間の経過に伴って地域外に対する能登の状況を伝える経路が少しずつ減少していることも感じますが、常に事業者の収益化や復興につながる商品の展開を検討しながら行っています。
ただ、物販を推進するうえで難しい課題もあり、例えば、まとまった量の販売が見込めるからと発注量を多くすると、事業者は被災をしているうえに発注量に合わせた仕事をする必要性が生じます。様々な負担を強いる状況にもなるため、事業者の状況をしっかりと聞き取りながら無理なく新しい販路を広げていくなど、気を配りながら取り組んでいます。
続いて、この1ヵ月で最もうれしかったニュースをお伝えします。七尾市を中心とした能登地方では、若者を対象に能登で自分のキャリアデザインを見つける「能登留学」を10年以上行ってきたのですが、現在、約200名以上の卒業生たちがいます。今回、全国にいる能登留学の卒業生たちが「能登のために何かできないか」と自ら呼びかけをし、集まってくれました。
「能登留学」の卒業生たち。能登のために顔を揃えた
彼らは、現在、オンラインを含めた活動を案件化することから進めてくれています。みんなにまた会うことができて、「能登留学」をやって本当によかったと思っています。今回、集まったことをきっかけに、早速、卒業生から一人能登に来てくれて、広報面をインターンとして助けてくれています。
あわせて、NRNでは能登半島訪問ツアーの問い合わせが多く寄せられ、現在5本くらいのツアー組成を行っているのですが、ツアーを作る業務でも卒業生が活動してくれています。
ボランティアスタッフがイラスト作成や看板づくりを
山内:続いて輪島市の山本さん、現況をお伝えください。
山本さん:僕は、のと復耕ラボの団体運営と、NRN能登復興ネットワークの幹事をしています。この1ヵ月の動きと活動については、まずボランティアの一人が4週間滞在し、活動してくれたのですが、その際、のと復耕ラボのイラストを描いてくれました。「林業や山から能登の復興を耕していこう」という話からイメージを膨らませて描いてくれています。
ボランティアスタッフが描いた、のと復耕ラボのイメージイラスト
福岡から来たボランティアスタッフは、のと復耕ラボの看板を作ってくれました。1月にボランティアBASE三井拠点を立ち上げ、ボランティア活動を始めていきましたが、立派な看板ができたことで拠点の雰囲気を感じながら活動ができるようになりました。みんなのモチベーションになり、人のつながりも増えてきているように感じています。
「のと復耕ラボ」のボランティアBASE三井拠点。ボランティアスタッフが作った看板を真ん中にみんなで笑顔
こんなふうに、現在、いろいろな人がボランティアに来てくれています。ボランティア活動では、がれきの撤去作業など、参加することで誰かを助けることができる仕事がありますが、イラストや看板のように楽しいこと、面白いことも生まれています。そんな時間をみんなと共有しながら、「復興につながる関係人口づくりとはこういうことを言うのか」と、強く実感しています。
地域の人と一緒に復興の状況をつくる
1月の震災直後、ボランティアBASE三井拠点からスタートしたボランティア活動は、僕たちを含めて約400人が参画し(うち約200名は地域外から参画)、多岐にわたる活動を行っています。水や物資を届けることから始まり、地域住民からの頼まれごと、例えば、清掃作業、家の片付け、重い荷物などの運び出し、また中期支援として崩れてしまった建物から思い出の品や品物を取り出すことなどを行っています。
また、ボランティア活動を通して地域の方からいろいろな声を聴きますが、その度に「寄り添う」ことの大事さを感じています。
地域のみなさんは、自分ではどうすればいいのか判断が難しいことの多い状態で、例えば、ある事業者の方からは「自分たちの事業所の片付けは自分たちでやるべき。経営者はスタッフに給料を払ってでも」という話を聞きます。しかし、肝心のスタッフも被災をしているため、実際には声をかけることすらためらっているという状況に置かれています。目の前には、1月1日とかわらずバタバタな事務所だけがあり、経営者の方は「どこからどう片づければいいのかわからない」という状態です。
そんな現場に僕たちボランティアスタッフが入り、片付けの段取りを組んでいきます。「何を重視しているのか」「どんな状態を望んでいるのか」などを事業者さんに聞き、僕たちから「それなら、こんなふうにステップを踏んでいきましょう」と提案しています。そうすることで、少しずつ事業者さん自身の整理も進んでいき、一歩一歩、復興している状況を一緒に作り上げていくことを感じています。
事業者さんからは「おかげさまで先が見えてきた」「1ヵ月かかると思っていたことが1週間で終わった」といった声をいただいています。また、被災された方々から今後の復興への思いのような言葉も聞くことができ、本当に一歩一歩、みんなで進んでいるような感覚です。
ボランティアスタッフ自身も、実際に現地に足を運び、活動を重ねることで、住民の方々と一緒に復興を感じることができるようです。「報道で知ったこと以上の体験ができた」といった声が聞かれます。また、夕飯を一緒に食べる場では「能登のみなさんのために自分ができることは何だろう」「自分が被災した時にはどうすればいいのか」と、一人ひとりが考える場になっているといった声もありました。
地域外からのボランティアスタッフに関しては、実際、能登に滞在しながら、復旧や復興に関わってもらう時間を少しでも長く持つことの大切さも感じています。ボランティアスタッフが地域の方たちと一緒に時間を過ごすことで、能登が復興するためのパワーが増していると感じられるのです。そういった取り組みが大事なのだと日々感じています。
また、能登半島地震ではボランティア活動の拠点自体を作りにくいことが課題となっていましたが、三井拠点では、一つの運営拠点としてしっかりと維持していきたいと思っています。
>> 後編に続きます。
現在、能登の復興に携わる仲間を各団体・企業で募集中です。ご関心ある方、力を貸してください。
>>DRIVEキャリア 特集「復興を支え、能登の未来をつくる仕事」
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エティックでは今後、中長期にわたる支援を続けていくための寄付を受け付けています。
>>SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付
>>Yahoo!JAPANネット募金 令和6年1月能登半島地震地域コーディネーター支援募金(エティック)
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「能登半島地震・報告会&意見交換会」は、次のスケジュールにて開催しています。 ご関心ある方はぜひご参加ください。
・第1回目:1月23日(火)16:00~17:30(※終了しました)
・第2回目:2月20日(火)14:00~15:30(※終了しました)
・第3回目:3月12日(火)16:00~17:30(※終了しました)
・第4回目:4月18日(木)11:00~12:30(※終了しました)
・第5回目:5月31日(金)14:30~18:00 / 6月1日(土)12:00~13:00
※第5回目は、「and Beyondカンファレンス2024」(羽田イノベーションシティ)プログラムの一環としてセッションを開催いたします。
※参加にはBeyondカンファレンスへの申込が必要です。
5月31日(金)は有料セッション、6月1日(土)は無料セッションでの開催です。
(【1日券】一般(5/31金 )¥10,000【1日券】一般(6/1土)【1日券】学生(5/31金) ¥1,500、
【2日券】一般(5/31金~6/1土 )¥13,000【2日券】学生(5/31金~6/1土 )¥2,000)
詳細・お申込みはこちらから
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>>それぞれの個性や地域資源を活かした復興へ。能登半島で生まれている未来へ向けた動き
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