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「ボランティア宿泊拠点と受け入れ環境づくりに力を貸してほしい」震災から時間の経過と共に見えてきた課題―能登半島地震復興支援 第3回活動報告・意見交換会レポート【前編】

2024.05.01 

2024年1月1日。家族そろって新年を祝う家庭も多かったこの日、能登半島を震災が襲いました。あれから約2ヵ月半経った3月12日、全国の中間支援組織ネットワーク「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)」(事務局:NPO法人エティック)や地元の人たちが登壇する「第3回 活動報告・意見交換会」が行われました。

 

「能登でボランティア活動を始めたいが、どう動けばいいかわからない」という企業の声も聞かれた今回、ボランティアの受け入れ環境の整備も大きな課題として挙がりました。地元で支援を続ける団体の現況や焦燥感を感じる背景などをお伝えします。

 

能登復興に携わる人材募集の特集記事もご覧ください。

>> 特集「復興を支え、能登の未来をつくる仕事」

 

※記事の内容は2024年3月12日時点のものです。

<登壇者>

森山奈美さん 株式会社御祓川 代表取締役社長 / 能登復興ネットワーク 事務局長 / 七尾未来基金設立準備会 事務局

山本 亮さん 能登復興ネットワーク 監事 / 里山まるごとホテル 代表取締役

水上志都さん 能登町大箱 民宿「じろんどん」女将

<ファシリテーター>

山内 幸治、瀬沼 希望 (NPO法人ETIC.)

地元商店街の「一本杉復興マルシェ」を原点の場所で開催

 

山内 : まずは能登復興ネットワーク(NRN)事務局の森山さんから現状をご説明ください。

 

森山さん : 震災翌日の1月2日から連続勉強会や情報共有会議などを重ねており、少しずつ参加者の方が増えています。今後も、NRN事務局を窓口に、いろいろな方と協力しながら「誰一人取り残されない地域づくり」に取り組んでいきたいと考えています。

 

情報共有会議に集まる人たち

 

3月2日には、地元の商店街で第2回目「一本杉復興マルシェ」(主催 : 一本杉通り振興会・毎月第一日曜開催)が開催されました。次回は4月7日(日)、5月5日(日)の予定です。開催場所は、震災後しばらく商店街の駐車場を借りていたのですが、4月からはもともと一本杉マルシェの開催場所だった花嫁のれん館前に戻ります。運営ボランティアも募集中ですので、ご関心ある方はNRNまでご連絡ください。

 

「一本杉復興マルシェ」の開催に携わる人たち。笑顔で会場を活気づけた

 

事業者の販売支援として行っているWEBサイト「能登スタイル」では、都内の物産展にも出店し、能登の特産物などを販売しています。今後も新たな販路開拓に向けて、能登の事業者さんと一緒に事業を盛り上げる体制を作っていきたいと思っています。

 

復興計画が上がる一方で、震災当日と変わらない風景も。「焦りを感じる」――能登復興ネットワーク 森山さん

 

森山さん : 現在、能登の経営者に向けた壁打ち支援を、一般財団法人 社会変革推進財団(SIIF)の協力を得て行っています。経営者たちは、震災後、経営状況が厳しい中、雇用を守りながら、難しい経営判断にも迫られながら、事業を継続させるために試行錯誤しています。壁打ち支援後の対策としては、ボランティア派遣、さらに右腕派遣のプロジェクト化も検討しています。生業を守るための助成金支援など現実的な事業継続のための具現化を進めています。

 

また、新しいボランティア滞在拠点を整備することが決まり、地元の方々にご協力いただきながら空き家の活用などを視野に進めています。あわせて、「#もう来てもいいよ能登」のキャンペーンをみんなで頑張って広げています。ぜひ力を貸してください。

 

能登復興ネットワークでは事務局長の人材募集も行っている。

詳細はこちらまで : DRIVEキャリア「【能登震災復興】困難を抱える人々を支える地域基盤をつくる。コミュニティ財団事務局

 

山内 : 全体像について、森山さんはどう見ていますか?

 

森山さん : 震災から2ヵ月半が経った今(3月12日時点)、復興に向けて議論が進み、復興計画を立てる話も耳にするようになりました。一方で、目にする光景から受ける印象は、震災当日からあまり変化がみられないと感じる一面もあります。倒壊したままの家屋は多く、道路もふさがれた状態が続き、時間の経過につれて、私自身の中に「いつまでこんな状況が続くのだろうか」と少しずつ焦燥感が募るのを感じています。

 

宿泊可能なボランティア拠点の整備を推進―のと復耕ラボ 山本さん

 

山内 : 奥能登の輪島市を中心に支援を推進している山本亮さん、現況はいかがですか?

 

山本さん : 12年前、能登の自然美に惹かれて東京から輪島市に移住しました。株式会社百笑(ひゃくしょう)の暮らしを立ち上げ、里山の暮らしを紹介する宿「里山まるごとホテル」を運営しています。現在は、のと復耕ラボという能登の復興に取り組む団体を輪島市三井地区で立ち上げ、NRNの理事としても奥能登の復興に携わっています。

 

奥能登では、道路や電気、水道などインフラが徐々に戻りつつあります。しかし、風景自体は震災直後とはあまり変わらない印象で、二次避難をしている人も多いため、町を歩く人の姿はまばらのように感じます。僕自身、できるだけ早く復興計画を進める側に立ちたいのですが、能登のボランティア活動の基盤となる支援先の整理・ボランティア配置の調整で人手不足を感じ、そのほかいろいろな課題解決に追われる状態で、「どこから手をつければいいのか」と、ひたすら目の前のことに向き合う日々を送っています。

 

現在、最も力を入れているのは、宿泊可能なボランティア滞在拠点の整備です。今のところ3拠点あり、1つは、里山まるごとホテルがレストランとして使用していた茅葺庵(かやぶきあん)、一棟貸しの宿の中右衛門(なかよも)、また、能登和紙体験館ハウスあすなろです。茅葺庵は、連続勉強会の場所としても活用しているため、ボランティアの人たちが、夜、囲炉裏を囲みながら情報共有をしたり、これからの話をしたり、コミュニティの場にもなりつつあります。ここは約100人の収容が可能な場となっているのですが、もう一つ大きな施設を会場として開放するため準備を進めています。

 

茅葺庵での連続勉強会の様子

 

中右衛門(なかよも)

 

また、この2ヵ月で累計350名のボランティアが活動に参画しています。引き続き仲間を募集中です。具体的には、倒壊した建物から輪島塗などの商品や事業に必要な書類などを救出するプロジェクト、がれきの撤去、高齢者の方だと難しい冷蔵庫や洗濯機など重い荷物の運び出し、災害ごみ処理の手伝い、雨漏りがひどい家屋でのブルーシート張りなど、たくさんの人の力を借りながらいろいろなボランティア活動を続けています。

 

民家の片づけや環境整備などに携わるボランティアたち

 

今後、活動拠点の許容範囲を広げていく方針で、拠点の運営も担うことを想定しています。一緒に運営を手伝ってくれる人も募集していますので、ご関心ある方はご連絡ください。

 

昨日(3月11日)からは新しい活動も始まっています。輪島市にある輪島市立三井小学校では、子どもが15名ほど通っていましたが、震災後はほぼ半数にまで減少しています。地域に残っている親御さんは共働きが多く、公務員や消防団員など災害に立ち向かっている方が大半です。放課後すぐ、自分の子どもを学校に迎えに行けない家庭が多いため、子どもたちが放課後を安心して過ごせる場所を作ろうと、認定NPO法人カタリバと連携し、子どもの居場所を開設しました。こちらも子どもの見守りなど人手が不足しています。できれば中長期で関われそうな方が手を挙げてくださると助かります。

 

また、輪島市三井地区はもともと林業が主幹産業として発展してきた地域です。衰退傾向にある中で震災が起こりましたが、もう一度、林業に火を灯せないか、地元の人たちと議論を進めています。そのほか、子どもの野外教育や山村留学などで地域の新たな特徴を出せないかなど、未来につながる地域づくりを考えています。エティックからの右腕派遣を活かしたチーム作りから始めていければ。まずはボランティアで一度奥能登に足を運び、現状を把握したうえで環境づくりを一緒に推進していただける方を募集しています。

 

罹災証明が出された後、再調査・二次調査が必要な住民のための支援を―民宿「じろんどん」

 

瀬沼 : 能登町で民宿「じろんどん」を経営されている水上さんからも現地の状況をご説明ください。

 

水上さん : 能登町の内浦長尾(うちうらながお)で一棟貸しの宿「じろんどん」を営んでいます。奥能登は、支援者の方のための宿泊場所が不足しています。そのため、宿を提供するのが私たちの役割の一つだと考えています。

 

能登町の宿「じろんどん」。地域外のボランティアを対象に、宿泊場所として提供している

 

「じろんどん」では、災害復旧当初の1月8日から、水道局をはじめ支援者の方々の受け入れを行っています。多くの方は珠洲市方面に向かっており、3月からは建設業関連、産業廃棄物業関連の方々からたくさんの問い合わせをいただいています。また、七尾市や金沢市を拠点に、日帰りで奥能登に入る方も多いため、様々なボランティア活動を継続できるための支援体制を地元で整えることが復旧のためには急務だと痛感し、焦りも感じています。

 

また、現在、民家をホームステイ型の宿泊場所として提供できないか検討を進めているところです。空き家の開放も候補に挙がり、準備を進めていたのですが、家財道具のない状態、または家財道具がある空き家では大型の荷物やゴミ出しが必要になるなど、状況に合わせた作業に行き詰まりを感じ、なかなか形にできない状態です。

 

一方で、珠洲市では、インスタントハウスを3拠点、約100棟立ち上げ、ボランティアや一時帰宅されている住民の方々に利用いただいています。住民の方々に関しては、珠洲市では車中泊をされている方がまだ多い状況で、疲労やストレスの蓄積が心配されるため、1日、2日だけでも身体をゆっくりと休める場所として宿泊していただけたらと思っています。

 

暮らしの再建支援については、4月には取り組みが本格化できるように仕組み作りを整えているところです。住民の方々に「暮らしが定まる」安心感を持ってもらうため、建築の専門家と連携した寄り添い支援を進められるように準備を進めています。

 

特に、罹災証明に関して、半壊以下、一部損壊といったかたちで、罹災証明が出された後でも再調査・二次調査の必要性に迫られた人が多くいます。専門外のことでとまどう人も多いと思いますが、建築士に診断してもらうことで、住民自身が具体的な損壊状態を把握でき、罹災証明を調査する行政職員たちに対しても自分から知識を持ってアピールすることが可能となります。住民自身が納得できる結果を得られるためにも、自分で知識を活かす力を養うことが必要だと考えています。

 

また、耐震面などホームインスペクションの機能を活かすことで、安心して住める状態をつくれればと思っています。そのほか、弁護士相談、支援金関連の申請など、住宅に関する相談が可能となる取り組みを4月以降に開始できればと考えています。そのため、奥能登での活動に協力してくれる建築士などがいるととても助かります。

 

後編に続きます。

>> 「なぜ、能登の復興が必要なのかを伝える復興に」能登から日本の未来づくりに向き合う―能登半島地震復興支援 第3回活動報告・意見交換会レポート【後編】

 


 

現在、能登の復興に携わる仲間を各団体・企業で募集中です。ご関心ある方、力を貸してください。

>>DRIVEキャリア 特集「復興を支え、能登の未来をつくる仕事

………

「能登半島地震・報告会&意見交換会」は、次のスケジュールにて行っています。

各内容は、レポート記事としてDRIVEに掲載予定です。

・第1回目:1月23日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第2回目:2月20日(火)14:00~15:30(※終了しました)

・第3回目:3月12日(火)16:00~17:30(※終了しました)

・第4回目:4月18日(木)11:00~12:30(※終了しました)

・第5回目:5月31日(金)14:30~18:00 または 6月1日(土)11:00~12:00

※第5回目は、「and Beyondカンファレンス2024」(羽田イノベーションシティ)

プログラムの一環としてセッションを開催いたします。

※報告会&意見交換会の参加費は無料ですが、入場券が必要となります。

(【1日券】一般(5/31金 )¥10,000【1日券】一般(6/1土)【1日券】学生(5/31金) ¥1,500、【2日券】一般(5/31金~6/1土 )¥13,000【2日券】学生(5/31金~6/1土 )¥2,000)

詳細・お申込みはこちらから


 

エティックでは今後、中長期にわたる支援を続けていくための寄付を受け付けています。

>>SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付

>>Yahoo!JAPANネット募金 令和6年1月能登半島地震地域コーディネーター支援募金(エティック)

 


 

能登復興ネットワークではSNSでも情報を公開しています。 最新情報はこちらからチェックしてください。

・facebook https://www.facebook.com/noto.iyasaka

・instagram https://www.instagram.com/noto.iyasaka/

………

こちらもあわせてお読みください。

>>「避難所の立ち上げ、物資支援、炊き出し」能登が、能登らしく復興するために―能登半島地震復興支援 第1回活動報告・意見交換会レポート【前編】

>>「住民の生活再建に向けて、ボランティア活動の推進体制を」―能登半島地震復興支援 第2回活動報告・意見交換会レポート【前編】

>>【能登半島地震・報告会&意見交換会】いま必要な支援とリソースについて、一緒に考えませんか?

>> それぞれの個性や地域資源を活かした復興へ。能登半島で生まれている未来へ向けた動き

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たかなし まき

愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科を卒業後、企業勤務を経て上京。業界紙記者、海外ガイドブック編集、美容誌編集を経てフリーランスへ。子育て、働く女性をテーマに企画・取材・執筆する中、2011年、東日本大震災後に参画した「東京里帰りプロジェクト」広報チームをきっかけにNPO法人ETIC.の仕事に携わるように。現在はDRIVEキャリア事務局、DRIVE編集部を通して、社会をよりよくするために活動する方々をかげながら応援しつつフリーライターとしても活動中。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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