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妊婦さんの納得のいく決断を支援。出生前検査の専門家に気軽にアクセスできる仕組みをつくる 株式会社PDnavi 西山深雪さん

2024.06.07 

妊娠をした方が気になる赤ちゃんの健康状態。初めての方は色々と不安なことも多く、様々な情報を調べることが多いのではないでしょうか。出生前検査によって、生まれる前に赤ちゃんの健康状態や病気の可能性を知ることができるようになりましたが、その検査との向き合い方や正しい情報は十分に理解されていないこともよくあるそうです。

 

出生前検査の専門家である遺伝カウンセラーとして、安心して妊娠・出産をむかえるために「出生前検査ホットライン」を行っている西山深雪さんにお話を伺いました。

 

この記事は、現在エントリー受付中の東京都主催・400字からエントリーできるブラッシュアップ型ビジネスプランコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY(以下、TSG)」出身の起業家を紹介するWEBサイト「TSG STORIES」からの転載です。エティックは、TOKYO STARTUP GATEWAYの運営事務局をしています。

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西山深雪(にしやま・みゆき)さん

株式会社PDnavi 代表取締役社長/TOKYO STARTUP GATEWAY2021ファイナリスト

認定遺伝カウンセラー® 。京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 博士後期課程修了。博士(社会健康医学)。外資系検査会社にて出生前診断技術を学んだ後、2013年に国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターに入職。遺伝カウンセラーとして、出生前診断の遺伝カウンセリングや研究に従事。2022年2月に同センターを退職し、同年3月に株式会社PDnaviを設立。著書に『出生前診断』(筑摩書房)など。2男1女の子育て中。

WEB: https://pd-navi.co.jp

公式X(Twitter): https://twitter.com/PD_navi

遠隔健康医療相談サービス「出生前検査ホットライン」https://coubic.com/pdnavi-hotline

大好きな仕事である「出生前検査を専門にする遺伝カウンセラー」。

 

ー簡単に自己紹介をお願いします。

 

株式会社PDnavi(ピーディーナビ) 代表取締役社長の西山 深雪です。 京都大学大学院医学研究科の遺伝カウンセラー養成課程を修了し、同年に認定遺伝カウンセラー®も取得しました。

外資系検査会社にて出生前診断技術を学びながら京都大学大学院医学研究科の社会健康医学系の博士課程を修了し、2013年に国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターに入職。

遺伝カウンセラーとして、出生前検査の遺伝カウンセリングや研究に従事しました。
2022年2月に同センターを退職し、翌3月に株式会社PDnaviを設立しました。

遺伝カウンセラーとして社会を変えたい。

 

 

ー今、仕掛けている事業のミッションや活動内容を教えてください。

 

2022年3月に、出生前検査サポート・コンサルティング事業を行う株式会社PDnaviを設立しました。晩婚化・晩産化による少子化が進む中で、すべての妊婦さんが出生前検査の情報を正しく理解し、納得した上で安心して出産できる社会の構築に寄与したい、という思いから「安心して出産を迎えられる社会の実現を」をミッションに掲げています。

 

具体的な内容ですが、全国の妊婦さんが出生前検査について気軽に相談でき、正確な情報にアクセスできる環境を生み出すために、妊婦さんへの遠隔健康医療相談(オンラインカウンセリング)である「出生前検査ホットライン」、医療機関や行政・検査会社等への研修・コンサルティング事業を提供しています。

 

※「出生前検査ホットライン」は、妊婦さんがオンラインで認定遺伝カウンセラーに出生前検査に関する相談ができるサービスです。

 

ー取り組まれている事業・プロジェクトをやりたいと思ったきっかけを教えてください。

 

ある妊婦さんの「出生前検査について悩んでいるなら、みんな遺伝カウンセリングを受ければいいのに」という感想が原点です。

 

出生前検査を「受ける」「受けない」の決断は、妊婦さんとご家族が命と向き合って悩み抜いた上で決断することです。しかし、そもそも出生前検査に関する正確な情報を得ることは容易ではなく、都内でも出生前検査に精通した専門家は限定的で、相談支援へのアクセスは難しいのが現状です。

妊婦さんの中には誤った情報に振り回されて精神的に追い詰められた方もおられ、私は臨床現場で働きながら、専門家へのアクセスが身近になる環境の必要性を感じ、現在の事業を考えました。

 

出生前検査は受けたほうがいいの? from PDnavi on Vimeo.

 

ー実際にビジネスアイデアを形にするときに、最初に誰に伝えましたか?

 

産婦人科医である夫です。夫は、長年に渡って多くの妊婦さんの赤ちゃんの超音波診断や、妊婦さんへの遺伝カウンセリングを行っていることもあり、私が抱いていた課題感は理解してくれていました。まさか起業を選択するとは思っていなかったようですが...

日本での出生前検査に関する妊婦さんへの適切な情報提供と相談支援体制の環境整備は、夫婦共通で認識する課題でもあり、背中を押してもらい、冒険をさせてもらっています。

 

ー何がきっかけで、自分の心に火が付きましたか?

 

まさにTSGに火を付けてもらったと思っています。「起業」とは無縁の一人の医療者でしかなかった私をファイナリストに選出していただいたことで、自ら事業の可能性を信じてみようと思うことにしました。

 

また、認定遺伝カウンセラー®の専門職としての雇用の創出と職業確立への想いもありました。遺伝カウンセラーの90%以上が女性であるため、結婚や出産・子育て等のライフイベントにより、医療機関での勤務が難しくなることが多いんです。潜在認定遺伝カウンセラー®の存在や離職率が高いことが専門職として近年の課題となっています。

 

私が出生前検査のオンラインカウンセリングのシステムを確立できれば、医療機関での就労が困難である認定遺伝カウンセラー®が雇用の機会を得ることができます。

 

オンラインカウンセリングは、妊婦さんやご家族だけでなく、カウンセリングを担当する認定遺伝カウンセラー®も自宅からのアクセスが可能になるためです。私も医療機関で働いている時は「リモート勤務」は不可能だったので、自宅で働ける環境は子育て中の母としても大変助かっています。

専門以外のことは全く分からない、各分野のスペシャリストの友人へ相談したから前に進めた

 

ー事業を進めていてぶつかった壁、大きな課題はありましたか? それをどのように乗り越えましたか?

 

起業までのプロセスを全く知らなかったこともあり、起業に必要な事務的な手続きやそのボリューム感に、何度も挫折しそうになりました。

 

医療機関の遺伝カウンセラーとして働いていたので、出勤さえすれば、妊婦さんやご家族にお会いして出生前検査の遺伝カウンセリングに関わることができるのが当たり前の毎日でした。それが一転、医療機関の外で妊婦さんへのオンラインカウンセリングのサービス(現在は「出生前検査ホットライン」として展開)を始めるにあたって、必要な準備も手続きも事業展開の方法も全く分かりません。

 

そこで、ベンチャーキャピタルに勤務していた友人に相談したり、弁護士やエンジニアの友人たちに連絡をとったり、遺伝カウンセラーの友人にはマーケターやデザイナーの方も紹介してもらいました。

 

私は自分の専門以外のことは全く分からないですし、育児もあるので思いっきり仕事に打ち込むことができません。言い訳かもしれませんが、自分の能力や時間的な限界を把握しているからこそ、各分野のスペシャリストの友人達に気軽に相談をさせてもらっています。本当に周りに支えてもらっているPDnaviです!

 

ーちなみにプライベートではどんな方ですか?生活スタイルや好きなものについてぜひ教えてください!

 

「出生前検査を専門にする遺伝カウンセラー」という仕事が大好きで、出産するまでは自宅で関連する論文を読んだり、原稿や論文を執筆したりして地味に過ごしていました。趣味も生け花くらいで、モグラのようなインドア派でした。

 

子どもが生まれてからは、一転して外にいる時間が多くなりました。休日は、天候が良ければ3人の子どもたちと一緒に公園で遊ぶことが多く、平日よりも肉体的に疲れます。子どもたちと遊んでいる間も、頭の中はいつも仕事のことで一杯で、患者さんと適切な医療機関を繋ぐためにPDnaviができること、専門性が高いPDnaviの事業を一般化するための仕組みを考えています。

 

思いついたことはすきま時間にメモを取って忘れないようにしています。 雨の休日は大変です……元気があり余っている子どもたちと終日自宅で過ごすことが多いので。子どもたちが平和に遊んでいる時間に、こっそり?パソコンに向かっています。

 

―自分自身にスイッチを入れるためにどのようなことをしていますか?

 

個人事業主のような形で一人でオンラインカウンセリングをしておけば良かったのかな、本当に起業をする必要はあったのかな、と弱気になることもあります。

そのときに必ず思い出すのが、取材をして下さった記者さんからの「西山さん一人では多くの妊婦さんに届けられないですよね」という言葉です。起業は、一人では成し遂げられない未来を実現できる。出会いに感謝する毎日です。

 

 

ー西山さんにとって、TSGはどんな価値がありましたか?起こった変化や気づきなどがあれば教えてください。

 

TSGに応募するまで、「起業したい」などと思ったことは全くありませんでした。ただ、勤めていた産科診療施設で妊婦さんやご家族への遺伝カウンセリングに関わる中で、医療機関で行うカウンセリングに限界を感じてはいました。気軽に出生前検査のことを聞ける専門家にアクセスすることは難しく、その一方で営利目的の無資格施設が増えている現状を憂慮してもいました。

 

でも特に具体的に何かできるわけではなく、漠然と「妊婦さんが気軽に出生前検査の専門家にアクセスできる仕組みがあればいいのに」などと思っていたところ、偶然、山手線内の広告でTSGについて知りました。出生前検査のカウンセリングにどれだけの社会的ニーズがあるのか気になり、TSGに応募してみることにしました。

 

思いがけず選考が進む過程で、「もしかすると自分で事業を始められるかもしれない」と考え始めました。選考の中で、具体的な質問をいくつも投げかけられ、漠然としていた事業のプランがどんどん具体化していきました。TSGの広告を見ていなければ、私が株式会社PDnaviを設立することはなかったので、まさに人生を変えてくれたと思っています。

出生前検査の正確な情報にアクセスできる環境をつくる。

 

ー今後実現したい世界やビジョンがあれば教えてください。

 

2021年に当時の厚生労働省が、全ての妊婦さんに出生前検査の情報提供を行うとの方針転換を示しました。それを踏まえて、「出生前検査の専門家へのアクセスを身近に、正しい相談支援を」をビジョンに掲げ、全国の妊婦さんが正確な情報や専門家にアクセスできる環境をつくっていきたいと思います。

 

ーこれから起業を考えている方や、TSGのエントリーをされる方に向けて、メッセージをお願いいたします。

 

TSGに応募するときは、起業なんて全く考えていませんでした。世の中を変えていきたい思いを、ぜひ400字にまとめてみてください。それが起業への第一歩につながります。もしかすると私のように人生が変わってしまうかもしれません!

 

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DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )

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